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三百六十六話 魔法の箒

「ふんふんふふーん。あら? ベルちゃん達、そんなにはしゃいでどうしたの? 楽しいことならお姉ちゃんにも教えてー」


 リビングに入るとベルちゃん達が楽しそうに飛び回ってるわ。……お姉ちゃんの勘によると、裕太ちゃんからなにかお仕事を頼まれてるわねー。とてもやる気に満ちあふれてるし、新しいお仕事かしら?


「あっ、でぃーねだー。あのね、べるたちおしごとしてるー」


 ポスンとベルちゃんが抱き着いてきて、お仕事をしてるって教えてくれたわー。相変わらず、ベルちゃん達は可愛らしくてお姉ちゃんとして幸せよねー。


「そうなのねー。どんなお仕事なのかしら?」


「むふー。あのねー、べるたち、おそうじのおてつだい! ねっ、ゆーた」


「……裕太ちゃんは居ないわよ?」


「ゆーた、いない?」


「キュ?」


「ゆうた、いないね」


「クゥ」


「どこいったんだぜ?」


「……?」


 ベルちゃん達が裕太ちゃんが居ないことにキョトンとしてるわ。たぶんベルちゃん達が元気いっぱいにはしゃいでたから、落ち着かせるのをあきらめて次の行動に移ったのねー。


「裕太ちゃんはおでかけしちゃったみたいねー。お掃除のお手伝いってどんなことをするの?」


「おてつだい! でぃーね、これみて! べるたちみまもるー」


「キュー」


「おそうじおわったらべつのばしょ。うごかなくなったらゆうたよぶ」


「ククー」


「るびーたちのおみせもそうじするんだぜ!」


「……!」


 なにか動いてると思ってたけど、魔道具の箒だったのねー。ベルちゃん達のお話をまとめると、この箒を見守って、お掃除が終わったら別の場所に移動。ルビーちゃん達のお店までお掃除するって感じなのねー。


「ねえ、お姉ちゃん、見学したいんだけどいいー?」


 みんなのお姉ちゃんとして、裕太ちゃんの代わりに見守ってあげないと駄目よね。うふふー、裕太ちゃん、頼りになるお姉ちゃんにメロメロになっちゃうわね。困っちゃうわー。


「いいー」「キュー」「みてて」「ククー」「みせてやるぜ!」「……!」


 ベルちゃん達の許可が下りたわー。醸造所に顔を出そうと思ってたけど、今日は1日大忙しね。




「おそうじおわった?」「キュー?」


「……まだ? あっちによごれある」「クー」


「ほうきをいどうさせるんだぜ!」「……」


 なるほどー、なにを相談してるのかと思ってたけど、リビングのお掃除終了のタイミングを計ってたのね。魔法の箒は勝手にお掃除するみたいだけど、ゴミを検知する機能はないのかしら?


 四方八方に動いてお掃除にむらがあるから、移動させるかその場所を勝手にお掃除するまで待つかが悩みどころみたいね。お姉ちゃんのアドバイスが必要かしらー?


「たくさんおそうじしないとだめだから、いどうさせる!」


 あら、お姉ちゃんのアドバイスの前に結論がでたわー。ふふ、トゥルちゃん、凛々しいわねー。


「こっちじゃないー、あっちいくー」「キュキュー!」「こっちはだめ」「クゥ!」「いかせるか!」「……!」


 持ち運ぶんじゃなくて、進行方向を限定して箒を誘導するつもりなのねー。みんな一生懸命頑張って偉いわー。


「ディーネ、なにをしているんですか?」


「あらドリーちゃん、あのね、ベルちゃん達が裕太ちゃんに頼まれてお掃除のお手伝いをしているのよー」 

「お掃除のお手伝いですか? ああ、あの魔道具を使ってお掃除しているんですね。ふふ、頑張ってますね」


 ドリーちゃんもベルちゃん達の頑張りが嬉しいのね。目がとっても優しいわー。


「頑張ってるわねー。もうすぐリビングは終わると思うんだけど、他の場所も掃除するみたいで張り切ってるのよー」


「なんでディーネが胸を張ってるのかは分かりませんが、頑張っているのは偉いですね。そういえば裕太さんはどうしたんですか?」

  

「裕太ちゃんはベルちゃん達にお掃除を任せてどっかに行ったみたいよー。だからお姉ちゃんが代わりに見守ってるの。ドリーちゃんも一緒に見守りましょー」


「それも楽しそうなんですが、少し森の調整をしておきたいので次の機会にしておきますね。ディーネは精霊王様方をお出迎えする準備は済んでるんですか?」


 お出迎え……? 泉や池のお掃除くらいしておくべきかしら? でも、普段から綺麗にしているし、なにもやることないわねー。


「お姉ちゃんは大丈夫よー。ドリーちゃんも頑張ってねー」


「ええ、しっかり見守ってあげてください。では、またあとで」


 ドリーちゃんにも頼まれちゃったし、しっかり見守らないとねー。


「おわったー」「キュー」


「つぎはろうか」「クゥ!」


「ふはは、まかせろ」「……」


 えーっと、リビングのお掃除が終わって、次は廊下のお掃除をするのね。それで、廊下までも箒を持ち運ばないで、体で進路を限定するつもりみたいね。大変そうだけど楽しそうだわー。


 ***


「るびー! おそうじきたー」「キュー!」「きれいにする」「ククー」「まかせるんだぜ!」「……!」


 廊下のお掃除を終えたベルちゃん達が今度は元気に楽園食堂に突撃したわー。楽園食堂まではちゃんと箒を持って移動したから、お姉ちゃんはちょっとホッとしたわね。さすがに地面を掃きながら進むのは時間がかかるものねー。


「ん? 突然どうしたんだぞ?」


「これー、これでおそうじー」


「その箒でお掃除してくれるってことなんだぞ?」


「ちがうー」


「ん? どういうことなんだぞ?」


 少し混乱気味のルビーちゃんに、ベルちゃん達が一生懸命説明している姿……なごむわー。


「ちょ、ちょっと待つんだぞ! えーっと……ディーネの姉貴、どういうことなんだぞ?」


「その箒は魔道具の箒で自動でお掃除してくれるのよー。それで、ベルちゃん達はその箒の管理を裕太ちゃんに任されてるみたいねー」


 ベルちゃん達がウンウンと頷いてるし、完璧に通訳できたのね。さすがお姉ちゃんだわー。


「な、なるほどだぞ。えーっと、じゃあよろしくたのむんだぞ?」


「わかったー」「キュー」「はじっこからおそうじする」「ククー」「はじめるぜ!」「……」


 ベルちゃん達が抱えていた箒を床に置くと、ぴょこんと起き上がってお掃除を始めた。……なんだかあの箒も可愛いわねー。


「ディーネの姉貴、魔道具の箒が掃除をしてくれるのは分かったんだぞ。でも、なんでベル達は箒を応援しているんだぞ?」


 不思議な顔で聞いてくるルビーちゃん。まだまだルビーちゃんはお姉ちゃんパワーが足りないわねー。しっかり教えてあげたいところだけど、ルビーちゃんは明日のお料理が忙しいのよねー。お姉ちゃんなら相手の気持ちを推し量るのも大事なことだから我慢ねー。


「ベルちゃん達は裕太ちゃんに任されたお仕事を精一杯頑張ってるのよー。ベルちゃん達の応援で箒も頑張るわー」


「そ、そうなんだぞ?」


「そうなのよー」


「なんとなくわかった気がするんだぞ? えーっと、料理していいん……だぞ?」


「いいわよー。ここはお姉ちゃんに任せて大丈夫よー」


「ありがとうなんだぞ!」


 うふふー、ルビーちゃんにも頼られちゃったわー。楽園食堂の後にも雑貨屋と両替所に宿屋のお掃除もあるし、エメちゃん達にも頼られちゃうわね。お姉ちゃん、頑張るわ!


 ***


「ふー、裕太、こういう魔道具もなかなか面白いわね」


「そ、そうだね」


 なんとか返事をして家の前の芝生に膝から崩れ落ちた。さっくり降伏して、シルフィに操縦を任せたのが間違いだった。最初は風と気温は快適になり、シルフィも初めての操縦にご機嫌な平和な時間。体にかかるGもほどよくて俺もシルフィと一緒にご機嫌だった。


 これってどのくらいの操縦まで耐えられるのかしら? そうシルフィが興味を示すまでは……。


 楽しい魔法の絨毯での空の旅に気持ちが浮かれ、じゃあ試してみればいいよって言ってしまった俺も悪かった。


 高速移動に宙返り、弾丸のように回転しながらの直進……やる気になった風の大精霊の本気は俺の想像を超えていた。レベルアップで鍛えられたはずの俺の体も、激しいGに振り回されて大ダメージ。


 早く魔法の絨毯から落ちて楽になりたいとすら思ったが、魔法の絨毯の効果かどんなに振り回されようが体は絨毯から離れることがない。安全なのは嬉しいが、落ちて楽になれないので吐くのを我慢するだけで精いっぱいだった。


 レベルアップって三半規管は鍛えられないのかな? なんとなく鍛えられていても耐えきれないほど振り回されたのが正解な気もするが、レベルが上がって再び試すのは遠慮したい。シルフィが操縦する時は精霊達だけで楽しんでもらうようにしよう。


「大丈夫?」


 耐えきれずに芝生に転がった俺にシルフィが心配そうに声をかけてくれる。


「休めば大丈夫。ただ、シルフィの全力操縦は人間だと厳しいから、もしジーナ達を乗せることがあったら気を付けてね」


「その方がよさそうね。ごめんなさい、少し楽しみすぎたわ。ムーンかヴィータを呼んでくる?」


「いや、このくらいなら寝転んでたら回復するから大丈夫。少し寝てるからシルフィもゆっくりしてて」


「そう? ムーンとヴィータを呼んでほしかったらいつでも言ってね」


「了解」


 しかし家の前を芝生にしておいてよかったな。少し日差しが強いが目をつぶるとすごく気持ちがいい。このまま眠ってしまいそうだ。


「あら、ジーナ達がこっちに走ってくるわ。たぶん魔法の絨毯が降りてきたのを見つけたのね」


 そういえばジーナ達は外で装備の確認をしてたんだったな。空をビュンビュン飛び回る魔法の絨毯を見たら気になるだろう。さすがに弟子の前でへばっているのはカッコ悪いので、気合で体を起こして出迎えよう。


「シルフィ。ジーナ達が魔法の絨毯に乗りたいって言ったら連れてってくれる?」


「ええ、それくらいは構わないわ。今度は無茶をしないから安心して」


「よろしく頼むよ」


「師匠! じゅうたんでそらとんでた! まどうぐなの?」


 マルコが全力で走ってきて、装備の感想ではなく魔法の絨毯の質問をしてくる。まあ、マルコは弟子になった頃から空に興味があったもんな。シルフィに飛ばせてもらうのと違う方法があるのなら、興味をひかれるだろう。後ろにいるジーナ、サラ、キッカ、メルも興味津々だな。


「うん、魔道具だよ。魔法の絨毯なんだけどみんなも乗ってみる?」


 当然のごとく乗ると答えたのでシルフィに任せて、速攻で魔法の絨毯に乗せて送り出す。よし、もう一度横に「ゆーたー」……なれないようだ。


 魔法の箒を抱えて楽しそうに飛んでくるベル達。お掃除が終わったようだ。今回ばかりは俺自身が誉めまくらないと駄目だろう。ムーンに回復してもらってから、全力で誉めまくろう。魔法のテントの確認もしたかったが、今日はちょっと無理っぽいな。

読んでくださってありがとうございます。

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