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三百六十四話 装備

 昨晩、ライトドラゴンとファイアードラゴンのお肉を焼肉スタイルで満喫した。明日は精霊王様達がくるし、メル達の帰還ももうすぐだ。今日中に装備を整えておこう。あと、魔道具の確認、特に魔法の絨毯の試運転をしておきたいな。


「という訳で、今日はジーナ達の装備を選びます」


 昨日ノモスに鑑定してもらった装備やアクセサリーを、今日の午前中にある程度絞り込んだ。あとはジーナ達と相談して装備を決定するだけだ。


「師匠、剣! 剣ある?」


 新しい装備って言葉にマルコが食いつく。午前中に昨日自分で作ったソリで、精霊樹の滑り台を何往復もしてたのに元気いっぱいだな。


「残念ながら武器はありません。今回も防具中心で装備を選びます」


 マルコの表情が残念そうなものに変わるが、武器関連は威力が大きすぎて、素人の子供に持たせるのは怖いものばかりだ。あきらめてほしい。


「じゃあ装備の能力を説明するから、パーティー内での役割を考えながら装備を選ぶように」


 装備を厳選したにも関わらず、リビングが狭く感じるくらいに装備を広げる。


「お師匠様、なんで私も呼ばれたんですか?」


 メルが不思議そうに質問してくる。俺の方が不思議な気分になるよ。


「メルも自分の装備を選ぶからだよ。俺の弟子なんだから当然だろ?」


「私、鍛冶師ですよ?」


 知ってますよね?っと首を傾げるメル。何度も工房に行ったことがあるから知ってますよ。


「メルは鍛冶師だけど精霊術師で、冒険者ギルドにも加入してるよね。ジーナ達とも迷宮に潜る機会もあるだろうし、自分で素材を手に入れられるのは鍛冶師としての強みになる。安全に冒険するには装備は整えておくべきだよね」


 兼業の弟子とはいえ……いや、兼業の弟子だからこそ装備を整えてしっかりレベルを上げてほしい。楽園の発展は土の精霊が居ればなんとかなることも多いが、腕の立つ職人が無茶を聞いてくれるだけで心強いからな。


 まあ、安全に冒険って言葉に少しだけ矛盾を感じるけど、精霊に守られて高性能な防具を身に着けていれば40層くらいまでは安全と言っていいだろう。


「そうなんですか?」


 あんまり納得してない感じだ。基本的にメルはビビりだし自分は鍛冶師って考えだから、ジーナ達やユニスに付き合う以外に冒険する感覚がないんだろう。


「冒険してレベルが上がれば力も体力も付く。鍛冶にかなり役に立つし、メラルにとっても迷宮探索は気分転換になると思うよ。火の精霊は結構アクティブな性格が多いみたいだしね」


「なるほど……メラル様、迷宮探索に行きたいですか?」


 メルが隣に浮かんでいるメラルに質問する。


「ん? んー、そうだな。メルと一緒に居られればそれだけで楽しいけど、一緒に冒険するのも面白いだろうな。俺がしっかりメルを守ってやるぞ!」


 メラルの言葉にメルの表情が少し前向きになる。あとはこんな高価な装備受け取れませんとか言い出さないように、勢いで装備を押し付けてしまおう。


 ***


「うん、結構いい感じ……かな?」


 少し自分の装備に違和感はあるが、シルフィやベル達の意見を聞きながら、なんとか全員のコーディネートができたと思う。まあ、ベル達はなにを装備しても、かっこいいけど自然の鎧の方がいいよ?って言うからあまり参考にならなかったけどね。……俺、装備を整えても要所では自然の鎧を身に着けるんだろうな。


 選択した装備を身に着けたジーナ達を見ると、楽しそうにお互いを誉めあっている。俺とは違うコンセプトで、見た目的には地味なのを選んだが、ジーナは美人だしメルも含めてサラ達は小さいから存在自体が目立つんだよな……まあ、それは今更だからしょうがないか。


 裕太

 頭 光竜の兜

 体 光竜の鎧  

 足 光竜のブーツ


 ジーナ

 頭 闇竜のサークレット 

 体 闇竜のローブ

 足 闇竜の靴     

 首飾り 火のネックレス(シバ用) 


 サラ

 頭 精霊樹のサークレット

 体 命のローブ

 足 風の靴

 首飾り 風のネックレス(フクちゃん用)

 指輪 命の指輪(プルちゃん用)


 マルコ

 頭 ベヒモスの革の帽子

 体 ベヒモスの革鎧

 足 ベヒモスの靴

 盾 魔法の盾 

 腕輪 大地の腕輪(ウリ用)


 キッカ

 頭 ふわもこの帽子

 体 体力のローブ 

 足 風の靴

 腕輪 風の腕輪(マメちゃん用)


 メル

 頭 アダマンタイトの兜

 体 アダマンタイトの鎧

 足 アダマンタイトのグリーブ

 指輪 火の指輪(メラル用)


 俺の装備はAランクの冒険者として相応しく見える光竜シリーズ。少し派手ではあるが、属性竜の鎧だけあって、下品な輝きではないから悪くないと思う。普段は兜は収納しておくが、兜をかぶってギルドカードを提示すれば、階級を疑われることもなくなるだろう。


 ジーナの装備は闇竜の靴があったので闇竜装備で統一。セクシーなスリットが入ったローブは上にローブを重ね着するので今までとはあまり違いがない。


 サラの装備は追加で手に入れた風の靴と、プルちゃんとの親和性が高い命のローブ。精霊樹のサークレットも精神疲労に効果があるので、全体的に防御力と持久力が上がったと思う。


 マルコの装備は、ローブよりも鎧を望んだのでベヒモス装備一式になった。この装備は最初、俺が身に着けようかとも思っていた、深い紺に染められた革が渋い超一級品だ。外見が地味になるので俺は断念したが、目立ちまくって狙われることはなさそうなので、マルコの装備としては悪くないと思う。


 キッカの装備のコンセプトはほぼサラと変わらない。幼いハンデをできるだけ埋められるように考えられた構成だ。ただ、ふわもこの帽子だけはキッカの熱い希望で装備に選ばれた。ふわもこの帽子は素晴らしくふわふわでモコモコ……とても可愛らしい。防御力は意外とありそうだ。


 メルの装備は艶消しのアダマンタイトシリーズ。俺としてはもっと軽そうな装備を薦めたが、これで十分過ぎますと必死で断られた。たぶん他の装備の方が高価で遠慮したんだと思う。命を守るものなんだから遠慮しないように言おうと思ったが、あまりに必死な表情だったのであきらめた。


 ジーナ達全員のアクセサリーは、フクちゃん達の身近な休憩所として利用可能らしいので装備してもらうことにした。


 俺もアクセサリーを装備したほうがいいか考えたが、普段装飾品を身に着けない俺に、6属性分のアクセサリーは辛い。一応、必要な場合を考えて選ぶだけは選んだが、必要ないことを願いたいな。


「シルフィ、メル、こんな感じで決まったんだけど……俺はともかくジーナ達の装備はそこまで目立たないよね?」


 一応、地味な装備を選抜したから、大丈夫だとは思うんだけど……装備を身に着けたジーナ達に妙な迫力がある気がする。


「んー、人間の装備は分からないけど、たしかに裕太よりは目立ってないと思うわ」


「あのー。お師匠様、地味は地味ですけど魔力がある装備ですので、見る人が見れば価値に気づくと思います」


 シルフィの反応は悪くないがメルの言葉からすると、地味目の装備を選んでもちょっと危険なんだろうか?


「メル、この装備をジーナ達が身に着けていたら、狙われたりする?」


「価値を考えれば可能性を否定できません」


 んー、装備をよくして襲われたら本末転倒なんだけど、ジーナ達はいずれ火山の層に足を踏み入れることになる。フクちゃん達は浮遊精霊だし、アサルトドラゴンやワイバーンを考えると、しょぼい装備は怖いんだよな。


 高価な装備を渡す弊害もあるとは思うんだけど、装備の丁度いいランクってよく分からない。自分自身が経験していれば分かるだろうけど、装備品で苦労してないからな。でも、一撃で死ぬ可能性を考えたら装備はいい方がいいだろう。


「サラとキッカは、ジーナみたいに上にもう1枚ローブを重ねればある程度隠蔽できるよね。問題はマルコの装備?」


「はい。ベヒモスの鎧って分かったら、大抵の人が目の色を変えると思います」


 詳しく話を聞いてみると、ベヒモスって属性竜よりも希少な存在らしい。歴史的に存在は確認されているが、現在は存在しているかも不明な魔物なんだそうだ。激レアな装備ってことだな。メルもノモスからベヒモスの革って教えてもらわなければ、なんの革か分からなかった感じらしい。


「他の鎧に変えたほうがいい?」


「属性竜クラスの鎧ですと、逆に気づかれやすいですね。ベヒモスの装備の場合は、ベヒモスだとは気づかれにくいですが、気づかれたら大騒ぎになると思います」


 微妙な感じだな。子供が属性竜の装備をしてたら、嫉妬する冒険者はかなり居るだろう。その点、ベヒモスの装備だと、目利きの人が見ればいい装備だと分かるけど、ベヒモスとまでは見抜かれないって感じっぽい。


「シルフィ、ベヒモスって今も居るの?」


「数は少ないけど居るわよ。豊穣を司る善なる存在だから倒したら駄目よ」


「えっ? ベヒモスって魔物じゃないの?」


 日本のゲームだと魔物として出てくる場合が多いよな?


「んー、温厚な性格で土を富ませる存在だから魔物とは言いづらいわね。でも、体内に魔石を持っているし怒らせると大暴れするから、魔物とも言えるのかしら?」


 微妙に分かりづらいが、良い魔物って考えておけば良さそうだな。そんな不思議な立ち位置のベヒモスの鎧……バレたらうるさいことになりそうだがら、少しは対策をしておきたいところだ。


「なるほど……メル、ベヒモスの装備を目立たないようにできる?」


 俺の丸投げにメルが悩みだした。


「……例えば、アサルトドラゴンの革を削って、ベヒモスの革の上に張り合わせればバレなくなると思いますが、サイズの自動調節に影響が出ます」


「それってマルコ専用にすれば問題ないってこと? アサルトドラゴンの革を剥がせば元に戻る?」


「はい、専用で使えばサイズの変更はないですし、革を剥がせば元に戻ります」


 それなら問題ないか。アサルトドラゴンの革ならある程度出回ってるし、子供用の鎧だと考えればわざわざ襲ったりしないだろうな。 


「メルはその加工ができる?」 


「えっ? 私ですか? 工房に戻ればできないことではありませんが、革を本職で扱う職人に任せた方がいいと思います」


「まあそうなんだろうけど、ベヒモスの革だからね。メルが信頼する職人が居るかもしれないけど、説明する時点で騒ぎになりそうだから、できればメルにお願いしたいな」


「……たしかにそうですね。分かりました」


 少し悩んだあと、メルが了承してくれた。こういう時に技術を持った弟子が居ると助かる。よし、これで全員の装備の更新は終了した。次に迷宮都市に行く時は光竜装備……目立っちゃうかな?


 ……特に目立ちたいとは思ってなかったはずなんだが、少しワクワクしている自分がいる。自己分析してみると、何度もAランクの冒険者として認識されなかった悲しみの裏返しだと結論が出た。平気だと強がっていても微妙に傷ついていたらしい。


 まああれだ、目立ってもたいして危険な立場じゃなくなったし、威厳を装備に頼るのはブランド物で身を固めるのと似てる。露骨に成金臭を出さなければ悪いことじゃないんだから、認められなかった悲しみを癒すためにも、新しい自分を楽しもう。

読んでくださってありがとうございます。

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