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三百五十四話 計画発動?

 勝手に俺の中でだけで弟子達と勝負をして、なんとなく負けた気になった。娯楽としては俺の方が面白いと思うが、死の大地に雨を降らせる……精霊術師としては、雨の方が高尚な気がする。


「師匠、もう一回すべってきていい?」


「キッカも!」


「お師匠様、私も行ってきていいですか?」


「あたしも、もう一回すべりたいな」


「あー、うん、でももうすぐ夕食の時間だからこれで最後だよ。いい?」


 俺の言葉にマルコ、キッカ、サラ、ジーナが階段を駆け上がっていく。ジーナとサラは最初不安がっていたが、一度すべったあとは気に入ったらしい。階段、結構きついはずなんだけど、レベルアップの効果か、楽しくて疲れを感じてないのか、どっちなんだろう?


「メルはやっぱり滑らない? 風の精霊が居るから安全は保障するよ」


 滑るのを怖がり、俺の隣で待機しているメルに声をかける。一緒に空を飛んでるんだから、かなり大きな滑り台とはいえ、そこまで怖くないと思うんだけどな。


「そうだぞメル、すべってみたら楽しかったぞ!」


 メラルもメルと一緒にすべりたいのか、楽しさをアピールしてくれる。ちなみにメラルはジーナ達やベル達と一緒に2回ほど滑っている。中級精霊でも楽しかったのか、メルに気を遣いながらも滑り台も気にしている。


「えーっと、今日は止めておきます。安全だとは分かっていますが、勇気が出ないので……明日、明日頑張ります」


 そういって自分に気合を入れるメル。ダイエットは……って言葉が思い浮かぶが、メルの場合は踏ん切りがつくのに時間はかかるが、自分の言葉に責任を持つタイプなので、明日には怖がりながらもすべるだろう。俺としては楽しいと思って作ったのに、予想以上に怖がられてちょっとだけショックだな。


「まあ、無理はしなくていいからね。そういえば、メルはシルフィと一緒に飛んでるときは平気そうだけど、もしかして高いところが怖かったりする?」


 高所恐怖症の場合は、無理させるのは可哀そうだ。


「……えーっと、シルフィさんと飛ぶのは、最初は怖かったのですが、今はなぜか平気になりました。高いところ自体は……あんまり行ったことがないので分かりません」


 そういえば、最初にメルを迷宮に連れてった時だっけ? 洞窟内をジェットコースター並みにぶっとばしたから、フラフラになってたな。あれで飛ぶのに慣れたってことか。洞窟内のジェットコースターに比べたら、外を飛ぶのなんて楽勝だよな。


「そっか、まあ、楽しいとは思うから、明日は無理しない程度に試してくれ」


「はい、頑張ります」


 メルと雑談をしていると、上から楽しそうなちびっ子達の声が聞こえてきた。もう滑ってきたのか。なら夕食にして、それが終わったら会議だな。楽園に戻ってきて2日しか経ってないのに、なんだかんだで忙しい。


 ***


 夕食が終わり、ジーナ達、ベル達、メル達が部屋に戻った。リビングに大精霊達も集まったし会議を始めよう。


「それで裕太、相談したいことってなんなの?」


 席に着いた途端にシルフィから質問が飛んできた。 


「えーっと、これからの楽園の発展について相談したいと思ってるんだ」


「発展? 裕太はそんなに急いで楽園を開発するつもりはないのよね?」


 俺がいきなり発展って言いだしたことで、シルフィが首を傾げている。


「うん、俺は楽園が急激に都市化するのを望んでないね」


 俺の中で思っているのは、ほどよい田舎でのんびり暮らして、遊びたくなったら都会でフィーバー……それって最高じゃんって感じだ。なんか頭の悪そうな考えだが気にしないぞ。


「じゃあ、どうしたいの?」


「アルバードさんから頼まれて思ったんだけど、今の楽園ってほとんど精霊達を受け入れられてないよね? 楽園の精霊達に任せた場所も、俺に気を遣ってのんびりとしてくれてるから施設もほとんど増えてない」


 浮遊精霊や下級精霊、中級精霊は遊びにきているけど、上級精霊や大精霊は付き添いくらいで全然遊びにこれてないのも問題と言えば問題だと思う。


「お姉ちゃんは、のんびりしている今の楽園、結構好きよー」


「ディーネの言うとおりね。裕太に気を遣ってるだけじゃなくて、元々精霊は人間の都市みたいな発展は望んでないの。精霊を受け入れる数が少ないとしても、小さい子達の受け入れ人数を増やしてくれるんでしょ? そうやってゆっくり考えてくれるだけで十分よ」


 あれ? 俺が思った以上に精霊ってのんびりしてる。


「ちびっ子達が遊びにきたがってるから、大精霊や上級精霊が遠慮してるんだと思ってたけど、違うの?」


「お酒が十分に確保できるようになるんだもの、大精霊や上級精霊はのんびり遊びにこられるのを待つ余裕はあるわ」


 お酒が十分に確保されなかったらどうなるんだろうね? でも、俺が余計な気をまわし過ぎてたってことっぽいな。


「そっか、楽園の中間に浮かべた重力石の島の1つを、大人の精霊達に酒島として開放しようかと思ってたけど、余計なお世話だったか。なら、話し合うこともなくなっちゃったね。解散しようか」


 会議とか相談とか言ってみんなを集めてこの結果、ちょっと恥ずかしい。典型的な独りよがりってやつだな。


「待ちなさい裕太!」


「そうよー、そういうことなら話は別だとお姉ちゃんは思うわー」


「うむ、酒島じゃと? そんな話を聞かせて、解散できるはずがないじゃろう」


「そうですね。待つ余裕があっても、自由に実体化してお酒が飲める場所があれば、嬉しいには違いありません」


「裕太、そんな燃える話、聞かせたからには責任取ってもらわねえとな?」


「そうだね。実体化して楽しくお酒を飲むのは心にも潤いを与える。是非とも話を続けてほしいな」


 シルフィ、ディーネ、ノモス、ドリー、イフ、ヴィータの目の色が変わった。なんかどこぞの覇王様的なオーラまで漂ってる気がする。


「元々必要ならそうするつもりで相談したんだ。そんなに怖い目をしないでも必要なら相談を続けるから落ち着いてくれ」


「そういえばそうだったわね。裕太がいきなり魅力的なことを言って解散しようとするから、焦っちゃったじゃない」


 シルフィが珍しく頬を赤らめている。眼福だ。


「うむ、裕太、話をつづけるぞ。酒島と言ったな? どうするつもりなんじゃ?」


「んー、そこまで明確な考えがある訳じゃないから相談してるんだけどね。えーっと、今のところ考えているのは、酒島に限り俺に気を遣わないで好きに開発していいよってことと、酒島にくる精霊は酒島以外は利用禁止ってかんじかな? 別に酒島って名前を付けたけど、酒以外にも利用して構わないよ」


 自由にしていいって言ったってどうせ酒関連で埋まることになるだろうから、酒島ってつけただけだし、酒島内での発展なら限界があるから、精霊がほしい施設を勝手に作ってくれても構わない。完成したら俺も遊びに行くのが楽しみだ。


 あと、酒島以外を利用禁止にしたのは、沢山の精霊が地上におりてきてのんびりした雰囲気が崩れるのが嫌だからだ。


 あっ、狭い土地の有効利用で、タワーマンションみたいなのを建てられたらそれはそれで怖いな。うっかり倒れたり落ちてきたら洒落にならん。


「酒島に建てる建物は三階建て以内でお願い。くれぐれも酒島が沈むようなことにならないようにしてね」


「ふむ、それだけ自由に扱わせてくれるんじゃな。じゃが、酒島と言ってもまだ醸造所ではエールしか作れん。島が完成しても酒がないのであれば意味がない。裕太、それほどの酒を仕入れられるのか?」


「急には無理だろうけど、マリーさんに魔法の鞄のことを話したから、お酒を買うだけの精霊貨があれば、大量に仕入れてもらうのは可能だと思うよ」


 マリーさんに魔法の鞄のことを話したから、そういう面ではかなり楽になったよな。


「ある程度の酒は確保できるということじゃな」


「たぶん大丈夫だと思う。あと、これは確定じゃないけど、ポルリウス商会にわがままを言えば、最低でもクリソプレーズ王国内の色々なお酒を集めてくれそうな気がする。まあ、迷惑をかける分、高値で買い取らないといけないから、精霊貨の必要量も増えるけど」


 精霊貨はクリソプレーズ王国でさえ全然足りてないんだし、大量に卸しても国外を含めれば当分値は下がらないだろう。もし価値がなくなったらまた別の物を探せばいい。


「いいじゃねえか。裕太、俺の家も酒島に持っていくか?」


「んー、そこら辺はイフとオニキスの相談次第かな? 利用客が限られている楽園でのんびりか、沢山の精霊が来そうな酒島で派手にやるかで決めればいいんじゃない?」


 楽園の利用客はシルフィ達と、ジーナ、ルビー達、偶にメルとメラルくらい……ああ、醸造所の精霊達もいるな。楽園でも微妙に忙しいかもしれない。まあ、酒島ができたらそっちにも流れるだろうし、そこまで忙しくはなならないだろう。


「うーん、どうせなら派手な方が面白いんだが……忙しくて酒が飲めねえってのも面倒だな」


 イフが珍しく真剣に悩んでいる。普段は美人なのに豪快な面の方が目立つけど、こうやって悩んでいると、きりっとした美貌が際立つ。


「とりあえず、酒島計画はすぐにはできないんだから、ゆっくりオニキスと話し合えば? あとは酒島をどう開発するかはシルフィ達で話し合って決めてくれ」


 計画に参加するのも楽しそうだけど、なんにも知らない方が遊びに行く時が楽しいからな。


「そうね、酒島……とても楽しそうだけど、やるからにはお店を任せる精霊が必要よね。それに、ルビー達だけだと手が回らないでしょうし、裕太の珍しい料理を再現できる料理人も必要だわ。……裕太、精霊王様達は次の次に遊びにくるのよね?」


 普通の食事に飽きて、なかなか食事を取らなかったシルフィが、料理人が必要とか言ってる。なんだかすごく嬉しい。


「うん、アルバードさんはそう言ってたよ」


「なら、それまでにある程度計画をまとめるわよ。ルビー達の話も聞いておいた方がいいわね。ディーネ、呼んできて。ノモス、エール以外のお酒はいつ醸造を始めるの?」


「お姉ちゃん、行ってくるわー」


「エールの生産は順調じゃし、余った精霊を使えば一種類は作れるな。問題はなんの酒を造るかじゃ。たぶん決めるのに時間がかかるぞ」


「それなら、ノモスとイフは醸造所に行って話をまとめてきてちょうだい。酒島のことを話せば少しは話を通しやすいでしょ?」


「ふむ、まあやってみるか」


「グダグダいう奴らは酒島に出禁って言えば一発だろ」


 ……なんかシルフィ達がテキパキと行動しだした。えーっと、俺はどうすればいいんだ? ……あれだな、用事がある時は呼んでもらうってことで退散しよう。

読んでくださってありがとうございます。

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