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三百五十一話 サプライズ

 楽園帰還2日目、俺はロマンを優先して重力石を楽園に設置することにした。俺の楽園がドンドン進化していくから楽しい。


「それで、重力石の高さを調整すればいいんじゃな。まずはどのくらいの高さに設定するんじゃ?」


 どのくらいの高さか……楽園に重力石を浮かべたいってだけで、どう配置するのかはそこまで決まってないんだよな。


 最初は高ければ高いほどロマンがあるかなって思ってたけど、見えない位置に浮かべてもあまり意味がない気がする。一番大きな重力石の島は一番高い位置に置くにしても、中規模の重力石の島はある程度見える位置に設置したいところだ。


 配置は大きな島を並べながら考えて、足場になる重力石はその島と島の間を繋ぐ感じで浮かべればいいか。特大の重力石が1つと、中くらいの重力石が2つ。小屋くらい建てられそうな重力石は結構ある。


 足場の重力石を並べて、合間に小屋くらい建てられそうな小規模の重力石を休憩所代わりに配置。なら大規模のと中規模の重力石の位置決めか。


「ノモス、そもそも重力石ってどうやって高さを決めるの?」


 それ以前に浮いてる理屈すら分からない。ファンタジーな鉱石だからで納得している状況だ。


「ふむ、重力石は鉱石の中で魔力が循環しておることは知っておるな?」


「……初耳です」


 当然知っておるよな的な顔で聞かれても知らないよ。あっ、ノモスがすごく面倒臭そうな顔してる。


「まああれじゃ、重力石は鉱石内で魔力を循環させて浮いておる。その魔力の流れを調整して浮く高さを決めるんじゃ。簡単じゃろ?」


「……ああ、簡単だな。よく分かったよ」


 子供にでも分かるような説明……たしかに理解はできたけど、説明する前から説明しても分からんじゃろって判断されるのは心にくるものがあるな。まあ……詳しい説明を求めても理解できる気がしないから何も言わないけどな。悲しくなってきたからさっさと重力石の位置を決めよう。


「……ノモス、重力石の高さの調整は何度でも可能なのか?」


「うむ、魔力の流れを調整するだけじゃから何度でも可能じゃな」


 それなら、おおざっぱに調整して、気に入らなかったら変更すればいいか。


「えーっと、一番大きな重力石は雲の上がいいな」


 海が近いからか、雨がまったく降らないくせに雲はポツポツあるんだよな。どうせなら雲を眼下に眺められる位置に特大の重力石を配置したい。


「それで、中くらいのは上から楽園の全体が見渡せる位置に1つ。その重力石と天辺の重力石の中間地点に1つって感じかな。あとは精霊樹の前を出発地点にして、それとローズガーデンが見渡せる位置にも小屋が建てられるくらいの重力石を浮かべたい」


 これでいいのかっていうくらいおおざっぱに決める。やり直しができるって素敵だよね。


「ふむ、重力石の高さは分かった。位置はどうするんじゃ?」


「位置は横に押せば移動させられるから、あとで微調整するよ。そういえば風で重力石が流されたりしない?」


 気がついたら重力石が生きている大地に流れてたってことになったら、大混乱だろうな。貴重な鉱石だからゴールドラッシュみたいに死の大地に人が集まったら最悪だ。


「設定次第じゃな。魔力を地面と結び付ければ風くらいでは動かん。じゃが完全固定は無理じゃな」


 設定って……重力石ってPC的なシステムなの?


「とりあえず風に飛ばされるのは面倒だから、位置が決まったら固定してほしいけど大丈夫?」


「うむ、数が多ければ手間だが、固定するぶんには問題ないぞ」


 雲の上まで足場が続くから、数は相当多いよな。


「固定作業はトゥルにもできる?」


「力の流れを細かく設定せねばならんから、まだ無理じゃろうな」


 無理なのか。それなら数が多すぎるかも。……いや、子供達だけで登ったりしたら危険だから、制限をつけるために楽園が見渡せる、中規模の重力石までしか足場を作らないのはありかもしれない。


「シルフィ、もしジーナ達が精霊樹の上あたりから落ちたとして、フクちゃんやマメちゃんの力で地面まで安全に下りられる?」


「……そうね、ゆっくり下ろすくらいなら大丈夫ね」


「雲の上から落ちた場合はどう?」


「力をかなり消耗するでしょうから、浮遊精霊クラスだと厳しいわ」


 それなら一番下の中規模の重力石までは足場を作って、登る条件は周囲に最低でもフクちゃんとマメちゃんがいることって条件を付ければいいか。それよりも上はシルフィに運んでもらうことにしよう。足場よりも大きい小規模な重力石は、お茶をする場所と雰囲気を高めるための配置って感じでいいな。


「あー、ノモス……ある程度数を減らすことにしたけど、それでも数は多いと思う。大丈夫か?」


「数が多くても手間がかかるだけでできんことはない。とりあえず浮かべてみたらええじゃろ」


 そういえばできないとは言ってなかったな。


「じゃあまずは一番大きな島を雲の上に浮かべるから、そこで固定してくれ。あっ、上空の聖域の範囲はどうなってるんだ?」


「精霊樹の少し上くらいまでが聖域の範囲じゃな」


「なら、上空に島を浮かべても精霊は実体化できないのか。でも、中規模って言っても結構な大きさの重力石だから、あんまり地面と近い位置に浮かべても圧迫感があるんだよな」


 どうしたものか……。


「裕太が領域を広げたら、それに合わせて聖域が広がると言ったじゃろうが。上空も裕太の領域と示すことができるなら聖域は広げられる」


 そういえば聖域になった時にそんな感じのことを聞いた気がする。そうなんだ、横だけじゃなくて縦でも聖域は広げられるんだな。


「重力石を浮かべれば領域だって示せるのか?」


「うむ、問題なかろう」


「それなら、小さな重力石をいろんな場所に散らばらせればそこも聖域になるの?」


 迷宮都市やベリル王国まで聖域を広げて……広げて何をすればいいんだろうな。


「聖域がそう簡単に増やせる訳なかろう。横に広げるには最低でも土地を裕太の領域にせねばならん」


「なるほど」


 色々制限があるんだな。重力石をバラまいて、空はみんな俺のものって訳にはいかないらしい。まあいいや、上空の重力石まで聖域化できるなら十分だ。


「じゃあ、まずは一番大きな重力石を出すね」


「いや、1つずつ出して高さの調整するのは時間もかかるし面倒じゃ。あるていど一気に出してしまえ」


 勝手に重力石は定められた高さに移動するから、1つずつ出して上下に移動するのを追いかけるのはたしかに面倒だな。そうなると上下する時に重力石同士が接触する可能性もあるから、ズラしながら取りだそう。


 ***


「おお、驚いてる。ジーナ達が驚いてるよシルフィ」


 楽園が見渡せる島を設置して下を見ると、こちらに気づいたジーナ達が指をさしたり手をふったり、飛び跳ねたりと興奮しているのが分かる。サプライズ成功だな。


「ふふ、メルやディーネ達、ベル達に内緒にしてもらった甲斐があったわね。満足?」


 そうストレートに聞かれると恥ずかしくなる。無理矢理内緒にした、言わば強制サプライズだから大人げない気がしてきた。でも、あの時は絶対に驚くぞって気持ちになっちゃったんだよな……。


「う、うん、満足かな?」


 シルフィが不思議そうに俺を見ている。でも、今更大人げなかったかもとか言いだす訳にはいかなから話を変えよう。


「ノモス、小型の重力石は精霊樹の木陰とローズガーデンに設置して、この島と繋がるように足場の重力石をお願い」


「うむ、任せておけ」


 ノモスに頼んだあとにシルフィに頼んでジーナ達の元に連れていってもらう。


「師匠、あれが重力石なのか? シルフィが島を浮かせているわけじゃないんだよな?」


「お師匠様、あの島には私達も登れるんですか?」


「おれものぼりたい!」


「キッカも!」


「重力石って……私が知ってるのと違います。なんで島が……」


 ジーナは少し疑問に思っているようだが、子供達は大興奮だな。普段、どちらかというと冷静なサラも島に熱い視線を向けている。


 メルは重力石のことは知っていたが大きさに驚いているみたいだ。貴重な鉱石らしいからもっと小さい重力石を想像していたんだろう。


「ジーナ、あの島は重力石って鉱石の島だから自然に浮かんでるんだ。それと、あの島までは風の精霊が一緒に居れば自由に登れるようにするつもりだから、楽しみにしてくれ。今のところなにもないけど見学してみる?」


「「いく!」」


 素晴らしく息の合った返事が返ってきたので、シルフィにお願いして島に連れて行ってもらう。島に到着するとなにもない平坦な島でも嬉しいらしく、フクちゃん達と一緒にはしゃぐサラ達+メル。


「なあ師匠、すごいけど、この島でなにをするんだ?」


 はしゃぐ子供達を見守っていると、ジーナから質問がきた。植物を育てられるようにしたり、別荘とかお茶会とか、なんとなくは考えているけど、明確なビジョンはないな。ただ、自分の拠点に空飛ぶ島があったらカッコイイってのが一番の理由だ。


 だいたい、空に浮かぶ島での生活って微妙に不便そうだよね。そのうえ、楽園の土地もまだまだ余っているのに、島を本格的に開発ってのも微妙な気がする。とりあえずはある程度環境を整えて、精霊達の遊び場って感じかな。


 あっ、中間の島を精霊達の宴会場にするのもいいかもな。昨日の宴会もザワザワした音が微妙に家まで届いていた。空の上なら精霊達も思いっきりはしゃげるし、ちびっ子達の睡眠の邪魔にもならない。


 いや、宴会場よりも酒関連を中間の島に集めるのはどうだ? さすがに醸造所を移動させるのは厳しいが、大人の精霊が気軽に利用できる飲み屋街的な場所……思いつきだけどいいかもしれない。


 アルバードさんの頼みで精霊が来訪する子供精霊が増える。そうなれば付き添いの精霊も増える。需要はあるか? 中間の島に限定して来場制限の撤廃……いや、撤廃はヤバそうだ。要検討だな。


 まあ、中間の島に酒関連を限定すれば楽園の至る所に酒場ができるって事態も防げるし、子供を気にせずにお酒が飲める場所になる。島の名前は酒島だな。


 問題は……イフにリクエストされた家だな。あれは、どう考えても酒島にピッタリの家だ。でも一軒だけ酒島にポツンってのは寂しいな。いや、移動できる家なんだから、気になったら好きなところに移動させればいいだけか。ふむ、ちょっとシルフィ達と相談しておいた方がいいな。


「師匠?」


「ん? ああ、すまないジーナ。少しいい考えが浮かんだから夢中になってた。島の利用法はいくつか考えているけど、確実に決まったのはないな。この上にも2つ島が浮いてるから、ジーナもなにか島でやってみたいことがあれば言ってくれ」


「えっ、この上にも島があるの?」


 素で驚くジーナ。そういえばまだ言ってなかったな。サプライズを強制しなくても普通に驚かせてしまった。


「うん。この島と同規模の島が一つと、それよりも大きな島が雲の上に浮いてるね」


 ……結局一番上の島まで見学に行くことになったが、到着するとベル達が楽しそうに追いかけっこをしていた。パトロールをお願いしてはいたけど、雲の上の島をよく発見できたな。ベル達のパトロール、侮れないぞ。

読んでくださってありがとうございます。

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