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三百四十九話 尊敬

 大宴会の見回りで飲酒可能エリアを見て回り、飲酒不可エリアでちびっ子達と戯れる。そろそろ子供は寝る時間なんだけど……精霊は無理して寝る必要がないんだよな。サラ達だけ先に寝かせるか?


「じゅえるぼっくすやー」「キュキュー」「や、やー」「ククー」「じゅえるぼっくすだぜ!」「……」


 ……ベルがクレープを一口かじり、俺の真似をして騒いでいる。異世界の精霊にグルメレポーターの技を広めるのはありなんだろうか? ファンタジー世界だし、目や口から光線を出すようになったらヤバいな。ベル達と戯れたあと、サラ達が座っているテーブルに移動する。


「サラ、マルコ、キッカ、デザートを食べてないみたいだけど、どうしたの?」


 3人のテーブルの上には飲み物しか置いてない。


「お師匠様、私達は料理やデザートを十分に頂きました」


「おなかいっぱいだ」


「キッカ、たくさんたべたの」


 もう食べ終わったあとだったか。よく考えたら宴会が始まって結構時間が経っている。お腹もいっぱいになるだろう。ならいまだにデザートコーナーに群がっているちびっ子達はどうなんだと思うが、実体化していても精霊だから、俺には理解できない何かがあるんだろう。


「そっか、しっかり食べたならいいよ。今日は宴会だから少しくらい夜更かしをしてもいいけど、無理をせずに眠くなったら休むようにね」


「でも、これだけ大きな宴会だとお片づけをしないと……」


 サラ達はお片付けを手伝ってくれるつもりのようだ。嬉しいけどまだまだ判断が甘いな。いまだに醸造所からエールが運ばれてきているんだ。確実に朝まで飲み明かすから、サラ達が起きている間に宴会は終わらないよ。


「サラ、気持ちは嬉しいけど、朝までつき合わせる訳にはいかない。俺も途中で切り上げるから、明日、起きてから片づけを手伝ってくれ」


「朝まで続くんですか?」


 サラが驚いた顔をしている。家でやる宴会は、酒樽を制限しているから飲み終わったらお開きだけど、今回は醸造所の補充があるから終わらないんだ。


 醸造所の精霊達が他の精霊に分けるお酒まで飲み干さないかが心配だが、今までも醸造所をやってたから配分は分かってるはずだ。しかも、楽園では他の聖域ではできない大規模な酒造が可能なんだから余裕はあるよな。


「たぶんね。俺が起きた時も宴会が続いてたら、終わらせる予定なんだ」


 俺の言葉にサラとマルコとキッカが相談しだす。マルコはもう少し時間が経てばプリンが食べられるって言ってるし、キッカはルビーにクレープを焼いてもらいたいらしい。


 お腹いっぱいっていってたけど、休憩していただけなんだな。アグレッシブに成長してくれて嬉しい……のかどうかは疑問だが、いつの間にか太ってはいないがしっかりと肉付きがよくなっているのは素直に嬉しい。


 少なくともスラムで生活させているよりは、いや、一般家庭よりも食生活は豊かってことだな。他の面は……服を買い忘れたりしてるし、ギリギリ及第点に届いているように祈ろう。


「分かりました。マルコとキッカと一緒にもう少しこの雰囲気を楽しんだら休みます」


 弟子の成長を実感している間に、予定が決まったらしい。無理して遅くまで粘る雰囲気じゃないし、大丈夫だろう。


「分かった。俺はエメ達に話を聞いたあと、お酒の方に移動するからね。お休み」


 サラ達とお休みの挨拶をして、テーブルでご飯を食べているエメ達。配膳とか色々と手伝ってもらってたから、今ご飯を食べているようだ。


「エメ、サフィ、シトリン、オニキス、宴会の準備手伝ってくれてありがとう。ここに居るってことはお酒は飲まないの?」


「あっ、裕太の兄貴。村で生活してるんだから宴会のお手伝いをするのは当然だよ。お酒はルビーが落ち着いたらみんなで乾杯するんだ!」


 エメが元気に飲んでいない理由を教えてくれた。長い間一緒に行動していたからか、5人の結束力は高いらしい。


 俺の日本の友人達なら確実に先に飲み始めてるな。その上で作業している場所にきて、酒を飲んでいる姿を見せびらかしにくると思う。精霊が素晴らしいのか、俺の日本の友達の質が悪いのか、悩みどころだ。


「他の店はともかく、宿の方はどうするの?」


「今日は誰も宿に戻ってこないので、偶に様子を見にもどれば大丈夫です」


 サフィが自信満々に言う。それでいいのかとも思うが、たぶんサフィの言った通りなんだろう。沢山の集まりに興奮したのか、ベル達もかなりはしゃいでるもんな。


「了解。ルビーも含めてエメ達は手伝いで飲むのが遅れたよね。お礼に好きなお酒を3樽追加するから、飲みたいお酒が決まったら言ってくれ」


 結構な量の酒樽を放出したからまだ残ってるとは思うけど、これくらいの優遇は構わないだろう。


「ありがとう。じゃあ私はなにがどれくらい残っているか偵察してくるわね」


 オニキスが残っているお酒の量を確認しに飛んでいった。好きなお酒を飲めばいいと思うんだけどな。唯一しゃべっていないシトリンは……コクコクと頷きながらムグムグしている。元々無口だけど、今は食べるのが優先らしい。


「えーっと、じゃあ俺はあそこでお酒を飲んでいるから、決まったら言いにきてくれ」


 エメ達と別れてシルフィがお酒を飲んでいるテーブルに移動する。いつの間にかディーネとイフが合流して飲んでるな。グイグイ飲むメンツだし、速攻で撃沈されそうで怖い。ジーナとメルも心配だし、意志を強く持って飲むペースを調整しよう。




 ***




「はーい、宴会はお開きの時間です。みなさん、近くの空樽をこっちに運んできてください」


 朝起きて外に出ると、予想通りシルフィ達も含めて精霊達はいまだにお酒を飲んでいた。それにつられたちびっ子達も楽園を所狭しと飛び回って遊んでいる。ルビー達は……お店があるから先に切り上げたみたいだな。


 今更だけど精霊って疲れないのか? いや、シルフィがベル達のお使いについていった時は疲れてたな。精神的疲労は感じるっぽい。


「裕太、酒樽は醸造所で使いたいんじゃが?」


「あっ、そうか。酒樽にお酒を詰めなおすなら俺が収納するのは不便だよな。それなら酒樽はノモスの方で管理してくれ」


「うむ。余っておる酒の処理も任せておけ」


「分かった……えっ?」


 ノモスが自分に都合のいいことを言って去っていった。まあいいか。潤沢なのはエールだけだろうし、他は残っていても少しだろう。


「俺はテーブルや椅子を収納するから、サラ、マルコ、キッカ、メルは使った食器をこのテーブルに集めてくれ。さっさと済ませて朝食にしよう」


 俺の指示でサラ達が散らばる。宴会をしていた精霊達も宴会を止めて片づけを手伝いだしたからすぐに終わるだろう。


 ジーナは……お昼くらいまで寝かせておくか。メルのペースに釣られて、ベロンベロンに酔ってたから起こすのは可哀そうだ。ジーナを運ぶ時に手伝ってくれたメルは平気な顔をしていたから、ドワーフは女性でもお酒が強いんだな。


「ゆーたー、おはよー」


 俺達が片づけ始めたのに気がついたのか、遊んでいたベル達がこっちに突撃してきた。


「みんな、おはよう。宴会は楽しかった?」


 突撃したベル達に聞いてみると、満面の笑みで俺が寝ていた間の楽しかったことを口々に教えてくれる。ベル達の興奮した様子から楽しかったことは伝わってくるが、みんなで一斉に聞かせてくれるので、内容がよく分からない。


 聖徳太子バリのスキルがほしい……いやそれでもレインやタマモ、ムーンの言葉は分からないから、動物の言葉が分かるお医者さんのスキルも必要だな。異世界って奥が深い。


「おてつだいー」


 興奮するベル達を撫でくり回して落ち着かせると、ベル達がお手伝いを申し出てくれた。今度はお礼を兼ねて撫でくり回す。


「ありがとう。じゃあ、サラ達が使い終わった食器を集めているから、ベル達も一緒に頼む」


「はーい」と元気にお返事をして散らばるベル達。これなら速攻で片づけは終わりそうだ。俺もさっさとテーブルと椅子を収納しよう。


 ***


「最後はここ、泉に浮かんでいる宝玉とならんで、この楽園のシンボルになる精霊樹だね」


「本当に精霊樹なんですね……」


 精霊樹を見上げて呆然とするメル。片付けと朝食を終えて、メルとメラルに楽園を案内している。その案内の一発目に、泉に浮いている聖域の要の精霊王様達が作った玉で度肝を抜いて、最後に精霊樹で〆る。自画自賛だけどなかなかの案内プランだよな。


 泉の中心に浮かぶ玉は目立つから遠目でメルも見ていたけど、ドヤ顔で精霊王様達が力を集めて作った玉なんだってメルに説明したら、口をポカンと開けて驚いていた。ちょっと属性の杖を支える岩の台座をみて、微妙な顔をしていたのをのぞけば掴みは完璧だったな。


 そのあとは畑、水路の魚、果樹園、椿の森、野生の森、モフモフキングダム、鳥小屋、コーヒーの森、芝公園、ローズガーデン、味噌蔵、醤油蔵、水田を、俺とサラ達で自慢げに説明した。


 ……自慢げに説明したのは俺だけだな。サラ達やベル達はメルとメラルに分かってもらおうと、微笑ましくなるくらいに一生懸命に説明していただけだよな。


 ローズガーデンではサラ達もちょっと自慢げだったけど、あれはドヤ顔じゃなくて純粋に頑張ったから褒めてほしいって感じだったから別だ。


 俺は……自慢げに高価なものを見せびらかす嫌な奴っぽくなってた気もする。反省しないと駄目なんだけど、俺が説明する度にメルとメラルが、死の大地に果樹園が! 動物が!と、とても驚いてくれるからついつい自慢してしまう。


 精霊樹をのぞいて拠点の説明を終え、精霊の村に移動する。まだまだ施設が少ないのですぐに説明は終わってしまったが、飛び回るちびっ子達と戯れ、買ってきたお土産や雑貨、絵の道具やベッドなんかも渡せたので悪くない案内だったはずだ。


「楽園を見て回って分かりました。お師匠様は死の大地に自然を蘇らせるつもりなんですね。……すごいです。お師匠様の弟子になれたことを誇りに思います」


 呆然と精霊樹を見上げていたメルが、澄んだ瞳でジッと俺の目を見ながら言う。今までの驚きや明るい感じのトーンではない、なんだか厳かな声色だ。でも、俺はそこまで壮大な計画は立ててないので、そんなに真面目に受け取られると困る。


 ほどほどでいいんだ。弟子には尊敬されたいとも思うが、薄っすらとお師匠様ってすごいなーって思ってくれれば十分なんです。もう少し尊敬の度合いを落として、ちょうどいい塩梅に……。


「え、えーっとね……そう、死の大地を蘇らせるのは簡単なことじゃない。俺ができるのは死の大地に……えーっと、自然が蘇る切っ掛けを作るくらいかな。大したことじゃないよ」


「そうですよね。簡単なことじゃありませんよね。でも、その切っ掛けを作れるだけでもとてもすごいことだと思います!」


 あれー……小さなことしかできないって言ったつもりなのに、メルからの尊敬度が増したような……言葉のチョイスを間違えたのか? シルフィ、助けて。

読んでくださってありがとうございます。

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