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三百三十九話 探索終了

 101層で迷宮のコアと仲良く?なって、素材を集めながら迷宮から帰還することにした。重力石の島と飛び石を回収して、95層から96層はベル達の宝探しゲームで片っ端から宝箱を回収。次に海で神力草と魚介を確保して、時間もあったので魔力草と万能草も確保できた。


 途中で迷宮の翼とマッスルスターが一緒に頑張っているのを見たが、ギルドマスターが苦労しているって言ってたし、会ったら面倒なことを頼まれそうだから気付かなかったふりをした。


「じーなたちみつけたー」


 ベルがジーナ達の場所を指さす。16層に入った時点でシルフィがジーナ達がいることを教えてくれていたので探してはいたが、ベルの指をたどっても森と一体化していて人が居ることすら分からない。さすが風の精霊ってことなんだろうな。


「シルフィ、他の冒険者に発見されないようにジーナ達のところに行ける?」


 別に飛べるのは知られているから見られても構わないんだけど、俺に気を取られている間に魔物に殺されたりしたら、さすがに申し訳ないから。


「そうね、発見されないのは大丈夫だけど、あの子達がトロルを狙ってるみたいだから、終わってからの方がいいわね。戦いが見える位置まで移動する?」


 ふむ……ジーナ達が普通にトロルを倒している姿は見たことがあるが、ちょうどいいからどれくらい成長したのか見てみよう。シルフィにお願いすると、ジーナ達とトロルがバッチリ観察できる位置に移動してくれた。


 ……えーっと、トロルはオークをボコっていて、ジーナ達が背後にいることにまったく気がついてないな。なんでトロルは他に冒険者がいるのに、オークをボコってるんだ? 美味しいからか?


 ジーナ達は周囲の索敵も完璧だな。フクちゃんとマメちゃんは左右で警戒態勢。ウリはジーナ達の正面に陣取ってる。必ずみんなを守るぞって意気込みを感じる体勢だ。プルちゃんはサラの頭の上で待機か。護衛のディーネは……少し離れた場所でふわふわと浮かんでジーナ達を見守っているようだ。


 おっ、シバが単独でトロルのところに向かった。えっ? なんでトロルが倒れるの? 一瞬火が出たのは見えたけど、頑丈なトロルはあれくらいでは倒れないよね? たしかフクちゃん達の攻撃を何度も耐えていたはずだ。火と風の違いはあるが、同じ浮遊精霊でそこまで威力に差があるのか?


「ふふ、ジャイアントトードを倒した時もそうだったけど、あの子達は効率がいい倒し方をするわね」


 シルフィが感心したように言うけど、俺にはさっぱり分からない。


「どういうこと?」


「私に聞くよりもジーナ達に直接聞いた方が、楽しいんじゃない? きっと一生懸命教えてくれるわよ」


 それもそうか……いや、ちゃんと見ていて、なにをしたのか分からなかったってのも師匠として恥ずかしい気がする。


(えーっとシルフィ、ジーナ達に聞くよりも、師匠として褒める感じでジーナ達に接したいから、なにがどうなったのか教えてください)


 小声でシルフィに頼み込むと、そこまで見栄を張らなくても裕太はジーナ達から尊敬されているわよって前置きして、倒した方法を教えてくれた。なんかとっても恥ずかしい。でも、俺は見栄を張りたい。そして弟子の攻撃方法がエグい。


 ジーナ達にどう声をかけるかを考えたあとに、ジーナ達のところに運んでもらう。あっ、フクちゃんとマメちゃんがこっちを見てパタパタとはしゃいでいる。その動きに気がついたウリ達もこちらを発見し、そこにベル達が突入してお団子状態になる。可愛いけど、迷宮内で油断しすぎな気がする。


 ベル達が合流したことでジーナ達も俺を発見した。俺を発見するまでの行程が、ドミノ倒しみたいに順繰りになってちょっと面白かったな。


「みんな、お疲れ様」


 師匠的な笑顔でジーナ達に声をかける。


「お師匠様だ!」


 キッカがピョンピョンと跳ねながら言う。レベルと風の靴の影響か、子供とは思えない跳躍力だ。戦闘が終わったばかりだからか、普段よりもテンションが高いな。


「師匠、見てたんだな。どうだった?」


 ジーナが少し不安そうに聞いてくる。恥を忍んでシルフィに聞いておいてよかったな。ここで倒し方が分からなかったって言うのはちょっと恥ずかしい。


「うん、ジーナ達を見つけたのが戦う直前だったから、上から見させてもらったんだ。火を凝縮して耳から脳を焼くなんて、よく思いついたね。あれならトロルでも一発で倒せるよ」


 俺はなにも分からなかったけど、シルフィから教えてもらったことを知ったかぶりして伝える。シルフィのそこまで見栄を張らなくてもって視線には気がつかないフリをするのがポイントだ。


 しかし、エグい攻撃だよな。なんでだろう? 首を落とすのも方法的にはエグいはずなんだけど、ジーナ達の魔物の倒し方の方が怖い気がする。徹底的に弱点を突く方法だからか?


「ああ、トロルは頑丈だから、どうやったら素早く倒せるかをみんなで考えたんだ」


 少し照れ気味にジーナが言う。……なんかいいことを言ってるような気もするけど、実際には若い美女と幼い子供達が、効率よく魔物を倒す方法を考えたって言ってるんだよな。間違った事ではないんだけど、冒険者の業の深さを感じてしまう。でも、安全に魔物を倒すことはいいことなんだから褒めないとな。


「みんなで考えて、その考えたことをちゃんと実戦で生かせたのはすごいね。それにシバが攻撃に向かっている間に、ちゃんと全員で周囲を警戒して油断してないところもよかった」


 褒めたいけどたったあれだけの時間で、その攻撃方法すら分からなかった俺にはこの程度の誉め言葉が限界だ。でも、この程度の誉め言葉でもジーナ達には嬉しかったらしく、ニコニコ顔だ。理由を聞いたら戦闘で褒められたのが久しぶりだったからだそうだ。


 そういえば戦闘に付き添うことが、ほとんどなくなってたな。大精霊の護衛があれば確実に安全だって任せっきりなのは失敗だったな。メルとの約束は明後日の昼……ジーナに聞いたところまだ午前中らしいから、2時間くらいジーナ達の戦闘を見学してアドバイスすることにしよう。


 それでも夕方になる前に迷宮を出てマリーさんのところに顔を出せるはずだ。ああ、ディーネに海で捕った魚介類を凍らせてもらおう。


 ***


 迷宮から脱出した。弟子達の戦闘に付き添う2時間……16層で出る魔物ではジーナ達の相手にならず、ただ迷宮での出来事を話しながらのピクニックみたいなもので、アドバイスもなにも出来なかった。


「えーっと、俺とシルフィはマリーさんのところに寄っていくから、ジーナ達はベル達と一緒に宿に戻っていてくれ」


 飛んで移動すると早いなーっと騒いでいるジーナ達に声をかける。


「分かった。夕食は宿で食べるんだろ? マーサさんとトルクさんに伝えておくか?」


 さすが食堂の娘。先に伝えておけばトルクさんも段取りがしやすいだろう。


「うん、頼むよ。夕食の時間には戻るから部屋の方で食べられるようにしておいて。あっ、ディーネはどうする? ここで送還する?」


 周りにジーナ達がいると、精霊に話しかけるのも小声にしなくていいから楽だ。


「んー、お姉ちゃんも夕食を食べて帰るわー。そしてお酒を飲むのよー」


 まぶしい笑顔だな。お酒が出されることをまったく疑っていない表情だ。まあ、ジーナ達の面倒をみてくれたんだし、そのくらいの役得は当然か。ノモス達は……明後日帰るんだから、ディーネが戻る時に伝言しておけばいいだろう。俺の部屋で大精霊全員の宴会は辛いからな。


「分かった。でも、シルフィと一緒に2樽で勘弁してくれ。楽園に戻ったら宴会するからな」


「んふふー、分かったわー。なんのお酒を飲もうかしら。蒸留酒は楽園で飲むとして、シルフィちゃんはなんのお酒にするー?」


 いかん、シルフィとなんのお酒を飲むか話し始めてしまった。


「とりあえず俺とシルフィはマリーさんのところに行くから、お酒のことは宿に戻ってから話し合ってくれ」


 赤・白・ロゼ・ワインかエールかミードか、迷宮都市のお酒かベリル王国のお酒かと楽しそうに話す2人を押しとどめ、ジーナ達と別れてマリーさんの雑貨屋に向かう。


 ***


「裕太、左後ろからよ」


 シルフィの声に反応してスッと左後ろに振り向くと、物陰からこっそりとソニアさんが出てこようとしていた。俺が迷宮から出たら報告がいくようになってるって言ってたから、俺がこっちに向かっている情報も手に入れて隠れてたんだろうな。


 なんでそこまでして驚かせたいのか分からないが、こんなこともあろうかと、ソニアさんがこっそりと近づいてきたら教えてくれるようにシルフィに頼んでおいた。前回のようにはいかないのだよ。


「ソニアさんこんにちは。マリーさんとお会いできますか?」


 俺が急に振り向き、目が合ったことで固まってしまったソニアさんに、笑顔で声をかける。あっ、駄目だ。爽やかな笑顔を意識しているはずなのに、自分でも分かるほどに顔がドヤってしている。


「あ、あら裕太様、迷宮からお戻りになられていたんですね。ようこそおいでくださいました。倉庫に移動しなくても大丈夫ですか?」


 どうやら今回のことはなかったことにしたいようだ。物陰から出ている時点で苦しいとは思うが、さすがにそこまで親しい訳じゃないソニアさんに、追い打ちをかけるのは駄目だろう。その引きつった笑顔だけで十分に満足です。


「今回も卸す魔物が大量にありますので、あとで倉庫に行くことにはなると思います。でも、その前にいくつかお話したいことがあるので、こちらで少しお話しできたら助かります」


「畏まりました。応接室にご案内いたします」


 ソニアさんの案内で奥の応接室に向かう。


「ところで裕太様。これは他の方から聞いた他愛もない質問なのですが、裕太様は可愛らしい乙女の悪戯に、能力を活用して対抗する殿方が居たとしたら、どのように思われます?」


 これは嫌味なんだろうか? 俺が不自然に振り向いたことから、精霊かスキルの力で居場所を察知したことを理解して言ってるんだろう。可愛らしい乙女ってところに疑問を感じるが、美人であることは間違いないので、ツッコミはいれないでおく。


 そして、ここで答えを間違えると、果てしなく続くソニアさんとの抗争の幕が……いや、立場的には俺の方が強いからそれはないな。っていうか、大のお得意様に対して悪戯を仕掛けるソニアさんの神経が怖い。


「けしからん奴だと思います」


 応接室に通され、マリーさんを呼びに行くソニアさんの後姿を見て思う。あの答えは正解だったんだろうか?

読んでくださってありがとうございます。

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