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三百三十五話 ボス戦

 ポイズンドラゴンを倒し、天辺にいた3匹のグリーンドラゴンもベル達と協力してボコボコにした。99層も似たような配置だったので、敵を倒しつつ宝箱を回収して進む。


 99層にもいたポイズンドラゴンは、シルフィに頼んで迂回して進んだ。98層のポイズンドラゴンの喜びようを考えると、迂回するのもなんだか申し訳なかったが、戦っても危険物が増えるだけなので勘弁してほしい。少し手抜きをした結果、特に波乱もなく100層におりる階段に到着した。


「うーん、シルフィ、50層のことを考えても、100層のボスは俺とベル達では勝てないだろうから、イフにお願いしようかなって思うんだけどどうかな?」


「……たしかに98層からドラゴンになったし、最低でも属性竜くらいはでるでしょうけど、せめてどんなボスが出るのか確認してから決めたら?」


 シルフィが少し呆れたように言う。でも、50層を突破してからかなりレベルが上がったけど、いまだにファイアードラゴンに勝てる気がしない。


 節目の100層で50層よりも弱いボスが出る訳ないんだから、最初っからイフに任せた方が気が楽だ。でも、最低でも属性竜って言ってたよな。属性竜よりも上がいるってことか?


 ……節目の100層だしシルフィの言う、属性竜の上が出る可能性も否定できない。俺にとっては洒落にならない魔物だけど、シルフィは平気な顔をしているしたぶん大精霊なら問題ないんだろう。なんていうか、いまだに大精霊の強さの上限が見えないな。


「イフにお願いするって決めたら、今から100層に挑戦できるけど、もし俺が戦う可能性があるなら気疲れしているし1泊してからになる。俺では勝てなさそうなボスに、無駄な時間を使うのはどうかなって思うんだ」


「……たしかに休むには微妙な時間ね」


 そうなんだよ。96層からのステージは、空に島が浮いているって特性からか、面倒ではあるが空間自体は狭い。そのうえ重力石の足場と島があるだけなので、調べる範囲も少ない。そういう訳で、まだまだ寝るには早い時間なんだよな。


「まあ、今回はイフに任せて、裕太でも倒せそうだったらジーナ達の中で誰かを連れてきて、再挑戦すればいいんじゃない?」


 シルフィも微妙な時間がもったいないと思ったのか、イフに任せることを賛成してくれた。でも、再挑戦か……俺と相性がよさそうならそれもいいけど、ほぼ可能性はないだろうな。


「うん、じゃあイフを召喚するね」


 イフを召喚すると言うとベル達が大喜びする。イフは面倒見がいいからちびっ子軍団に人気なんだよな。


「おっ、迷宮か? 俺を迷宮で召喚したってことは出番なんだよな?」


 一瞬で状況を判断したのか、イフが獰猛な笑顔で俺を見つめる。美人で引き込まれそうな笑顔ではあるけど、ここでそうじゃないって言ったらかみ殺されそうな気がする。肉食獣の気配と色っぽさ……女豹って例えられる女性はこういう感じなのかもしれない。


「ああ、今から100層に潜るんだけど、ほぼ間違いなく強いボスが出てくると思う。頼んでいい?」


「おお、ボス戦か。いいじゃねえか。任せときな!」


 ボス戦と聞いてテンションが上がるイフ。今すぐ走り出しそうな雰囲気だ。


「えーっと、よろしく?」


「おう!」


 少しだけボスが可哀そうになった。迷宮に意思があって、今の光景を認識できていればチートだって騒いでそうだ。俺だったら確実に逃げるもん。


 俺とイフとの話が終わったと判断したベル達がイフに群がり、ご挨拶とボス戦の応援をはじめた。その中でもフレアは尊敬するイフのボス戦ってことで、なにを言ってるのか分からないくらいに興奮している。


「裕太、行こうぜ!」


 ベル達を乱暴に撫でくり回しながら、階段をおりていくイフ。普段ならもう少しベル達に構うんだけど、待ちきれないようだ。まとわりつくベル達を抱えたまま飛んでいくイフを追いかける。


「……ねえシルフィ、精霊って体をほぐす必要があるの?」


 イフ達と追いかけて100層におりると、立派な扉の前でイフがストレッチをしている。見よう見まねでベルとフレアも参加しているが、効果のほどに疑問がある。可愛いけどね。


「実体化しているなら意味はあるけど、今の状況だと肉体的には意味がないわね。たぶん、やる気が満ち溢れているから体を動かさずにはいられないのよ」


「なるほど」


 そういうことなら、ここでのんびりもしてられないようだ。簡単に打ち合わせをしてさっさとボス部屋に入ろう。


「俺とベル達は見学。シルフィには俺の護衛をしてもらってイフがボスを倒すって感じでいい?」


「おう!」


「分かったわ」


 簡単に打ち合わせが終わったのでボスに挑戦することになった。立派な扉をくぐると、96層から99層の頂上とよく似た雰囲気の空間にでた。たぶんここも空に浮いている重力石の上なんだろうな。


 しかも広さも桁違いで、ポイズンドラゴンが居た島の5倍以上は軽くありそうだ。ボス戦のために用意された天空の闘技場なんだろう。階段が設置されてなければ是非とも持って帰りたかった。


「おお、ライトドラゴンとダークドラゴンが相手かよ。これなら少しは楽しめるな!」


「そうね。でも、属性竜が2匹ってことは、迷宮でも竜王クラスのドラゴンは用意できないのかしら? 少し拍子抜けね」


 イフとシルフィの声に島の奥を見ると、白く光り輝く巨大なドラゴンと周囲の光を吸い込み闇に染めるような黒い巨大なドラゴンが見えた。


 どうやら光属性竜と闇の属性竜の2匹がボスってことみたいだな。じゃっかん厨二臭いが、光と闇って聞くとかなり強そうだ。そしてシルフィ、属性竜で十分だからね。拍子抜けとか竜王とか、変なフラグを立てないでほしい。


「じゃあ行ってくるぜ!」


 俺と2匹の属性竜が反応する前に、イフが素敵な笑顔で2匹のドラゴンに向かっていく。とりあえず俺達はここで待機ってことでいいんだよな? 


「いふ、かっこいいー」「キューー」「たのしそう」「クーー」「らくしょうだぜ!」「……」


 ベル達も完全に応援モードだし、俺もここからしっかりと応援しよう。ただ、イフは精霊なので見えないから、戦闘が始まったらこっちに飛んできそうなのが厄介だ。


「シルフィ、風壁をお願い。それと2匹いるならイフが片っぽと戦っている間に、もう片っぽがこっちにきたらどうしよう? シルフィが倒してくれる?」


「んー、一応風壁はかけておくけど、戦うのを楽しみにしているイフが、こっちにドラゴンを渡すとは思えないわね。たぶん見ているだけで終わるわよ」


 なるほど、あれだけ嬉しそうだもんな。楽しみが半分になるようなことをするはずはないか。心配がないならのんびり観戦させてもらおう。


「あっ、シルフィ。ある程度素材は手に入れたいから、丸焦げにするようなことはしないでって伝えてくれる?」


 あれだけ浮かれていると、最後は派手に決めようとか言って消し炭にしそうな気がする。


「……それは十分にあり得るわね。伝えておくわ」


 十分にあり得るらしい。シルフィが呟くとイフがこちらを振り返って大きく手を振った。あれだけで伝わるとか、風の精霊って便利だよな。


「ありがとうシルフィ。……あれ? なんかイフが立ち止まって首をひねってるんだけど、どうしたんだ?」


「さあ? どうしたのかしら?」


 シルフィにも分からないらしい。敵を目前にして足踏みするなんてイフのキャラじゃないよな? なにか問題が起こったか?


 ***


 ふふー、いきなり呼ばれたから、家や家具の注文でなにか変更でもあったかと思ったが、まさか迷宮のボス戦に呼ばれるとはな。裕太も俺が喜ぶことが分かってきたぜ。


 楽園が聖域になって、実体化して美味い酒と飯が楽しめるようになった。周囲にいるチビ共も十分に楽園を満喫してやがるし、日に日に周辺が面白いことになってやがる。


 しかも迷宮での戦闘なんてたまんねえな。普通、大精霊ともなると簡単には戦闘はできねえ。せいぜいが俺の領域に入って好き勝手やらかす魔物の討伐くらいのもんだ。


 それがドラゴン退治。しかもライトドラゴンにダークドラゴンが相手だ。全力で戦うことはできねえが、それでも遊び相手としては十分に楽しめる。裕太と契約してよかったぜ。


「イフ。裕太からの伝言よ。素材がほしいから、丸焦げにしないようにだそうよ。やりすぎたら、貴重な素材が取れる強敵の時に、呼ばれなくなるから気を付けなさい」


 風に乗ってシルフィから伝言が届いた。そういえば人間には素材が必要だったな。ちょっとばかり面倒ではあるが、戦いに縛りを設けるのもそれはそれで楽しめそうだ。


 それに素材が取れたら俺達にも出してくれるだろう。ドラゴンの肉は酒が進むから、肉はできるだけ多く残さねえとな。裕太達に手を振って了承したことを伝える。


 さて、どうやって倒すかな。魔石を砕くのはもったいないんだよな? 内臓もなんか役に立つって言ってたな。牙は短剣とか使ってたし……おいおい、よく考えたらドラゴンの素材って無駄な部分がほとんどないんじゃねえのか?


 こうなるとシルフィみたいに首を落とすのが一番簡単なんだか、それだと一瞬で終わっちまう。かといって思う存分戦うと、次から呼ばれなくなっちまう。裕太からの伝言では丸焦げにしなければいいらしい。俺の戦い方を考えて、ある程度は素材を焼いちまってもいいってことだよな……。


「ああ、もうめんどくせえ! 決めた! とりあえずぶん殴りながら考える」


 両手に火を灯し、一気にダークドラゴンのアゴ下に拳を叩き込む。おお、さすが属性竜。アダマンタイトでも溶ける温度だったんだがウロコが少し焦げたくらいか。これならまだまだ戦闘が楽しめそうだ。


 雑魚相手なら両手の火で十分だが、迷宮のボスで属性竜だ。敬意を払って全身に火を纏ってやるぜ。俺が全身に火を纏うと、ライトドラゴンとダークドラゴンがジッと俺を見つめる。


「ほう! この迷宮に生み出され途方もない年月を過ごしたが、初めて戦う相手が精霊だとはな。闇の、ダメージは問題ないか?」


「大丈夫だ。しかし精霊か……迷宮から与えられた知識では、我らの攻撃が通用せぬとあるぞ。光の、どうする?」


「なに、扉の前で突っ立っておる男が精霊術師であろう。あやつを殺せば精霊は迷宮に存在できぬはずだ。精霊を抑えるのは難しいであろうが、どちらかがあの男を殺せばよい。競争だな」


「なるほど、競争か。なんの刺激もないこの場所の初めての刺激だ。勝たせてもらうぞ、光の」


「ぬかせ、勝つのは私だ」


 こいつら、俺が目の前にいるのにのんきに話してやがる。迷宮から生まれた属性竜か……しかも初めての戦闘。ふむ、自分達が強者だと疑ってないガキだな。だが、退屈だったのは分かるぜ。死ぬ前に俺がたっぷり楽しませてやろう。

読んで下さってありがとうございます。

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