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三百二十一話 久しぶりの迷宮都市

 遊びにきた精霊達を見送ったあと、迷宮都市に向かって出発した。今回は少し時間が空いたからベル達やジーナ達もはしゃいでいる。


「裕太、もうすぐ到着するけど、マリーのところに寄るの?」


「んー、出発も遅かったし今回はまっすぐトルクさんの宿に向かうよ。マリーさんの雑貨屋は明日だね」


「家の注文は?」


「家の注文も明日かな。マリーさんの雑貨屋とメルの工房、冒険者ギルドに顔を出したあとかな? でも、ディーネとイフが張り切ってたからできるだけ早く注文には行く予定だよ」


 なにか問題が起こらない限り、そんなに時間がかからないだろうし明日で全部回れるだろう。


「そう、それなら大丈夫ね。あんまり待たせたら拗ねちゃいそうだから少し心配だったの」


「はは、昨晩の打ち合わせでも気合が入ってたし、出発の時にも言われたから分かってるよ」


 特にディーネがものすごく張り切ってたもんな。サフィまで巻き込んで、本格的に打ち合わせしたからな。サフィとか自分の宿屋の様子見もあるからフル稼働で大変そうだった。


「裕太ちゃん、家の注文をする時は必ずお姉ちゃんを呼んでね。お姉ちゃん、頑張って考えたからしっかり説明するわー」


 そのうえで拳を握りしめて力説してたもんな。たぶん対策以外の質問が出たら、似顔絵を描いてもらった時みたいに、俺は通訳として頑張ることになるんだろう。


 家具の注文もしたいって言ってたし結構大変な気がする。それと、シルフィ達が考えた家……精霊だけあって考え方がずいぶん違うから、ジルさんが理解してくれるかが心配だ。説得してもこんなもん作れるか!っとか言われたらどうしよう?


「ゆーた、おうちつくる?」


 俺に引っ付いて話を聞いていたベルが、コテンと首をかしげて質問してくる。


「うん、シルフィ達のお家を作るんだよ。それぞれの属性に合った家を作る予定だから、ベル達も遊びに行くと楽しいと思うよ」


 予定通りに完成すればだけど。


「おおー」


「もふもふ」


 興奮するベルに釣られたのか、どことなく嬉しそうにトゥルが呟く。もふもふって、そんな家をつくる予定はないよ? ヴィータがどうせなら動物沢山いるモフモフキングダムに家がほしいって言ってたけど、そこの事か? それなら俺も一緒に遊びにいきたい。


 おっ、到着か。トルクさんの宿屋、部屋が空いてると嬉しいな。料理が美味しくなってお客さんが増えたから、下手したら空いてないかもしれない。まあ、俺の悪評でお客さんが減りまくっているよりかは、心情的には楽だけどな。


 ***


「マーサさん、こんにちは。部屋は空いてますか?」


「おや、久しぶりだね。部屋は……1人部屋と4人部屋だったね。空いてるよ」


 よし、幸先がいいな。


「ああ、夕食はどうする? ベティが牧場関連で頑張ってくれて、牛乳を使った料理はかなり味が上がったよ」


 自慢げにマーサさんが言う。前回、あんまり時間がないのにかなりの味だったからな。それからまた美味しくなったとか、夕食が楽しみだ。あと、俺の周りで話を聞いていたちびっ子軍団+ジーナのソワソワ感がハンパない。


「もちろんいただきます。夕食の時間になったら4人部屋の方に料理を運んでもらえますか? 全部で10人前を用意してもらえたら助かるんですが、大丈夫ですか?」


「おや、今までよりも多いね。んー、まあ牛乳は仕入れたばかりだから大丈夫だよ。じゃあ夕食の時間になったら運ぶよ」


 本当は20人前くらい頼みたいんだけど、さすがにそれは迷惑だよな。でも、順調に牛乳を仕入れられてるんだな。ベティさんの奮闘のお陰か? この状況で枝豆の話をお願いするのもなんか気まずいし、枝豆はマリーさんに話をしてみよう。


「よろしくお願いします。あっ、ジーナとサラに今回も料理のお手伝いをさせて頂きたいんですが、大丈夫ですか?」


 ジーナとサラはトルクさんに料理を習うのを楽しみにしているから、今回もお願いしたい。ルビーにも料理を習ってるし、いずれはすごい料理人に……俺としては料理は趣味で、立派な精霊術師になってほしいです。


「ああ、朝の人手が増えるのは大歓迎だよ。旦那も嬢ちゃん達に料理を教えるのを楽しんでるから問題ないさ」


「助かります」


「マーサさんありがとう」


「ありがとうございます」


 俺の言葉に続いてジーナとサラがお礼を言う。うん、礼儀正しくていい子達だ。師匠として鼻が高い。マーサさんもサラの可愛さにやられたのか、サラの頭を撫でながらやっぱり女の子もほしかったねっとか呟いている。サラはあげませんからね。簡単に今後の予定を話して料金を支払い、部屋に入ってベッドに腰かけるとベル達が集まってきた。


「ゆーた、おさんぽいっていい?」


 おうふ、迷宮都市に飛んで到着したばかりなのに、お散歩ですか。迷宮都市にくるまでに新しい屋台あるかなー、とか言ってたしチェックに行きたいんだろうな。この子達に疲れとかは関係ないし、まあ大丈夫か。


「行ってもいいけど、夕食までには帰ってくるようにね。それとメラルのところに行って、明日工房に行くって伝えておいてくれる? メラルが居なかったら探さなくてもいいからね」


「わかったー」と言いながら窓から飛び出していくベル達。今日の夕食を楽しみにしていたみたいだし、夕食の時間にはきっちり戻ってくるだろう。


 あとは……ジーナは明日実家に顔を出すって言ってたしやることはないな。夕食の時間までのんびりするか。




「あら、本当に味が上がってるわね」


 カルボナーラを食べて驚きの声を上げるシルフィ。きっちり夕食の時間に間に合うように帰ってきたベル達も大喜びだ。ジーナ達も集中して料理を食べているし、味の違いが顕著に分かるんだろう。


 俺も食べたいが、俺だけ味の違いが分からなかったら恥ずかしい。料理を運んできたマーサさんが、牛乳を使ったメニューは割高だけど大人気だって言ってたし、俺にも味の違いが分かると信じたい。変なところでプレッシャーが……うん、味の違いが分からなくても分かったふりをしよう。覚悟を決めてカルボナーラを口に含む。


「おお、クリームが濃厚になってる。チーズが変わったのかな? それにベーコンが厚切りになって食べ応えがあるし、ニンニクの香りも強くなってるけど、かなり美味しくなってるね」


 ……味の違いが分かった喜びで、ついつい語ってしまった。でも俺でも分かるくらいに完全に美味しくなってる。まあ、ニンニクの量もしっかりと増えてるあたりがトルクさんらしいけど、十分に美味しい。


 それに、ルビーとは違った方向性に美味しいから楽しみが増える。カルボナーラが食べたくなったとして、ルビーかトルクさんのカルボナーラ、どっちを食べるか迷えるのが素敵だ。牛丼が食べたくなって、どの牛丼チェーンに食べに行くか迷える楽しみと同じだな。今回も楽園に戻る時に大量に料理を購入して帰ろう。


 大満足の夕食を終えて、全員に明日の予定を伝えて部屋に戻る。ベル達から屋台の報告を受けたが、あまり変化はなかったようで少し残念そうだった。まあ、いくつか新しい屋台を発見したそうだからそれで満足してほしい。だいたい前回迷宮都市にきてから、そこまで時間は経ってないからしょうがないよな。


 メラルに対する伝言は無事に伝わったようで、明日はメルが工房を出る予定はないそうでいつきても問題ないそうだ。とりあえず明日はマリーさんの雑貨屋、冒険者ギルド、メルの工房、ジルさんに家の注文って感じで行動しよう。そういえば注文していた宿屋用のベッドも取りに行かないとな。


 ワラのベッドでも遊びにきた精霊達は喜んでたけど、サフィが子供達が寝たがらないって言ってたからもっといいベッドに取り換えれば、少しは助けになるだろう。でもベッドは明日じゃなくても問題ないな。買い物の時に一緒に引き取ろう。


 ***


「じゃあ、今日は自由行動だけど、本当に大精霊の護衛はいらない?」


 メルのところにも寄るからみんなを連れて行こうかとも思ったけど、今日一日は基本的に話し合いばかりだから退屈だろう。自由行動の方がいいよね。心配だけど。


「師匠は心配しすぎだよ。あたし達もかなりレベルは上がったし、なにかあってもシバ達がしっかり守ってくれるよ」


 んー、たしかにそうなんだけど、冒険者ギルドから護衛の状況を聞くまでは、ある程度警戒しておいた方がいいと思うんだよな。ジーナも実家に顔を出すから、サラ達とは別行動なんだし、やっぱりディーネとドリーあたりを召喚して護衛に……でも、弟子達が自分達で大丈夫だって言ってるし……。


「裕太、そんなに心配なら私が気にかけておくわ。だいたい、ジーナ達は迷宮都市でも上位の実力があるの。過保護は弟子の成長を妨げるわよ」


 シルフィが呆れたように言う。たしかにジーナ達は火山に足を踏み入れるレベルだから大抵の事は大丈夫なんだよな。シルフィが気にかけておいてくれるって言うし、ここは弟子を信頼するか。


「分かった。じゃあ護衛はつけないよ。でも、ここは楽園ほど安全じゃない。ジーナ達を騙そうとする人がいる可能性を忘れないで十分に注意すること。いいね?」


「分かってる」


 あんまりくどくど言い過ぎても逆効果だよな。注意はこのくらいにして俺も出発するか。ジーナ達と別れてマリーさんの雑貨屋に向かう。


 途中で再び新しい屋台を発見すると気合を入れるベル達と別れ、マリーさんの雑貨屋に到着する。


「いらっしゃいませ裕太様」


 おふっ、そうだった、このお店はソニアさんが居たんだった。気配もなく現れるソニアさんを忘れていたことで驚いてしまい、ものすごく悔しい。心なしかソニアさんの顔が得意げなのも悔しさが増すな。


 チラっとシルフィを見ると、楽しそうな雰囲気だしソニアさんに気付いていたようだ。できれば教えてほしかったんだけど……。


「ジーナ達に油断しないように言ってたんだから、裕太も注意しないといけないわよ」


 俺の視線に気づいたシルフィが、グゥの音も出ない正論を言う。ごもっともです。


「お、お久しぶりですソニアさん。えーっと、マリーさんに会いたいんですが、いらっしゃいますか?」


「はい、昨日裕太様が迷宮都市に入られたと報告を受けておりますので、いついらしても大丈夫なように待機しております」


 ……俺に対する情報網を築いていることを隠すことすらしなくなったな。屋台で俺を見かけたら報告するようにしているって言ってたから今更か。


「そうですか。えーっと、ありがとうございます?」


 待っててくれたんだからお礼を言う場面なんだよな? なんとなく素直に納得できないが一応お礼を言っておく。


「いえ、裕太様はポルリウス商会にとって大切なお方ですので、当然のことです。それに、マリーお嬢様も裕太様にお会いできることをとても楽しみにしていますから。ではご案内いたします」


 ニコリと微笑み、応接室に案内してくれるソニアさん。しれっと俺をよいしょした上で、マリーさんを売り込んでくるところが怖い。ソニアさんが絶好調だとマリーさんに会う前に疲れるから困るんだよな。


 うっかりソニアさんの存在を忘れて驚いてしまったから、先手を取られてしまった気分だ。

読んでくださってありがとうございます。

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