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二十九話 森用スペース完成

 小魚と海藻を採取しまくって、洗浄、乾燥の工程を経て粉にしまくった三日間を終えて、ようやく泉の家に戻って来た。畑の様子がどうなっているのか、ちょっと心配だ。壁の中に入ると、ベルとレインが畑に向かって特攻した。


「めがでてるかなー」


「キュー」


 ベルとレインも自分が埋めた種がどうなったのか、非常に気になっているようだ。俺も気になるのでシルフィとトゥルを連れて畑に向かう。


「裕太ちゃん。おかえりー」


「ただいま。ディーネ。変わった事は無かったか?」


「ゴーストが飛んできたぐらいで、他は特に何も無かったわー」


 ゴーストか。偶に飛んで来るのが面倒だが、対策の取りようがない。直ぐに退治できるから良いか。


「でてないー」


「キュー」


 ベルが胸に飛び込んで来た。芽が出ていない事にガッカリしているらしい。頭を撫でながら慰める。


「ノモスが芽が出て来るのは明日ぐらいって言ってただろ。明日を楽しみに待っていると良い。明日なら芽が出る瞬間が見られるかもしれないぞ」


「おおー」


 テンションが復活したらしい。レインに飛び付き二人でトゥルに向かって突撃する。三人が戯れている姿もなんか良いよな。トゥルは自分からはしゃがないから、ベルとレインの積極性が良い方向に働いている気がする。


「戻ったか。肥料は作れたのか?」


「ああ、ここに出すか?」


「いや。森のスペースに出しておけ。やるのはトゥルにまかせるぞ」


「ん? 結構な広さだが大丈夫なのか?」


「見た目は幼いとはいえ精霊なんじゃぞ、このぐらいなんでも無いわい」


 その見た目が問題なんだけどね。ベルにいたっては幼女だもん。


「トゥル。ノモスがこう言ってるけど大丈夫か?」


 ベルとレインに抱きつかれたまま頷くトゥル。どう見ても子供とイルカが戯れているようにしか見えないんだよね。


「よし、行くぞ」


 トゥルが頷いたのを見て、ノモスがさっさと移動する。帰って来て速攻だな。俺まだ畑も見ていないんだけど。


「裕太。ここに肥料と土を全部出すんじゃ。そこの壁は今は邪魔じゃから収納しておけ」


 森のスペースに接する壁を収納して、肥料と土を出す。肥料も土も大量で、大きな山が五つも出来た。


「よし。トゥル。畑の土を運んで来るんじゃ。種が埋めてある場所を巻き込むなよ」


 コクンと頷き、トゥルが畑の方を向いて手を前に出すと、畑の土がウネウネとこちらに向かって進んで来た。ファンタジーだな。目の前に畑の土と肥料と死の大地の土が並んでいる。


「よし。お前の力ではまだ一度に処理するのは無理じゃ。自分で出来る範囲に分けて混ぜ合わせてこの中に注ぎ込め」


 コクンと頷き、土の山に手を向けると、目の前にある畑の土と肥料と死の大地の土が動き出し、混ざり合い始めた。ベルとレインは大喜びだ。


 確かに凄いな。混ざり合った土が森のスペースに流し込まれる。真ん中に作った森用の泉を、ちゃんと避ける技量に感心する。


 何度も繰り返すと森用のスペースが土でいっぱいになった。余った土は畑の方に移動していく。


「うむ。まあ上出来じゃの」


 ノモスがトゥルを褒める。しかしこのコンビは親方と弟子って感じがするな。シルフィとディーネはベルとレインを放置気味だし、属性によって性格が違うのかもしれないな。


「トゥル。凄かったよ。ありがとう」


「すごいー」


「キュー」


 俺とベルとレインが褒めると、少し顔を赤くしてありがとうと呟いた。ショタ好きが居たら攫われそうな表情だったな。  


「この余った土は収納して良いのか?」


 肥料や泉を作った分の土が残っていたので、聞いてみると収納して良いそうだ。土を収納して壁を元に戻す。


「裕太ちゃん。トゥルちゃん凄かったわねー」


「ああ。ちゃんと出来て偉いな。レインも同じ下級精霊だし同じ規模の事が出来るのか?」


「そうね。水と土では比べようもないけれど、似たような力を持っているわ。それより森のスペースに土も入ったんだから、泉もさっそく作っちゃいましょう」


 まあ、いいんだけど、水の精霊ってテリトリーを広げるのに熱心なタイプなのか? まだ森も出来ていないから、絶好のお昼寝スポットにはならないぞ。……もの凄く期待してるみたいだしさっさと作ってしまうか。


「分かった。トゥルは疲れて無いか? 大丈夫ならもう少し手伝ってくれ」


「だいじょうぶ」


「助かるよ。水路を掘るから後から地面を固めてくれ」


 トゥルが頷いたのを確認して、シャベルを取り出し水路を掘る。なんかトゥルに頼めば、水路も簡単に作ってくれそうな気もする。でも自分で出来る所は自分でやろう。でないとなんか悲しくなる。


 水路を掘り終えると、プールの時に余分に作っておいたU字の岩をはめ込む。サクッっと完成。うむ。精霊も凄いが開拓ツールも十分にチートだ。俺の需要は無くならないはずだ。


 水を遮っていた岩を収納すると、水が水路を進み森の泉に流れ込んだ。森の泉って言っても木は生えて無いんだけどね。手を引かれて下を見るとトゥルがお願いをしてきた。


「……あたらしい土にみずをまいて」


「新しい土……ああ、森のスペースに入れた土に水を撒くんだな」


「そう」


「分かった。おーい。レインー」


 既に新たな水路を試すようにベルがレインに乗って爆走していたので、大声で呼び寄せる。ベルを乗せたままレインがやって来た。


「なーにー」


「キュー」


「今回はレインに用事なんだ。レイン。森のスペースに入れた土に水を掛けて欲しいんだ。トゥルがもういいって言うまでお願い出来るかな?」


「キュキュー」


「まかせてっていってるー」


「おねがいね」


 ベルを乗せたまま、森の泉に向かう。レインがキューっと鳴き声を上げると、水球が打ち上がり雨粒のように落ちて来る。ディーネがやったやつの縮小版だな。水が撒かれる範囲が少ない。トゥルに指示されて何度も水球を打ち上げている。


 いつの間にかディーネもレインの隣に現れて、応援しているようだ。指導ではなく応援って所がディーネらしいな。


「シルフィ。シルフィはベルを指導したりしないのか?」


「指導みたいな行為を精霊はあまりしないわね。困っていたら助けるし、分からなかったら聞きに来るけど、人間みたいに弟子を取ったりはしないわ」


「へー。そうなのか。意外と厳しいんだな」


「まあ、何時自我を持つのかも分からないし、人型、動物型、虫型、植物型、様々なタイプで生まれるから、まとまりが無いのかもしれないわね」


 そういえばディーネとレインも同じ水の精霊なんだよな。バラエティに富んでいる分まとまりにくい。ちょっと納得だな。


「そう言えば大精霊は人型だけなのか? シルフィもディーネも人型だし、ノモスも一応ヒト型だろ」


「何でノモスに一応をつけたのか分からないけど、違うわよ。人型じゃない大精霊もいるわ。ただ私が人型だから人型の知り合いが多いだけよ」


「なるほど。そう言えば生きるのに精一杯で、精霊の事もこの世界の事も、ちょっとディーネに話を聞いたぐらいで殆ど知らないな」


 死が近かったからなー。余裕が無かったよ。異世界に来たのにエルフ。ダークエルフ。獣人。サキュバスの存在を確認していなかったんだから。特にサキュバスは要チェックだ。


「そう言えばそうね。時間がある夜にでも色々話してあげるわ」


「頼む」


 死が遠くなったんだこの世界の事を楽しもう。あっ。戦争が多いんだよな。でも平和な街もあるよな。全部が全部殺伐としているはずもない。娯楽にあふれた場所もあるはずだ。



 ***



 夜になり、さっそくシルフィにこの世界の事を聞こうと質問したら、その前にこれからのレベル上げの事を話しましょうっと言われてしまった。


「そんなに残念そうな顔をしないで。レベル上げの方針を決めれば、後は町の話をしましょう。今日も普通にレベル上げに行っても意味が無いから、休みにしたんでしょ。このままだとドンドン町に行くのが遅くなるだけよ」


 確かにそうだな。街に行って美味しい物を食べるんだ。柔らかいベッド。ちょっとHなお店。色々な楽しみが俺を待っている。


「そうだな。頑張るよ。確か巣を攻撃するんだったよね」


「ええ。巣と言っても本当の巣ではないわ。昔の戦争で生まれた巨大な地割れや地下空間に、日の光が苦手なアンデッドが集まった場所ね」


「んー。ダンジョンって訳じゃないんだな」


「裕太の世界にもダンジョンがあるの? 魔物がいない世界なのに?」


「いや、実際にある訳じゃ無くてお話として空想の中に存在する感じかな。俺の世界にもって事はこの世界にもダンジョンがあるんだ。死の大地にもあるのか?」


 ちょっとワクワクして来ました。


「ある訳ないでしょ。財宝や高価な魔道具で人をおびき寄せ、欲望ごと命を喰らうのがダンジョンよ。人が居ない死の大地に生まれるはずも無いわ」


 ちょっと現実的過ぎて悲しい。死の大地ってダンジョンにも避けられてんのね。命を喰らうのが目的なら最低の場所だもんしょうがないよね。


「それで巣の話に戻るけど、外でウロウロしているのはザコね。強いアンデッドは快適な地下の空間を支配しているの。アンデッド相手におかしな言い方だけど、生存競争を勝ち抜いてね」


 確かにアンデッドに生存競争って言葉は似合わないにも程がある。


「強い敵を倒したらレベルも上昇するんだな」


「ええ、そうよ。簡単でしょ。大きな巣ほど強いアンデッドがいるから、小さな巣から潰しましょう。ベル達がいれば問題無いとは思うけど、いきなり大きな巣にいって強いアンデッド達を相手にするのは嫌でしょ?」


「確かに。段階を踏んで貰った方がありがたいよ」


「巣なら昼間に突入しても問題無いから、明日から頑張りましょうね」


「ちなみに。死の大地にある、愚者の裂け目って言う、最大規模の巣に行けばチマチマしなくても一気にレベルを上げられるわよ?」


「………………チマチマしたのでお願いします」


 ちょっと心が動いたけど、蠢くアンデッドの群れなんて出来れば見たくないよね。

読んで下さってありがとうございます。

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