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三百一話 夜の街(地元向け)

露骨な表現ではないと思いますが、少しだけHな表現が出てきます。

本編にそこまで関係はありませんので、苦手な方は申し訳ありませんが、

飛ばして頂いた方がいいかもしれません。


よろしくお願いいたします。


 スラムの住人の治療も終わり、ウナギの手配も無事に完了した。せっかくなのでジュードさんから、歓楽街の情報を仕入れようとしたら、色々と心配されてしまった。ちょっと申し訳ない。


 ジュードさんと別れ、日が暮れた王都を目的地に向かって歩く。ジュードさんの情報を元に今向かっている場所は、治安はよくないが、欲望のエネルギーに満ち溢れた場所なんだそうだ。王都の西側の一本の通り全部を、夜遊びのための店で固めた場所……ワクワクしてきた。


 治安が悪いところを見学したあと、遊ぶならこっちがいいと言われた高級路線の歓楽街に移動する予定だ。治安が悪い方は猥雑として楽しいらしいが玉石混交で、しかも石の割合が結構高いらしい。


 地元民が遊びに行くには問題ないが、なにも知らない外部の者はボッタくられる可能性が大だそうだ。一応ジュードさんが安全に遊べる場所を幾つか教えてくれたが、酔っ払って怪しい店に突入したりしないように、本格的に遊ぶのは高級路線の歓楽街でだな。


 一瞬ジュードさんにブラストさんが仕切っているお店から、綺麗どころを集めてくれるって言われたのにはグラついたが……やっぱり自分でワクワクしながら店を選ぶのも旅の醍醐味の一つだよね。


 頭の中で楽しい妄想を繰り返しながら、少し速足で目的地に向かう。あっ、その前に宿屋をキャンセルしにいこう。ジュードさんが言うには、割高になるが泊りもできるとの事で、そうなったら当然泊りを選択するよね。


 ***


 ……ここが王都の歓楽街(地元民向け)か……好きだなこの雰囲気。


 道一つ丸々が夜遊び用の店で統一されている場所の入り口。他の道よりも倍くらい広い道幅に、大勢の人間がひしめき合っている。いたるところに光球が打ち上げられ、華やかなネオン街を思わせる。


 今更だけど衝撃的な事実が発覚した。光球って色が変えられるんだな……どうやって色を変えるのかは分からないが、これだけの数の光球を打ち上げるには、かなりの人数が必要だろう。そう難しい事ではなさそうだし、楽園に戻ったらシルフィに聞いてみよう。


 しかし、世界が違えど、エロスで怪しい雰囲気を演出するのに、ピンクや紫を多用するのはこの世界でも一緒なんだな。しかも石畳で石造りの建物が並ぶ道が怪しい雰囲気を更に盛り上げている。


 しばらく、怪しくも異世界らしい光景に目を奪われていたが、本来の目的を思いだす。高級路線の店があるのは王都の東側、結構距離があるから、ここでグズグズしてられない。気合を入れなおし通りに足を踏み入れる。


 何となくだが通りに足を踏み入れると、雰囲気が変わった気がする。あちこちから客寄せをする活発な声。好みの女性を探して練り歩く男達の笑い声。すでに酔っ払っているのか、へたくそな歌を歌う男。混沌とした場所から、欲望のエネルギーが俺にも降り注いでいるようだ。


 活気がある場所、両サイドの窓から美女達が手を振る光景は、なんとなくだがチューリップと風車の国の飾り窓に通じるものを感じる、行った事ないけど。


 このまま酒を飲み、気になった店に飛び込みたい気分だが、ここでもめ事を起こしてシルフィ召喚とか悲しすぎる。もし危険に巻き込まれて自分でもどうしようもなくなれば、ノモスを召喚して助けてもらおう。ヴィータは争いごとが苦手だしね。


 行きかう人を避けながら奥に向かって進む。店の前を通るたびに煽情的な格好の女性から、声をかけられ手を振られる。金がなくても、この通りを歩くだけの為に遊びにきたくなるような場所だな。


 あれ? 隠れてる?って言いたくなるような、布面積が少ない女性が堂々と店の前に立っていて、ごく一部に血が集まって辛い。


「お兄さん、うちで飲んでいきなよ」


 いきなり腕を取られ、引っ張られる。強引な客引き。日本だと違法行為になるんだが、この世界ではそんな法律はないようだ。


 ジュードさんが言うには、強引な客引きで、最初にいい事ばっかり並べ立てる店はボッタくりの危険度大。とくに美女の客引きで、接触過多だともう確定だと考えていいそうだ。


 ついでにどの店か確認して、外から中が分からないようになっている飲み屋は危険度マックス。中に入れば……だそうです。


 逆に信頼できるのが、年配の女性や男の客引き。ちゃんとした経営をしている店に雇われている事が多く、リピーターがいるので無理な客引きをしてこない。簡単に声をかけてくる事はあるが、断ればすぐに引いてくれるらしい。


 現在俺に腕を絡めている女性。目が覚めるような美女。俺の腕に柔らかい部分が積極的に押し付けられている。


「うちはね、安心安全明朗会計。エール一杯三百エルトよ。店の中には沢山の美女がちょっと特殊な格好で踊ってるの。眼福よー。お兄さんカッコイイから絶対にモテモテ、楽しいわよー」


 ……真っ黒だな。俺がキョロキョロと田舎者丸出しで歩いていたから、完全にカモとして狙われたんだろう。甘く見られたものだ。こちとらジュードさんから、バッチリ情報は仕入れてるんだ。騙されはしない。


「……特殊な格好って?」


「あら、気になっちゃう? でも、それは店に入ってからのお楽しみ。ビックリするわよー」


 ついつい気になって質問してしまった。


「どの店?」


「あのお店よ。中が見えないのは特殊な踊りが、覗かれないようにするためね」


 聞いてない事まで説明してくれた。これはあれだ。中に入ったら……のやつだな。腕の感触は名残惜しいが、……されるのはごめんだ。断って先に進もう。


 ……断るのがものすごく大変だった。とりあえず店に入ってみましょう。見るだけならタダ。今ならエール一杯無料。先に進もうとする俺を強引に引き留め、甘い条件をドンドン追加してくる女性。


 最終的に18禁なサービスまで提供してくれると言い出した。そのすべての誘惑を振り切り、先に進むと後ろから悪態が投げつけられる。そんな怖い事を言ってたら、他のカモも逃げ出すと思うんだがいいんだろうか?


 偶に強引な客引きに苦戦しながらも、王都の歓楽街(地元民向け)を歩き回る。様々な種族の女性がいて、キョロキョロしすぎて首が痛い。


 ネコミミ、イヌミミ、ウサミミ、キツネミミ、エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、魔族、素晴らしすぎるぞ、この世界。危険だと分かっていても、何度誘われるままに店に入ってしまいそうになったか。この後に歓楽街(高級路線)が控えてなかったら陥落していた気がする。


 ふー、少し歩き疲れたから、ジュードさんに教えてもらった店で軽く飲むか。魔法の鞄には飲み物も入っているが、せっかくの歓楽街(地元向け)なんだ。素通りするのは少しばかりもったいない。確か通りの中心よりも少しだけ奥にある、金看板のド派手な店って言ってたな。


 ……あれか。確かにド派手ですな。成金趣味と言っていい物か、大きな金色の看板を無数の光球が縁取り、これでもかっと周囲にアピールしている。ここは女性がお立ち台みたいなところに、煽情的な格好で立って踊るタイプの店らしい。


 最初に声をかけられた店と違って、通りからも中の様子が確認できる。いままでなんか引っかかってたんだけど、店の中をみて思った。この場所って微笑みの国の歓楽街に似ているんだ。もしかして、地球から転移してきた人が関わってるのかもしれないな。


 ちょっとビビりながらも、ド派手な看板の下を潜り店の中に入る。……案内してくれる人がいないけど、勝手に好きなところに座ってもいいのかな? システムがよく分からないが、怒られたら謝ればいい。


 俗にいうかぶりつき席を選び、座って店の中を観察する。光球の量を調整しているのか、薄暗い店内。店の端っこには生バンドが軽快な音楽を演奏している。ある意味贅沢だ。


 ふむ……よく考えてあるな。光の量の調整で、舞台の踊り子はちゃんと見る事ができるが、客が座る部分は薄暗くどんな人が座っているか見えないようになっている。このおかげで、踊り子に夢中になっていても、だらしない表情を周囲に見られる事はがない。


 うん、表情が表に出やすい俺にとって、このシステムは大変助かる。思う存分踊り子さんを観察して、ニヤニヤしよう。


「ご注文はお決まりですか?」


おうふ、さっそくニヤニヤしようと踊り子に目を向けたとたんに、布地の少ない服を着た女性が、銀色の丸盆を持って注文を聞いてきた。いちいちドキドキさせてくれる店だな。


「えーっと、エールをお願いします」


「五百エルトになります」


 先払いなのか。五百エルトを取り出し、銀の丸盆の上に載せる。しばらく待っていると、エールが運ばれてきた。おっ、ここのエール冷たい。お勧めの店だけあって、魔道具が設置できるくらいに儲かっているらしい。


 歩いて喉が渇いていたので、一気に半分以上飲んでしまう。しまったな、二杯目を頼めばいい事なんだけど、あんまり飲んでしまうと、腰を落ち着けたくなるからな。このあとを考えると一杯で切り上げたい。


 しょうがないからチビチビ飲んで、踊り子を観察しながら、じっくりと目を喜ばせながらニヤニヤする事にしよう。


 ***


 ふいー、夜風が気持ちいいな。ジュードさんお勧めの店で喉の渇きを癒し、踊り子さんを見て高ぶった気持ちを、夜の風が少し静めてくれる。まあ、歓楽街(高級路線)に到着すればすぐに高ぶるから、意味があるのかは疑問だ。


 歓楽街(地元向け)を一通り見学し、歓楽街(高級路線)に向かいながら思う。歓楽街(地元向け)もかなり楽しい街だったな。さすが大国の歓楽街、迷宮都市の歓楽街に足を運んだ事はないが、聞いた感じだとベリル王国王都の歓楽街の方が、断然規模が大きそうだ。


 一瞬、死の大地から最初にくる町を、ベリル王国の王都にしていればよかったかと思ったけど、こういう場所は遊びにくるくらいがちょうどいいと思いなおした。拠点にすると派手に遊び辛くなっちゃうし、開き直ったりしたら毎日歓楽街に足を運んでしまいそうだ。

 

 うちのちびっ子軍団+ジーナの教育に激しく悪いな。ベル達が歓楽街で遊ぶ俺のところに迎えにでもきたら、たぶん立ち直れないくらいにショックを受けるだろう。微妙に怖い事を考えながら歩いていると、ついに目的地の歓楽街(高級路線)に到着した。いよいよ本番の歓楽街(高級路線)だ。あそんじゃうぞー。


 ……なん……だと…………。

読んでくださってありがとうございます。

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