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三百話 その頃楽園では

沢山の感想やアドバイス、評価やブックマークをして頂き、ありがとうございます。

読んでくださっている皆様のお陰で、今回の更新で三百話に到達できました。

今後もお付き合いいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。


 うーん、裕太ちゃんは二泊三日の旅に出かけちゃったし、シルフィちゃんは戻ってくるまで、まだ時間がかかるわよね。裕太ちゃんが酒樽を沢山置いて行ってくれたし飲みたいんだけど、シルフィちゃんが戻ってくるまで飲んじゃ駄目なのよね。


 んー、そうね、シルフィちゃんが戻ってくる前に、水場の確認をしておきましょう。わざわざ見回らなくても確認はできるけど、お姉ちゃんとしてしっかり働いている姿をみんなに見せるのは大切な事よねー。みんなの見本にならないと駄目だから、お姉ちゃんって大変だわー。


「ふんふんふーん、ここは問題ないわねー」


「あら、ディーネ、見回りですか?」


「そうよー、ドリーちゃんも見回り?」


「はい。ここの子達には頑張ってもらいましたから、気になってしまって」


「ふふー、ドリーちゃんも心配性ね。精霊樹が生えている上に、ここは聖域になったのよ。ちょっとやそっとじゃおかしな事にならないわよー」


「心配ないと分かってはいるんです。でも、自然を管理するのではなく、環境を含めて一から蘇らせるのは初めてですから気になってしまうんですよ」


「その気持ち、お姉ちゃんもよく分かるわ。手がかかるからこそ愛着が湧いちゃうのよねー」


 裕太ちゃんがゼロから頑張って開拓した場所。死の大地を開拓してるって、シルフィちゃんが呼びにきた時はビックリしたもの。でも、裕太ちゃんが開拓ツールで土地を無理矢理入れ替えて、次々と精霊と契約して無理矢理大地を蘇らせた。開拓なのに力業でビックリしたけど、たいしたものよね。


「ええ、聖域になるまでは、精霊樹があっても気が抜けませんでしたからね。遠い未来の事でしょうけど、この荒れ果てた大地を緑に変える起点となる場所になるかもしれません。森の大精霊として、この土地に関われるのは幸せな事です」

 

「気持ちは分かるけど、ドリーちゃんは真面目過ぎるからお姉ちゃんは心配よー。お姉ちゃんを見習って、自然体を身に着けるのがいいと思うわー」


「……ディーネも見回り中ですよね?」


 むぅ、確かにお姉ちゃんも見回りの途中だったわね。一本取られちゃったわー。


「お姉ちゃんは違うのよー。だって、裕太ちゃんに頼まれたんだからー」


 出発前に水場の管理を頼むって裕太ちゃんにお願いされちゃったの。裕太ちゃんったらお姉ちゃんに頼りっきりで困っちゃうわねー。お姉ちゃんとして、助けてあげるのも大事だけど自分で頑張れるように手助けしてあげるべきかしら?


「私も裕太さんに植物の事を頼まれましたよ? ノモスにもイフにもヴィータにも頼んでましたし……」


「……お姉ちゃん、いま結構なショックを受けてるわ。裕太ちゃんは、お姉ちゃんの気持ちをもてあそんだのかしら?」


 ショックだわ。あんなに真剣にお願いしてたのに、お姉ちゃん以外にも頼んでたなんて! これは裏切り行為よ。


「ドリーちゃん、お姉ちゃんは裕太ちゃんに激しく傷つけられたわー! お仕置きしないといけないと思うんだけど、どうしたらいい?」


「……えーっと、裕太さんはディーネを傷つけるつもりはなかったと思いますよ。えっと、だって裕太さんはディーネの事をとても頼りにしてますから。ただ、裕太さんは心配性ですからみんなに頼んだんです。たぶん、裕太さんが出かける前に一番にお願いに行ったのはディーネです。間違いありません」


「そうかしらー?」


「そうに決まってます」


 んー、それならしょうがないのかしら? でも、たしかに裕太ちゃんは過保護だし心配性よねー。お姉ちゃんに頼んだから大丈夫だって分かっていても、気になってみんなに頼んじゃう性格だわー。


「そういう事ならしょうがないわね。今回は裕太ちゃんの事、許してあげるわー。でも、お姉ちゃんに任せたら安心していいって、ちゃんと教えないと駄目ねー」


「あはは、そうですね。……では、私は森の方を見てきますね」


「分かったわー。シルフィちゃんが戻ってきたら宴会だから遅れちゃ駄目よー」


「分かりました」


 見回りの続きね。次は水場の最終地点に行ってみましょう。最近、大麦を沢山育ててるから、地面の水分補給も確認しておかないといけないわねー。


 ***


 うん、水嵩も問題ないわー、これで一通り見て回ったからお仕事はおしまいね。シルフィちゃんが戻ってきたら宴会よー。


「おみやげー きゅっ! おみやげー きゅ! おみやげー きゅっ!」


 あら、ベルちゃんとレインちゃんだわ。二人でお歌を歌ってなんだかご機嫌ねー。


「あ、でぃーねだー」「キュー」


 ニコニコ笑顔で抱き着いてくるベルちゃん達。ふふ、元気いっぱいで可愛いわねー。裕太ちゃんが過保護になっちゃうのも、分かっちゃうから困るわー。


「ふふ、ベルちゃん、レインちゃん、お散歩中なの?」


「ちがうー、べるたち、ぱとろーるちゅー」「キュー」


「あら、ごめんなさい。裕太ちゃんがいない楽園をベルちゃん達が守ってくれてるのねー。とっても偉いわー」  


「むふー」「キュー」


「他の子達はどうしてるの?」 


「んーっと、とぅるとたまもはもりー。ふれあとむーんはおそとのていさつー」


 トゥルちゃんとタマモちゃんは森の手入れで、フレアちゃんとムーンちゃんは聖域の外の状況を確認しに行ってるで、いいのかしら?


「そう、みんな頑張ってるのねー。裕太ちゃんも大喜びよ!」 


「えへー、べるがんばるー」「キュー」


「頑張ってねー。そういえばさっきの歌は初めて聞いたわね。なんの歌なの?」


「おみやげのうたー。ゆーたにすごいおみやげもらうー」「キューーー」


 そういえば、裕太ちゃんが出かける前にお土産を約束していたわねー。ベルちゃん達、かなり期待しているみたいだけど、裕太ちゃん大丈夫なのかしら?


 ***


「作戦会議を始めるんだぞ!」


「ルビー、作戦会議ってなんの作戦を決めるの?」


「サフィ、いい事を聞いてくれたんだぞ! まずはもっと遊びにきた精霊達が楽しめるように、色々と考えるんだぞ!」


「初回は大変だったけど、遊びにきてくれた精霊達は喜んでくれたわよ? 前回は付き添いの精霊も増えたし、上手に回っていたと思うけど?」


 ルビーはかなり熱くなってるわね。こういう時にルビーに任せると暴走しがちだから、少し落ち着かせないといけないわ。


「たしかにオニキスの言うとおりなんだぞ! でも、そこで満足したら終わり! 精霊の村はできたばかりなんだから、あたい達にもやれる事はまだまだあるはずなんだぞ!」


 とくになにかやりたいって訳じゃなくて、なにかをやりたいけど思いつかないから作戦会議をする事にしたのね。それならちょっと安心だわ。目的が決まったルビーを止めるのは大変だけど、今なら無理のない行動に抑えられる。伝説の食材とか意味の分からない物に振り回されるのはもうごめんよ。


「そうね、ルビーの言うとおり精霊の村にはまだまだ発展の余地はあるわ。でも、精霊の村は私達だけの村ではないから、色々と話を通さなければ行動できないわ。落ち着いてできる事を考えましょう」


「……たしかにそうなんだぞ。裕太の兄貴や、シルフィの姉貴達にも相談しなきゃダメなんだったぞ」


 うんうんと頷くルビー。これでいきなり突っ走る可能性は少なくなったわね。


「私もなにか遊びにきた子供達の喜ぶ事をするのは賛成です。ただ、まずは村の事に手を出すよりも、私達のお店でできる事を考えた方がいいと思います。明日からまた精霊が遊びにくるんですから、すぐできそうな事で、なにか考えたらどうでしょう?」


「すぐできる事……サフィはなにかできそうな事があるんだぞ?」


「そうですね。私の場合は宿屋ですが、夜中になっても子供達はなかなか寝ようとしないんです。せっかく実体化しているので、ベッドでの睡眠も体験してほしいと思っていますね」


 たしかに実体化して寝るのって気持ちがいいのよね。属性に溶けて寝るよりも、しっかり休んだって気がするもの。


「それはいい考えだけど、難しそうだよね。周りに楽しそうな物が沢山あるし、聖域にきて興奮しているから、寝るよりも遊びたいと思うよ。私だって遊ぶもん!」


「エメのいうとおり子供達は遊ぶ事に夢中で、なかなか寝ないんです。プレオープンのベルちゃん達は、気持ちよさそうに団子になって寝ていたんです……可愛かったです。子供達が一つのベッドでまとまって眠る姿は、一つの芸術だと思います」


「サフィ、こわい」


 黙って話を聞いていたシトリンが、私の隣にコッソリと移動してきたわ。確かに怖いわね。サフィ、宿屋の仕事をしだして、変な趣味に目覚めてないかしら? 目つきがちょっと危ないわよ。


「そうでした。えーっと、私が言いたいのは、先に聖域を経験している分、子供達が知らない楽しみを教えてあげられると思うんです。私の場合はベッドで寝る楽しさですね。人間は子供を寝かせる時に子守唄を歌ったり、お話をしてあげるみたいですから、裕太の兄貴に相談してみようかと思ってます」


「なるほどなんだぞ! あたいの場合は、食べる楽しみを子供達に教えてあげられたら嬉しいんだぞ!」


「でもルビー、楽園に遊びにくる子供達は、元から食べるのを楽しみにしてきてるよ?」


「確かにエメのいうとおりなんだぞ。……そうだぞ! もっと色々な味を知ってもらえばいいんだぞ! 食事の回数が少ないから、一回の食事で少しずつ沢山の料理が味わえるメニューを用意するんだぞ!」


 あら、作戦会議が終わってないのに。ルビーが一人で納得して厨房に走っていっちゃったわ。まあ、このくらいの暴走ならいつもの事、お店の中で完結する事でよかったわ。


「ルビーとサフィはやりたい事が決まったわね。私は今のところ補佐が仕事で、居酒屋は計画段階。すぐに動けないわ。エメとシトリンはなにか思いついた?」


「うーん、私は雑貨屋だし、商品を増やすようにお願いするくらいかな? でも裕太の兄貴に、色がついた雑貨をお願いしてるから、他の事を考えた方がいいかも。シトリンは?」


「……精霊貨を高値で買い取る?」


「シトリン、貨幣の価値を勝手に変えるのは駄目よ!」


 そんな事をしたら確実に問題になるわ。


「……わかった」


「まあ、両替所は難しいわよね」


「……うん」


 ルビーの新メニューの試食もあるでしょうし、もう少しゆっくり考えましょう。どんな料理が出てくるのか、少し楽しみだわ。

三百話の節目の回で、夜の街に繰り出すのはどうかと思い、

楽園の様子を書いてみたんですが、結果的に節目の回に主人公が登場しませんでした。

これはこれでどうなんだろうと、投稿する前に気がつきました。


読んでくださってありがとうございます。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ディーネの一人称視点。主人公の視点ばかりより、幅が広がる。
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