表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/754

二百六十七話 お店の完成

 まずは食堂を作ろうという事で、ルビー達が食堂を作るところを観察していると結構驚いた。サフィが氷を作れる事はもちろんだが、木を家具の形に生やすエメの行動に目から鱗が落ちた。カッコいいから、俺もドリーに作ってもらおう。


「ここがあたし達の店なんだぞ! 料理しほうだいなんだぞ!」


 食堂内に家具が完成し、ルビーが大きな声で宣言した。ものすごく嬉しそうだ。


「これで道具の置き場所に困らなくてすむね!」


「氷室がありますから、食材も沢山保存できます」


「調味料も沢山……」


「新しい料理も沢山教えてもらえるわね」


 ルビーの声にエメ、サフィ、シトリン、オニキスが応える。……精霊のルールや制約で、料理をするのにも色々と苦労があったんだろう。言葉の節々に喜びがにじみ出ている。


 中学生ぐらいの女の子達が集まって喜び合う姿も、微笑ましい。これが大学生ぐらいの見た目だったら、激しく混ざりたいって思うんだろうな。


 ……くだらない事を考えてないで次に進めるか。まだ雑貨屋、両替所、子供用宿屋の内装が残っている。店に荷物も並べないとダメだから、急がないと日が暮れてしまうぞ。


「喜んでいるところ悪いけど、作業を進めようか。雑貨屋を作るか食器や調味料を並べるかなんだけど、どっちがいい?」


 食材は悪くなるんだから、後で渡した方がいいよな。


「「「「「並べる!」」」」」


 五人とも息ピッタリだな。じゃあ店の為に迷宮都市で買い揃えてきた調味料や食器、料理道具なんかを出すか。エメが作ったテーブルの上にドンドン調味料を並べると、五人の上級精霊が再び調味料を見て騒ぎ出す。昨日も見たよね?


「ほら、騒いでないで手早く並べないと。あと三軒のお店の内装も終わらせないとダメなんだからね」


「「「「「はーい」」」」」


 息の揃った返事の後に一斉に動き出すルビー達。さすが上級精霊、動きに無駄がない。長い付き合いの結果なのか、何を誰が何処に置くのかまで分かっているように手早く荷物を並べていく。俺も手伝おうかと思ったが、かえって邪魔になりそうだ。


「シルフィ、店の準備は今日明日には終わりそうだけど、すぐにお客さんを連れてくるの?」


「ふふ、まだどんなメニューを出すかも決まってないんだから、さすがに明日は無理ね。できるだけ急ぎはするけど、メインになるルビー達の準備が整ってからよ」


 そういえばそうか……まだ料理のレシピを渡してすらいないのに、いきなりお客さんを連れてこられても困るよな。シルフィから話を聞いて、なんとなく急がなきゃって気持ちになってたけど、焦り過ぎるのもダメだ。シルフィ達がしっかり段取りを組んでるんだ、俺は頼まれた事を手伝えばいい。


 シルフィと雑談をしながらのんびりとルビー達の片づけが終わるのを待つ。まったく手伝わないのは気まずいけど、邪魔になるぐらいなら手を出さない方が正しい行動だよな。


「裕太の兄貴、終わったんだぞ!」


 ルビーが元気に片づけが終わった事を報告してくれる。食器や調味料、料理道具が並べられると一気に雰囲気が料理店っぽくなったな。食堂と言うには少しお洒落過ぎる気もするが、カッコいい分には問題無いだろう。


「みんな、お疲れ様。次は雑貨屋の予定だけど、少し休憩する?」


「休憩は必要ないんだぞ! でも食材は氷室に入れないの?」


「氷室に入れても食材は少しずつ悪くなるから、全部のお店が完成した後に入れる予定だよ」


 数時間しか変わらないだろうが、今すぐに食材を氷室に入れても問題はないんだけど、どうせならいい状態を長く維持できる方が得だ。


「そっか、じゃあ早く残りのお店を作ってしまうんだぞ! 全部終わったら沢山料理をしてもいいんだよね?」


 まるでトルクさんみたいな考え方だな。どうしてこう俺の周りには料理に夢中な人や精霊が……いや、トルクさんはともかく、ルビー達は料理が大好きな精霊って事で連れてきたんだから当然か。


「ああ、沢山作っても大丈夫だ。レシピも渡すから色々と試してくれ」


「むふーー! 頑張るんだぞ! 行こう、裕太の兄貴!」


 料理ができるって事で気合が入ったルビーが、食堂から走って出ていった。こんなところまでトルクさんにソックリじゃなくてもいいんだけどな。


 ……エメ達もルビーを追って走っていったので、俺とシルフィも食堂を出る。店は隣なんだから走らなくてもいいのに。


「ふふ、元気いっぱいね」


「そうだね。他の上級精霊ってあんな感じなの?」


「……うーん、醸造所に居る上級精霊達はもう少し大人っぽいし、あの子達は特に子供っぽい方だと思うわ。たぶん仲間達と一緒に楽しく活動してたから、気持ちが若いのね」


 ルビー達、楽しそうにしているからな。毎日を趣味についやして元気いっぱいに行動しているから、大人になる暇がなかったんだろう。


 精霊がどのぐらい生きるか知らないけど相当長そうだし、若々しくいられるって凄い事かもしれない。……なんとなく哲学的な事を考えてしまった。レベルが上がって頭がよくなった効果を初めて実感したよ。知力はBからずいぶん上がってないけど……。



 ***



 ルビー達の頑張りでそう時間は掛からずに店の内装と商品の陳列は終わった。雑貨屋ではシトリンがメインで商品棚やカウンターを作っていた。


 エメに木で棚を作ってもカッコいいよねっと聞いたら、雑貨屋は日当たりが悪いし、常に商品が並べてあるので木に負担が大きいと答えが返ってきた。


 ……木だから日当たりや水の心配もあったか。食堂は前面がガラスで日当たりも良いし、食事をしている時以外は木に負担がないもんな。曲がりくねってるけど。やっぱりあんまり頭がよくなった気がしないよな、知力B……。


 手早くマリーさんのところで仕入れた商品を陳列し雑貨屋が完成。見た感じ種類は豊富で悪くは無いが、棚には隙間がある。街に行った時にでも少しずつ新商品を仕入れてこよう。ある激安の店の影響かもしれないが、並べきれないほどの商品があった方がワクワクするもんな。


 両替所はシンプルにカウンターと、順番待ちの精霊の為のベンチ。それだけだと殺風景だったので、空きスペースにテーブルと椅子をセッティングした。近くに食堂があるから使うかは微妙だが、のんびり休憩できるスペースが他にあっても問題ないだろう。


 子供用宿屋はベッドと簡単な家具を置くだけなのですぐに終わった。ただ、子供達がはしゃぐスペースをと、ノモスに大きめに作ってもらったところに少し問題が発生した。


 サフィが言うには、はしゃぐには地面が固すぎるそうだ。ノモスがきっちりと平らに均して陶器のように固めてくれたが、確かにカッチカチだ。いくら精霊が怪我をし辛いといっても、固い地面の上で転げ回るのは嫌だよな。


 家の中に芝生を生やすのも違うだろう。候補としては板張りにするか、ふかふかの絨毯を買ってくるか……ふかふかの絨毯だな。確かジャイアントディアーの皮を使った、フカフカの絨毯が売ってたから、あれを買ってこよう。


「いくつか改善したい問題が出てきたけど、だいたいのところはこれで完成だね」


「ええ、本当に基本的な部分だけだけどね。最低限の受け入れ態勢は整ったから、あとはみんなで相談しながら村を作っていく形になるわ。基本的に自給自足できる部分は自給自足にするつもりだけど、何か必要な物が出てきたら裕太も協力をお願いね」


 精霊達の力なら大抵の事は自分達で何とかなりそうだけど、時間がない場合や買った方が、手間も時間も掛からないものは確かにある。街に行くついでに買うぐらい簡単だし、何の問題もないな。


「了解、気軽に言ってくれて問題ないから、必要な物があったらいつでも言って」


「助かるわ。ありがとう裕太」


「どういたしまして」


 まあ、これぐらいの事で恩に着せてたら、シルフィ達から受けた恩を返すのが大変過ぎる。……さて、これ以上ルビー達を焦らすのは可哀想だな。俺を期待の眼差しで見つめるルビー達に向きなおる。分かってますよ、食材とレシピですよね。


「じゃあとりあえず氷室に行こうか」


 テンションが上がったルビー達に引っ張られながら氷室に到着した。


「結構しっかり作り込んでるんだね。あの上の部分は? なんだか複雑になってるけど、何か特殊な食材を置くの?」


「こっちはサフィが大きな氷を作る場所なんだぞ! 地面にも氷は置くけど、冷たい空気は下に行くからこっちの方がよく冷えるんだ! あそこについてる管は、上の氷が溶けて水になった時、食材をぬらさないように排水するためなんだぞ!」


 ルビーが自慢げに説明してくれる。昔の冷蔵庫の方式か……俺も冷気が下に落ちる事は知ってたんだけど、氷室に応用する事は思いつかなかったな。そこら中凍らせればなんとでもなるって力技で済ませてしまった。テンプレとは逆に知識チートをされたような気がして、ちょっと凹む。


「それでこっちはお肉をつるすんだぞ! お肉は時間が経つと美味しくなるんだ! 温度とか湿度とか管理は大変だけど、それだけの価値はあるんだぞ!」


 ……おおう、熟成肉を作れるんだ。シルフィ、すごい人材を連れてきてくれたな。俺も熟成肉の存在は焼き肉屋とかで知ってたけど、何をどうしたらいいのかさっぱりで、手を付けられなかったんだよな。


 ルビー達の料理の技術って想像以上に凄いのかもしれない。そういえば精霊は長生きなんだし、人間では考えられない長い期間、料理の修行ができるって事だな。


「熟成肉って、魔物のお肉も美味しくなるの? それだったら仕事として、俺のお肉の管理をお願いしたいんだけど」


「裕太の兄貴はお肉を寝かせたら美味しくなるって知ってたのか?」


「ああ、熟成肉が美味しいって事は知ってたんだけど、どうやって寝かせるかを知らなくて、手が付けられなかったんだ」


「おお、さすが裕太の兄貴だ。他の精霊達は説明しても腐るだけだって、理解してくれなかったんだぞ! 魔物のお肉は種類によって熟成させた方がいいかが決まるんだ。弱い魔物のお肉はほとんどが寝かせた方が美味しくなるんだぞ! 強い魔物のお肉は、お肉に宿っている魔力が抜けると味が落ちちゃうんだ」


 ……そうなんだ。ドラゴン系のお肉が、もう一段階美味しくなるのかとワクワクしたんだけど、そう上手くはいかないようだ。あのお肉のワンランク上の旨み、味わってみたかったな。


 でも、ルビー達なら俺が知らない知識や、無理だと諦めた料理やお菓子を再現してくれるかもしれない。なんか俺のテンションまで上がってきたよ。色々と話を聞いて相談にも乗ってもらおう。楽しくなってきたぞ!

読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ステータスにある知力ランクは、魔法威力を上昇補正値的なサムシングであって、頭の良さとは直結していないのだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ