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二百五十九話 精霊の村の計画 

 ちびっ子軍団+ジーナは広場の建設予定地に向かった後、俺が何をするか悩んでいると、シルフィに相談があると持ち掛けられた。精霊の村についてだそうだが、どんな話なんだろう?


「それでシルフィ、精霊の村がどうしたの?」


「ええ、実は昨晩精霊宮から職員が来てたのよね。それで、前に言っていた裕太への対価を置いて行ったのだけど、その時に精霊の村について相談を受けたの」


「対価……ああ、俺が受け取らないと困るって言ってたやつだよね?」


「そうよ。醸造所に置いてあるから後で渡すわね」


「了解。それでその職員の相談が、俺に関係あるって事なの?」


「実は精霊宮に他の精霊達から、大量の要望が寄せられてるらしいの。大半は浮遊精霊や下級精霊、中級精霊からなんだけど、やりたい事が沢山あるらしくて……」


「ベル達やフクちゃん達、メラルぐらいの精霊達が、色々とリクエストしてるんだ」


「そうなのよ。楽園では他の聖域ではできない事ができるでしょ。色々とやってみたかった事を、精霊宮に突撃して一生懸命説明しているらしいわ。それで精霊宮の職員が、どうにかならないかって相談に来たのよ。裕太にも予定があるから、どうなるかは分からないって言っておいたけど、裕太の予定が空いてて助かったわ」


 なるほど、そう言う事だったのか。ベル達みたいな子が沢山集まって、色々と一生懸命に説明する訳か。傍から見ていればたいそう微笑ましい光景だろうが、要望を理解して回答を渡すとなるとかなり大変な気がする。


「それで精霊の村を作るのを早められないかって事?」


「いえ、村の形を作るのはそう問題ではないの。醸造所を作ったように魔法である程度の建物は作れるわ。問題は精霊達のリクエストなのよ」


「リクエスト?」


「ええ、私達でなんとかできる事も多いんだけど、私達だけだと大変な事がいくつかあるの。特に難しいのが美味しい物を食べたいって事と、お買い物がしてみたいって事ね。お酒はともかく、料理は変わり者ぐらいしか手を出さないし、精霊は通貨自体を使ってないの。そもそも売る品物がないわ」


 ……それは困るな。リクエストに応えるには足りない物が多過ぎる。


「俺が食べ物や売る物、通貨なんかを準備すればいいって事? でも物を買ったとしても持って帰れないよね?」


「ええ、だから食べ物以外は、前にも言ってたようにレンタルって形になると思うわ」


 それなら最初にある程度揃えれば、後は偶に新作を入荷すれば形にはなるだろう。通貨は偽造する精霊なんかいないだろうし、紙幣を作ってもいいが面倒なら人の通貨をそのまま流用してもいい。


 物はマリーさんに頼めば何とかなるな。問題は食べ物か……トルクさんに大量発注すれば間に合うって量では収まらないだろう。


「そもそもどうして下級精霊や中級精霊達は食べ物に興味を持ったの? もしかして俺が原因だったりする?」


「うーん、裕太の事は精霊の間で話題になっているし、私達が食事をしているのが切っ掛けなのは間違いないわね」


 やっぱりそうか。ベル達ぐらいの年頃なら、他の子が美味しそうに料理を食べていたら興味を持つよな。 

「そうなると料理やデザートが一番の目的って事になるのかな?」


「ええ、ほぼ間違いなくそうなるわね」


 トルクさんに頼んだら限界まで作ってくれそうだけど、今でも忙しいって言ってるから、偶にならともかく延々と作ってもらうのは厳しい。他の料理店に頼むのも有りだが、定期的に仕入れるのは面倒だよな。


「料理に手を出してる変わり者な精霊は勧誘できるの? それと料理の腕は?」


「誘えば来ると思うわ。料理の腕は……この大陸の料理としては、美味しい物を作れる腕は持っていると思うわ。調味料や食材が手に入り辛いのに、色々と工夫して料理をしているみたいね」


 精霊だもんな料理をするだけでも、色々と制約があって大変な気がする。そう言う事なら食材を大量購入して料理を作ってもらえば何とかなる。肉類は迷宮で乱獲すればすぐに揃うし、料理と違って食材なら仕入れも問題ないだろう。


「じゃあその精霊を勧誘して食堂を作ろうか。食材は俺が一括で大量に仕入れておくよ。レンタルのお店の方も、マリーさんに頼んで商品を揃えてもらうから、店員を用意してくれるなら店が出せるね」


「頼んで良いかしら?」


「うん、たいして手間は掛からないから何の問題もないよ。通貨はどうする? 精霊の村だけで通用する簡単な通貨を作ってもいいし、大陸で使われている通貨を流用してもいいんだけど」


「新しい通貨ってどんなのを考えてるの?」


「この村でしか使わないんだし、ハンコを作って紙に押したような簡単なもので良いんじゃないかな?」


「それだと下級精霊はともかく浮遊精霊だと、紙がお金だって勘違いしちゃう子が出てきそうね。他で使う機会はないんだし、成長すれば理解するんでしょうけど、どうせなら普通の通貨の方がいいわね」


 紙をお金と勘違いか。ここ以外でお金を使う機会なんてないけど、どうせなら本物を使った方がいいって事だな。


「分かった。銅貨と大銅貨、銀貨を用意すれば十分だよね?」


「そうね、金貨を使う機会はないでしょうし銅貨と大銅貨、銀貨で十分だわ」


「了解。そう言えば作る店は食堂と雑貨屋だけ? 酒場は?」


「今回は下の子達のリクエストだし、酒場は準備しなくても勝手にできるから問題ないわ」


 それもそうか。なら当面は食堂と雑貨のレンタル店、通貨を用意すればいいのか。


「分かった。それで精霊達が滞在する場所は? 建物はシルフィ達が用意するとしても家具はどうするの? 泊まるのならベッドぐらいは有った方がいいよね?」


「あー、そうだったわね。実体化しているなら、ベッドで寝たがるでしょうし必要よね」


「ベッドは有った方が喜ぶと思うよ」


 ベル達も自分の部屋を喜んでるし、実体化していない時でも偶に子供部屋で寝たりしてたからな。実体化してからはベッドの利用頻度も更に増えたし、遊びに来る精霊達もベッドを使った方が楽しいだろう。


「そうよね。そうなると……ああ、ちょうどいいわ。職員が資金集めの案も対価と一緒に持ってきてたの。ちょっと取ってくるから待ってて」


 シルフィが飛んでいってしまった。しかし、沢山の下級精霊や中級精霊のリクエストか……それだけ精霊の村を楽しみにしているって事だよな。どうせ来るなら楽しんでもらった方が俺も嬉しいし、気合を入れて頑張ってみるか。


「裕太、お待たせ」


「いや、全然待ってないよ」


 実際に、ちょっと考え事をしている間に戻って来たもんな。


「そう? まあいいわ。これが裕太に土地を借りる対価で、こっちが資金集めの方法ね」


「えーっと、宝石?」


 対価の方は六つのピンポン玉ぐらいの宝石、それぞれに色が違う。資金集めの方法はパチンコ玉みたいな宝石が、沢山転がっている。


「違うわ、これは精霊王様達が作った精霊石ね」


「精霊石? 精霊王様が作った?」


 何それ怖い。そんな物を貰って良いの?


「そうよ。裕太は私達と契約しているから、あんまり意味はないんだけど、対応する属性の魔術を……そうね二倍にするぐらいの効果は有るわ。売り払う事を前提にしているから、二倍程度に抑えてあるけど、売ればそれなりの値段にはなるはずよ」


 ……二倍って、超一流の魔術師が使ったら凄い事になりそうなんですけど。


「そんなの売ったら戦争に使われちゃうよ」


「世間にはそれ以上の効果を持った、迷宮産の魔道具が幾つも出回ってるわ。二倍程度だと高価ではあるけど、手に入らない物ではないって感じね」


 そう言えば迷宮があったな。結構理不尽な道具が出てくるから、それぐらいの魔道具もあるか。


「何度も言うけど。シルフィ達にはお世話になってるんだから、こういう物を貰わなくていいんだ。でも、それだと困るんだよね?」


 分かってるけど聞いてしまう。なんか対価が精霊王様が作った物とか、ちょっとビビるよね。できればそっとなかった事にしてほしい。


「ええ、契約者同士なら、お互いの感情だけで済ませていいのだけど。聖域に関しては精霊全体に関わる事だから、対価を用意するべきなの」


 ……お金に困ったら売るって事で魔法の鞄に納めておこう。


「分かった貰っておくね。それでこっちの資金集めの方は何なの? 小さいけどこれも精霊石?」


「それは精霊石のなりそこないね。ガラスよりも少し丈夫な石、効果もほとんどないわ。でも綺麗だし、浮遊精霊でも作れるから、商材にならないかって職員が考えたの」


 見た目は透き通った色付きの宝石みたいだし粒も揃っている。一般向けの宝飾品とか、ステンドグラスみたいに利用すれば需要はありそうだな。


「これが商材になったら量産してお金を稼ぐって事?」


「ええ、これなら簡単に作れるし、ここに遊びに来た子達のお小遣い稼ぎにもなるわ。まとまった量を買い取ってもらえると助かるのよね」


 なるほど精霊石のなりそこないを対価に、精霊にお金を配るのか。そしてそのお金を精霊の村で消費する。経済として正しいのか分からないが、なんとか回るかな?

 

 この石が商材になったら、一日もしくは一人当たりの、買い取り上限を決めておいた方が良いかもしれない。


「分かった、次に迷宮都市に行ったらマリーさんに相談してみるよ」


「ええ、お願いね」


「早い方が良いなら明日にでも迷宮都市に行ってみる? 俺とシルフィだけなら片道四時間程度だし、ちょっと行って帰ってくるのでも構わないよ」


 ちょっと前ならサラ達を死の大地に放っておくのは怖かったけど、ジーナが仲間になったし、聖域になって、精霊達の姿が見えるようになった事で安心感は桁違いに増した。


「早めに行動してくれるのは助かるけど、いいの?」


「うん、職員さんも困ってるみたいだし、資金稼ぎの方法は早めに確認できた方が良いよね。それなら少しぐらいは頑張るよ」


 飛ぶのはシルフィだけど。……できれば、家の発注もついでに済ませたいところだが、今朝シルフィと話したばっかりだからな。さすがに無理があるだろう。


「そう、じゃあお願いするわ。裕太、ありがとう」


「どういたしまして。あっ、さっきの精霊石のなりそこない、商材になるかの確認の時に少し量があった方が良いから、ある程度作っておいてくれる?」


「あれなら簡単に作れるから、数を揃えるのは問題ないわ。どのぐらい持って行くの?」


「色毎に両手で持てるぐらいあれば、使い方のイメージがしやすいと思うよ」


「分かったわ。じゃあみんなにも伝えておくわね」


「うん」


 なんか思ってた流れと違って結構早めに迷宮都市に戻る事になってしまった。日帰りだけど時間はありそうだしメルの所に顔でも出すかな。


 ……あっ、次に俺達が来る前に、ファイアードラゴンの牙の短剣を仕上げますって気合入れてたな。俺がこんなに早く訪ねたら凹む気がする。聖域に連れて来てメルとメラルの御対面を演出するのも悪くないが、今回顔を出すのは止めておこう。短剣が完成した頃に話をすれば問題ないだろう。まずは精霊の村からだな。

読んでくださってありがとうございます。

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