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二百四十六話 聖域

特別更新ですので、前日の話を読み飛ばしている可能性があります。ご注意ください。

ゴールデンウイークの更新予定は活動報告に載せておりますので、ご確認いただけましたら幸いです。

 なんとなく予想していた通りに精霊王様達が、ノモスと一緒に泉の家にやってきた。風の精霊王様と少し話しただけで、さっそくこの場所を聖域にする事になり、全員で祭壇がある泉に移動する。


「じゃあそこで待っててね」


泉の縁に到着すると風の精霊王様が軽く言って、みんなで飛び立ってしまった。ヤバい、いきなり始まりそうだ。魔法の鞄からスマホを急いで取り出し、カメラを起動しながら皆に声を掛ける。


「みんな、この場所を聖域にする為に精霊王様達が儀式をするからね。めったに見られない光景なんだからしっかり目に焼き付けておくように!」


 俺がいきなり取り出したスマホに興味を引かれている子も居たけど、俺の言葉で真剣に祭壇を見つめている。これなら見逃す事はなさそうだ。


 精霊王様達が自分の属性の杖の前に浮かぶ。慌ててスマホを祭壇に向けて録画を開始するが……画面には泉と噴水、属性の杖と杖から出ている魔法しか映っていない。


 精霊は映像に映らないのか、ちょっと残念だな。でもカメラを通して見た光景が、普段ジーナ達が見ている光景なんだろう。これはこれで貴重な体験だ。スマホを祭壇に向けて固定しながら、俺自身は自分の目で祭壇を見つめる。


「じゃあ始めるよー。しっかりみててねー」


 風の精霊王様がこちらにピコピコと手を振りながら、開始の合図をくれる。親切なんだろうし助かるのは間違い無いんだけど、緊迫した雰囲気が緩んじゃったな。


「始まるよ」


 みんなに声を掛けて俺も風の精霊王様に手を振る。精霊王様達がそれぞれ頷き、何かを確認しあった後に一斉に属性の柱が立ち昇った。


 風の柱。水の柱。土の柱。火の柱。光の柱。闇の柱。天を突くほどの大きな六本の柱だ。顔と一緒にスマホを上に向けるが柱のテッペンが見えない。


 ベル達とフクちゃん達は「すごーーーい!」と大はしゃぎしているが、ジーナ達は呆然として声も出ないようだ。


「ねえ、シルフィ。これって危険じゃないかな? 死の大地にこんな現象が起こったら、生きている大地の国家から発見されたりしない?」


 聖域になったら他国から軍隊の派遣とか嫌なんですけど。


「ふふ、裕太は心配性ね。気軽に行き来しているから忘れてるかもしれないけど、一番近くの国まで歩いて百日以上掛かるのよ。見えたりしないわ。例え見えたとしても場所の特定は困難なんだから安心しなさい」


 そう言えば随分遠いんだよな。間には起伏もあるんだし、大丈夫だと信じよう。だって今更どうしようもないもん。考える事をやめて六本の柱に注目する。これからどうなるんだ?


 ジッと見ていると六本の柱が接近し捻じりあうように絡まりだした。色が多いけどなんか床屋の看板みたいだな。だんだんと巨大な柱が捻じれ混ざり合いながらマーブル模様のようになり、絡まり合いながら大きな玉に変わって行く。


 混ざる度に密度が上がるのか、あれだけ巨大だった六本の柱が、バランスボールぐらいの大きさにまで収縮した。とりあえず水とか土の体積はどうなってるんだよってツッコミたい。


「きれー」「キュキュー」「すごい」「クククー」「やるわね!」「……」


 ベル達も大興奮で騒いでいるが確かに凄く綺麗だ。テレビで見た九谷焼の美しいグラデーションの壺に似た雰囲気を感じる。あの壺も凄く綺麗だったんだよな。


 目の前にある神秘的な光景にボーっとしていると、浮かんでいた六つの属性が混ざりあった美しい玉がゆっくりと下降しだした。


 ゆるゆると下降してきた玉は、六本の杖の中心にある噴水の上空でピタリと止まる。あの位置で六本の杖が聖域の要になる玉を支えるんだろうな。ん? 定位置についたはずの玉が輝きだした。光はドンドン強くなり、限界に達したのか弾けるように拠点の中を光で埋め尽くした。


「メチャクチャ眩しかったな。どうなったんだ?」


「あーーー!」


 何が起こったのか首を捻っていると、マルコが大声を上げた。


「おまえ、ウリか? ウリなのか? うわっ、声もきこえるし、さわれる!」


「プギャーーーー」


 マルコの顔に突撃をかましてなめまわすウリ。


「お前はシバだよな。ふふ、絵で見たよりもずっと可愛い。手触りも最高だな!」


「わふーーーーー」


 ジーナに抱っこされて、優しく撫で繰り回されるシバ。


「フクちゃんにプルちゃん? きゃ、くすぐったいわ」


「ホーーーー」「…………」 


 サラのホッペを両サイドから頬ずりする、フクちゃんとプルちゃん。


「わーーー。マメちゃんだーーー」


「ホーーーーーー」


 大喜びでマメちゃんを抱きしめるキッカ。


 ……ふむ……まず間違いなく聖域になったって事だよな。一応スマホの画面を確認すると、今まで映らなかった精霊達の姿が、画面にハッキリと映っている。


「べるたちもみえるーーーー?」


 それぞれの契約精霊達と戯れていたジーナ達にベル達が突撃し、混乱気味だったジーナ達が更なる混乱に突き落とされる。


「シルフィ、聖域になったんだよね?」


「ええ。この場所は間違いなく聖域になったわ。うふふ、死の大地に聖域ができるなんて本当に凄い事なのよ。さすが私の契約者ね」


 シルフィがいままでにない優しい微笑で俺の頭を撫でる。なんだか子ども扱いされているようにも思えるが、シルフィの綺麗な表情にのまれて言葉が出てこない。


「私達の契約者でしょーーー。裕太ちゃん。シルフィちゃんだけを構ってないで、お姉ちゃんも構わないとダメなんだからねーーー」


 固まっていると強い衝撃と共に背後からディーネが抱きついてきた。あれ? 何だかいつも以上にディーネの存在を感じる? 今までも普通の人間と変わらない感触だったのに、更に柔らかさ、息遣い、匂い、五感に訴え掛けてくる感覚がよりハッキリしている。……要するに、ものすごくエロい感じだ。やわらかい。


「まあ、確かに裕太はよくやった。さあ、楽しい酒造りの始まりじゃーーー」


 おいノモス、俺を褒める言葉がついでで、酒造りを叫びたかっただけだよな?


「ふふ、裕太さん、よく頑張りましたね」


「あ、ああ、ありがとうドリー」


 背中にディーネをひっつけたまま、ドリーに優しく褒められる。なんか無性に恥ずかしい。


「おう、よくやったな。これから楽しくなるぜーー」


 イフには頭をグリグリとされながら褒められる。 


「裕太。聖域になった事で動物達にも良い影響が出るから、楽しみにしてるといいよ」


「えっ? どんな影響?」


「聖域に居る動物達は清浄な土地に影響されて、穏やかになるからね。ちゃんと食料が充実しているのなら、頑張れば仲良くなれるよ」


「マジで!」


 最後にヴィータが爆弾を落として行った。あの、俺を見たら猛ダッシュで逃げる動物達と、頑張れば仲良くなれるの? 夢のモフモフキングダム計画、再始動!!


「ゆーた、えらいーーー」「キュキューキュキュキューー」「すごくえらい」「ククークゥククーー」「なかなかやるな! ほめてやるぜ」「……………………」


 シルフィ達に褒められ終ると、ジーナ達にちょっかいを出していたベル達が突撃してきて、口々に俺を褒めてくれる。おうふ、フクちゃん達も混ざって訳が分からなくなってるな。


 ベル達とフクちゃん達の勢いに押されたのか、ディーネが俺から離れる。ちょっと残念だけど、理性がギリギリだったから、ある意味ベル達に助けられたな。


 ひとしきりベル達とフクちゃん達に褒められ、俺もお礼に撫で繰り回す。やっぱりこの子達も存在感が強くなったように感じる。俺にとっては聖域になってもあんまり変わらないなって思ってたけど、嬉しいサプライズだ。


「師匠! 凄いな。これが聖域か! シバがハッキリ見えて触れるんだ。あたし嬉しいよ!」


「お師匠様。フクちゃんとプルちゃんを抱きしめられるんです。ありがとうございます」


「なあ師匠! ウリって力がつよいんだ。それにプギーってなくんだぞ」


「マメちゃんかわいいの。おししょうさま、ありがと!」


 フクちゃん達を追いかけてきた弟子達にも満面の笑みでお礼を言われる。なんか褒められまくりだな。全員でワイワイキャーキャーと騒いでいると、何かを忘れているような気がした…………精霊王様!!


 ヤバいと思い周りを探すと、少し離れた場所で生温かい目で俺達を見る精霊王様達が居た。


「お待たせして申し訳ありません」


「あはは、別に構わないよ。人間と精霊がこれだけ仲良しって事は、僕達にとってはとても嬉しい事なんだ。もっとゆっくりしてても構わないよ」


 そんな微笑ましい物を見る目で俺を見ないで。どうしたらいいのか分からなくなるから。


「い、いえ。十分に時間を頂きました。ありがとうございます」


 えーっと、これからどうするんだ? 展開が急に変わり過ぎて頭が追いつかないぞ。えっと……まずは、精霊王様達をおもてなししないとな。よく分からんがとりあえずここは宴会だろう。っていうか宴会以外に精霊が喜びそうな事が分からん。


「あの、改めましてありがとうございます。聖域になった記念に宴会を開きたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか?」 


「宴会かー。いいね、楽しそうだ! もちろん僕達は大丈夫だよ」


 風の精霊王様の言葉に、他の精霊王様達も頷いている。いまだに言葉を交わせて無いが、宴会の間にちゃんと挨拶しておかないとな。


「ありがとうございます。では、家の方に移動しますね」


 精霊王様達を案内して家に向かう。


「今日は人数も多いし、お酒が沢山出るわよねー。お姉ちゃん楽しみだわー」


「そうじゃな。祝いの席なんじゃし、裕太も大盤振る舞いするじゃろう」


「えんかいーー」


 背後からディーネとノモスの会話が聞こえる。あれは俺に沢山酒を出せと催促しているのか? 確かにお祝いなんだし人数も多いが、どのぐらいお酒を出せばいいんだろう? あと、ベルが「えんかいーー」って一緒にはしゃいでるけど、お酒は飲ませないよ。


 リビングを半分に区切って、ベル達とフクちゃん達、サラ達は避難させておこう。いつもは宴会の状況を見せないようにしていたが、今回はお祝いなんだし参加させないのは可哀想だよな。子供達には料理とデザートを沢山出しておくか。

読んでくださってありがとうございます。

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