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二百二十五話 財宝鑑定

 九十層のボス、アダマンタイトの巨大ゴーレムを撃破した。撃破した後にくだらない事を考えていたら、最初にボスを撃破した特典の出現シーンを見逃してちょっと凹んだが、まだチャンスは残っている。今は出てきた財宝を確認しよう。


「ぴかぴかー」「キュキュー」「ざいほう」「クククー」「はでだぜ!」「……」


 財宝に目を向けると、すでにベル達が山盛りの財宝の周りで楽しそうに飛び回りながら観察している。その楽しそうな姿にホッコリしていると、ノモスが少し焦り気味に近寄ってきた。


「おい裕太、財宝に雷が……」


「シルフィ、財宝を浮かせて!」


 ノモスの話を最後まで聞かずにシルフィに頼む。シルフィもすぐに状況を理解してくれて、風で包み込んだ財宝を俺の前まで運んでくれる。


「……ノモス、大丈夫かな? 偶にバチッってなってたよね?」


「ふむ、魔道具は調べて見んと分からんな」


 マジか……杖っぽいのも財宝の山に混じってるんだけど、壊れてたらショックが大きすぎるぞ。


「とりあえず収納するから、階段に移動してから確認してくれ」


「うむ」


「裕太、巨大ゴーレムのアダマンタイトは収納しないの?」


「そうだった。財宝を収納してからゴーレムの方も収納するよ」


 財宝を収納して巨大ゴーレムを収納に向かう。本体はかなりの巨体にも関わらずあっさり収納できた。問題はそこら辺に散らばる、切り飛ばしたアダマンタイトだな。巨大ゴーレムも両腕をブンブン振り回していたから、広範囲に散らばってしまっている。


 もう本体を収納したから十分な気もするが、もったいないのでベル達に協力してもらって細かい破片まできっちり回収しよう。なんか大量にあるとありがたみが無くなるが、金よりも高価な希少金属だから、捨てたらバチが当たりそうだ。


 ***


 みんなに協力してもらってアダマンタイトを拾い集め、九十一層に下りる階段でノモスに財宝の確認をお願いする。


「ふむ、迷宮が雷対策をしておったのか? 魔道具は全部無事じゃな」


 おお、良かった。迷宮もそこら辺のケアはしてくれるんだ。確かに財宝が出て雷や水で魔道具が壊れたら悲惨だもんな。ガッツリと命を奪いに来ているのに変なところで優しい……こんなところでギャップ萌えを感じさせるとか、迷宮も侮れないな。


「不具合が無くて助かったよ。悪いけど今までの宝箱から出た魔道具もあわせて鑑定してくれ。杖は最後に頼むね」


「うむ」


 八十六層からここまでで手に入れた財宝もノモスの前に並べてお願いする。九十層で出た財宝の中にも杖が四本あったし、探索で発見した二本の杖を合わせると六本か。今のところ持っている杖は闇と火。残りは風、水、土、光の杖だな。今回で杖が揃う可能性もあるし、ちょっとドキドキだ。


 とりあえず魔道具じゃない普通の財宝は魔法の鞄に収納して、杖以外の魔道具の鑑定結果を教えてもらう。    


 回復の指輪

 指輪に魔力を込めると回復魔術が発動する。ヴィータやムーン、プルちゃんが居るからあんまり必要無い気がする。

 

 万能鍵

 カギ穴があればどんな鍵でも解錠できる魔法のカギ。迷宮の宝箱を開けるのが楽になるから助かるけど、簡単に犯罪に走れそうな道具だな。    


 風の靴

 身に付けていると風を纏い移動が楽になる。小さくて移動が不利なキッカに渡そうかな? マメちゃんが居るから代用可能な気もするけど、常に身軽でいられるのなら便利だろう。

  

 湧水の壺

 魔力を込めると水が湧きだすそうだ。開拓当初に欲しかった魔道具だな。


 魔法の野外調理道具セット

 野外で料理をするのに必要な調理道具が小さなポーチにまとめられている。

 包丁、まな板、フライパン、鍋、オタマ、フライ返し、コンロ……色々と入ってるな。


 俺は魔法の鞄に入っている出来合いの物で十分だし、別行動中はジーナ達に持たせておくか。料理が好きだし野営に便利なら喜ぶだろう。


 気になった魔道具はこんなところだな。大半がシルフィ達の力を借りればなんとかなるから、微妙な感じだ。回復の指輪とか教会が回復魔術を独占しているらしいし、結構貴重な気がする。これもトレードの材料になりそうだな。


「ノモス、風の刃を飛ばす剣や土の玉を飛ばす槍とか、属性に関する武器や防具があったけど、これらは魔法の杖の代わりにならないの?」


「必要な属性を放出、維持できればいいんじゃから、手を入れれば代用は可能じゃな」


 代用可能なのか。なら風の剣、土の槍、水の盾は使えそうだな。キッカには風の靴を渡せばいいから、残りの使わない装備で、便利そうなのはサラとメルに渡そう。メルには北欧の雷神が使っていたような、雷が出るハンマーが良さそうだな。サラには水のローブにしよう。


 水のローブはダークドラゴンの装備と違って、痴女っぽさがないから安心してサラに渡せるところが素晴らしい。


 大体の方針が決まった。あとは祭壇を魔法の杖で統一するか、それぞれの属性を全部違う種類の魔道具にするかだな。


 ほとんどが杖で一つ二つが剣とか槍だったら、統一感が無くて残念な感じになりそうだ。魔法の杖の鑑定結果次第で、杖で統一かバラバラか方向性を決めよう。


「ノモス、杖の鑑定をお願い」


「うむ……九十層で手に入れた杖は、土、火、風、水じゃな」


 おお、九十層の杖はセットで出て来たんだ。火が被っちゃったけどセットで出たならしょうがない。どうせなら光と闇も加えて六本セットで出て来てくれたらいいのに。あと必要な属性は光だな……一番レアっぽい属性が残ってしまったのは辛いところだ。


「ノモス、残りの二本の発表をお願い」


 両手を顔の前で組んで、目を瞑って祈りを捧げる。ここまで来たらあっさりと揃えて、楽勝だったと笑いたい。


「そんなにみんなで祈っても結果は変わらんぞ?」


 ん? みんな? チラッと目を開けて周りを見ると、ベル達も一緒になって祈ってくれている。可愛い上に心強い。さあ来い、光の杖! 祈りを込めてもう一度目を瞑る。


「……雷と氷じゃな」


「えっ?」


「雷と氷の杖じゃ。聞こえておるじゃろ、何度聞き直しても結果は変わらんから諦めろ」


 だよね! そんなに上手く行くわけないよね! 俺、分かってた!

   

「雷と氷か、光の杖の代用にはならないよね?」


「ならんな」


「残念」


 まさかの雷被りかよ。俺ががっくりとうな垂れると、ベル達が寄って来て慰めてくれる。みんなを撫で繰り回しながら沈んだテンションを頑張って復活させる。 


 武器と防具にも光の属性の物は無かったよな。杖が五本揃ったんだし、光の属性もどうせなら杖がいい。百層まで行けば光の杖が見つかるんだろうか?


 見つかる可能性はあるけど残り一本ってところが難しい。いっぺんに揃うとなんてことないんだけど、最後の一つが手に入らずに苦しむのはこういう時のお約束だ。王家か教会と交渉して譲り受けた方が確実かもしれないな。そうしないと杖が出る度に被りで心がすり減ってしまいそうだ。


 今回は二回も迷宮に潜ったし、そろそろ泉の家が心配だ。王家も教会も偉い人と交渉しないとダメだから、どっちも難しそうだよな。とりあえず今回は迷宮から出てマリーさんに相談しよう。ちょっと九十一層を覗いて帰るか。


 ***


 九十一層からの帰り、戯れてくるベル達としっかりとスキンシップを取りながら飛んで戻る。しかし九十一層から出てくる魔物はあれなのか……なんか微妙だな。微妙な魔物がメインな事に、若干の不安を抱えながら考えていると、シルフィから声を掛けられた。


「裕太、ジーナ達が居るわよ」


「えっ? マジで? どこ?」


「ほらあそこよ。光球が浮いてるでしょ」


 シルフィが指さす方向にポツンと光球が浮いている。ここは確か三十七層だったよな。さすがに四十六層の火山までは行けなかったか。アンデッド相手に苦戦したって事も無いだろうけど、三十七層まで来るのも結構時間が掛かるもんな。


「あそこか、ちょうどいいから一緒に帰ろうか。シルフィ、あそこまでお願い」


「分かったわ」


 シルフィに頼んでジーナ達のところに向かう。こちらに気づいたマメちゃん? が「ホー」っと近づいてきて、嬉しそうに俺達の周りを飛び回る。大興奮だな。騒ぐマメちゃんを落ち着かせながらジーナ達に近づく。


「あっ、おししょうさま!」


 キッカが一番に俺に気がついた。マメちゃんが俺の近くに居るから気付いたんだろうな。


「やあキッカ、久しぶり! 怪我はしてない?」


「うん、げんき!」


「そっか、元気か!」


 走り寄って来たキッカの頭をグリグリと撫でる。初めてアンデッドを見た時は怯えまくってたのに、今では暗い迷宮の中でも楽しそうに笑っている。子供の成長って凄いよね。寄ってきたジーナ達とも挨拶を交わし話をする。


「ジーナどんな感じ、今から四十層を目指すの?」


「いや四十層はクリアしたんだ。四十六層まで行くのは準備や時間が足りなさそうだから、次に挑戦する事にして、今は戻ってる途中なんだ」


 既に四十層のボスは倒した後なのか。そうなると迷宮の最前線までたどり着いたって事になるのか? ジーナ達が一流冒険者……メルとメラルも居るとは言え、なんか物凄い違和感だ。全員が精霊術師って結構なアドバンテージだよな。


「かなり順調だね。危ない場面は無かった?」


「んー、メルさんもメラルさんも居るし、何も問題無かったよ。ドリーさんの手も煩わせなかったし、順調だったな」


「そっか、でも火山の後半は敵のレベルも極端に上がるから、あんまり無理して進まないようにね」


「ああ、アサルトドラゴンやワイバーンが出てくるんだよな。あたし達だと勝てないのか?」


「うーん、メラルが居るから勝てるのは勝てるね。でもフクちゃん達だけだとたぶん攻撃力が足りないと思う。あと、もし先に進めても五十層のファイアードラゴンは桁が違うから、絶対に挑戦しないように」


 ドリーが付いてるからファイアードラゴンに挑戦しても勝てるだろうけど、俺の想像以上にジーナ達の攻略ペースが早い。ジーナ達が目立って有名になる事は俺的には大歓迎だけど、火山辺りでじっくりと実力をつけて貰った方が安心できる。


「分かった。でも火山には行っていいだろ? 胡椒やマグマフィッシュを採りたいんだ」


 ジーナがキラキラした目で俺に言う。胡椒とマグマフィッシュか、実家の食堂で使いたいんだろうな。でも、言ったら悪いけどジーナの実家の食堂はスラム近くの激安食堂、マグマフィッシュみたいな珍味が売れるんだろうか?


「えーっと、ちょっと待ってね。シルフィ、フクちゃん達で毒ガスを防いだり、マグマの熱を遮断できるかな?」


「毒ガスを防ぐのとマグマフィッシュの捕獲は問題無いけど、マグマの熱を遮断するのは難しいと思うわ。フクちゃん達だと、まだ温度を下げる事ができないもの」


「なるほど、ありがとうシルフィ。ジーナ。フクちゃん達だとマグマ周辺はちょっと厳しいみたいだよ。フクちゃん達だけだとマグマには近寄れないって。マグマの近く以外はなんとかなるけど、暑いのは覚悟しないとダメだね」


「そうなのか、分かった。ありがとう師匠」


「どういたしまして。さて、ここで話し込むのもアレだし、みんなで一緒に戻ろうか。大丈夫だよね?」


 ジーナ達も問題無いそうなので、シルフィに頼んで全員で飛んで帰る事にした。サラもマルコも話したい事があるみたいだし、メル、メラル、ドリーの話も聞きたい。迷宮を出るまでの数時間は、退屈し無さそうだな。

読んでくださってありがとうございます。

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