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二百二十一話 八十六層

 ジーナのちょっと痴女っぽいセクシー装備の活用方法も、マルコのおかげで何とかなった。次はマルコの魔法の盾の検証だな。


「みんなは少し離れててね」


 ジーナとサラとキッカを少し離れさせてマルコに許可を出す。俺が先に試した方がいいかとも思ったが、ノモスも危険があるとは言ってなかったし大丈夫だろう。それにこういう物は自分が一番に使いたいはずだ。


「師匠、いくね!」


 マルコが魔法の盾に魔力を込めた瞬間、一瞬で魔法の盾から障壁が展開される。器用だな、俺は魔力を込める感覚がなかなか上手くつかめなかったのに……魔力が有る世界で生まれ育ったから、感覚が違うんだろうか?


 少し悔しいがとりあえず障壁の確認をしよう。ほぼ無色透明だが僅かに光を反射するのか、薄っすらと障壁が見える。微妙に厨二心が刺激されるカッコよさだ。


「マルコ、魔力は問題無い?」


「うん、全然平気!」


「障壁を張ったまま移動はできる?」


 マルコが前後左右に動いて見せる。移動も問題無さそうだし、結構使い勝手が良さそうだ。身の安全を守る物だし色々と確認しておかないとな。いつのまにかジーナがペタペタと障壁を触っている。とりあえず触れるんだから物理も防御できる事は確定したな。


 でも、もう少し安全面にも配慮して欲しい。触ったら危険だとか考えないんだろうか? ……考えてたら迂闊に触らないよね。ちょっと注意しておこう。


「じゃあマルコ、色々と実験してみようか」


「うん」


 しっかりとジーナにお説教したあと、改めて盾の検証を再開する。




 …………色々と実験をした結果、魔法の盾に追加で魔力を込めると、障壁を厚くする事と範囲を広げる事ができる事が分かった。障壁の最大の大きさは二メートル程で、強度は生活魔法程度の魔力だと拳一発で砕ける。


 攻撃の衝撃はかなり緩和されるが僅かにマルコに伝わるようだ。強力な攻撃だと障壁が砕けなくてもマルコごと吹き飛ばされる可能性もあるな。強度の上限を調べるには裏庭では狭すぎるので、迷宮で追加検証が必要だな。


「大体の事は分かったね。便利な盾だけど扱いが難しい、その時々に必要な魔力を込める練習をしておく必要がある。迷宮に入ってから無茶をしない範囲で色々と確認しておいてね。ジーナもマルコが無茶をしないように手助けしてあげて」


「うん!」


「ああ、分かったよ師匠。無茶はさせないから安心してくれ」


「頼むね。じゃあ明日から俺もジーナ達も迷宮探索を再開するから準備しようか。新しく増えた装備も含めて、ちゃんと話し合っておくように」


 締めの言葉を発して、解散しようとしたらキッカに袖を引かれた。


「キッカ、どうしたの?」


「おししょうさま、キッカもまどうぐほしい」


 キラキラとした瞳で俺を見上げるキッカ。ジーナとマルコを見て、羨ましくなっちゃったか。キッカの初めてのおねだりだし、叶えてあげたいところだけど、手持ちにキッカに役立ちそうな魔道具は無い。さすがに魔剣を渡すのは違うだろう。


「今は良い魔道具が無いから無理だけど、迷宮でいいのが見つかったらキッカにもあげるから、我慢できる?」


 頭を撫でながら言うと、我慢できると頷いてくれた。何としても使える魔道具をゲットしないとな。師匠の甲斐性を見せる時が来た。


「よし、じゃあ俺もキッカに良い魔道具があげられるように頑張るから、キッカも迷宮で頑張っておいで」


 分かったとジーナのところに駆けていくキッカを見送る。


「サラにも良い魔道具を用意するから安心してね」


「いえ、あの……お師匠様。魔道具は高価な物です。簡単に与えてしまっては、キッカの教育に良く無いのでは……」


 ……いやん、サラが顔を曇らせて俺を見ていたからフォローしたら、ものすごく真っ当な意見が返ってきた。


「確かにそうだよね。でもね、命が掛かっている迷宮探索だから、身が守れるものなら与えるつもりだよ。君達が独り立ちする時には、大精霊の護衛は無くなるんだ。今の内に手に入れられる物は手に入れて、しっかり準備をしておきなさい」


 過保護過ぎると言われそうだが、俺的には独り立ちしても大精霊の護衛を付けたい気分だ。でもさすがにそれは過保護過ぎるので、ジーナ達の装備を強化しておきたい。一人立ちした後で、ジーナ達が死んだら本気で泣く自信がある。


 実力的にはもう独り立ちしても問題無いけど、サラ達はまだまだ子供だからな。今の内にしっかりと準備して、大きくなったら安心して送り出せるようにしておこう。


 でも、サラの言う事ももっともだ。性格面でも歪まないようにしっかりと気を配っておく必要もある。弟子にしてから今までずっといい子だったんだ。これから性格が悪くなったら確実に俺のせいだからな。


「分かりました。しっかりと考えて準備しておきます」


「うん、でもサラ達が成人するまでは俺が面倒を見るから、そんなに急がなくていいよ。それと、キッカの教育に関しては、これからもサラの意見を聞かせてくれると助かる。よろしくね」


「はい」


「じゃあ準備に行っておいで。あっ、この魔法の鞄も持って行くといい」


 魔法の鞄を渡してみんなと合流するサラ達を見送る。さて、俺は夕食まで何をしようか。いつの間にか裏庭で、だるまさんが転んだを始めているベル達を見て思う。最近一緒に遊んでなかったし、ベル達と遊ぼう。


(みんなちょっといい?)


 俺が声を掛けると、だるまさんが転んだを切り上げて集まってくれた。みんな、なに? なに? 楽しい事? って顔をしている。


(今日はみんなで一緒にお買い物に行こうか。食べてみたい屋台があったら案内してくれると嬉しいな)


「ふぉぉぉ、やたいー」「キュキューー」「いきたいとこある」「クゥクククーー」「かいものだぜ」「…………」


 結構な喜びようだ。それだけ喜んでくれると俺も嬉しい。今日は大人買いを連発してしまうかもしれないな。


 ***


「じゃあみんな頑張ってね」


 迷宮に入ったところでジーナ達に手を振って別れ、シルフィにお願いして飛んで先に進む。前回はジーナ達を見送って、その後から迷宮内で追い抜いた時、微妙に違和感があったからな。今回は先に進ませて貰う事にした。


 ジーナ達には今回もドリーに護衛をお願いしているし、メルとメラルも参加しているから問題は無いだろう。


 洞窟の中を猛スピードで飛びながら進む。シルフィが洞窟内を把握して最適なコースを選んでくれているので、冒険者とすれちがう事も無く、偶に弾き飛ばされる魔物を憐れむ余裕すらある。最初に洞窟内を飛んだ時はジェットコースターに乗っているようで怖かったが、だいぶ慣れたな。


 周囲をご機嫌で飛び回るベル達と戯れながらまったりする。八十層に到着するまで半日以上、連れて行ってくれるシルフィには悪いが退屈だ。お昼は何にしようか?


 昨日ベル達に案内されて買いまくった屋台の料理にするか? 昨日食べたエンペラーバードのお肉は想像とは違って、美味しいけどメインになるようなお肉では無かった。


 脂肪もたっぷりだと聞いていたし、鳥なんだからジューシーでプリプリの食感だと思っていた。でも、出て来たお肉は筋肉質の噛み応えが強いお肉で、噛めば噛むほど味が染み出てくるタイプだった。


 味は違うが干したり加工した訳でもないのに、ビーフジャーキーやスルメのような感覚で、延々と噛み続けていたくなる味。酒飲みにはたまらないツマミになるんじゃないだろうか。


 トルクさんが調べた情報によると、既に干し加工されたようなエンペラーバードのお肉に、香辛料をすり込み本当の干し肉にすれば更に素晴らしい味になるらしい。焼いたら干し肉のようになるのに、干して干し肉にする意味が分からないが、旨味の凝縮具合が物凄いのだそうだ。


 その場でお肉を追加して、干し肉の加工をお願いした。元々味が濃かったお肉がどうなるのか、好奇心が刺激されるよね。大精霊に干し肉を渡したら、お酒の消費が増えそうなところが悩みどころだ。


 ***


「……ここが八十六層か。本で読んで知ってたけど、想像以上だね」


「ぴかぴかー」「キュキュキューー」「はげしい」「クーー」「まけないぜ!」「……」


 ベル達が目の前の光景に興奮してはしゃいでいる。英雄達はこの八十六層までは突破してるんだよな。八十七層は降りただけで諦めたらしいけど。


 目の前には叩きつけるような豪雨と、呆れるほどの雷が轟音と共に落ちまくっている。レベルが上がっていても雷に打たれたらヤバいだろう。こんな環境の中で英雄パーティーはよく八十六層を突破出来たよな。


 最初は諦めて、次に雷を逸らす為の魔道具と雷耐性の装備を準備して挑んだらしいけど、その魔道具が連続で落ちまくる雷の高負荷に耐え切れず破損。予備を用意してなかったら全滅の危機だったらしい。


 雨の影響で上から落ちてくるだけでなく、地面から伝わってくる雷を合わせると流石に魔道具も壊れるよね。俺の場合はシルフィが雷を逸らす事ができるのと、地面から浮いて進む予定だから攻略できそうだけど、他の人達は相当準備しないと無理そうだよな。


「ゆーた、はやくいくー」「キュキュー」「がんばる」「ククー」「じょうとうだぜ!」「……」


 迷宮の理不尽さに思いを馳せていると、ワクワクした目でベル達が進もうと急かしてきた。死の大地だとまったく雨は降らないし、迷宮都市周辺もあんまり雨が降らない時期らしいから、雨の中で遊びたいのかな?


 俺は雨だと部屋でジッとしていたい派なんだけど、この層はずっと雨だからから、止むのを待つのは無駄なんだろうな。


「ちょっと待ってね。ベル達には階段と宝箱を探す組と、魔物の警戒をする組で分かれて欲しいんだ。ベル達で話し合って組み分けを決めてね」


 俺の言葉にベル達が頭を寄せ合ってフンフンと相談を始める。今までは俺が適当に決めてたけど、今回はベル達の自主性に任せてみよう。


 八十一層からの魔物は特殊で、ベル達の攻撃が通用しない。そこら辺を踏まえてどんな組み分けになるのか楽しみだ。あっ、そう言えばイフを呼ぶ約束をしてたな……八十六層は俺が魔物と戦って、八十七層をイフに任せるか。


 うっかり忘れたらストレスが溜まったイフにガッツリ絡まれるだろうから、しっかり心に刻んでおこう。

読んでくださってありがとうございます。

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