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二百十八話 ちょっとした成果?

 迷宮から出て翌日、シルフィ、ベル達、ジーナ達はお休みにして、ディーネと共にマリーさんの所に素材を卸しに向かった。グレートエンペラーバードの事を伝えて、馬車の中でテンションが爆上がりのマリーさんを、頑張って宥めながら倉庫に到着する。


 倉庫の中に入るといつも通り人払いがされているんだが、何処かがいつもと雰囲気が違う。……なるほど、すぐに解体に取り掛かれるように、道具が全部準備されているのか。完全に俺の行動を読んで昨日の間に手配したんだろうな。


「マリーさん何を何処に出しましょうか?」


「ではこちらから順にマグマフィッシュ、ホワイトエイプ、エンペラーバード、グレートエンペラーバード、最後にこちらのテーブルに魔力草、万能草、神力草をお願いします」


 言われた通りに魔法の鞄から魔物を取り出し並べる。マグマフィッシュ、ホワイトエイプに喜びの声を上げ、エンペラーバードでヨダレを垂らし、グレートエンペラーバードで狂喜乱舞するマリーさん。こういう所がとても美人なのに引いてしまう原因なんだよな。


「裕太さん、解体した後はどのぐらい卸して頂けるんですか?」


 ひとしきり騒いだ後、真面目な表情で聞いてくるマリーさん。なんか疲れる。素材としてはファイアードラゴンの方が格上だし、必要なのは肉と羽毛ぐらいかな? 


 あの羽毛はハンパなくフカフカだったし、是非とも羽毛布団を作って貰いたい。間違いなく最高の寝心地に……年中温かなこの大陸、羽毛布団なんて必要ないよな。……まあ、別の大陸に行く事もあるかもしれないし、羽毛はストックと言う事にしておこう。


「エンペラーバードとグレートエンペラーバードの肉と羽毛を三分の一だけ戻して、残りは換金でお願いします」


「畏まりました。お支払いは何時ものように査定が終わってからで構いませんか?」


「ええ、今回はもう一度迷宮に潜り、先に進む予定ですので次の素材の分も纏めてで構いません」


「先に進まれるんですか! 英雄達でも未到達な場所に足を踏み入れるかもしれないんですね! 英雄達は先に進めば進むほど沢山の財宝を得たと言います。凄い事になりますね! そう言えば裕太さん、前から聞こうと思ってたんですけど、発見された財宝等はどうされているんですか? 見つかってないって事はありませんよね?」


「いえ、財宝も魔道具もかなり発見していますよ。探索しているパーティーが少ないので、結構宝箱が残ってますからね」


「抜かってました。そうですよね。魔法の鞄も発見されていますし、財宝が無い訳無いですよね。目の前の高級素材に浮かれて、そんな簡単な事を見逃すなんて……」


 ワナワナと震えた後、地面に両腕をついて悲痛な声を出すマリーさん。リアルorzってやつだな。興味深く観察していると、グリンっと顔だけこちらを向くマリーさん。ホラーだったら完全に取りつかれてる表情だ。そのままハイハイして俺にしがみ付くマリーさん。


「裕太さん、財宝は、財宝や魔道具はポルリウス商会に卸していただけないんでしょうか?」


「あー、何と言うか、財宝も魔道具も腐りませんからね。素材を卸すだけで十分過ぎるぐらいにお金になりますので、今のところは財宝や魔道具を手放すつもりはありません」


 開拓ツールの魔法の鞄に入れておけば素材も腐らないんだけど、迷宮に入ったのに素材も何も卸さないのはさすがに変だ。豪邸を建てる為にもお金は必要だし、素材を卸さないとマリーさんが困るから魔物素材は卸す必要がある。


 容量無限の魔法の鞄があるから必要無いんだけど、豪邸を建てる時には立派な宝物庫でも作ろうかな。財宝を飾ればものすごく煌びやかな宝物庫が完成しそうだし、自分の家に宝物庫があるとか、なんかカッコいいよね。


「そうですか……」


 がっくりとうな垂れるマリーさん。でも財宝や魔道具まで卸してたら、この国の通貨が足りなくなっちゃうよね。今貯まっているお金でも豪邸が建つだろうし……他にどうお金を使おう?


 テンプレだと孤児院とか学校を作ったりするのか? ……慈善事業とかガラじゃないし最終手段かな。サラ達も利用するつもりだったのに情が移っちゃったし、守る人数が増えたら胃に穴が開きそうだ。


 精霊術師の学校を作るのは魅かれるんだけど、条件を整えて教えないと、サックリ戦争の道具として利用されそうだから怖い。


 まずは豪邸を作って、目立つかもしれないけど海の近くにも別荘を作るか? あとは蒸留所や醸造所を作るのもありだ。まあ色々と考えよう。今のところ迷宮内の財宝は独り占め状態だから、楽しい事を思いついて、それがお金で何とかなるのなら、大抵の事はできる。


 奥さんが見つからなくて、ジーナ達が独り立ちしたら、金の力でハーレムを建設してやろうか。砂漠じゃないけど、死の大地にアラビアンナイトのようなお城をぶっ立てるのも楽しいかもしれない。こんな悩みを持つようになるとは……チートってまさしくチートだな。


「裕太ちゃん、話を先に進めましょうよー」


 うな垂れるマリーさんと、妄想の世界に突入した俺に、焦れたディーネが声を掛けてきた。早くお酒を選びに行きたいらしい。ディーネに目線で謝って話を先に進める。


「マリーさん、今のところ財宝を放出する予定はありませんが、もし放出する事になったら、マリーさんの所に持って来ますから、落ち込まないでください」


「本当ですか?」


 ガバッっと顔を上げるマリーさん。とても期待した目で俺を見ている。


「ええ、卸す時にはお世話になっているマリーさんの所に持って来ますよ。それよりも素材の確認を終わらせないと鮮度が落ちますよ」


「そうでした」


 とりあえず今の話に納得してくれたのか、立ち上がり素材の確認を始めるマリーさん。この素材だけで相当な利益になるだろうに、商人の欲望ってのは凄いな。


「そう言えば裕太さん。お弟子さんも凄いご活躍ですね。商人の間でも噂になっていますよ」


 素材の確認が終わった後に、マリーさんが話しかけてきた。いつもは直ぐに分かれて解体に入るんだけど珍しいな。


「実力はあると思ってますが、それほど噂になっているんですか? まだ湿地帯を攻略している段階ですよ?」


「女子供だけのパーティーで、ベテランでも苦戦する湿地帯で結果を出しているんです。魔法の鞄で魔物を丸ごと持って帰って来てますし、大注目ですよ。裕太さんのお弟子さんでなければ、今頃勧誘の嵐ですね」


「精霊術師なのにですか?」


「ええ、精霊術師なのにです。裕太さんに続いて、お弟子さん達も問答無用で結果を出されてます。そろそろ精霊術師自体にも目を向けられる方が出ると思いますよ。裕太さんが特殊なのではなく、スラムの子供達でも結果を出す事ができる。これはとても衝撃的な出来事です」


 ……俺の狙い通りになってきたって事かな? 精霊術師の評判もジーナ達が活躍すればするほど、よくなっていくって事だ。俺って天才だったんだな。


「精霊術師の評判が良くなるのなら、俺は嬉しいですね」


「いえ、精霊術師に注目は集まってますが、裕太さんとお弟子さん達以外の精霊術師が、信頼出来ませんので評判が上がるのは難しいかと。おそらくですが、裕太さんやお弟子さん達に教えを請いに来る方達や、監視をして秘訣を探り出そうとする方達が増えると思います」


 ……俺は天才では無かったらしい。精霊術師の可能性を少し認めさせたって感じか。俺に教えを請いに来る人って言われても、ヒモ付きかどうかの確認が難しいし、ドンドン弟子が増えても面倒見切れないから厄介だ。監視の方は元々秘密がバレないようにやってるから、注意を促すぐらいで大丈夫だろう。


「ご忠告ありがとうございます。周辺に気を配っておきますね」


「いえいえ、ただの推測ですから。あと今晩には解体が終わると思いますが、お肉と羽毛の引き渡しはどうしますか?」


 ベル達も楽しみにしているだろうし、何より俺も早く食べてみたい。夜に受け取って、トルクさんに渡して明日の晩にエンペラーバードから食べよう。


「では夜に倉庫に受け取りに来ますね」


「分かりました。私は時間が取れないと思いますが、ソニアを待機させておきますので、お声をお掛けください」


 だいたいの時間帯を決めてマリーさんと別れる。いつもは馬車で送って行って貰うが、今日は酒屋に寄るので断って倉庫を出る。


「次はお酒ね! 裕太ちゃん、急ぎましょ!」


 待ちかねていた分、ディーネのテンションが上がっている気がする。早く早くと手招きするディーネを追いかけて早足で追いつく。


(ちょっとディーネ、酒屋の場所は分かってるの?)


「んふふー、シルフィちゃんから沢山お酒が置いてあるお店を聞いてるの! お姉ちゃんに抜かりはないわ!」


 ……なんて言えばいいのか分からないが、やる気がある事だけは分かった。


(了解、ディーネに任せるから、もう少しゆっくり進んでくれ)


 結構な早足だから、周りから何事かって目で見られている。お騒がせして申し訳ない。しょうがないわねって顔をしたディーネが、進む速度を落とす。


 ***


「あんた、この前三樽ばかし買って行ったよな。もう飲んじまったのか?」


「仲間が多いので、お酒が直ぐに無くなっちゃうんですよ。また酒樽を選ばせて貰っても良いですか?」


 酒屋のおっちゃんにしっかり覚えられてた。ここに来たのは前回が初めてで、三樽買っただけなのにね。個人で酒樽三樽買うってやっぱり珍しいんだな。


「そう言えば前も良い酒を選んで行ったな。まあ好きにしろ」


「ありがとうございます」


 おっちゃんにお礼を言って、既に楽しそうにお酒を選んでいるディーネの所に行く。


「ふふーん、ふふふーん」


 よく分からないが楽しそうに鼻歌を歌いながらお酒を選ぶディーネ。一樽一樽ジックリ確認している。シルフィもそうだけど、よく樽からわずかに漂う匂いでお酒の良し悪しが分かるよね。俺もお酒は好きだけど、味の違いっておおまかにしか分からない。繊細な味覚を持っている人がちょっとだけ羨ましい。


「裕太ちゃん。決めたわー」


 俺は頷き、ディーネが指定した酒樽をおっちゃんに告げて購入する。またもおっちゃんに目利きを褒められたが、俺が選んだんじゃ無いんだよね。


「裕太ちゃん。お姉ちゃん、お酒飲みたいなー」


 うーん、十日以上お酒を出して無いし、飲ませるのは問題無いんだけど、部屋が狭いんだよな。ディーネだけ飲ませるのも問題だし、大精霊六人で俺の部屋で宴会か……期待した目で俺を見るディーネ。色々手伝ってもらってるし、今日ぐらい問題無いか。


 俺が頷くと早く帰ろうと、急かすディーネ。昼から飲み始めるつもりらしい。まあ、明日も休みの予定だから大丈夫か。遊びに行っているベル達には申し訳ないが、泉の家の警備を頼もう。

読んでくださってありがとうございます。

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