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二百十二話 宝箱

 七十七層の氷の大地をトゥルが作ってくれたスパイクで進む。足元がしっかりしていると心強いな。


「もえな!」


 ……目の前でアイスゴーレムがドロドロに溶けていく。一つ疑問に思うのは、氷って燃えるの? 溶けて蒸発するだけだよね? ……まあ、アイスゴーレムは魔石を核に、魔力を纏った固い氷が大きな人型になったものだから、魔石以外に価値がある素材は無いし、どちらでも構わないか。


 七十六層から八十層は植物も生えてないから、価値のある素材が少ないんだよな。厳しい環境に加えて価値があるのは魔物素材ぐらいだから、あまり旨味が無い。この層まで普通に冒険者達が来られるようになっても、人気の無い場所になりそうだ。


 探索している人数が少ないから、しっかりと調べれば何か価値がある物を見つける事ができるかもしれないが、俺の知識だと難しそうだよな。何か目についた物があれば拾って持って帰ってみよう……ほぼ氷しかないけど。考え事をしていると、アイスゴーレムが完全に溶け切り、魔石がコロンっと氷の大地に転がる。


「らくしょうだぜ!」


 得意げに落ちた魔石を浮かべ俺の所に持ってきながら言うフレア。この子もイフみたいに大きくなったら拳に炎を纏って魔物を殴ったりするのかな? 精霊で戦闘狂ってのも辛そうだし、俺が契約している間にできるだけ戦い以外の楽しみも教えられるようにしよう。


「ありがとうフレア。でも全部を溶かさなくても魔石の所だけ溶かせば倒せるよ」


「わかってねえな、ひはすべてをはいにするんだぜ」


 ……たぶんイフが言った事がある言葉なんだろうな。そこはかとなくフレアの顔が満足気だ。知らない天井とか、一度は言ってみたいセリフが言えた時のような気持ちなのかもしれない。


「そうなんだ。でもあんまり無理はしないようにね」


「おう!」


 元気いっぱいのフレアの頭を撫で、探索を再開する。景色は綺麗なんだけど、あまり目印になるような物が無いから、方向感覚が狂う。隅々まで探索するのは大変そうだから、ある程度探索したらベル達全員で宝探ししよう。


「まものきたー。つぎはべるたおすーー」


 歩き回って宝箱と階段を探していると、ベルが声を上げた。フレアに引っ張られたのか、ベルのテンションも上がっているようだ。ベルが手足をワキワキさせながら見ている方向を見ると、こちらに向かって走ってくる四つの点が見える。


 あの感じだとホワイトエイプか。最初に見た時はイ〇ティかと思った。二メートルほどの身長で全身が真っ白な毛で覆われている猿の魔物。もしかしたらホワイトエイプが、地球に紛れ込んでイ〇ティって事になったのかもしれない。俺もこの世界に紛れ込んだんだし、あり得ない事じゃないよね。


 小さな点がだんだん大きくなるのを見ながら、UMAの謎に仮説を立てる。なんか凄い発見をしたような気になってくるが、冷静に考えると発表する場所がない。それ以前にUMAとかどうでもいいぐらいに、異世界の存在自体が大発見だよね。


 俺の目の前まで到着したホワイトエイプは、止まることなく手に持った氷の武器で襲い掛かってきた。氷の剣や槍はとても美しいんだけど、あれって普通の場所だとたぶん溶けるよな。一応魔法の鞄に収納してあるが、魔法の鞄の時間停止機能が世間にバレそうで、売り払うのも躊躇われる。


「ふうじんらんぶーー」


 あっ、久しぶりにベルの大技が出た。無数の風の刃がホワイトエイプ達を取り囲み、一斉に発射される。おっ、さすがにゾンビとはレベルが違うな。襲い掛かってくる風の刃を幾つか躱し、避けきれない刃は自分の武器で防ぐ。


 でも、風の刃は次々に生み出される。数に押され避けきれなくなったホワイトエイプが、次々に切り刻まれていく。


「かったー」


 右手をあげて勝利を宣言するベル。その姿はとても可愛らしいが、その背後はホラー映画で出て来るような惨殺現場になっている。……子供って時々残酷だよね。ベルが俺の胸にポスンと飛び込んでくる。ニコニコと俺の顔を見上げているのは褒めてって事だよな。


「頑張ったね。ありがとうベル」


「えへー」


 ベルの頭をかいぐりかいぐりしながら褒める。でも今回は、少し厳しい事も言わないといけない。


「でもベル、風刃乱舞だと魔物がバラバラになっちゃって、素材が取れなくなっちゃうよ。せっかく魔物を倒すんだから、余裕がある時は綺麗に倒さないとね」


 俺の言葉にベルは忘れてたって顔をしたあと、ショボンとした顔になった。うう、心が痛む。


「ベル、しっぱいしたー」


「大丈夫、次から気を付けようね」


 俺にできる全力で、優しくベルの頭を撫でながら言うと、ベルはコクンと頷いた。ぶっちゃけ、ベルが悲しむぐらいなら魔物なんぞいくら惨殺されようが構わないんだけど、その結果いつかベルが困る事になったらそれはそれで辛い。子育てって難しいよね。俺の子じゃ無いけど。


 ***


「クーーーー」


 落ち込んでしまったベルを頑張って励まし探索を続けていると、タマモが嬉しそうに鳴きながら戻ってきた。モフモフシッポがブンブン振られているから、宝箱を発見したんだろう。


「タマモ、宝箱を見つけたの?」


「クゥクーー」


 コクコクと頷くタマモ。やっぱり宝箱を見つけたみたいだな。


「凄いね、ありがとうタマモ。じゃあムーンを召喚するからその後に案内してくれるかな?」


「クーー」


 はしゃぐタマモを存分にモフりながら褒め称え、ムーンを召喚する。


「ムーン、途中で呼び戻してごめんね。宝箱が見つかったから、みんなで見に行こう」


「…………」


 ムーンがふよふよと俺の頭の上に着地した。なんだかプルプルが遅かったし、見つけられなくて落ち込んでるのかもしれない。


「大丈夫、今回見つからなくても、これからまだまだ沢山の宝箱を探すから、落ち込まないでいいんだからね」


 頭に乗っていたムーンを抱きかかえ、モニュモニュしながら話しかける。プルプルが少し復活したし元気になってくれたかな? しかし……最近お父さんを通り越して、保父さん方向に突っ走っている気がする。


「ここなの?」


 タマモについて一時間ほど歩くとタマモが氷の大地に着地した。……氷しかないんだけど。どう言う事かとタマモを見ると、氷の大地をテシテシしている。


 タマモがテシテシしている部分を覗き込むと、五メートルぐらいだろうか? 結構な深い場所に金色の宝箱が見える。この迷宮って面倒な場所に宝箱があるな。ふと思ったんだけど火山地帯のマグマの中に宝箱があったりなんて……いや、さすがに無いよね? だってほぼ確実に見つけられないもん。……でも一応帰りにベル達に探して貰おう。 


「タマモ、よく見つけたね」


「クーー」


 誇らしげにブンブンと尻尾を振るタマモ。これだけ分かり辛い場所だと誇りたい気持ちも分る。しかも金色の宝箱だ。魔法の杖の可能性もあるから、ドキドキするな。


「じゃあ掘り出そうか」


「とかす?」


 フレアがちょっと期待した目で聞いてくる。……溶かした後ってどうなるんだろう? 蒸発しなかったら宝箱が水没しちゃう気がする。


「氷も手に入れておきたいから俺がやるよ、ありがとね」


「しょうがねえな!」


 何がしょうがないのか分からないが、とりあえず納得してくれたようなので、魔法のシャベルを取り出し氷を掘る。階段状にしようかとも思ったが、面倒だしそのまま宝箱まで掘り抜いて、ベルに上まで浮かせてもらおう。ちゃんとお仕事した方が気が晴れるからな。


 サクサクと氷をシャベルで掘り出し収納する。この氷って食べられるのかな? まあ、食べられなくても使い道は色々あるだろうからいいか。あっさりと宝箱に到達する。五メートルぐらいなら簡単に掘り抜けるようになったな。


「ベル、俺と宝箱を上まで上らせてくれる?」


「できるー」


 元気に手を挙げて答えてくれるベル。


「じゃあお願いね」


 コクコク嬉しそうに頷いたベルが俺に両手を向けると、風が優しく俺を包み込み体が宝箱と一緒に浮き上がり、氷の穴から外まで運んでくれる。ベルにお礼を言って撫で繰り回す。うん、これでベルも完全復活だな。シルフィが温かい目で俺を見ているが気にしないぞ。


「シルフィ、罠を確認してくれる?」


「ええ、ちょっと待って……問題ないわ。罠も鍵も無いわ」


「ありがとう。じゃあ、宝箱を開けようか」


 目の前にある金色の宝箱を見ながら言うと、俺の背後にベル達が集まってきた。ベル達もどんなお宝が入っているのか気になるらしい。みんなの注目も集まったしさっそく開けるか。


 蓋に手を掛け押し上げると、シルフィが言った通り、鍵も罠も無く持ち上がる。中には……なんだこれ? えーっと、直径三十センチほどの銀色のお盆みたいな物が入っている。確実に杖では無いよな。まあ、ゲームでも一発で欲しい素材が落ちた事無いし……そんなもんだよね。 


「シルフィ、これって何か分かる?」


「ミスリルの盾ね。魔石もハマっているし、魔道具で有る事は間違いないわ。効果は分からないから使う前にノモスに聞いた方がいいわね」


「それならちょっとノモスを召喚してみるか」


「他にも魔道具が見つかったら、またノモスを召喚する事になるんだから、まとめてみて貰った方がいいんじゃない?」


「……確かにそうだね。迷宮探索が終わってからノモスに頼むよ」


 あんまり頻繁に呼び出して魔道具の鑑定を頼んだら、機嫌が悪くなりそうだ。盾なら使う機会も無いだろうからあとに回そう。ベル達も一通り魔物を倒したし宝箱と階段の探索に切り替えるか。


「よし! じゃあ、今度はみんなで階段と宝箱を探そうか。ここにあったみたいに氷の中に埋まっている事もあるだろうから、みんな注意して探してくれ」


「いえっさー」「キュキュッキュー」「イエッサー」「ククックー」「いえっさー」「…………」


 ベル達がピシッと敬礼を決めた後、競争だっと思い思いの方向に散らばる。目立つ位置にある宝箱は英雄達のパーティーが見つけているだろうし、見つかるのは少数だろうな。でも見つけ辛い位置にある宝箱なら中身が期待できる。そう考えると発見が楽しみだな。

読んでくださってありがとうございます。

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