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百九十五話 命の精霊の能力

 新たにヴィータとムーンとプルちゃんが仲間になった。美形なはずなんだけど、何故か普通のおじさんに見えるヴィータ。スライム型でボーリングの玉ぐらいの大きさのムーン。同じくスライム型でソフトボールのボールぐらいのプルちゃん。なかなか個性的な仲間が増えたな。


 ***


 目が覚めたら、お腹の上にポヨンポヨンの物体が……そう言えばムーンと一緒に寝たんだったな。揺れがプルプルじゃ無くてポヨンポヨンなのは寝ているからか? リラックスしている時は揺れが遅くなるとかあるのかもしれない。


 このまま寝かせておいてあげたい気もするが、皆の朝食の準備もあるから起きないといけない。お腹の上に居るムーンを指先で軽く突く。なかなかの感触だ。


 おっ、ムーンの揺れが変わった。起きたみたいだな。


「おはようムーン。朝食の時間だから起きるよ」


 俺が体を起こすと、ムーンがふわりと体を浮かべ俺の頭の上に着地した。どうやらムーンは頭の上に乗るのが好きみたいだな。


「ゆーた、おはよー」「キュキュー」「おはよう」「ククーー」「おきたか!」


 部屋から出るとベル達が朝の挨拶をしてくれる。フレアは挨拶になってない気がするが、どうやらモノマネモード中らしい。


「おはようみんな」


 あれ? いつもならわらわらと集まって来て賑やかになるはずなんだけど……なるほど、視線が頭の上に集中しているな。


「この子はムーン。昨日の夜、契約した命の精霊だよ」


「むーん! おともだち?」


「そうだよ。みんな仲良くしてあげてね」


 俺が言うと、ベル達が俺の頭の上に集まり、楽しそうにムーンと話し始めた。なんかあれだな、頭の上で会話されると違和感があるな。と言うかやっぱりベル達もムーンの言葉が分かるんだな。声が出て無いはずなのに、どうやって理解しているんだろう?


「やわらかいー」とか「このかんしょく……」とか「やるわね!」とか聞こえる。どうやらみんなでムーンの感触を確かめているらしい。まあ、仲良くなれそうだからいいか。ふっと俺の頭の上のわずかな重みが消える。

  

「ゆーた、みてー」「キューー」


 ベルとレインが俺の目の前に……レインにベルが跨り、ベルの頭の上に帽子みたいにムーンが乗っている。なんか絵本でこれに似たような話があった気がする。そして何故かベルがとっても得意げに右手を掲げている。よく分からんがここは褒める流れなんだろうな。


「うん、とってもカッコいいよ」


 俺が褒めると、ベルは満足げにムフーっとしている。どうやらカッコいいで正解だったみたいだ。トゥルがムーンを抱きしめたり、タマモがムーンの上でお座りしたりと騒がしく戯れながらリビングに向かう。


「師匠、おはよう」「お師匠様おはようございます」「師匠、おはよう!」「おはよう」


 サラ達と挨拶し、改めてムーンとプルちゃんをみんなに紹介する。ヴィータは……まあ後でいいか。再び騒がしくなったので、俺はジーナ達に手伝ってもらいながら朝食を並べる。


「みんな、ご飯だよ」


 俺の言葉にお団子状態だった精霊達がほどけ、テーブルに向かってくる。ムーンとプルちゃんはベルとウリの頭に乗ってるから、取り残されずに連れて来られてるな。しかし、大き目のテーブルを買ったけど、大精霊も加えたら、そろそろ広さが足りなくなりそうだ。


 大精霊達も新しい料理が増えたからか、一緒に食事をとる回数も増えてるからな。なんとかしないと……そう言えば聖域に指定される条件が決まったし、みんなで住める豪邸を買わないと……杖がいつ揃うのか分からないし、注文のタイミングが難しいな。おっと、みんなが俺を見ている。早く食べさせてあげないとな。


「食べていいよ」


 俺の言葉で食事が始まる。たぶん初めての食事のムーンとプルちゃん、どんなリアクションをするんだろう?


 ベル達が甲斐甲斐しくお世話をしているから、食事って事は理解しているみたいだな。プルプルと食べたい食事のお皿の前に移動し、パクンと料理を飲み込む。うーん、透明な体の中にトンカツが浮いているのは不思議な気分だ。消化はされているみたいだけど、味って分かってるのかな?


 プルプルが高速振動しているから、喜んでそうなのは分かる。あとで通訳して貰って、料理の感想を聞いておくか。食事を取りながら様子を見ていると、シルフィがリビングに入ってきた。


「シルフィ、おはよう。ヴィータや他のみんなは?」


「おはよう、裕太。ディーネ達は相変わらずよ。ヴィータは朝食が終わった頃に来るように言ってあるわ。昨晩のお酒とツマミ、ヴィータも喜んでいたわよ」


「了解、ありがとう」


 相変わらずって事は蒸留所か。もういっその事、豪邸とか建てないで大きな蒸留所を建てた方がいい気がしてきた。いや……ないな。そのまま出てこなくなりそうだ。


 ヴィータはもう少ししたら来るみたいだし、みんなを紹介して、動物達の話を聞かせて貰おう。その後はどうしようかな?


 ムーンができる事を聞いて、開拓の予定を立てるか。ノモスに頼めば一発で開拓が済みそうな気もするが、そこら辺も相談しておこう。


 朝食が終わり、ヴィータも来たのでジーナ達とベル達に紹介する。ジーナ達は大精霊と言う事で、礼儀正しく自己紹介をし……まあ、ジーナは噛み倒してたけど。ベル達は親戚のおじちゃん的な空気を持ったヴィータに群がり、ホンワカと戯れている。いい光景だ。


 もう少しまったりしていてもいいかと思ったが、自己紹介も終わったし真面目に頑張るか。ジーナ達やベル達に今日の予定を伝えよう。


「今日はジーナ達は訓練をしててね。サラはプルちゃんができる事をちゃんと聞いておくように。ベル達はムーン以外はサラ達の訓練を手伝ってあげてくれ。ムーンはヴィータと話が終わった後にできる事を確認するから、ここで待っててね」


 俺の指示にベルの頭の上に乗っていたムーンが、俺の頭の上にふよふよと移動してきた。飛べるんだから頭の上に居る理由は無いはずなんだが、何か拘りがあるのか? まあ、いいか。訓練に出かけるベル達やジーナ達を見送り、ヴィータに向き直る。


「ヴィータ、生物達はどうだった?」


「うーん、そうだね。前に捕まえたって言ってた動物達以外は比較的に落ち着いていたね。数頭環境の変化に適応できていない子がいたけど、体力を回復させておいたから問題は無いと思う。昨日捕まえてきた動物達は強いストレスを抱えて、ピリピリしているね。こちらも体力を回復させて、体調を整えたからストレスは緩和しているけど、しばらく様子見が必要と言ったところだね。彼らのエサは僕が運んでおくから後で出しておいて」


「了解、急に何かが起こるって事は無さそうって事でいいの?」


「うーん縄張り争いなんかもあるし、そこら辺は動物次第だね。僕が気に掛けておくから、問題無いと考えてもいいよ」


 縄張り争いか……そんな言葉、思い出しもしなかった。思い出していたら、何ができていたかと考えると、何もできていないから、素直にヴィータに任せるのが吉だろう。丸投げで申し訳ない。


「悪いけど任せるよ、よろしく頼むね」


「ああ、任された。大体の事は昨日飲みながらシルフィ達に聞いたから、心配しなくていいよ。ああ、そう言えば昨日はお酒ありがとう。久しぶりにゆっくり飲めて楽しかったよ。あとあのアサルトドラゴンのカツだっけ? あれも美味しかったよ。それと蒸留酒が……」


 …………お酒の感想が止まらない。料理が褒められて嬉しかったが、遙か昔の出来事のように感じる。途中まではいい感じだったのに、会話の終盤でシルフィ達の酒飲み友達感を全力アピールしなくてもいいのに……。


「そ、そうなんだ。とりあえず節目節目にお酒を出すから楽しんでくれると嬉しいな」


「いやー、ここに来て良かったなー。定期的にお酒が飲めるのはとってもありがたいよ。じゃあ僕も頑張らないとね。さっそく彼らにエサをあげてくるよ」


 ヴィータの指示でオーク肉とラフバードの肉、果物や穀物を取り出すと、鼻歌混じりに出て行った。


「えーっと、ああ、そうだった。ムーンの能力を詳しく知りたいんだ。シルフィ、通訳をお願い」


「ええ、いいわよ。と言っても命の精霊は生命体の管理や回復が主体で、攻撃と言ったら、体調を乱したり、生命力を奪うぐらいしかできないわよ?」


 ……やっぱり生命力を奪えるんだ、ある意味相当怖い能力だよね。その上で回復魔法って……無敵?


「生命力を奪うって、どんな相手でも?」


「うーん、ヴィータならアンデッド以外は大抵の生命体から根こそぎ奪えるでしょうけど、ムーンだと上位の魔物は難しいでしょうね。それに命の精霊は例え魔物が相手でも命を奪う事を嫌がるから、無理は言わないようにね」


 アンデッドは無理なのか? ああ、死んでるもんね。奪う生命力が元から無いんだ。それに魔物の命を奪うのも嫌なのか。……あとでサラにも伝えておこう。他に手段があるのに、無理して嫌な事をさせる必要は無い。最終手段として封印だな。


「アンデッドって回復させたら、どうなるの?」


 ゲームの定番だと、ダメージを与えられるんだけど。


「生命力が無いんだもの、回復しないわ」


 ……ダメか。命の精霊にとってアンデッドって面倒な相手なんだな。


「じゃあ「裕太、ちょっと待って。ムーンの事なんだから、私に質問しないで、ムーンに質問しなさい。悲しそうよ」」


 ……シルフィがなんでも答えてくれるから、ムーンに質問するのをすっかり忘れてた。そっと頭の上に乗っているムーンを抱っこする。心なしかプルプル具合が弱い気が……。


「ごめんねムーン。色々教えてくれる?」


 心なしかプルプルが少し強くなった?


「ふふ、裕太、教えてあげるって」


「良かった。ありがとうムーン」


 嫌って言われなくて良かった。さあ沢山質問しよう。


 シルフィに通訳してもらいながら、どのような能力が使えるのか、どれぐらいの敵なら生命力が奪えるのか、体調を乱すってどう言う事なのか、今日の朝食で一番美味しかったものは何なのか等、沢山質問した。


 ムーンの力だと臓器が傷つけられると、一度では癒せないレベルだが、骨折ぐらいなら一発で治せるそうだ。


 病気も、難しい病気には手が出せないそうだが、簡単な病なら治せるそうだ。病気に詳しくないから上手く判断できない。


 敵の生命力を奪ったり体調を乱す能力は、Bランク辺りから効果が薄れるようで、使いどころが難しそうだし、元々魔物でも命を奪うのが苦手なんだから攻撃面よりも補助で頑張って貰おう。探索のサポートとしてはかなり優れているから十分だ。


 朝食で一番好きなメニューは全部だそうだ。食べるのがとても楽しいらしい。また新たな食いしん坊を生み出してしまったようだ。でもムーンとプルちゃんだけ、食事を与えないなんてできないんだから今更だよね。

読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 現状でシルフィ以外朝の挨拶すらしないレベルで蒸留所に籠もって出て来て無い上に避け酒アピールとかウザいわ そもそもイフとか何話喋舌って無いんだ?
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