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百八十三話 ジーナ、初めての実践

 フレアとシバの使える魔法を確認しながら、ジーナと精霊術師の訓練をした。フレアとシバの魔法は、フクちゃん達と比べると、攻撃力がかなり高い印象を受ける。フクちゃん達だけだと固い敵に苦労していたけど、ジーナとシバの加入で随分と楽になりそうだな。


「いま使った魔法は基本的な物だから、これからはシバとしっかり話し合って、自分達に合った魔法を考えてね」


「はい、師匠! ふふ、自分達の魔法か、なんだか楽しい。シバもそう思うだろ?」


 シバに向かって笑顔で話しかけるジーナ。ワフワフ言いながら、尻尾全開のシバ。いいコンビになりそうだ。


 しかし、夜中にアンデッドを少しずつ倒して慣れさせようと思ってたけど、ジーナは大人だし、もう巣を潰しに行ってもいいかな。さっそく今日から行こうかと思ったが、シルフィがお休みなんだよな。俺には巣の場所も規模も判断できないから、巣を潰しに行くのは明日からだな。


「魔法の確認も終わったし、ジーナとシバはサラ達と合流して、連携の確認をしておいて。明日からアンデッドの巣を潰しに行くからね」


「いきなりだな! 巣じゃなくて数が少ない所に行って慣れるって言ってなかった?」


 鋭いツッコミだ。確かにそんな予定を話した覚えはある。


「そのつもりだったけど、あの魔法の威力なら普通のアンデッドは相手にならないよ。サラ達とも一緒だし、サクサク倒してレベルアップしちゃおう」


「でも、あたし一度もアンデッドを見た事が無いんだけど、大丈夫なのか?」


 ……巣の中でパニックになったら流石に危険か。確かに気持ち悪いから、一度ぐらい先に戦っておいた方がいいかもしれない。大人だろうと怖い時は怖いからな。


「今日の夜にちょっと拠点の外に出て、アンデッドを倒しておこうか」


 周辺の巣は大体潰したけど、ベル達に頼めばウロウロしているゾンビやスケルトンを見つけてくれるだろう。シルフィはお休みだからディーネかドリーについてきてもらうか。


「う、うん、先に戦えるなら助かる。でも悲鳴を上げたら恥ずかしいから、今日の夜はサラ達が居ない方がいいんだけど無理かな?」


 ちょっと恥ずかしそうに言うジーナ。年上のプライドってやつか。サラ達の面倒を見ていたから、恥ずかしいところを見られたく無い気持ちがあるんだろう。俺も表面を取り繕うのが大変だから気持ちは分かる。


「分かった。サラ達には休んで貰うから、安心して叫んでいいからね」


「いや、念の為だから……たぶん叫ばないはずだ」


 そう言いながらも自信は無さそうだ。


「まあ、暗いからよく見えないし大丈夫だよ」


 夜目のスキルがあれば見えるけど、スキルは持ってないって言ってたから大丈夫だろう。夜目のスキルを覚えた時は嬉しかったけど、ゾンビがハッキリ見えるようになって、ちょっとげんなりした思い出がある。


 適当に励まして、ジーナをサラ達に合流させる。サラ達の経験も聞いておけば心構えの一つにはなるだろう。


「フレア、訓練に付き合ってくれてありがとう。あとは特に用事は無いからベル達と遊んで来るといいよ」 

 俺が言うと、フレアは嬉しそうな顔をした後、やれやれしょうがねえなって顔を作ってベル達のところに飛んで行った。目指すスタイルがあるのはいい事なのかもしれないけど、自然に身に付けるまで大変そうだ。いずれベル達の影響で普通になる気がする。 


 ***


「じゃあベル達は周りにゾンビかスケルトンがいないか探して来てくれる?」


「いえっさー」「キュキュッキューー」「イエッサー」「ククックー」「えっ? えっ?」


 ピシッと敬礼を決めるベル達と、初めてで流れについて来れないフレア。最初はこう言う事が起こるよね。戸惑っているフレアに気がついたベル達が集まり、頭を寄せ合ってフンフンと話し出した。


 しばらくするとベル達が俺をジッと見つめる。……もう一度言えって事かな?


「じゃあベル達は周りにゾンビかスケルトンがいないか探して来てくれる?」

  

「いえっさー」「キュキュッキューー」「イエッサー」「ククックー」「いえっさー」


 声が揃った事に満足したのか、それぞれが別の方向に飛び去って行く。「きょうそうー」っと言ってたから、誰が一番に見つけるのか競争しているみたいだな。


 迷宮の宝箱探しの時から、競争が楽しいみたいだからいい機会だったようだ。ベルも風の探知を使えば一番になれるだろうけど、こういう時は使わないようだ。  


「うふふ、フレアちゃんもあっという間にみんなと仲良くなったわね。いいことだわー」


「ああ、そうだな」


 うんうんと頷くディーネ。確かにそうだな、あれだけ直ぐに仲良くなれる事はいい事だ。歳を重ねると、メリットとデメリットを考えたりしちゃうもんな。……いかん、なんかブルーになってきた。日本の事を思い出してもどうしようも無いからな。考えを切り替えよう。


「ジーナ、もうすぐ戦う事になるけど大丈夫?」


「う、うん。大丈夫だ。シバが一緒だし、キッカが自分でも倒せるって言ってたからな。さすがにキッカが勝てるのにビビるなんてできないよ」


 ちょっと顔が引きつっているけど、気合は入っているみたいだ。俺もキッカが余裕で倒せるのに、怖くて無理だとはとても言えないな。これって凄いプレッシャーな気がする。


「落ち着いてシバに頼めば問題無いよ。それにシバもやる気満々だから大丈夫だ」


 シバは任せろって感じでジーナのとなりに待機している。こういう所は犬っぽいよな。実際は精霊なんだけど姿に性格も影響されるのかもな。


「そうなの? シバ、やる気満々なら右手、そうでも無いなって気分なら左手に来てくれ」


 シバはワフワフと元気よくジーナの右手に飛び込んで行った。


「はは、シバもやる気満々か、一緒に頑張ろうな」


 見えなくても元気いっぱいなシバの気持ちが伝わったのか、ジーナもだいぶ落ち着いたようだ。姿が見えなくても、アニマルセラピーって効果があるのかもしれない。一応、周辺を警戒しながらベル達が戻ってくるのを待つ。


「キュキューー!」


 レインが俺の胸に飛び込んできて「キューキュキュー」と何か言っている。通訳してくれるベルやトゥルが居ないと、何を言っているのか分からないけど、今の状況だと言いたい事は分かる。


「今回はレインが一番だね!」


 俺の言葉にレインはヒレをパタパタと大興奮だ。たぶん「いちばんー」って喜んでいるんだろうな。じゃあベル達を召喚するか。


 探索に出ていたベル達を召喚する。ワイワイとレインを囲んでベル達が褒めている。レインは褒められてご機嫌だけど、アンデッドの場所を忘れたりしないでね。


「レイン、案内してくれる?」


 イエッサーのポーズを取って移動を開始するレイン。その後にゾロゾロとついて行く。


「キュキュー」


 レインがヒレを向ける方向を見ると、ウゴウゴとゾンビが歩いている。


「ジーナ、あそこにゾンビが居るんだけど見える?」


「んー、なんか動いてる気がする?」


 物凄くあやふやだ。もう少し近づいた方が良さそうだな。ジーナがゾンビの姿を薄っすらと確認できるところまで前進する。


「あっ師匠、見えた」


「それがゾンビだからシバに頼んで一体ずつ倒して。動きが遅いから、時間は十分にあるから焦らないでね」


「了解。シバ、あそこに居るゾンビの一番手前に炎弾を撃ち込んで!」


 説明っぽいな。今のサラ達はもう少し簡単に意思の疎通をしているけど、最初の方はこんな感じだった。上手くなればジーナももう少し簡単に伝える事ができるようになるだろう。


 ジーナの指示にシバが炎弾をゾンビに向かって放つ。ゾンビに当たる一瞬、炎に照らされてゾンビの姿が浮かび上がり、ゾンビの頭を弾き飛ばした。グロっと思っていると隣から「うわっ」っと言う声が聞こえた。同じ物を見たんだな。攻撃された事に気がついたゾンビがこちらにノロノロと向かってくる。


「ジーナ、一回ごとに攻撃方法を変えてゾンビを倒して」


「わ、分かった」


 昼間練習した基本的な魔法で次々にゾンビを倒す。やっぱりゾンビ程度だと相手にならないな。


「問題無かったね」


「……シバのおかげだけど、あたしが魔物を倒したんだよな?」


 精霊術師って自分で敵を倒した実感が薄いからな。しっかり詠唱をしていれば倒した気分になるのかもしれないけど、お願いするだけだもんな。一応魔力は提供しているんだけど契約してから少しずつストックされたものだし……。


 そう言えば契約して一日しか経ってないから、魔力のストックは少ないだろう。今日はあと一回スケルトンを倒して終わりにした方が良さそうだな。


「ジーナとシバで倒したって感じだね。シバもパーティーメンバーと考えて、協力して倒したと思えばいいんじゃないかな?」


 ジーナは微妙な感じで頷いた。まあ、いずれ慣れるだろう。


「じゃあ次はスケルトンと戦って、今日は終わりにしようか。みんな、今度はスケルトンを探してきて」


 俺のお願いにベル達は敬礼のポーズで応え、再び「きょうそうー」っと飛び出して行った。今度は誰が最初に戻ってくるのかな?


「師匠、スケルトンってゾンビよりも動きが早いんだよね?」


 ベル達が戻ってくるのを待っていると、ジーナが質問してきた。


「うん、攻撃したら走ってくるから、早めに指示を出す必要があるね」


「全部を一気に攻撃したらダメなのか?」


「全部を攻撃したら訓練にならないよ。素早く状況を判断して指示を出せるように訓練する事も大事なんだ」


 契約した精霊にあの魔物を倒してきてと頼むだけで大抵は済むんだけど、一撃で倒せない魔物や、協力して戦わないと倒せない魔物もいるから、最低限の状況は判断できるようにならないとダメだ。


「了解、魔石を狙って炎弾や炎刃で戦ってみる」


 ゾンビと戦って倒せる事が分かったからか、だいぶ落ち着いたようだ。初めての実践だとやっぱり緊張するよね。


 今回一番で戻ってきたのはトゥルだった。みんなで褒めまくったあと、トゥルの案内でスケルトンのところに向かう。


 ………………スケルトンの方が気軽に倒せるみたいだな。ジーナは特に焦る事も無くあっさりと倒してしまった。


「師匠、スケルトンの方が動きは早いけど、倒しやすい気がする。なんでかな?」


「火に照らされた時にゾンビはグロいからじゃない? たぶん気持ちの問題だと思うよ」


「あー、そうかも。ゾンビの顔を直視したら体が固まる気がする」  


「まあ、ゾンビの相手もいずれ慣れるよ。それで今日の戦いで思ったんだけど、ゾンビを燃やすのは止めた方がいいね。外なら問題無いけど、洞窟や狭い場所だと息ができなくなりそうだ」


 延焼してもシバが居ればコントロールできるだろうけど、酸素が無くなったら……あれ? 風の精霊に頼んで空気を運んでくれば問題無いな。でも、わざわざ危険な事をする必要も無いし……どうしよう?


「確かに師匠の言う通り洞窟だと危険だな。注意するよ」


 感心したように頷くジーナ。……納得してくれたみたいだしまあいいか。そろそろ帰ろう。

読んでくださってありがとうございます。

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