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百八十一話 イフとの契約

 イフとの契約を夜まで待つ事にしてベル達と戯れていると、精霊達の姿を絵師に描いてもらう事を思いついた。ジーナ達も精霊の姿が分かると喜んだが、精霊達の琴線にも触れたらしく結構盛り上がった。腕のいい絵師を確保しないと大変な事になりそうだな。


 ワイワイと盛り上がっている精霊達と、自分が想像している契約精霊達の事を、お互いに説明しあうジーナ達。ジーナは契約したばかりだからあやふやだが、サラとマルコとキッカは契約して時間が経っている分、ある程度明確なイメージが有るようだ。


 明確なイメージがある分、絵を見て違和感を覚えなければいいんだけどね。話を聞いているとそこまでイメージと実像に差があるようには思えないけど、どうなることか。


 ほぼ日が落ちたしだいぶ暗くなった。そろそろイフと契約してもいいだろう。女子会に割り込むようで少し緊張するが、楽しそうに話し合っている大精霊達に声を掛ける。


「イフ、そろそろ良い時間帯だし、契約をお願いしてもいい?」


「おっ、そうだったな。じゃあ契約するか」


 あっさりと頷くイフ。ジーナ達やベル達にも声を掛けて全員で火の台座に向かう。


「へー、少し寂しいが、悪く無いな」「わるくないな!」「ワフ」


 俺が作った火の台座を見ての火の精霊達の第一声。言葉通り印象は悪くないようだ。あっ……危険が無いのは間違い無いが、幼女や子犬が火の中に出入りする姿は心臓に悪いな。


「悪くないなら良かったよ。気に入らないところがあったら直すから、言ってくれ」


「そうか、まあ、ここに住んで気になる事があったら、その時頼むぜ」


「分かった」


「じゃあ、そろそろ契約するぞ。台座の火の前に立ちな」


 クイっと顎で指示を出すイフ。なんか仕草が男らしくてカッコいいんだよな。釈然としない気持ちを抱えながら石畳の上を歩き、火の前でイフと向かい合うように立つ。ちょっと緊張してきた。


「じゃあいくぞ」


「あ、ああ」


 イフの言葉に返事をすると、ぶわっとイフの周辺から炎が生まれ俺を囲うように広がった。おうふ? 理屈は分からないけど熱くは無い……でも炎に囲まれると普通に怖いな。離れた場所からジーナ達やベル達の歓声が聞こえる。どうやら遠くから見ると凄い光景のようだ。


 立ち上った炎が東洋の龍のように変化し、幾筋にも分れて増えながら飛び回る。ディーネの時と似た感じかな? 火と水で違いはあるが、何となく似ている。ただ火だからか凄い勢いで龍の数が増えている。


 イフがスッと右手を前に出し掌を上に向けると、増殖した炎の龍がイフの掌の上に集まってくる……いや、ちょっと集まり過ぎなんじゃ。龍の形をした炎が掌に集まり玉になるのは問題無い。でも龍が飲み込まれて行く度に密度と温度が上がるのか、白熱し眩い光を放ち始める。


 いい加減もういいんじゃないかな? 俺がそう思っているのに、炎の龍は玉に集まり続け、白から青に、青から紫に変わって行った。紫って洒落にならないぐらいの高温じゃなかったっけ?


「俺と契約したいのなら、この火玉を取って胸に押し当てな」


 シルフィ達は厳かな雰囲気を出したりしてたんだけど、イフは乱暴なままなんだな。まあ、それはいい。問題は紫色の火の玉だ。もはや物質的な固さを持っていそうなぐらいに、凝縮されて輝いている。


 一瞬、拷問の焼きごてを押し付けられるシーンを思い出したが、いままでシルフィ達との契約で危険は無かった。俺と契約したいならこの位の温度耐えて見せな! 的な試練だったら別だけど、あの玉の温度なら耐えるどころか一瞬で死にそうだから試練にならない。危険なら周りにいる大精霊達が止めてくれるから大丈夫なはずだ。


 ……ちょっと、いや、洒落にならないぐらいにビビっているが、気合を入れて火玉に手を伸ばす。どのぐらいの温度なのかは知らないが、紫の火の時点で普通なら熱くて近づけないはずだ。大丈夫、何の問題も無いはずだ。


 火玉を手に取ると思った通り熱を感じない。信じてはいたがやっぱりホッとする。安心したところで火玉を胸に押し当てる。


 火玉は輝きながら解けるように俺の胸に吸い込まれる。これで大精霊と繋がりができるんだよな。今までも色々と吸い込んでいるけど、俺は一体どうなっているんだろう?


「これで契約完了だ。裕太よろしくな」


「うん、イフ、よろしくね」


「おう」


 風、水、土、火、森の大精霊と契約した事になる。なんか凄いな。本気で世界征服できそうな気がしてきた。


「ゆーたー、かっこよかったー」「キュキュキューー」「げんそうてき」「ククーーー」「なかなかだったわ」


 契約が終わるとベル達が突撃してきて、契約の感想を言ってくれる。龍が玉に集まるシーンとか、今思えば迫力があってカッコ良かったもんな。契約の時はそれどころじゃ無かったし、俺もできれば遠くで見たかった。


「ありがとう。俺もビックリしたよ、凄かったね」


 はしゃぐベル達の頭を撫でながら、正直な気持ちを答える。


「凄いな。精霊術ってあんな事もできるのか。師匠、シバもあの炎のドラゴンを出せるのか?」


 ジーナが興奮して走り寄って来て、目をキラキラさせながら質問してきた。ジーナのとなりでワフワフしながら浮いているシバを見ながら思う。この子にできるんだろうか?


「うーん、火を出す事ができるのは間違い無いけど、ドラゴンに形を変えられるかは分からないな。明日からシバと一緒に色々と試してみるといい。できなくても一緒に頑張ればシバもできるようになると思うからね」


 シバに聞いてベルに通訳して貰えば、できるかどうか直ぐに分かるけど、せっかく興味を持ったんだからコミュニケーションを取りながら色々と試して欲しい。


「そうか、そうだよな。分かった、シバと一緒に頑張ってみる」


 ジーナがそう答えると、シバが右前足をカキカキしながらワフワフ言っている。シバも頑張るよって言っている気がする。


「お師匠様、凄いです。とっても綺麗でした」「師匠、すごいひだったな」「あつくなかった?」


 サラ達も追いついてきて、契約の感想や質問をくれる。一つ一つ答えるが、闇の中で光る炎の龍が綺麗だったのか少し興奮気味だな。イフの演出は狙い通りに決まったようだ。はしゃぐサラ達を頭を撫でながら落ち着かせる。


 さて、これからどうしよう。契約でいつもよりも夕食が遅くなっているから、夕食にするのは確定だよね。イフ、フレア、シバがせっかく来たんだから、昨日と同じく沢山料理を出して、お祝いみたいな雰囲気にしよう。


 その後の宴会はどうしよう? ……二日連続になっちゃうけど、イフがお酒が好きなのはほぼ間違い無いだろうし、歓迎会にお酒が無いのは寂しいか。

 

「無事に契約も終わったし、二日続けてだけど今夜もご馳走にしようね」


 俺の言葉にベル達が盛り上がる。フレアとシバがキョトンとして、騒ぐベル達に何事かを聞いている。フレアとシバも食事をする習慣を持ってないみたいだが、よく分からないなりに楽しそうな事だとは理解したのか一緒に喜びだした。


「裕太ちゃん、もちろんお酒もでるのよね?」


 ディーネがすかさず食いついてくる。片手でイフを引っ張って来ているから、断るとイフを前面に押し出すつもりなのがよく分かる。もともとご飯の後は宴会にするつもりだったから、構わないけどね。


「夕食が終わってからね。昨日と同じく三樽出すよ」


「うーん、裕太ちゃん、もう一声! イフも沢山飲むからもう一樽増やして欲しいの。お姉ちゃんのお願い。ほら、イフもお願いするのよー」


「お、おう。裕太、俺も沢山飲むからな。一樽増やしてくれたらありがたい。その分役に立つのは間違いないぞ」


 一人増えたら一樽増えるって事にならなければいいんだけど……まあ、いつも全部飲み干しているから、確かに少し足りないのかもな。


「分かった、もう一樽追加するね。でも一人増えたら一樽増えるってのはダメだよ」


 お酒を飲み切れないほど出しても何の問題も無いぐらい、お世話になってるんだけど、歯止めを掛けておかないとそれはそれで大変な事になる気がする。


「やったー、裕太ちゃんありがとー。お姉ちゃん嬉しいわ」


 喜ぶディーネやベル達を連れて家に戻る。ベルがフレアに自分達の部屋もある事を教えている。子供同士だからか、もう完全に仲良しだな。


 サラ達に手伝って貰いながらテーブルに料理を並べる。昨日と同じメニューも多いけど、フレアとシバは初見だし大丈夫だろう。


「おいしーー、これもすき、あっ、これもおいしい、こっちは?」


「ワフーワフワフ、ワフー」


「ああ、確かに美味いな。俺も食った事が無い料理が並んでやがる」


 なかなか好評だな。フレアはイフのマネも忘れて幼女らしくはしゃぎながら、色々な料理に目移りしている。シバも夢中でアサルトドラゴンのステーキに噛り付いているし、イフも豪快にステーキに食らい付き喜んでいるようだ。


 ベル達がこれも美味しいと、色々な食べ物を勧めている。うーん、今更だけどフレアとシバは段階をすっ飛ばしちゃったかな?


 おにぎりを片手にワイバーンの串焼きに挑んでいるフレアを見て思う。最初からアサルトドラゴンやワイバーン、マグマフィッシュの料理だし、屋台の料理じゃ満足できないとか言い出したりしない事を願いたい。


 ジーナも昨日満腹で手を出せなかった料理を食べられて満足げだし、ベル達も元気にご飯を食べている。二日続けてのお食事会も、楽しんでくれているみたいだな。


「きょうもみんなでおへやでねるのー」


 食事が終わるとベル達が子供部屋でフレアとシバと一緒に寝ると言いにきた。子供部屋もフレアとシバが増えてまた賑やかになるな。あとでみんなで寝ている所を見学に行こう。確実に癒されるはずだ。


「師匠、あたし達ももう寝るよ。おやすみ」「お師匠様、お休みなさい」「師匠、おやすみ!」「おやすみなさい」


「はい、みんなお休みなさい」


 ベル達とジーナ達を見送る。ジーナもきょうはお酒を飲むぞって言わなかったな。契約とかあったし疲れたのかも。


 酒樽を取り出し、食事の残りをツマミに宴会が始まった。……始まった瞬間にノモスが現れて、イフと挨拶しているんだが、どうやってタイミングを計っているのか疑問だな。

火の大精霊との契約条件が簡単すぎるとの感想を沢山頂きましたので、こちらで少し説明させて頂きます。


元々、大精霊との契約に条件は必須では無く、シルフィとは普通に契約しているように、滞在できる環境が整い、必要な魔力に達すれば問題無いという設定です。そこから聖域の話に発展して大精霊達が話し合って条件を追加しました。


既に契約している大精霊達とはある程度の信頼関係もありますし、イフは契約できる状態で死の大地に来ていますので、一緒に拠点で生活していた大精霊達とは前提が違うと考えております。


土の精霊に銅像を作ってもらえばとの感想も頂いていますが、こちらは書きたいシーンがあるだけなので、完全に私の都合です。ご容赦頂ければ幸いです。


読んでくださってありがとうございます。

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