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百八十話 絵

 俺は火の下級精霊のフレアと、ジーナは火の浮遊精霊のシバと無事に契約を結んだ。あとはイフとの契約だな。


「あらイフ、来たのねー」


「イフ、お久しぶりです」


 イフに話しかけようとすると、ディーネとドリーが現れた。蒸留器から離れそうに無かったんだけど、一段落したのかな? ノモスはサラ達が居る場所に中々現れないから判断が難しい。


「おう、久しぶり。なかなか楽しそうにやってるみたいだな」


「うふふー、とっても楽しいわよ」


「そうですね。森での生活もいいですが、こういう生活も刺激があって楽しいですよ」


「二人とも蒸留は終わったの?」


 シルフィも三人の話に加わり楽しそうに話しだした。そして蒸留の話から、お酒の話に移行して更に盛り上がる大精霊。会話の内容はともかく、シルフィ達四人が話している姿は眼福だな。


 その横ではサラ達も合流して、ジーナ、子供達、精霊達が楽しそうに戯れている。こちらはこちらでホッコリする光景だ。フレアもシバも問題無く馴染んでいるように見える。でもちょっと寂しくなってきた。そろそろ誰かに構って欲しい。


 子供達+ジーナの組は楽しそうに遊んでいるから邪魔するのは可哀想だし、シルフィ達の仲間に入れて貰おう……と言うか、そろそろイフと契約したい。


「あー、楽しそうなところ悪いけど、そろそろイフと契約したいんだけどいいかな?」


「ん? ああ、そうだったな」


 完全に忘れられてた。なんだろう、もっと人の目を引き付けるようなオーラが欲しい。チートが足りない気がする。戦闘関連は問題無いんだけど、魅力関連のスキルは無かったんだろうか? 無い物ねだりなのは分かっているが、カリスマとか憧れる。


「ここで契約する?」


 手に入らない物は諦めて目の前の事に集中しよう。


「シルフィ達の話も聞いたんだが、派手なのがいいんだろ? どうせなら裕太が作ったって言う火の台座で契約しようぜ。それとどうせなら暗くなってからの方がいいな」


 ニカッとカッコよく笑うイフ。どうやら派手な契約をしてくれるようだ。……今までの経験上、つかさどる属性が俺の周りを乱舞していたけど、火だと地味に怖い。いや、普通に怖いな。


 しかし夜か、確かに暗闇の方が火が映えそうだよな。綺麗で派手な方がジーナも子供達も喜ぶだろうし、暗くなるまでそう時間は掛からないから、夜まで待つか。


「それなら夜まで待った方がいいね。暗くなったらお願いするよ」


「おう、期待してろよ」


 その自信が羨ましい。ハードルが上がる事を何とも思っていないメンタルの強さ。見習いたいです。


 ***


 暗くなるまでの時間が空いてしまったので、結局子供達の組に乱入した。フレアを撫で繰り回すと、気安く触るなと言われたが、笑顔だったから問題は無いだろう。


 ……いや幼女を撫で繰り回している時点で問題があるのか? ロリじゃなければ撫で繰り回すのは問題ない……はず? 線引きがよく分からないな。


 フレアを撫で繰り回した後はシバに目標を定める。シバはジーナや他の精霊達に構われ、ご機嫌で走り回っている。ジーナの前でワフワフして、タマモに遊んでと突撃してゴロゴロと転がる。トゥルに捕獲され存分にモフモフされた後はウリと競争している。元気いっぱいで可愛いが、捕獲するタイミングがなかなか掴めない。


「ジーナ。シバと契約したけど、仲良くなれそう?」


 とりあえず動き回るシバの気配を追って、顔を動かしているジーナに声を掛ける。


「元気いっぱいで楽しそうなのは伝わってくるよ。姿が見えなくて触れないのが残念だけど、質問にも色々と答えてくれたし、仲良くなれると思う」


 ジーナがなんだか穏やかな表情をしている。可愛い子犬を想像してあったかい気持ちになっているのかもしれないな。


「仲良くなれそうなら良かったよ。姿は見えないかもしれないけど、本当に幼い子犬だから沢山構ってあげてね」


「ふふ、子犬か。とっても可愛いんだろうな。見える師匠が羨ましいよ」


 子犬の姿を想像するかのように空を見ながら話すジーナ。聖域に指定されれば姿も見えて触れられるようになるはずだけど、明確に聖域になる条件がある訳では無いから気軽には言えない。


 ジーナ達にも契約精霊と触れ合える機会は欲しいし、開拓を頑張るか。ただ俺が帰って来てから二日、結構頻繁に聖域関連で出かけていたノモスが、蒸留器に掛かりっきりなのが気になる。聖域の事を忘れてないよね?


 姿を見たい……か。絵を描いてもらうのを試してみるべきか? サラ達もフクちゃん達の絵があれば喜ぶだろう。……うーん、中途半端に似た絵だと聖域になった時に違和感が凄そうだし、悩みどころだな。


 そこまで似ていなかったら、雰囲気的にはこんな感じって伝えれば大丈夫か? とりあえず絵を描いてもらって確かめるか。俺が絵を描ければ何の問題も無かったんだけど、美術の成績は切ない物があったからな。


「ジーナ、迷宮都市に似顔絵って言うか絵が上手な人って居るのかな?」


「んー、貴族とかお金持ちは、肖像画を描いてもらうってのは聞いた事があるけど、あたしには関係ない世界だったからよく分からないな」


 お金持ち専用なのか。日本みたいに道端で似顔絵を描いてくれる人が、居てくれたら楽だったのに。お金持ち専用って事は絵師もプライドが高そうだし、俺の言う通りに描いてくれるのか疑問だ。マリーさんの処はお金持ちだし、絵師の知り合いがいないか相談してみよう。


「そうか、絵を見た事はある?」


「絵なら図鑑を見た事があるよ。料理ギルドに料理道具や食材を描いた図鑑があるんだ。色はついて無いけど、とっても精密に書かれていて綺麗だったよ」


 おっ、精密って事は写実的なんだろうな。どちらかと言うと芸術的な絵よりもそっちの方がピッタリだ。


 見本が必要なギルドなら、写実的な絵を描く事ができる人をお抱えにしていそうだな。冒険者ギルドに頼むのはなんか気まずいし、マリーさんに頼んで商人ギルドから絵師を紹介して貰うのがいいかもしれない。


 まあ、精霊の絵とは言い辛いし、空想を形にして欲しいと頼む必要がある……動物型はともかく美女や美幼女を描いてもらうように頼むのは、世間体がピンチなんじゃなかろうか? うーん、離れてしまった家族や友人を忘れたくないので、絵にして欲しいって頼めばなんとかなるか?


 そう言えば商業ギルドのベティさんって人と会うって、マーサさんと約束してたな。忘れないようにしないと。色々とやる事が増えて頭がパンクしそうだ。


「分かった。上手くいくか分からないけど、迷宮都市に行ったら絵師を紹介して貰って、精霊達の絵を描いてもらおうか。俺が言葉で伝えるからソックリにはならないかもしれないけど、雰囲気は掴めると思うよ」


「師匠、それって凄くいいよ。完璧じゃなくても絵で見ればしっかりと想像できる」


 ジーナが嬉しそうに騒ぐと、その声に釣られてベル達やサラ達が集まってきた。なに? なに? おもしろいこと? っと好奇心いっぱいで聞いてくるベル達。絵の事を説明すると、更にはしゃぎしだした。


「べるのえーー」「キュキュー」「みられる?」「ククーー」「かっこいいえにするのよ!」


 ベル達の好奇心をこれでもかと刺激したようだ。俺に張り付きながら、いつかくの? いま? っと質問してくる。俺が書くんじゃ無いと説明し理解してくれたが、待ちきれないように手足をワキワキさせている。本気で絵師を探さないと不味いな。


「おししょうさま、マメちゃんのえもかいてくれる?」


 キッカも興味津々なのか、俺の袖を掴みながら一生懸命聞いてくる。


「うん、時間は掛かるかもしれないけど、精霊全員の絵を描いてもらおうね。みんなの姿が分かるようになるよ。……でも俺が口で伝えて描いてもらうんだから、完璧に同じは無理だと思う。それでもいい?」


 ちゃんとハードルは下げておかないとな。キッカはそれでもいいと眩しい笑顔で答えてくれた。サラとマルコも、フクちゃんとウリの絵を見る事ができるのが嬉しいのか、テンションが上がっている。


 これだけ喜ばれると嬉しいよりもプレッシャーが掛かる。絵師が見つかるかどうかも分からないし、絵師にも無理を言わないとダメだろうから、色々と大変な予感がしてきた。思いつきを直ぐに言葉に出すんじゃなくて、しっかりと段取りを組んでから話すべきだったな。


「ゆーたちゃん、何かあったの? たのしそうねー」


 騒ぎを聞きつけて大精霊達が合流してきた。やばいな、このままだと更に燃料が追加されるんじゃないか?


「あのね、ゆーたがえをかいてくれるのー」「キュキューー」「みんなにみてもらう」「ククーーー」「カッコよくかいてもらうのよ」「「ホーーー」」「プギャ」「ワフーー」


 下級精霊と浮遊精霊の連合体が、大精霊達に突撃して先程の話を報告する。……ベル、その言い方は俺が絵を描くって誤解されるよ。俺が口を挟もうとする前に、ディーネが口を開いた。


「絵を描いてもらうなんて凄いわ。裕太ちゃん、もちろんお姉ちゃんも書いてくれるのよね?」


 やっぱりそう言う話の流れになるよね。


「面白そうな話だけど、裕太は芸術のセンスが無いって自分で言ってたわよ?」 


 首を傾げるシルフィ。覚えていてくれてありがとう。噴水を作った時にそう言ったもんね。ディーネには伝わって無かったっけ?


「絵ですか。何だか不思議な気分ですね」


「いきなり面白い話になってるな。まだ契約してないが、当然俺の事も描くんだろうな?」


 ドリーとイフも乗り気なようだ。冷静な判断をしてくれそうなノモスが、この場に居ないのが痛い。召喚するか? 面倒な場面に呼ぶなって言われそうだ。


「俺が絵を描くんじゃ無くて絵を描ける人を紹介して貰って、皆の特徴を伝えて絵を描いて貰うつもりなんだ。人を介するから正確な絵にはならないよ」


「裕太ちゃんが描くんじゃ無いのねー。ちょっと残念」


 ディーネが残念そうにしているが、シルフィはそうよねって表情だ。


「俺がディーネを描いてもいいけど、化け物みたいな水の大精霊ができあがるよ?」


「うーん、お姉ちゃん遠慮しておくわね」


 ディーネも自分が化け物みたいに描かれるのは嫌なようだ。


「まあ、できるだけ詳しく伝えて描いてもらうよ。絵を描く時に同席すれば言葉を反映できるけどどうする?」


 一緒に居たら見ながら特徴を伝えられるからより正確になるだろう。


「そうね。お姉ちゃんは同席するわ。綺麗に描いてもらわないと。裕太ちゃん通訳をお願いね」


「分かった」


 シルフィ、ドリー、イフも同席するそうだし、精霊でも女性だからそこら辺は気になるらしい。でもどんなポーズで描かれるのかまで考えるのは気が早いと思う。

読んでくださってありがとうございます。

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