表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/754

百三十六話 モフモフキングダム予定地

 夕食をたっぷり食べて、動物達を抱えて泉の家に戻って来た。


「……モモンガと小猿の家がない」


 泉の家に帰って来て、サラ達を寝かせてから気が付いた。先に送還していたベル達を抱っこしながら、考えていなかった難問に悩む。玉兎や普通の兎は穴を掘っておけば問題無いし、気に入らなければ自分で穴を掘るだろう。


 問題はモモンガと小猿だ。モモンガは木の洞に住んでいたが、うちの森の木はドリーが成長させてくれたので、木の洞とか無いんだよね。小猿は木の上に居たのを捕まえたから、何処で寝ているのかすら分からない。


 モモンガは巣箱みたいな物を作れば問題無いとして、小猿はどうしたら良いんだろう。


「ドリー、モモンガは巣箱を作るから良いとして、小猿がどんなふうに寝ているか分かる?」


「小猿ですか、この大陸は温かいので住居は定めていませんでしたね。風雨がしのげて逃げやすい場所を選んで眠っていたと思います」


 それだとわざわざ住居を作る必要は無いのか、死の大地には雨すら降らないからな。でも、それならモモンガ用の巣箱を用意するだけで良いから楽だ。とりあえず急いで巣箱を用意しよう。


 ……モモンガが好む木とかあるんだろうか? うーん、まあどんなのが気に入るか分からないし、色んな木で作れば良いか。もしかしたら小猿も入るかもしれないし、入り口が大きめなのも作っておこう。


 前に森で採取した木を取り出し魔法のノコギリで輪切りにする。後はハンドオーガーで手頃な大きさに穴を開けて、中身を魔法のノミでくり抜く。入口が小さめだと中身がくり抜きにくいな。うーん、俺の手が入る大きさだと穴が大きすぎるかな? 箱を作って組み立てた方が楽だった気がする。


 ん? そうか、モモンガは入り口部分が狭ければ落ち着くはずだから、大きめに穴を開けている口部分に木をはめ込めば……この方法も結局面倒だな。普通にくり抜こう。急いで六個の巣箱を作り終える。


 ……今更だけどドリーに頼んで木に洞を作ってもらえば、何の問題も無かったんじゃ……。木を傷つける事になるしドリーは嫌がるかな?


「ねえ、ドリー、もしかして木に干渉してうろを作ったりできる? それがドリーにとって嫌な行為だったらしなくてもいいんだけど、どう?」


「木の洞ですかそうですね、あまりいい事ではありませんが、木に負担にならないように洞を作ることはできます。作りますか?」


 あんまり好きな行為って訳じゃ無いけど、洞を作るのは問題無いみたいだ。


「今回は俺が作った巣箱を使ってみるけど、モモンガ達が気に入ってくれなかったら、悪いけど木の洞を作ってもらうかもしれない。その時はお願いしてもいい?」


「ええ、分かりました」


 できれば俺が作った巣箱を気に入ってくれると嬉しいな。全員で森に移動して、どうせならと木の実が生っている木に巣箱を固定する。


 作った巣箱にモモンガを一匹ずつ入れて様子をみる。起きてそのまま居付いてくれたらいいんだけどな。後は地面に穴を掘って兎達を中に入れ、小猿達はどうしたら良いのか分からないので木の根元に寝かせる。これで何とかなるかな?


「シルフィ、この子達は何時頃起きるのかな?」


「分からないわ。でも時間が経てば目が覚めるはずよ」


 うーん、起きるまで様子を見たい気もするが、俺が近くに居ると動物達も怖いだろうし、ソッとしておくか。


「了解、今日は皆にお世話になったしお酒を出すよ。二樽だけどどのお酒が良い?」


 シルフィ達が喜びの声をあげる。あれ? いつの間にかノモスも加わっている。いつ帰って来たんだろうな。


「ふふ、裕太、今日はワインの赤と白にするわ」


「分かった、おつまみも適当に並べておくね」


 赤ワインと白ワインの樽とおつまみをテーブルの上に並べ、俺は皆にお休みの挨拶をして引き上げる。ベル達がお酒を飲んでみたそうに見ていたから、飲んじゃダメって注意しておいたけど、ちょっと不安だな。


 まあ、暴走する危険があるって言ってたし、わざわざシルフィ達がベル達にお酒を飲ませる事も無いか。今日は森の中で動き回ったし、熟睡できそうだ。


 ***


 起きて皆に挨拶をした後、気になったので動物達の様子を見に行く。岩の陰からコッソリと中を覗くが、動き回っている動物はいない。


 うーん、俺とサラ達が中に入ると動物達が怖がりそうだし、せめてここでの生活が落ち着くまでは中に入らない方がいいだろう。


「ベル、レイン、トゥル、タマモ、昨日連れて来た動物達の様子を見て来てくれる?」


 シルフィに頼めば一発なんだろうけど、できるだけベル達に頑張って貰いたいからな。動物達の様子を見るぐらいベル達なら楽勝なはずだ。


「つかまえるー?」


 ベルが楽しそうに両手をワキワキさせている。ちょっと不安になってきた。


「いや、捕まえなくていいから、動物達がどんなふうにしているか見て来て欲しいんだ。大丈夫かな?」


「わかったー」「キュキュー」「みてくる」「ククー」 


 ベル達が動物達の様子を見ながら縦横無尽に飛び回る。偶に止まってフンフンと頷いているようだ。動物を見つけたんだろうな。


 しばらくモフモフキングダムの中を飛び回った後、頭を寄せ合って何かを相談している。おかしな事でもあったかな? おっ、相談が終わったのかベル達が戻って来た。


「どうだった?」


「あのねー、ももんが、おうちでねてたー」「キュキュキュー」


 お家って事は、巣箱の中で寝ていたって事なんだろうな。俺が中に入れてからそのまま寝続けていたって事が無いかぎり、一応巣箱を住居として認めたのかもしれない。一度も起きていない可能性はあるんだから、継続観察が必要だな。


「たまうさぎとうさぎ、あなの中でプルプルしてる」「ククークーー」


 兎達は起きてるみたいだな。プルプルしているのは、いつの間にか環境が変わって怯えているのかもしれない。こちらも要観察だな。


「おさるさん、きのうえでじっとしてるー」


 ふむ、小猿も警戒しているみたいだ。流石に一晩経ったぐらいで、動物達の気持ちが落ち着くわけも無いか。外敵が居ないから、適応できれば暮らしやすいと思うんだけど、ちゃんと慣れてくれるかが問題だな。


 食べ物が沢山あって外敵が居ないって分かれば、落ち着いてくれるだろうしじっくり時間を掛けて慣らしていくしか無いな。


 野生の動物は懐かないって言われてるけど、せめて俺が中に入っても逃げないぐらいには慣れて欲しいな。そうじゃないと癒しの効果を得られない。


「良く分かったよ。皆ありがとう」


 お礼を言って撫で繰り回す。もはや恒例行事になりつつあるな。ワチャワチャとひとしきり騒いで満足しているとサラが声を掛けてきた。


「お師匠様、動物達はどうなっていましたか?」


 そうだった、サラ達に説明がまだだったな。


「うん、まだみんな警戒しているみたい。もう少しこの場所に慣れるまで、俺もサラ達も森に近づかない方がいいと思う」


 俺が言うと、サラとキッカがちょっと残念そうな顔をした。そう言えば玉兎を気に入って、寝ている玉兎をナデナデしまくってたから、近づけないのが残念なんだろう。


「遠くから見るのは構わないですか?」


 あんまり人影がチラつくと落ち着けないだろうけど、できるだけ人に慣れて欲しいし、俺よりもサラ達の方が動物も怖くないだろう。小動物は情操教育に良いらしいしサラ達に良い影響を与えてくれるといいな。


「遠くからならいいよ。でも一週間ぐらいは時間をおきたいからその後でね。徐々に慣らして行こう」


「分かりました」


 サラとキッカがうなずく。トゥルに続いて新たなモフラーの誕生かもしれない。フクちゃん達は見えないし触れられないから、モフれないもんね。


「じゃあ、そろそろ朝食にしようか」


 朝食の言葉に動物達の様子を見ていたベル達が「ビュン」っと飛んで集まって来る。「おなかすいたー」ってベルが言ってるけど、お腹は空かないはずなんだけどな。


 マルコが訓練が終わるとお腹すいたーってよく言ってるから、ご飯の前はお腹が空くものだって覚えちゃったのかな? ドンドン妙な事を覚えている気がする。


 テーブルの上に料理を並べる。俺も最近はご飯と魚が朝食の定番だったけど、今日は朝からお肉で攻めてみるか。昨日は結構運動したし夕食も簡単なものだったからな。


 子供達が朝食に取り掛かるのを眺めながら、俺もラフバードの分厚いサンドイッチにかぶりつく。朝から気分でメニューが選べるようになるなんて、結構贅沢な事ができるようになったな。


 そう言えば拠点も充実してきたし、どんなふうに発展させていくかもう一度考えた方がいいかもな。結構ゴチャゴチャしているのに、これから家も増えるし動物も魚も更に増やす予定だ。確認しておかないと訳が分からなくなりそうだな。


 えーっと、百メートル四方の正方形が二十五ブロックあって、大きな正方形になってるんだよな。その中央に大きな噴水の泉があって、家と畑とプールがある。


 その泉から反時計回りに四角く渦を巻くように全部ブロックに水路を通した。中心の下のブロックの森、今は勝手にモフモフキングダムって呼んでるけど、そこに丸い池と、水路の最終地点に釣り堀予定の大きな池がある。それで大きな池の前のブロックを田んぼにしたんだよな。


 中心の一つ上のブロックにはドリーが大きな精霊樹を生やしてくれたので、その周りを芝生にして、大きな精霊樹の木陰で芝生に寝転ぶ事ができるお気に入りスポットになった。


 そして精霊樹の奥を動物を増やすために森にしたんだよな。こっちには肉食の動物も放す予定だ。草食動物エリアと草食肉食エリアに分けよう。一つは可愛い小動物を集めてまったりと。もう一つの森には可愛い肉食系の小動物を集めて、食料になるお肉は……ネズミを増やす……いや、それはそれでキツイな。


 ネズミって意外と可愛いし、どうするべきか。俺がずっと拠点に居るのならお肉を毎日出す事も可能だけど、外出する事も多いから難しい。これは今後の課題だな。


 あとは……あとは……あれ? もう思いつかない。結構頑張ったと思ってたのに、二十五ブロック中、五ブロックしか使ってないんだな。


 うーん、いっきに森や田んぼ、畑なんかを増やして土地を利用する事も可能だけど、聖域になったらどうなるか分からないし、シルフィ達ともう少し拠点について真剣に話し合っておくべきかもしれない。今晩にでも時間を取って貰うか。


 行き当たりばったりで開発するより、ある程度予定を考えておいた方がスムーズだからな。今日は朝食が終わったらサラ達には巣を潰しに行かせて、俺は拠点をどうするべきかを考えながら見て回るか。

読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ