百三十五話 森の小動物
小動物の探索に森に来た。トゥルとタマモが、玉兎と言う異世界ならではの不思議で可愛い兎を捕まえて来てくれた。
あれだな一つのブロックは小動物専用にしても良いかもしれない。癒される小動物達を集めてモフモフキングダムを建設。俺はそこの王として君臨し、毎日癒しを徴収する。なかなかいい計画な気がしてきた。
異世界で俺はむつ〇ろうさんになる!!
「裕太ちゃん。なんでこぶしを握りしめて、空を見上げているの? 大丈夫?」
新たな野望に浸っていると、ディーネに心配されてしまった。
「ああ、ちょっと気合を入れていただけだから大丈夫。俺もトゥル達に負けないように、小動物を見つけないとね」
気合を入れて森の中を捜索する。特に玉兎は数が欲しいので念入りに地面の穴をチェックする。
***
見つからない。見つからないぞ。なぜ小動物が見つからない。寄って来るのは魔物ばかりだ。ゴブリンやオークはもう見飽きました。
「ねえ、シルフィ、小動物が居ない気がするんだけど気のせいかな?」
「気のせいね。裕太って上手に小動物を避けて探しているわよ。ある意味凄い才能な気がするわ」
シルフィがクールな表情のまま普通に酷い事を言う。クールに言われるとグサグサと心に来るな。しかし俺にそんな才能があったとは気が付かなかった。
地球でも異世界でも全く役に立たない所が切なすぎる。早くもモフモフキングダムの建設に暗雲が立ち込めているような気がしてきた。もういっその事、シルフィに頼っちゃうか?
シルフィを見ると、どうしたのって首を傾げているので、何でも無いと首を振る。……小動物が見つけられないから、見つけるのを手伝ってくださいって大精霊に頼むのはちょっと避けたい。たぶん簡単に力を貸してくれるとは思うが、それは流石に情けないだろう。最後の手段として残しておいて、今はまだ自力で頑張ろう。
「あら今度はベルとレインがこっちに来るわね」
ベルとレインも小動物を捕まえたのか。せめてサラ達よりは早く捕まえないと、師匠としての威厳が……なんか焦ってきた。
「ゆーたー、つかまえたーーー」「キュキューーー」
まだ距離があるのに大声で教えてくれるベルとレイン。元気いっぱいだな。ふわふわと飛んで来たベルとレインが、自慢げに捕まえた小動物を見せてくれる。
か、可愛い。小動物ってなんでこんなに可愛いのかな? でも、悲しい事に俺を見て全力で怯えている。このままだと皆が連れて来た小動物が全部俺を見て怯える事になりそうだな。大丈夫かモフモフキングダム。
「ゆーた?」「キュー?」
俺が黄昏ていると、ベルとレインがどうしたのって首を傾げている。まずはベルとレインを褒めないとな。
「何でもないよ。可愛い子を捕まえて来てくれてありがとう。この子はなんて動物か分かる?」
なんか見た事があるんがけど、思い出せない。大きさは十五センチぐらいでクリクリとした目がとってもプリティだ。リスっぽいんだけどちょっと違う。
「モモンガー」「キュキュッキュー」
なるほどモモンガなのか。俺の耳にはモモンガと聞こえるけど、本当は違う名前なんだろうな。まあ、通じるのならモモンガが分かりやすくていいか。
「モモンガか可愛いね」
「とってもかわいいー」「キュキュー」
凄いでしょってベルとレインが胸を張る。うん、ベルとレインもとっても可愛いな。ついついベルとレインをナデナデしてしまう。
「こんなに小っちゃいのに良く見つけられたね。どこにいたの?」
サラ達に負けないためにも情報収集は大切だ。
「あのねー、きのあなにいたのー。ねてたー」「キュキュー」
モモンガを俺に見せながら説明してくれるベル。隣ではレインがコクコクと頷いている。モモンガは木の洞に居るんだな。木の洞は俺も何度も探したのに何故見つけられないのか、とっても不思議だ。
「教えてくれてありがとう」
お礼を言ってベルとレインを撫で繰り回す。うっかりモモンガが逃げそうになったので、慌ててシルフィに眠らせてもらう。
「もっとつかまえるー」「キュキューー」
たっぷりと撫で繰り回した後、再びやる気を漲らせて飛んで行くベルとレインを見送り、俺も気合を入れて小動物を探す。
木の洞と地面の穴を探すのは間違っていない。レベルが上がった事で増えた身体能力を使い、素早く穴という穴を確認していく。自分の思い通りに体が動くのって気持ちが良いね。小動物は見つからないけど……。
頑張って探すけど、なぜか小動物が見つからない。ちょっと悲しくなってきた。変な呪いが掛かってるのかも、ギルマスの仕業か?
***
「あら、サラ達も小動物を捕まえたわ、ここに案内するわね」
おうふ! 間に合わなかった。うーん、別にサラ達は俺が小動物を捕まえていなくても、バカにしたりはしないだろうけど、師匠の威厳的には避けたい出来事だ。
「………………シルフィ、小動物がいる場所を教えて。お願い!」
シルフィに両手をすり合わせてお願いする。
「……えーっと、それは構わないけどそれでいいの? 頑張って今まで探してたでしょ?」
俺の頑張りなど、子供達の前でいい恰好をする事に比べたらゴミみたいなものだ。まあ、今回はいい恰好なんてできなくて、最低限を取り繕うだけなんだけどね。
「問題無いです! お願いします!」
「裕太ちゃん、ある意味潔いわー」
ディーネ、うるさい。
「ふー、分かったから、そんなに頭を下げないで。あの木の根元を探してみなさい」
「シルフィ、ありがとう」
さっそくシルフィが指を差した木に走る。根元を見ると穴が開いている。穴を覗き込むと丸い物体が。あれは玉兎だな。暗視のおかげでしっかりと形を捉えられる。いままでは空っぽの穴しか見てなかったから、ちょっと興奮する。
穴の奥に居る玉兎、うーんちょっと届きそうにないな。魔法のシャベルを取り出し、サクッと穴を掘ると、完全に怯え切った玉兎がこっちを見ている。ごめん、俺の野望の為に犠牲になってね。モフモフキングダムは良い国にするからね。
むんずっと玉兎を捕まえると、短い手足をバタつかせて「プープー」と抵抗する。罪悪感があるが可愛い。この子は白いんだな。雪玉兎か? この大陸には雪は降らないはずだから、目立つだけだと思うが。
このままでは可哀想だから、急いでシルフィの所に連れて行き眠らせて貰う。これで自己満足だけど師匠としての面目は保った。代わりにシルフィとディーネの評価は下がった気もするが、これはお酒で解決しよう。
しかしちょっと焦ったな。心を落ち着けてサラ達を待っていると、サラ達が戻って来た。キッカが両手で黒い兎を抱えている。あれだな、全部丸いのかと思ってたんだけど、普通の兎も居るんだな。色も豊富みたいだけど、モフモフキングダムがラビットキングダムになりそうだ。
「師匠、捕まえた!」
マルコが報告して、キッカが兎を掲げて見せてくれる。普通の兎もジタバタを暴れているが、キッカもレベルが上がって力がついているから、ガッチリと捕まえている。
「おお、凄いな。みんなありがとう。まずはこのままだと兎が可哀想だから、シルフィに眠らせて貰うね。キッカ、そのまま兎を抱えていて、いきなり眠るから驚かないでね」
シルフィが指でチョンっと兎を突くと、兎がクテっとなった。相変わらず一瞬だな。眠った兎をシルフィに預けてサラ達の話を聞く。
「そうか、ウルフも落ち着いて対処出来たんだ。この森なら問題は無いだろうけど油断はしないようにね」
何度か魔物に襲われたそうだが、慎重に対処したようだ。ドリーも笑顔で頷いているし、安心して見ていられたんだろう。
「分かりました」「わかった」「うん」
「じゃあ、少し休憩するといい」
キッカが好きなリンゴジュースを取り出しサラ達に渡す。水も持たせているけど、この暑いなかで探索したんだから冷たいジュースが嬉しいはずだ。俺の予想通り、サラ達は笑顔でゴクゴクとジュースを飲んでいる。
スポーツドリンクを作りたいところだけど、あれってお水に塩と砂糖を入れればいいんだっけ? ……なんか美味しくできる気がしないから、止めておこう。
***
途中で昼食を挟み、夕方まで小動物を探した。森の中で食べるオニギリは中々の味だった。皆も喜んで食べてくれたので俺は満足だ。
ただ、相変わらず俺が探すと小動物が見つからない。本気で呪われている気がしてきた。お祓いとか行った方が良いのかも? 神社は無いだろうから教会か……無宗教、いや、一応仏教徒になるのか、仏教徒が教会に行っても大丈夫なんだろうか?
俺が頼りない分、ベル達とサラ達が頑張ってくれた。一応俺もシルフィに頼んで五匹ほど捕まえさせてもらったけど、胸は張れないよね。
夕方までの探索の結果三十匹の小動物が集まった。玉兎が十羽、普通の兎が六羽、モモンガ六匹、小猿が八匹だ。小猿は成長しても大きくならない種らしく、大きくなっても三十センチって所らしい。食べ物は主に果物と木の実を食べるそうなので、連れて帰る事にした。
他にもちっちゃなウリ坊を捕まえて来たり、ネズミを捕まえて来たりと色々あったが、連れて帰るのに向きそうにない動物達は放す事にした。ネズミの大繁殖や、ウリ坊がデッカイイノシシになったらちょっと困るからな。
捕まえてシルフィに預かってもらっている動物達を見る。兎の数が多いしその兎がカラフルだから物凄く賑やかに感じるな。
「じゃあ、ここで手早く夕食を食べて帰るよ。シルフィ、悪いけど魔物が寄って来ないようにしておいて」
「分かったわ」
シルフィに頼めば安心だ。帰ってから食べると遅くなるからな。テーブルと椅子を出して、米料理と屋台の料理を並べて夕食にする。いつまでも動物達を眠らせたままにしておく訳にもいかないし、手早く食べて急いで帰らないとな。
途中で何匹か目を覚ましたが、果物を与えても食べてくれなかったから、早く落ち着ける場所に連れて行こう。あっ、帰る前にしっかりと洗浄の魔法を掛けておかないと。
野生の動物は難しいって言うけど、飼育する訳じゃ無くて、森から森に移動する場合はどうなんだろう。不安はあるな。
読んでくださってありがとうございます。




