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百二十五話 拠点散策

 うう、ちょっと飲み過ぎたらしい、頭が痛いです。……なんか昨日はちょっと飲みたい気分になっちゃったんだよな。


「ゆーたー、おはよー!」「キューー」「おはよう」「ククーー」


 いつもは心が温まるベル達の朝の挨拶も、今日に限っては頭に響く。だがそんな事は関係ない。ベル達が笑顔で挨拶をしてくれたら、笑顔で挨拶を返すのが俺の役目だ。


「おはよう、ベル、レイン、トゥル、タマモ」


 頭痛に気が付かないふりをして挨拶を返し、一人一人頭を撫でる。


「ゆーた、だいじょうぶ?」「キュー?」「へん」「クー?」


 結構頑張ったつもりなんだが、ベル達にはいつもと違うって分かるようだ。ベル達の心配そうな表情に申し訳ない気持ちと、心配して貰えるのが嬉しい気持ちが混ざり合う。


「ちょっとお酒を飲み過ぎちゃっただけだから大丈夫だよ。午後には元気になってるからね」


 起きて来たサラ達にも心配されながら、料理をテーブルに並べ朝食を開始する。ちなみに、シルフィとドリーには飲みすぎはダメよっと注意され、ノモスにはあれしきの酒で情けないと叱られた。この三人の方が俺の数倍は飲んでいるのに不公平だ。


 ディーネには二日酔いになったのならもう一回お酒を飲めば治るのよっと、どこぞの酒飲みの理論を展開されたので、聞かなかった事にした。


「あー、シルフィ、よろしく頼むね。危なかったら助けてあげて」


「ええ、分かってるわ。じゃあ、行ってくるわね」


「うん、じゃあサラ達も頑張ってね。危なくなったらシルフィが助けてくれるけど、それに頼ってばかりじゃダメだからね」


「は、はい、頑張ります」「わ、わかった」「………………」


 シルフィの風の繭がサラ達を包んで飛んで行った。大体の事はできるようになったんだし、後は巣に潜って経験を積むだけだからと、今回の訓練を告げたんだけど物凄く不安そうだったな。


 サラとマルコは告げた時は、マジで? って感じの表情だったし、キッカに至っては無言で見つめて来るだけだった。嫌われていない事を祈ろう。ちゃんと二日酔いで付いて行くのが嫌だった訳じゃ無い、元からそのつもりだったんだと説明したし大丈夫だよね? 信じてくれているといいな。


 ジェネラル以上が居る巣には入らないって告げてるんだから、今までとあんまり変わらないんだけどね。俺が居ないのが理由なら、結構心の支えになれてたのかも。  


「それで、裕太ちゃんはどうするの?」


「うん、とりあえず俺は体調が戻るまで寝るね。ベル達は好きに遊んでいていいよ。あっ、ディーネ、池の様子は見ておいてくれ」


 本当なら自分で確認しに行きたいが、頭痛が酷いし体がダルい。体調が回復して確認しよう。ベル達が遊びに行くのを見送り、重たい体を引きずって寝室に戻る。横になる前に水をたらふく飲んでから寝よう。起きたらスッキリしてますように。



 ***



 目が覚めて体調を確認する。少し頭痛が残って体がダルい気がするけど、水をたらふく飲んだおかげか概ね回復したな。


 寝室の外に出て、空を見上げるとベル達が追いかけっこをして遊んでいる。手を振りながら呼ぶと、気が付いたベルが飛び付いて来た。


「ゆーた、げんきになった?」


 腕の中にスッポリ納まったベルが見上げながら聞いてくる。


「うん、元気になったよ。心配かけてごめんね」


 レイン達も寄って来たので元気になった事を伝え大いにたわむれる。楽しくベル達と戯れるには元気じゃないとな、今度からお酒の量には注意しよう。


 ベル達が集まって来たのでそのまま昼食にする。ん? 何か忘れているような……いかんサラ達の昼食を渡してなかった。まいったな、体調が悪くてそこまで気が回らなかったよ。


 シルフィを召喚するのも不味いし、今日は帰って来てからたらふく食べさせるって事で勘弁してもらって、明日からはお弁当を持たせよう。反省しながら昼食を終えて、まずは池の確認に行く。


「うーん、見た感じ問題は無さそうだけど、ディーネ、ドリー、どう思う?」


「今のところ問題は無いわ。水質も安定してるし大丈夫ね」


「そうですね。生物については分かりませんが、植物も順調に根付いていますし、このまま何も起こらなければ大丈夫だと思います」


 順調って事でいいんだよね? しかし、生物についてか……そう言えば回復ができる命の精霊と契約したかったんだよな。怪我とかまったくしないから忘れてた。


 でも、生物か……自然のバランスには生き物の力も必要だろうし、シルフィが帰ってきたら命の精霊を紹介して貰おう。


 ん? 命の精霊って言ったら、生物が沢山いないとダメだよな。昨日捕獲してきた水生生物と虫だけだと無理か? まあ、あとでシルフィに聞いておくか。


「ありがとう。池の管理も二人に任せていい?」


 俺が捕まえて来たんだから、俺が面倒を見るのが筋なんだろうけど、何にも分からんから二人に頼むのが一番だ。二人も頷いてくれたし、全部任せてしまおう。


 さて今日は十日以上離れていたんだし、ゆっくり拠点を見て回るか。帰って来て速攻で出かけたから見て回る暇がなかったからな。


 まずは水路に沿ってこの森を見て回るか。ノモスが土を混ぜ合わせ、ドリーが急成長させてくれた森。色んな種類の種を植えたから、色んな種類の木が生えている。


 小さな森だけど死の大地の森と考えたら凄いよね。じっくり観察しても無理が出ているようには見えないけど、実際のところはどうなんだろう?


「ドリー、急成長させると少し木に負担がかかるって言ってたけど、この森の木は大丈夫?」


「ええ、大丈夫ですよ。養分が豊富な土を運んで貰いましたし、精霊樹が周辺の土を良い状態に保ってくれています。私も手を入れていますし順調ですよ。ただ、実をつける木はもう少し時間が掛かりますね」


 ドリーがニコニコと答えてくれた。森の精霊だからか、森に居るドリーはことのほか上機嫌に見える。そう言えば精霊樹は周辺に良い影響を与えるって言ってたな。精霊樹が生えてひと月も経っていないのにもう良い影響が出始めているのか。凄いな精霊樹。


「大変だろうけど、森の管理もお願いね」


 池に森に畑、俺って頼んでばっかりだな。頼らないって言いながらこういう時にはガンガン頼っちゃってるけど、このままでいいのかな?


「ふふ、裕太さん、私は森の大精霊なんですよ。この位の事は手間でも何でもありません。シルフィに言ったことを気にしているのなら、それは戦闘やお金儲けに安易に精霊を利用する事を、いましめていれば大丈夫です。属性に関する事であれば、頼って貰って何の問題もありませんよ」


 あっさり内心を読み取られたな。まさか心を読んだとか言わないよね? ドリーを見るが上品にニコニコと笑っているだけで、まったく表情が読めない年季の違いか。おうふ、背筋がゾクッとした。年齢関連はアンタッチャブルだな。


「そうなのよー。ドンドンお姉ちゃんにも頼っていいんだからねー」


 ディーネも後ろから抱き着いて来て、頼って良いと言ってくれる。属性に関する事を気軽に頼めるのは助かるな。でもあんまり頼り過ぎると俺のやる事が無くなりそうで、悩ましい所だ。


「ああ、ですが前に裕太さんが言っていた、ベルちゃん達に経験を積ませるのはとてもいい事です。私達に頼む前に、ベルちゃん達と相談するのも良いと思いますよ」


「ああ、そうするよ。皆、よろしくね」


 ふわふわと周囲を飛んでいるベル達に言うと、皆、まかせろーっと手を挙げてくれた。とっても可愛い。最初にこの子達に相談して、ダメだったらシルフィ達大精霊に相談の流れがいいみたいだな。さて次に行くか。


「裕太ちゃん、この空き地はどうするの? 土は良い物にしたんだから畑にする?」


 畑か……皆、よく食べると言っても、空いてる土地を畑にしたら食べきれないよね。農作物を出荷してお金を稼ぐ方法もあるけど、大変な上に実入りが……絶対に魔物を討伐した方が儲かるからな。


「畑は作物が余るから止めておくよ」


 もし、命の精霊をスカウトするのに動物達がりないとか言われたら、牧草を植えて牧場を作るのも良いかもしれない。もしくは森を増やして野生動物を捕まえて来て放すか。どっちが良いかな?


「ねえ、ドリー。もし、森の面積を増やすとしたらどの位まで増やせる?」


「いま開拓している範囲を全て森にする事も簡単ですよ」


 ニコリと何でもない風に言われた。全部を森にするのはそれはそれでこまる気がする。でも、使って無いブロックが二十二ブロックもあるからな、いくつかを森にするのも良さそうだ。


 俺としては一ブロック全部に桜を植えたいところだけど、あれって接ぎ木をしないと増やせないんだっけ? あと此処は年中暑いから花が咲かなそうだ。


「全部はちょっとこまるけど、もう少し森を増やしたいから、次にどのブロックを森にしたらいいか考えておいて」


「分かりました。楽しみにしていますね」


 やっぱり森が増えると嬉しいのか。まあ、当然と言えば当然だよな。なんたって森の大精霊なんだから。テクテクと土ばかりのブロックを通り抜け、精霊樹のブロックに到着する。


「相変わらず大きな木だけど、見ているとなんだか凄く落ち着くんだよね」


 精霊樹を見るとついついボーっと見上げてしまう。特別な木だからか強い日差しを浴びてキラキラと輝いているように見える。神聖な雰囲気満載だ。精霊樹の周りでベル達が遊んでいる光景はいつまで見ていても飽きない。


「ふふ、気に入って貰えたのなら良かったです」


「うん、最初はこんな凄い木が生えて大丈夫かとも思ったけど、今ではとっても気に入ってるよ。ありがとう」


「どう致しまして。もう一本生やしますか?」


「い、いや、それは遠慮しておくよ」


 ドリーが悪戯っぽく笑っているから冗談なんだろうけど、俺が頷いたら本気でもう一本生えそうだから、ちゃんと否定しておかないと。


「あら、残念ですね」


「あはは、そ、そうだ、精霊樹の周りを芝生でおおいたいんだけど問題ある?」


 ふいに思ったけど、強い日差しに種類が違うけど大きな木。地面を芝生で覆えば、昔からCMでやってる不思議な感じの木の場面にそっくりな気がする。


「芝生ですか? 別に問題はありませんよ」


「良かった、育てるのはタマモに頼むけど、種は用意出来ないからドリーに頼んでいい?」


「ええ、直ぐに出しますか?」


「いや、皆が居る時に全員でやるから明日かな。その時にとりあえず一ブロックだけ森も増しちゃおうか。急だけど場所も考えておいて」


「分かりました。ふふ、森はどんな森にしますか?」


 どんな森って言われても難しいな。


「そうだね、大体のところはドリーに任せるけど、いずれは小動物を放したいからエサが豊富な森にして欲しいかな」


 リスとかモモンガとか、そんな感じの小動物を放せば良い感じの森になる気がする。いずれは小型の肉食獣なんかも放さないとダメだろうけど、それはそれで楽しみだ。


「分かりました。しっかり考えておきますね」


「うん、よろしくね」


 思いつきだけど、結構いいアイデアが浮かんだな。精霊樹の木陰、芝生の上で寝っ転がったら気持ちが良さそうだ。

読んでくださってありがとうございます。

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