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九十九話 うおぉぉぉぉぉぉぉ

 お肉のおじさんの所に挨拶に行き、迷宮都市を散歩する。迷宮都市は様々な物が集まる都市だから見ているだけで楽しい。


「サラ姉ちゃん、キッカ。ここ、ここに入ろう」


 冒険者になったのだからと、武器屋に行きたがるマルコに引っ張られて店の中に入る。武器屋の店長さんは武器に触らなければ良いと言う条件で、店の中を見て回る事を許してくれた。


「サラ姉ちゃん。剣ってカッコいいよな」


 ……私には良く分からないけど、マルコは壁に掛けられている剣に憧れるような視線を向けている。男の子って事なんでしょうけど、このままだと剣を買ってしまいそうだ。


「お師匠様は武器の扱いを教えられないって言ってたから買うのはダメよ。どうしてもやりたいのなら、精霊術師としての訓練を頑張って、余裕が出来てからお師匠様に相談しましょう」


「……うん、わかった。しっかり精霊術師としてくんれんして、大きくなったらたのんでみる」


 凄く剣に未練があるみたいね。口では納得していても目は剣に釘付けよ。お師匠様は私達を立派な精霊術師にして、精霊術師をバカにしていた人達を見返したいっとおっしゃっていたけど、剣の訓練を許して貰えるのかしら?


 ……真剣に頼めば許して下さるような気もするけど、最低限、精霊術師としてお師匠様に認めて頂くまでは、精霊術師の訓練に集中するべきよね。


「ええ、今は訓練を頑張りましょう。それに今のお師匠様は少しギルド関係で大変だから、私達は迷惑にならないようにしないとね」


「うん。師匠ってきらわれてるからな」


 そうなのよね。お師匠様が自分で言っていたけど、想像以上に嫌われていて驚いたもの。何がどうなったらあそこまでギルドに嫌われるのか想像もできないわ。


 ギルド内に入るだけで空気が変わり、敵意のこもった視線がお師匠様に飛んで来る。私達には同情的な視線と何かを観察するような視線が飛んで来る。酷い扱いを受けていなのかの確認のような気がするけど、多分私達が苦しんでいるようなら、喜び勇んでお師匠様を攻め立てそうな気がする。


「お兄ちゃん。キッカつまんない」


 武器を見ながら考えていると、キッカがきてしまったみたい。武器に興味が無いと辛いわよね。


「わかった。じゃあ次のおみせにいこう」


 マルコはもう少し武器を見たそうだったけど、あきらめて店を出る選択をする。店長さんにお礼を言って武器屋を出る。


「サラ姉ちゃん。次はどうする?」


「そうね。歩き回って喉が渇いたわ。飲み物を買って広場で休憩しましょうか」


 贅沢だけど少しはお金を使っておかないと、お師匠様が心配しそうな気がする。無駄遣いはいけない事だけど、これぐらいの贅沢は大丈夫だと考えましょう。


「キッカ。りんごのじゅーすがのみたい」 


「わかった。じゃあ、ひろばに戻ろう」


 飲み物を買って広場のベンチで休憩する。迷宮都市の広場で飲み物を買って休憩するなんて、不思議な気分ね。次にどのお店を見に行くか話し合っていると、風が私達を包むようにグルグルと優しく吹いた。これは合図よね。


「マルコ、キッカ。移動するわよ」


 マルコもキッカも風の動きに気が付いていて素早く立ち上がる。シルフィさんが移動を開始したので私達も後について行く。


 私達を包むように風が吹いた場合は面倒な出来事が近づいて来るから、シルフィさんについて行くことに決まっている。でも面倒な出来事って何なのかしら?


 お師匠様は普通にシルフィさん達と話しているけど、私達には無理だからこんな時には少し不安になる。私達はシルフィさんの気配を追いかけながら、ドンドンと人気ひとけが無い細い路地に入って行く。人気ひとけが無い場所に向かうって事は……。


「なあ、サラ姉ちゃん。これって師匠が言っていた、おしおきってやつだよな?」


「ええ、そうね。……私達を狙った場合は、今後の私達の安全の為にもシルフィさんがお仕置きするって言ってたもの。人気が無い所に向かっているし間違いないわ」


 私達が狙われたのね。お師匠様がもしかしたら冒険者がからんでくるかもしれないって言ってたし、私達が普通に生活出来ている事が気に入らない、スラムの人達の可能性もある。どっちなのかしら?


「やっぱりそうか。キッカ。おれからはなれるなよ」


「うん。ねえ、マメちゃんにもおねがいする?」


「いや。師匠がもしきけんなことがおこったら、ぜんぶシルフィさんにまかせるように言ってたから、おれたちはおとなしくしていたほうがいい」


「わかった」


 マルコもキッカも落ち着いているわね。この分だと問題は無さそう。更に細い道を進み右に曲がると行き止まりに突き当たった。行き止まりは少し広くなっていて、誘い込むにはおあつらえ向きの場所のようだ。


 シルフィさんの気配が私達を行き止まり側に移動するようにうながし、通路側に陣取るように止まった。少しだけ待つと、戸惑とまどったように五人の男の人が近づいてきた。冒険者みたいだからお師匠様関連の人達かしら?


「君達は俺達の事に気が付いていたのか? わざわざ俺達を誘い込んだみたいだけど、どういうつもりだ?」


 シルフィさんをはさんで私達と五人の冒険者の人達が向かい合う。えーっと、シルフィさんの言葉はあの人達にも聞こえないんだから、私が答えるのかしら?


「気が付いていました(シルフィさんが)。何故私達をつけるんですか?」


「気が付いていたのなら、人気ひとけの無い場所に誘い込むのではなく、誰かに助けを求めるべきだな。まあ、俺達は乱暴を働く気は無い。偶々お前達の事を見かけたから忠告するか悩んで、ちょっとついて来ただけだ」


「忠告ですか?」


「そうだ。お前達はあの詐欺師の弟子だろ。悪い事は言わないから弟子を辞めろ。いいな。このままだとお前達も嫌われて酷い目に遭うぞ」


 ……えーっと、もしかして善意の忠告なのでしょうか? では何故シルフィさんはこんな奥まった場所に、私達を連れて来たんでしょう?


「忠告ありがとうございます。ですが私達は今の生活に満足していますので、弟子を辞めるつもりはありません」


「何故だ! 冒険者ギルドでのあいつの嫌われている姿はお前達も見ただろう。一緒に居ればお前達も同類として扱われる。お前達が脅されているのなら、俺が冒険者ギルドに話を通してやってもいい。今の状況ならギルマスはお前達を必ず助けるぞ」


 驚いた表情の冒険者さん、断られると思ってなかったのかしら? 助けてくれると言われても、もう私達はお師匠様に助けて貰ってますし、一人で生きて行こうと思えば生きられるだけの手段も貰っています。ギルマスの助けとやらは必要ありませんよね。


 マルコとキッカを見てもまったく心を動かされた様子はありませんから、もう一度しっかり断っておきましょう。


「もともと私達はスラムの住人ですから、嫌われる事は慣れています。何度も言うようですがお師匠様から離れるつもりはありません」


「しかし、それ「カールさん、もういいじゃないですか。さっさとさらっちまいましょう」で」


 忠告してきた人の仲間が話に割り込んできた。


さらう? 何を言ってるんだ?」


「だからこいつらを攫って、あいつから全財産と良い魔法の鞄を持っているらしいから、それも奪っちまえば良いんですよ。最近依頼を受けて稼いでいるみたいだし結構な金になるはずだ。ムカつくあいつに復讐できて金も手に入る。良い事ずくめでしょ」


「ふざけるな! そんな事をしたら今度こそ冒険者の資格を失うぞ!」


「隙をみて殺しちまえばバレませんよ。ガキ共も売り払っちまえば、今の状況なら調べる事すらしないんじゃないっすか? だいたい俺達は全財産を失っちまって借金まで出来ちまった。それもこれも全部あんたがあいつに喧嘩を売ったせいだろ。こっちはケツに火がついてるんだ。あんたがやらねえのなら俺がやるから引っ込んでろ」


 仲間割れが起こっていますね。カールさんですか? あの人ともう一人は戸惑ってます。残りの三人が武器に手をかけていますから元からそのつもりだったのでしょう。シルフィさんのお仕置きはあの三人ですね。


 しかしこの人達がお師匠様に絡んで全財産を奪われた人達だったんですね。運が悪いと言うか何と言うか。少し可哀想です。 


「あいつに勝てるわけないだろ。あんなデカイハンマーを軽々と振り回す奴だぞ。目を覚ませ!」


「さんざんあいつの悪評をバラ撒いたくせに今更何言ってるんだ。だから人質を取るんだろうが。あんたは黙って見てりゃあ良いんだよ。少しぐらいのおこぼれはくれてやる」


 お師匠様の悪口を言いふらしていたんですか。可哀想だと思った事は取り消します。


「ふざけた事を言うな。どうしてもやるつもりなら、俺が相手になるぞ。お前らが俺に勝てると思ってんのか?」


「はっ、俺達じゃああんたに敵わねえけど、あんたが忠告とか訳の分からん事を言っている間に、少しは人を集められた。本気でやり合うつもりなら相手になるぜ。だがまあ、一緒に冒険した仲だ。大人しくしてるなら助けてやる。無論共犯になって貰うがな」 


 男がそう言うと新たに四人の男達が入って来た。……いいタイミングで入って来たけど、もしかして陰で話を聞いていて、入るタイミングをうかがっていたのかしら? それに仲間を増やしたら取り分が減ると思うんだけど、そこら辺はどう考えているの?


「急な話だったから四人しか居ねえが、それでも七対二だ。いくらあんたでも勝ち目はねえぞ。大人しくしてろ」


 五人が武器を構えて二人が弓でカールさんを狙っている。流石にこれはカールさんが不利よね。どうなるのかしら?


 何処どこか他人事のような心境で目の前の争いを見学する。


「くっ。嬢ちゃん達すまねえな、俺が何とかあいつらを引き付けるから逃げてくれ」


 いつの間にか立ち位置が私達とカールさんとカールさんのお仲間の人VS人攫いの七人の男達の構図になっている。そしてカールさんの顔はキリッっと引き締まり、何かを覚悟した表情になった。


「えっ、でも……」


 シルフィさんの気配を確認するが動く様子はない。


「俺の事は心配しなくて良い。お前らは自分の事だけを考えていれば良いんだ。悪いな余計な事に巻き込んじまった」


「いえ、そういうことではなくて……」


 言いたい事が上手く伝えられない。こんな状態は予想外で、何の合図も決まっていないしどうすれば……。


「じゃあな。無事逃げ延びろよ。うおぉぉぉぉぉぉぉ」


 カールさんともう一人のお仲間が、私達を攫おうとしている人達に剣を構えながら立ち向かっていく。


「へっ。バカが。ガキなんかにほだされやがって。やっちまえ」


 弓が放たれ戦いが始まろうとした瞬間「バンッ!」っと物凄い音がして戦おうとしていた全員が吹き飛ばされた。何となく吹き飛んで行くカールさんを目で追いかけてしまう。


 シルフィさんがやったんだろうけど、なんでカールさん達もまとめて吹き飛ばしちゃったのかしら?

読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
カール最後の一線は越えなかったな!? ヨシ!w
カールさんが何をしたっていうんだよ! ・・・いや色々やってたな
[一言] カールさぁぁぁぁん!!? なんでこんなことにwwwww
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