【STO:6】異世界で戦う主人公は初めての「殺し」に何を思うのか
ロデオさんに(あまりのありがたさに呼び捨てする事が出来なくなった)魔物を凍らせ、銃もとい気銃を撃ち続ける。
気銃は思いのほか体力を消耗し、一体倒しては休み、一体倒しては休みの繰り返しであまり効率は良くなかったが、その休む間もこの親切な冒険者は気銃を説明してくれていた。
「いいか?まず銃の使い方がなってねぇ。撃つ場所もメチャクチャだし、何より引き金を引いた瞬間に狙いがズレてる」
そう言うとロデオさんは休憩を挟む俺からヒョイと気銃を取り上げると、軽く構えて見せる。
「どういう訳か、お前は外見に比べて随分と力が無い。なら衝撃を受け流す為に片脚を後ろに一歩下げて支えて銃を構える。ほんの一瞬、一瞬だけでいい。動きの全てを静止させろ。そしてーー
ーーその一瞬の間に引き金を引く」
弾けるような銃の音が一発。振り向けば木に巻きついた蛇の魔物が此方へと今まさに飛びかかろうと身を屈めていた所だった。
蛇はそのままズルズルと下にずり落ち、ドサリと仰向けに倒れる。蛇の喉元に10円ほどの穴が空いており、それが致命傷になったのだろう。
「攻撃されれば誰だって攻撃される箇所を意識する、それは魔物だって同じだよ。意識を集中すれば身体中の気は収束されて防御に回される。
・・・つまり攻撃する刹那、意識していない急所に照準を変えて撃てば、こんな火力の無い武器でも一撃で倒せるって訳だ」
事細かに説明してくれるロデオさん。要するに誰もがみんな全身を気が覆っていて、意識が傾くとそっちに流れちゃうって訳ですか?つまり・・・
「デコピンしたフリして浣腸したらクリティカルするって事か」
「合ってるけど何故それを例えに出した」
なるほど、特に全ステータス最弱の俺は固定火力の気銃が欠かせない。故に今のテクニックは今後生きていくのに必要になりそうだ。
「さて、次の魔物探すかね。今度は一発で決めろよ?」
ロデオさんにアドバイスされ、俺は再びレベル上げを再開していく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
が、世の中アドバイスされたからっていきなりモノに出来るはずもなく。
相変わらず4、5発撃たないと一体倒せずにいた。そんな俺の姿に呆れる事もなくひたすらに魔物を拘束し、ロデオさんは俺のレベル上げに付き合ってくれた。
「そろそろ上がりませんか?」
宿の事もあり、俺はそうロデオさんに提案する。
「依頼人が決める事だから俺は口出ししねぇが・・・まだ昼を半分も過ぎてねぇぞ?」
・・・はい?いや待て待て、まだ昼?だって時計は午後三時だよ?そうロデオさんに尋ねるとーー
「はぁ?今は昼の刻4時だぜ?1日36時間ある中のまだ半分も経って無いんだ、俺はもう少し特訓をお勧めするがね」
1日36時間だとォ!?何という事だろう、世界中のニート共聞いて喜べ!1日36時間だってよ!!
俺が今まで見てきた異世界モノってだいたい地球時間と同じなのに、マジかぁ、1.5倍かぁ・・・
「それで?続けるのか?」
俺は感慨深く時計を眺めていたが、ロデオさんに声をかけられて我に返る。
う〜ん、正直報酬とか考えたらこのままレベル上げの方が効率良いんだよなぁ・・・
だが24時間サイクルで17年間生きてきた身では正直持たないので諦める事にした。
「なら依頼は終了かな?それならサイン貰えるかい?」
「あぁはい、わかりました」
言われるままに内容の読めない羊皮紙に自分の名前のサインを書く。
ギルドでも書いたが、日本の文字で良かったのだろうか。
「それじゃあオレはこれで。また必要になったらギルドに頼むわ」
羊皮紙を腰の鞄に詰めると、両手をポケットに入れて街へと歩き始めるロデオさん。
・・・今ここで置いてかれたら生きて帰る自信がないので俺も慌てて追いかける。契約完了する場所は次回ちゃんと考えよう・・・命に関わる。