【STO:3】異世界のヒロインは大体主人公より強いのでそこまで安否を気にする必要が実は無い
俺は早速銃の性能テストをしようと街の外へと出る。はやる気持ちを抑えて魔物を探すが、正直魔物がどんなものが居るのか知らない事に気付く。
RPGじゃ情報収集は当たり前じゃないか!馬鹿か俺は。あながち知性1も間違いじゃ無いかもしれない。
仕方なく俺は一旦街に戻って情報収集をすることにした。だって魔物見つからないし。
が、俺は現代っ子だ、森を出ようと歩き回るがどれだけ歩いても街が見えて来ない。そう、森の歩き方を知らないのだ。
流石に少し焦り始める。そりゃあ当たり前だ、俺のHPは1。俺は殴られただけで死ぬぞー!!次回作にご期待ください!
ーーなんて展開もありえるわけだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
森を探索した時間より3倍近い時間が経過したが、一向に街が見えない。
ーー喉が渇いて来た、飲み物は自販機で普段買っているので水筒なんて持っていない。街に無事戻れたら冒険に必要な装備とか整えよう・・・
心身共に疲れ果て、フラフラと歩いていたその時だ。
「なるほど、大体の調査は終わったようだな今夜奇襲をかけるぞ」
ーー近くで女性の声が聞こえる。
助かった!人が居る!!これで帰れるぞ!!
俺は急いで声のする方へと自転車を引きながら走る。
そして声のする場所へと辿り着いたーー
「ん?何だ貴様は?」
声の主である女性の背後には、ひしゃげた鎧を来た骸骨達がそれはもう沢山たむろしてやがりました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
いきなり人生終了のお知らせの告知を貰った俺の身体は震えて動けずにいた。心臓も激しく脈打ち、呼吸が出来ないほど緊張している。
人間の骨が動いている恐怖、その空洞の瞳から放たれる赤い閃光。それが一体や二体ではなく数え切れない程居るのだから、この緊張もやむなしだ。
「オイ、聞いて居るのか貴様」
黒に紫がかったような髪に紅い緋色の瞳、髪はシニョンの無いツインテールを束ねたような髪をしていた。すらりと細い身体は白く、漆黒のドレスから覗く肌は非常に目立つ。しかしそれ以上に目立つのがツンと上を向いた大きな胸だ。情けない話、彼女の胸に視線を向けた瞬間恐怖心が消えた。
「は、はい・・・聞いてます」
やっと俺の口から出た声はかすかに震える。
「ほう・・・?魔人語が話せるのか」
その女性は腕を組み、俺の身体をまじまじと見つめる。死ぬ前にせめて一発位はとか考えながらその様子を息を呑みながら見やる。
「魔人語が話せるという事はつまりーー
一歩一歩近付き、俺の目の前へくる。
胸を強調するかのように腕を組みながら顔を覗き込む。
ヤバい、殺される。
ーーお前はあの街に潜入していた密偵の魔族だな?街の様子はどうだった?」
へ?
「ふふん、このヘラリカ様の鼻でも人間の匂いしかしないとは、大した変装術だ」
あ、この子残念な子だ。
俺の震えも緊張も一気に吹っ飛ぶ。何かそう考えると後ろの骸骨達もオブジェかなんかに見えてきた。気のせいだけど。
しかしこの勘違いを逆手に取らない理由は無い、多分魔王の幹部か何かであろうこの女ーーヘラリカは恐らく街を滅ぼそうと進撃して来たに違いない。ならばやる事は一つーー
「ヘラリカ様、実はこの街の兵士達はどうやら貴女様の作戦に気付いてらっしゃるようです」
「なに?」
少しギョッとして目を大きく見開いたヘラリカは、俺の言葉に思わず聞き返す。
「ええ、ヘラリカ様は恐らく今夜あたり奇襲をかけるつもりでしょう?街の兵士から聞きました」
「馬鹿な!この私の考えた作戦がまるっと読まれてただと・・・?」
「ですので今回は一時撤退をお勧め致します」
「ううむ・・・父上に無理を言って来たのだ、今更おめおめと帰る訳には・・・」
どうやらもう一押しのようだ、頑張れ俺!
「何を仰います!作戦が見抜かれている以上このまま街を攻めてもヘラリカ様が命を落とすだけですよ!?あの街には異世界から召喚された勇者が幾人も居ます。一度撤退すべきでしょう?違いますか!?」
「むぅ、確かに・・・」
ヘラリカは俺の説得を聞くと頭を抱えてしゃがみ込む。なにこの子かわいい、今時こんなあざといリアクションする子居ないぞ!!
ヘラリカ数分程悩んだ末立ち上がり、パチンと指を鳴らす。
同時に何百と居たであろう骸の兵士達は地面へと潜り込み、姿を消す。
「確かにお前の言う通りだ、やむを得んココは引こう」
そう言うとぐるりと腕で弧を描き、黒いブラックホールのようなゲートを召喚する。ゲートの向こう側にファンシーなぬいぐるみの並んだ棚がうっすらと見えるのは多分気のせいだろう。
「では引き続き調査の方は任せる」
そのままゲートの中に入り姿を消すヘラリカ。あたりはしんと静まり返り、近くの棒切れで骸の兵士が潜った箇所を掘り返してみたりもしたが、姿は見当たらなかった。
「・・・助かったぁ〜・・・」
へたりと座り込み安堵する。自分の命と同時にこの街を救ったのだ。もっとも、この功績は誰からも称えられる事はないのだが。
朝夜「でも街に帰れないままなんだが」