【STO:2】ファンタジー世界で剣は男のロマンだが、実際多く使われてる武器は多分弓
そうだ、武器屋に行こう
ーーそんなこんなで今に戻る。
俺は広場らしき場所で学校で食べるはずだった弁当を口にする。この世界にも唐揚げは存在するのかねぇ、なんて思いつつ弁当箱の中ですこしばかりふやけた唐揚げを咀嚼した。
「・・・これからどうしようか?」
誰も居ないのにぽつりと小さく呟く。犬耳や猫耳の獣人やら耳の長いエルフのようなのが広場の外を歩くのをぽけーっと眺めていた。
見ててわかった事だが、人間に動物の耳や尻尾が生えたような獣人しか見かけない。ウサギの着ぐるみを着たようなのや、動物が二足歩行なんてのはまだ一度も目にしていないのだ。
言葉は通じる、ただ別の言語を話しているのは姫様でわかった事だ。日本語を流暢に話すものの、口の動きが全く違う。文字も読めないのは街中を歩いてる最中に理解した。自分のステータスが読めるのとはまた別らしい。
そしてアイテムの名称、これは此方の世界でもリンゴはリンゴ、バナナはバナナが主流らしい。何故主流かといえば、他の国では言語が違ったりするそうな(アップルとか呼ばれたりするんだろうか)。
昼食も終わり、弁当箱を広場の噴水で洗う。学校に行こうとして異世界に来たのだから黒い学ランに通勤鞄、中には教科書ノート筆記用具が入っている。
これでも真面目に学校いって、成績もそこそこ良いし、運動神経だってある。
髪だって黒のままだ、突っ張ったような髪型はしてない。どこにでもいる普通の学生だと自負している。部活だって通っている、剣道部だ。
身長は170とやや小柄なものの、学校では大分筋肉質な方で顔立ちも・・・悪くないハズなんだが・・・モテた経験は無い。
しかしHP1とは一体どの位のダメージなんだろう、殴られたら即死でもするんだろうか?アカン、レベル上げなきゃ・・・
レベルを上げるのはいいが、一発でも被弾したら終わりという条件付きだけどな!!
溜め息しか出ない、異世界での生活って夢見る青少年の理想郷じゃなかったの?元の世界の方が安全で充実してるんですけど??絶対生きて帰ってやるからな!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
姫様から貰ったお金でまずは武器を買いたい、今のままだとその辺の雑踏に入るだけでも恐ろしい。
幸い慰謝料のつもりだろう、大分金貨がズッシリ入っている。筋力が1のせいか自転車に頼らないと運べないが・・・あれ?姫様コレ片手で持ってたよね??
武器屋がどこにあるか知らないし読めないから武器を持ち歩く人に尋ねる。なるべく優しそうな女性に声をかけ、道を聞く。女性とさりげなく関われる数少ない手段だ。
そんな訳で武器屋へと入るが自転車ごと入る訳にもいかないので重い金を鞄に入れて背負いながら店内へ。
油臭い匂いがするが、気にせず武器を見て回る。展示された武器はどれも綺麗に手入れされていた。
「ようこそ、どんな武器をお探しだい?」
武器屋のおっちゃんはにこやかに俺を迎え入れる。ガタイが良く強そうだ。
もうこのおっちゃんが戦えばいいんじゃないのか?
「軽くて遠距離で使える武器なんてありますかね?出来れば女性でも扱えるヤツ」
「なんだ、恋人へのプレゼントかい?」
「ええ、まぁそんなトコっスね・・・」
勿論彼女なんて居ない。道を聞くの事は出来てもナンパなんてとてもじゃないが無理だ。俺にそんな度胸は無い。
「ん〜・・・女が好むのはレイピアかウィップ、後は弓ってトコだなぁ」
武器屋のおっちゃんは幾つか武器を見せてくれる。剣道部だし剣が使えればよかったのだが、接近で戦ったら間違いなく死ぬ。下手したら掠っただけでも死にかねないのに流石にその選択肢は俺には選べなかった。
しかし紹介された武器はどれも微妙だな・・・鞭や槍でもまだ近いし、弓は筋力1で引けるとも思わない。
「この武器は?」
「あぁ、それはボウガンだな。矢を小型の弓にセットして撃つだけだ。これにするのか?コイツぁ身体鍛えても威力は上がらねぇぜ?」
このおっちゃん良い人だな。だが筋力1の俺にはコレ以外の選択肢なんて無かったのだ。
「じゃあコレにーー
それを購入しようとしたその時だ。店の奥にキラリと光るL字型の武器を発見する。
ーーアレは?」
「ん?あぁ、アレは銃って言って。気を消費して弾に変えて撃つってな代物だ。全く人気無くてな、処分しようとしてたのさ」
「コレください!!」
「オイオイ、確かに遠距離武器だが、大した威力なんざ出ないぜ?火薬を使った銃よか威力はあるがよ」
火薬を使った銃より威力があるなんて最強じゃん!!手軽な武器で俺でも扱えるし!コレは買うしか無いだろ!!
「いや、コレでいいっス!!むしろコレがいい!!」
俺の必死な頼みにおっちゃんも断るに断れず、タムルス金貨5枚支払い購入した。ハンドガンより少しばかり大きいが気にする程じゃない。
俺はおっちゃんに礼を言って店を出るが、「返品したくなったら特別に8割で買い取ってやるからな」なんて言ってたが、俺には拳銃より火力のあるこの銃を手放す気は微塵も無かった。
朝夜「剣道部が銃を使う日が来るとは思わなかった」