【STO:1】【STR:1】【VIT:1】【DEX:1】【AGI:1】【INT:1】ついでにHPMPも1
ようやく主人公の名前が出るのだった
「初めまして異世界の勇者様、私の名はユークリステラ、ユークリステラ・ラン・ファルシオーネと申します」
柔らかな笑みを浮かべ、思わず頬をさすりたくなるような可愛らしい女性はそう名乗るとそっとお辞儀をした。
え?なんだって?勇者様?勇者様って俺の事??
異世界の勇者様?キタコレ!!と言うことはココはお城の中で今謁見の間みたいな所に居るんだな?なるほど。
ならば目の前の女性はこの国のお姫様だろうか?よかった、ヒロインが可愛くて!!
「それでは勇者様、異世界から召喚され、突然の事でさぞかし驚いていらっしゃるとお思いでしょうが、是非お話を聞いて戴ければと・・・」
そんな天ぷら、違った、テンプレのようなお姫様の言葉に俺は素直に正座して聞き入れる姿勢を取る。見慣れない態度に戸惑っているのか、僅かばかり狼狽する姿もまた麗しい姫様は、暫くすると口を開いた。
「この世界には魔王が存在し、その魔王によって今、世界が滅ぼされようとしています。どうしても貴方がた勇者様に力を貸していただきたく、召喚の扉を使い呼び出したのです」
なるほど、魔王討伐はデフォですよね。で、魔王を討伐すれば元の世界に帰れる扉が開くって訳だな?
正直帰る気なんて微塵も無い、家族には悪いがこのヒロインと生涯を共にすると誓うぞ!!
「ーーええと、それで宜しいですか?」
覗き込むようにして上目遣いで俺の顔を見つめる姫様。やばい、凄い可愛い。名前長すぎて覚えてないけど。ええと確か・・・ユークリッドだっけか?
俺は顎を引きそのまま続けるように姫様に促すと、悶々と魔王を討伐した後の事を妄想していた。
「では勇者様ステータスの方をお見せ願いますか?このステータスでどんなクラスに向いているかの見当がつきます」
「えっと・・・どうやって見せれば・・・?」
「あっ、私としたことが・・・ええと、掌を上に向けて『ステイト』と唱えていただければ・・・」
なるほど、魔法を唱えてステータスを確認出来るのか。なんというか親切設定よな。
戦闘する訳では無いが初めての呪文だ、胸がワクワクする。
「『ステイト』!」
少し声が上ずってしまった。すると掌から青いブラウザのような半透明な画面が表示される。やっべ、ワクワク通り越して心臓がバクバクしてる!本当に出たよ!ええと、どれどれ・・・
【NAME:御国 朝夜】(みくにともや)
【LV:1】
【BODY:No】
【STR:1】
【VIT:1】
【INT:1】
【DEX:1】
【AGI:1】
【HP:1/1】
【MP:1/1】
【SKILL:Error】
俺の思考は完全に停止した。俺の背後からステータスを覗き込もうとコソコソ歩み寄る姫様。画面を一目見るなり気まずそうに引っ込み、再び定位置へと戻る。
「ええと・・・」
気まずい、非常に気まずい。そもそもステータス1ってなんだよ!!俺、勇者様として呼ばれたんじゃないの!?姫様が気まずそうにしてる時点でこのステータスは相当ダメなやつらしい。
百歩譲ってステータス1なのはいい。HPとMPも1ってどういう事?そして死んだ魚のような目でステータスの最後を見る。
ーーエラーってなんだよ・・・
「・・・このBODYっていうのはなんスかね?」
憐れむ姫様に俯いたまま尋ねる。
「・・・それは体属性ですね、万物の生命には身体に一つ、必ず精霊の加護があるのですよ」
精霊の加護すら無いんですが。
「あの、大変申し上げにくいのですが・・・」
おずおずと姫様が俺に向かって話しかける。
言いたい事は大体予想がつく、元の世界に戻すことが出来るならこんな言い方はしない。
「呼び出した身としては本当に申し訳ありません。ですが、勇者様とはいえこの能力値で死地へ赴いて欲しいなどとはとても言えません・・・」
そりゃそうだ、文字通り『死にに行く』わけだから。そういう事を言ってくれる姫様の優しさが身に沁みる、傷口にも沁みる。
一端の高校生が更に弱体化食らって魔王を倒せとか、どんだけハードモードだよ!クソゲーもいいとこだろ!
「魔王討伐は今までに召喚した他の勇者様に任せて、貴方は下町で伸び伸びと暮らしてください。せめてもの償いにこれを・・・」
そう言うと姫様はシルクのようなきめ細やかな袋を手渡してくれた。
ーー手切れ金という奴だ。
他にも召喚した勇者が居るらしく、そいつらに任せる事にしたらしい。
俺は自転車を引きながらとぼとぼと城を出て行った。