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カオス ゲーム  作者: 瑠璃嬢
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カオスゲーム

「なァ…もし俺に殺されるとしたらどーする?」


「…そんなの…殺される前に殺すわ」


『カオス ゲーム 第十回大会の開催をお知らせします』


機械音。

二十歳程度の女モチーフであり、

それはもう三度目だった。

悲しく冷たいそれは カオスゲームなる殺人ゲーム。

夢でもバーチャルゲームでもない。

戦朱イカロス神。

神は人間の一部に特別な力を与えた。

それは悪にも善にもなる力だった。


私はまた知る。

鮮血の味、 肉を裂く軽さ、 殺す快感。


「名前を教えて…?私は 朝霧 御門」


だけど 守りたいモノがあるならば。

私は何も恐れない。

私は誰にも守られない。私が守ってみせる。


「御門…か。俺は…三神 水連…女みたいで嫌なんだけど」


「キレイな名前ね。水連…ゲームの間よろしくね」


「あァ…よろしく相棒」


大切なモノを守るために。

大切になるであろう貴方のために。

戦う。


「カオスゲーム スタートね」





『では簡単にルール説明をさせて頂きます

今回人数は一万人。時間は一ヶ月。勝敗は残り総数で決めます。紅白に別れて戦います。

目印として紅軍はルビー、白軍は水晶を身に付けてください。

殺し方などは自由です。

共闘、チームプレイ、多彩な戦いを期待しています

更にココにはモンスターが出ますのでご注意下さい


それでは皆様!

一ヶ月間 お楽しみください!』


アナウンスが終わると手元に紅い宝石が現れる。

ポップアップウィンドウ。

‘選択’する時と‘自己ステータス管理’

の時のみ使えるものである。

今回は‘選択’であった。


「私はピアスにするけど…水連は?」


素早くピアスのコマンドをタップすると

小さめの耳に黄色いエフェクトが発生し

紅い宝石がぶら下がる。

迷った顔で彼もウィンドウの右下をタップし

細い首に宝石が埋め込まれたチョーカーが現れた。


ふと、頭上に カウントダウン・タイマーが現れる。

時間は一時間に設定されている。


「一時間かァ…長いな」


ボソッと呟くと彼は指をスライドさせた。

ステータス管理コマンドから一本の長剣をタップする。

大きい。彼の身丈程ある、あれは。

魂付き―…。

刀身を白く輝かせ、切っ先は鋭く。


キィ―――ン。


思わず手を伸ばした、それに。


「拒まれた…?」


苦笑いしながら水連が刀身を撫でると

空気が軽くなる気がした。

月華…こいつ人見知りなんだ、と彼は言った。


…げっ…か…


刹那。

口にした瞬間。光。

身長160cm程度の白髪の男の子。


「…月華が自分から出てくるなんて珍しいな」


〝…違う…オレはこの女のコトハに引きずられた〟


白髪がスンと首筋をくすぐった。


〝お前といると…魂が引きずられそうになる〟


痛み。

噛まれたらしい首筋が痛む。

止めようとした水連を止めて、少年を抱きしめた。

私の血肉と同調しようとしている。

トクン。トクン。トクン。

私と少年の鼓動がひとつになる。


〝ダメです御門様…こいつはダメです…〟


バチィッ。


同調が無理矢理断ち切られる。

少年が睨んだ先。


「………血桜…ハヤテ、空羽…」


ぽかん と口をあけた水連がやっとの思い出声を発する。

そもそも魂付き刀一本でもレアモノなのだ。


「武器もなしに…全部魂付き…?」


青髪の男。〝御門様の羽衣だ。名は血桜〟

フードをかぶった一人。〝右の…青いピアス〟

黄髪がふんわりと美しい。〝御門様の髪留め。空羽

…御門様…!!

お傷をお見せ下さいませ…っ〟


息もつかぬまま一人が御門に駆けつける。

散々叫んだ挙句両手を御門の首に翳し。歌う。

エフェクトの様に手の中が光り、

そして次にはもう傷は治っていた。


〝その女の身につけてるモノは全部そォだ

悪ィけどその女の前では擬人化したくねェな。〟


そう言うと月華は刀に戻った。


〝コイツ…ッ

ナマクラ刀のクセに御門様をその女呼ばわり…

へし折ってやろォか…!?〟


脅威に狂った顔で言い放つ空羽を止めたのは水連だった。


「ナマクラ刀…?月華が…?」


〝ええ、そうよ〟


「次言えば切る」


やめろ。いいえ、御門様


〝切って思い知れ 弱さを〟


やめろ。いいえ、御門様 ダメです…


ザンッ…。

御門の髪からするり、と抜けた髪留めを月華が砕く。

粉々に。

したを向いたままの御門。

空中の、最後の欠片が―――おちた。


「遊びすぎよ…空羽」


瞬間。

砕いた髪留めがスローモーションの様に元に戻り 形となり、発光した。


〝はい♪御門様〟


嘘だ、とかすれた声がした。

がしゃん、と刀が地に落ちる。

人型に戻った空羽が御門に平伏す。


〝恐れながら我が主人…御門様

この男、御門様の隣に立てる人間ではありません〟


それが合図のように 血桜とフードをかぶった一人が

水連に刃を向けた。

彼にはもう月華を握る気力はない。

私は止めなかった。

彼の力の底はわかっていた。


〝弱さを守ることはありません。

御門様を、守るのは、我々の仕事です。〟


震える様な低い声。

フードから漏れる、ああ、ハヤテ、お前。

…見たのか …


〝私の手ならばいつでもお汚し下さい

貴方のためならばいくらでも汚します…〟


瞼を閉じた。熱く、暗く、悲しかった。


「………夕凪…」


しゅわん、 と橙色の腕輪が光り、

夕日色の髪と瞳の少年が現れる。


〝お久しぶりですね御門様〟


透き通る声色。流れる様な羽衣。

今すぐにでも契れてしまいそうな手足。

頭脳線最強の 夕凪 白亜紀 だ。


「久しぶり、夕凪」


フラリ、と辺りを見回し夕凪はニコっと笑う。

音なく水連の前に立ち髪を揺らすとこう言った。


〝私の手を選んでくださり、有難う御座います〟


「…【やれ】…」


無数の針が体を貫くイメージ。


〝スキャン開始…三神 水連より朝霧 御門

及びそれに関する記憶を消去

並びに月華の力にプロテクトをかけます〟


夕凪の掌から円陣魔法陣が現れる。


〝制圧完了…

首都メルンへの転送まであと5秒〟


御門様、と夕凪が悲しげに振り向く。


「…さよなら…あ」


プツン…。


ありがとう、と唇が動く前に

47分間のパートナーは目の前から姿を消した。

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