33/34
◇
まだ時間がある、長い果てしないほどの時間が。時間こそ、われわれの与える最良のもの、本来的なものだ。そして、われわれの贈りものは砂時計なのだ。――赤い砂が流れ落ちるくびれた部分は非常に狭く、落ちる砂の流れは毛髪のように細いので、上の中空の部分にはいっている砂は、目には全然減ったようには見えない。(略)しかしくびれの部分は狭いのだから、それはまだまだ先のことで、話す価値もありはしない。ただ砂時計が据えられたということ、ともかく砂が流れ落ち始めたということ、そのことをぼくは君と話し合いたいと思っているんだ
(トーマス・マン、『ファウスト博士』、関泰祐・関楠生訳)
フォースタス あゝ、フォースタス、今やお前が生きる時はたゞ一時間よりない、さうして時間が過ぎた時には永遠に地獄に堕ちねばならぬのだ。 (マーロウ、『フォースタス博士』、松尾相訳)




