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善が存在すれば悪はなおさら悪く、悪があれば善はなおさら美しい。いや、おそらく――これには論議の余地があろうが――もし善がなければ悪はまったく悪ではないだろうし、悪がなければ善も善ではないであろう。
(トーマス・マン、『ファウスト博士』、関泰祐・関楠生訳)
すべてが罪であるが、それともいかなるものも罪ではない。
(グスタフ・マイリンク、「レオンハルト師」(『怪奇・幻想・綺想文学集』、種村季弘訳))
何が愚かなことかと言うと、それはお前のものの言い方だ。お前はまるで影も悪も認めないような口振りじゃないか。こういう問題をよく考えてみてくれないか。もし悪が存在しないなら、お前の善はどうなる、もし地上から影が消えてしまうなら、大地はどんなふうに見えるだろうか?
(ミハイル・ブルガーコフ、『巨匠とマルガリータ』、中田恭訳)




