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フォースタス そのルーシファは嘗ては天使ではなかつたか。
メフィストフィリーズ さうだ、フォースタス。しかも神に最も寵愛されたもの。
フォースタス それならば、今彼が地獄の王となつてゐるのはどうしたわけなのか。
メフィストフィリーズ おゝ、自負、尊大を願つたことによつて。そのため神は彼を天國のおもてから投げ飛ばされたのだ。
フォースタス で、ルーシファと一緒に暮らしてゐるおまへは。
メフィストフィリーズ ルーシファと共に堕ち、ルーシファと共に神に叛逆の陰謀を起こし、ルーシファと共に永遠の罰に處せられた不幸な亡霊。
(マーロウ、『フォースタス博士の悲話』、細川泉二郎訳)
神の論理的なディレンマは、神が被造物に、人間と天使に、選択の自由性、すなわち自由意志と同時に、罪を犯すことができないという能力をも授けることができなかった、という点に存した。
(トーマス・マン、『ファウスト博士』、関泰祐・関楠生訳)




