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朝食の最中、



「 そういえばぺーくん昨日はどうやってその……

あの人達を倒したの? 」



とフィー姉に言われた。


んー………やっぱり聞かれてしまうか。

しかも何があった、ではなく何をした、と聞いてくる辺り流石だフィー姉。



「 んーパニックなっちゃってたから憶えてないやー 」



嘘に決まっている。

昨日の事はしっかりと憶えている。寧ろ俺は『忘れる』という事が出来ない。



俺と家族を隔てたあの事件の俺に残る傷痕の一つ。

痛覚はあるが痛みに何も感じない。

実質、痛覚が無いのと変わらない。

だから脳はパンクしてまで物事を記憶する。『痛み』というストッパーが無くなってしまったのだ。

時間が経って回復してくるのを期待しているが恐らく回復する事はないだろう。



「 ふっ……テロくらいでパニックになるんて情けないなぁ愚弟よ! 」



たしかに寛大なめーちゃんだったら少したりとも焦らずに猪猛突進してなんやかんやで解決できただろう。



「 んー俺はめーちゃん程寛大じゃないから無理だったかなー 」



「 まあメリーは寛大というより図太いだけだがな 」



「 なんだとこんにゃろー!

今日という今日はその無駄に成長した乳袋もぎ取ってやるズェー!! 」



片手で茶を飲み、もう片手で掴み掛かってこようとしためーちゃんの頭を押さえつける。

キレる子供とあしらう大人の図である。

冷静に対処するフェル姉はかっこいいしムキになるめーちゃんはかわいい。

一口で二度美味しいというやつだ。


めーちゃんは俺と同じ黒魔法の系統で『自分の身体になんか起こる』というこれまた奇想天外な効果をもつ。

勿論どのタイプにも属さない。


昔、といっても去年の事。めーちゃんが十四歳になり新系統の黒魔法が発覚した時、軍の研究所に「金やるから調べさせろ」と言われたのだが、「そうやって私に乱暴する気でしょ!エロ同人みたいに!」と、訳のわからない返答で追い返した。


めーちゃんは元は金髪だったのだが魔法が制御できていない内に使ったら金髪が文字通り金に光るようになったらしい。光るといっても発光するわけではなく光に反射して煌めく程度なので本人はそこまで気にしていない模様。

尚、今でも戻せないとの事。



「 そういえば系統魔法はなんだったんだ? 」



アクシデントがあったとはいえ、本来ならこの質問が一番最初にされるハズである。

流石は俺のフェル姉。

伊達に完璧超人をやってない。



「 んーとね、黒だったよー 」



「 そうか、黒か………

私と同じ系統だったら手取り足取り教えようと思っていたのだが……残念だ……… 」



そういう思わせ振りな事を軽はずみに言うから軍の中で男女構わず告白されてしまうのだが無自覚なので最早恋愛テロとでも言われそうだ断わる時も「今の私には守るものが多すぎてな………まだ恋愛だのなんだのを謳歌しようとは思えないんだ」とか「伴侶は私ようなじゃじゃ馬の手綱を握れる強い者と決めていてな」とか言ってちゃんと断わらないから一向にファンは減らずむしろ増えてる一つの言動がかっこよ過ぎます抱いてください


俺はその手綱を握れるように日々鍛練している。



「 んーでもフェル姉にはいろいろと教えて欲しいかなー 」



「 ……あぁ!勿論だ! 」



いつもはイケメンな癖に時たまに魅せるその子犬のような可愛らしい笑顔に何人が餌食がなったことやら。


正直、惚れてしまうのも仕方のない事だと思っている。

しかしフェル姉に手を出そうものなら地位も強さも関係ない。惨殺する。



「 そうだ!先日高名な武術家の指南書を譲り受けたのだがどうだ? 」



「 ん!お願いしたいかなー 」



さっそく元気になってるフェル姉かわいい。



「 よし、思い立ったが吉日だ!朝食後すぐにしよう! 」



「 ……む!ぺーくんの師匠は私………! 」



「 いや、いくらナギでもこれは譲れん! 」



なにやら不穏な空気。



「 ……む、なら勝負…… 」



「 いいだろう受けて立つ!久々に全力だ! 」



いけない死人がでてしまう。何より俺なんかのために争うなんて許されざる事だ。



「 …負けない……! 」



この二人が全力でぶつかったらこの村なんて軽く吹き飛ぶだろう。なんとしても止めなくては。

しかし二人とも自分の発言を曲げることはない。やりたくはないがやるしかあるまい。



「 ん、と、二人ともがいい……のは欲張りか、な? 」



なにをはにかんでるんだ。

なにを上目遣いしてるんだ。

きもちわるい、死ね。

死ねないんだった。


自分からすれば類を見ないくらいに気持ちの悪い仕草だったが、二人には効果があったようで。



「 そんなことはない、二人で指導してやる。

第一お前は私達の弟なんだ、遠慮なんてしなくていいんだぞ 」



「 ……弟子の頼みなら仕方がない…… 」



弟の頼みをちゃんと聞いてくれる辺りいい従姉達なのだ。

難癖があろうとそれは少しのスパイスとして魅力でしかないのだから。






♯♯♯♯♯






「 ごちそうさまでした 」



「「「「「 ごちそうさまでした(……) 」」」」」



因みに朝食のメニューは白米、豆腐の味噌汁、塩鮭、漬物という超和食でした。

ジパング人のナギちゃんを唸らせたんだからやはりフィー姉はスゴい。



「「 よし、いくぞ! 」」

「 リア姉、食器片付けるの手伝ってもらっていいかな? 」



「 勿論良いわよ~ 」



「 くそねみ~、二度寝だ二度寝~ 」



「 メリーも手伝ってね? 」



「 え~ 」



「 ほら文句言わないで 」



「 まだえーしか言ってませんしおすし~ 」



号令の直後、俺は二人の姉に連行された。

そのあとの事は知らないが帰ってきたらやたらめーちゃんが疲れはてたようにだらけてた。





めーちゃんが手伝いをしている頃、俺は二人からさっそく指導を受けていた。



「 まず武人にとって大切なのは『気』と指南書には書いてある 」



「 『気』? 」


「 そう『気』だ!殺気等がそうだ 」



魔力以外にもそういうのあるんだね。後でウロボロスの知恵から探しておこう。

探そうとしないとウロボロスは情報をくれないから地味に不便だ。



「 …私、そんなの使った憶え、ない……… 」



「 いや、恐らくナギは無意識に使っている。


本気でかかってきた時によく殺気を放ってるぞ 」



あぁ、あれが気というやつか。

跳躍とかの衝撃波だと思っていたが違かったのか。



「 つまりは現状気を操れないのはペインだけだな 」



キッパリと言ったね。

まぁそのまどろっこしい事を言わないサッパリとした性格が魅力なんだけど。



「 んーなんか、情けないなー俺ー 」



「 そんなことはないぞ

教えなかった薙が悪いんだからな 」



上げて落とすならぬ落として上げる。

たぶんフェル姉の部下はこれで堕ちてる。



「 ………む、爺さまが教えてくれなかったんだから仕方ない……… 」



爺さまとは薙ちゃんの本来の家族、『岩戸家』の元当主を指す。

ジパングで西の名家といえば岩戸と言われるくらいの名家らしい。


他の皆も前に言った通り従姉だ。アルターなんて血統は無く、リア姉があの事件で親をなくした俺とミリ姉の為に従姉妹達を集め、俺達二人の為に創った家族かえるばしょ



因みに俺達の先祖はかなり有能で万能で全能だったのに女癖が悪く、世界各地に女を作る種馬だったんだとか。


だから世界のいろんな所に俺達の従兄弟いとこ従姉妹いとこがいる。

文面じゃないと分からないな。



「 まぁジパング人は感覚派が多いからな、仕方あるまい

なら薙も一応訓練するか?

無意識より意識してる使えた方がいいだろう 」



「 ……なら一応……… 」



「 よし、ならば訓練開始だ! 」






♯♯♯♯♯






という感じで俺が学園に入学するまで姉達の指導の下で鍛錬を積んだ。



途中、薙ちゃんが一足早く学園に入学し、休日以外の五日は学園の寮で過ごすようになってからは主にフェル姉の指導を受けていた。

お察しの通り一週間のほとんどに薙ちゃんがいなかったので、薙ちゃんが入学してから俺が入学するまで毎日泣き目で過ごした。

それを見兼ねたフェル姉が普段以上に甘やかしてくれた。

そのせいでフェル姉の影響を色濃く受け、癖等が移ってしまったがそれは普通に嬉しいので良しとする。



入学するまでの二年間にリア姉の小説の売り上げがそこそこからかなりになったり。

俺の下にも軍の研究所からモルモット通告が来たり。めーちゃんの魔法が暴走したり。といろんな事があったけどそれを語るのはまた今度でいいだろう。




なんにしても俺が語れるのは此処までだ。

何せ今迄のは俺の記憶だからね。


ここから先は今迄の俺じゃなくこれからの俺じゃないと分からない。

未来の事なんてわかるわけがないのだから。

だから進行形で語ろう俺の人生という名の物語を。

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