1日目 6月14日(火)
6月14日(火)
あっよく寝た…
僕は知らぬ間に個室で寝ていたようだった。
気づいたところで、ケータイを片手に届いたメールを読む。
「拝啓、千年くん元気ですか。私はすごく元気で、毎日がお祭り騒ぎです。」
「学園はどうですか?叔父さんは何かと頑固だけど、いい人だからちゃんとやっていけますよ」
「そう言えば、私の書いた、ポエムは読みましたか?文才はほとんどないから笑いのネタにすらたぶんならないと思うけど」
「この学園のよさを感じられると思いますよ」
「長話をすることも出来ないのでこのへんで」
「蛍佳より」
どうやらメールを送信した相手の方は僕の姉さんである、園部蛍佳だった。
(それにしても姉さんらしいよな、普通メールは手紙の文体と一緒にしないと言うのに・・・)
あの人にはつくづく感心する。僕はメールを読んだところで何もすることもないので、ケータイをしまい一人トランプをすることにした。
「ピンポン」
「千年いる?」
その声の主は僕の幼馴染でもある星条舞衣のものだった。
「いま開けるよ!」
僕は返事をし、すばやく扉をあけた。そして再びトランプに向き直る。
「それで何しに来たの?」
「せっかく来たんだからトランプでもしない?舞衣」
「じゃあお言葉に甘えて、トランプでもしようかな♪」
舞衣は嬉しそうな顔でトランプを取ったがすぐに戻した
「そうじゃない!あたしがここに来た理由は、そう訊きに来たの」
「訊くってなにを?」
僕は何を訊くかわかっていたが、あえて惚けてみた。
「何って、学校のことよ!」
「あんたは悔しくないの?こんなところでずっと隔離されていて」
「別に僕はここにいても偏差値は下がらないし困らないし・・・」
「それじゃあたしが困るの!」
何に困るのかわからないがあえて触れないことにした。
「だけど、学園長には逆らえないし…」
「あっ…もう!そんなことだからいつまで立ってもパートナーがつかないのよ!」
「まぁいいわ、こちとらこのまま学園長の好きにはさせないわ」
「作戦決行よ!」
舞衣はそう言って話しを切り上げた。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「何いってるの?あんたも来るのよ!」
僕の手を引っ張り、個室から出、舞衣は学園長室に向かった。
「すみませんお聞きしたいことがあるんですけど」
「どうぞ」
僕の親父・学園長室の扉をあけ、学園長室に入る。
「星条くんどうしたのかね?」
「園部千年についてお尋ねしたいことがあるんですが…」
「何かね?」
学園長は丁寧な物腰で答えた。
「自分の子供であるのに、パートナーがつかないだけで、個室に隔離なんてかわいそうじゃないですか?」
「なんとかならないんですか?」
「ふむ、そう言われても、規則なので破ることは出来ないのだよ」
僕は側にいたが、ややこしいことになることは避けたい一心で発言した。
「やっぱり無理だと思うからやめた方がいいよ。父さん怒らすと怖いし」
「おお…我が娘、こんなところに来るとはさぞかしこの園部新也に会いたかったのか?」
「このままじゃ拉致があかないから帰りましょ」
舞衣はうざすぎる親父の反応を見て退散することに決め込んだようだ。
「また来るよ、父さん」
僕は別れの挨拶だけをし、この場をあとにした。
そして再び、部屋に戻る。
「それじゃ、あたしは帰るから、でもいつかあの学院長をギャフンと言わせてやるから!」
そう言い残し、去っていた。
(やっぱり寝よう…)
僕は何もすることもないのでもう一度寝ることにした。
「ピンポン」
「千年いる?」
寝入ってから数時間後再び舞衣の声がした。
「どうしたの?」
僕はすばやく扉を開け、出しっぱなしのトランプに向き合った。
「このままじゃ、あたしの気がすまないから、星でも見に行こうと思って来たの!」
舞衣はそういうと窓を開け、外を指さした。
「もう、こんな時間なんだ…僕は別にいいけど」
「そう、なら今から行きましょ」
僕たち二人は個室からこっそり抜け、近くにある小川のせせらぎが聞こえる場所に来た。
「こうやって千年と二人きりで星を見たのって何年ぶりかしら」
「さあ、僕はわからないけど…」
「しかも今日はこの年で一番のハレー彗星が見えるのよ!」
「すごく、ラッキーだわ」
舞衣はすごく嬉しそうだった。そんなとき、空に四角い点が見えたもしかしたらほうき星かもしれない。
「あっ・・・流れ星、何かお願い事をしないと」
「今年こそコンクールで入選出来ますように」
舞衣は願いをこめて流れ星にお祈りをしていた。その光景を僕は見守っていた
「…」
ずっと流れ星を見ているとそれが近づいてくるのがわかる。
「あ…消えちゃったわ」
舞衣は残念そうな顔をしているだけで、こちらの状況を見ようとしない。
それは最後まで近づいた途端
「ドス」
轟音が響き渡ったと同時に少女の声がした。
「ここはどこですか?あっ・・・月のしずくが・・・」
「あんた誰、いつからここにいたの?」
ようやく、舞衣は流れ星のことを忘れこちらの状況に気づいた。
「私はシアン=コヨルシャウキ、先ほど落ちてしまいました」
「落ちた?もしかしてあんたも千年のこと狙ってたの?」
「どちらにしろ、怪しいわ。警察に届けるわよ」
身元不明の少女がここにいるのもおかしいがそれよりも空から落ちてきたことに驚嘆した。
「えっと僕は警察なんかに届けないでいいと思うよ」
「千年がそういうんだったら仕方ないわ」
舞依は一瞬、残念そうな顔をしたがすぐに顔がもどった
「じゃあ、あんたは千年のパートナーをしなさい」
何かをひらめいたのか舞依は謎の少女に命令した。
「私ですか?お役に立てないと思いますけど、がんばります」
「そのかわりとはなんですが、月のしずくを探してくれませんか?」