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第8話

矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。

 要たちは、現在ハンターの案内で、ギルドに向かって歩いている。

 警備隊に出向しているハンターに、今日ハンターギルドに加入登録しに行く途中であることを話すと、案内してくれるというのでお願いしたのだ。


「やっと、ギルドに行ける」


「時間が掛かりましたね」


 要と花月は早々に無罪放免となった。

 ヘテレたちは普段から素行が悪く問題を起こしていたし、要たちは一方的に飛んできた火の粉を払っただけであることはすぐに証言が取れたことと、要がすぐに止血したため、ヘテレたちは辛うじて一命は取り留めたことが、その理由である。魔物などが人間の暮らしを脅かすことがあり、強い者はそれだけである程度歓迎されるこの世界で、ヘテレたちのような勘違いしたバカ者は多いという。それなのに相手の命を奪っていない点が、警備隊の心証を良くしたのだ。これは、花月を止めた要の思惑通りだった。

 要が推測した通り、ヘテレたちはこの辺りでは実力者で通っていたが、花月によって瞬殺(殺してはいないが)されたと聞いた警備隊の兵士がひどく驚いていた。

 要が気になったのは、ヘテレたち程度で実力者と言われるレベルだということだ。あの時周りのギャラリーも、距離があったにも関わらず誰一人花月の速さを目で追えていなかったようだ。花月は精気オーラを使わずにいたというのにだ。

 これは要が花月に受けたレクチャーでも分かっていたことだが、やはりこの世界の人間の国に要の脅威になりそうな実力者は少ないようだ。

 だとしたら、よく今までこの世界で人間という種は生き残ってこれたと思う。とっくにレベルの高い魔物や魔族なんかに滅ぼされていそうなものだが、もしかすると上級の魔物は人間に興味がないのかもしれないなどと考えてしまう。今のところ、結論は出ないが。


 今回のトラブルと集めた情報は要に余裕を与えるが、しかし要はけして油断はしない。現在も無人偵察機に気になる人物・物・場所などを引続き調査させているし、そのデータは上空で待機している星華のデータベースに着々と集められ分析されている。この世界にはスキルや魔法があり、中には即死・一撃死ワンターンキルのスキルや、ザ〇・ザ〇キのような成功するとかけた相手を即死させる攻撃魔法もあるかも知れない。また、要は生き残っても、花月を失うことがあってはならない。以前、要の油断から仲間を一人失ったことは、要の心に深い傷になっており、仲間の死はもうたくさんだと考えている。その仲間の死を無駄にしないために、要はどんな強敵との戦いでも余裕を失わず、どんな弱い相手でも油断はしない。


 要たちは案内係のハンターに、いろいろ話を聞きながら移動する。

 ハンターはゼルビーノという名前で、歳は20代なかば、短い赤毛に中肉中背。素朴で人の好さそうな顔つきだ。ゼルビーノは腰に剣を佩き、見るからに剣士系の職業で、魔法は生活魔法くらいしか使えない。ところで、ゼルビーノはさっきから、花月をチラチラ見たりして意識しているのが丸わかりだ。要はそこの辺にはあえて触れずにおく。


 ゼルビーノから聞いたところによると、魔法使い自体の数が少なく貴重であること。さらに回復魔法は、6属性魔法のうち水と光の2属性にのみ存在するので単純に使い手が少ない。また魔法は当然使い手によって効果が違うが、ランクが上がるほどに習得の難易度が跳ね上がり、術者の必要魔力も他に比べ大量に必要になることなどの理由により、優秀な使い手はさらに少ない。具体的には下級は止血・応急手当から骨折くらいは治せるがそれ以上はダメ。中級は致命傷でも治せるが失った血液や気力体力は戻らなず、その後の体力回復やリハビリが必要。上級までくると、致命傷も即完全回復するのだが、これにより少ない回復魔法の使い手を国家とギルドで取り合っていること。国家は軍に常駐させる使い手が多ければ多いほど良いと考え、ハンターギルドはパーティに回復職の者をを入れた場合とそうでない場合では、生還率に大きな隔たりがあるため、各パーティに一人回復魔法の使い手を入れることを理想としている。

余談だが、ヘテレたちの腕や〇玉は警備の魔法使いが下級の回復魔法しか使えなかったため、もとに戻らなかった。


 魔法は、地・水・火・風・光・闇の6属性の魔法にはそれぞれに特徴があり、火は攻撃に特化し、水は防御・回復、風は攻撃と素早さなど攻撃系のステータスUP、地は防御と一部短い間のゴーレムなどの疑似生命体などの使役ができる。闇はアンデットの使役や毒や呪いのバッドステータスなどに代表される負の魔法全般であり、光は回復と負の魔法の浄化などがあげられる。


 では魔法はどうやって習得するのか。方法はいくつかある。

 魔力は、そのままでは魔法として使えない。魔法を習得する方法としてオーソドックスな方法は、魔導師に弟子入りすることだ。次に魔法学校への入学。魔力の強弱自体を調べることは割と小さな村でもできるので、魔力量の多い子供は両親が喜び勇んで親戚や知人に頼み込んででも費用を工面し、魔法学校へ入学させる。将来宮廷魔導士に出世すれば相当裕福な暮らしができるからである。


 閑話休題それはさておき

 

 

 ハンターギルドに着くまでに、ゼルビーノはこちらの出身地や旅の目的などを確認してくる。ヘテレたちを瞬殺した(繰り返すが殺してはいない)花月と、まだ力の程が分からない要の調査らしい。

 要は警護の詰所でも聞かれたのと同じ問いに、先ほど同様適当にでっち上げた答えを返す。


「ゼルビーノさん、彼女はまだ赤ちゃんのころに、父親と一緒に俺の村に越してきた幼馴染です。で引退した元ハンターだった彼女の父親に、彼女と一緒に幼いころから剣を習ったのです」


「なるほど」

 

 ゼルビーノが感心したように相槌を打つ。


「俺も彼女もそれなりに才能が有ったようで、一応剣術が形に成ったので彼女の父親の若いころ同様に、見聞を広めるため修行の旅に出たのです。今回ギルドに用というのは、ハンターに登録した方が、旅がしやすくなるかと思って」


「一応だなんてご謙遜を。ですが、ギルドに向かう理由は分かりました」


 要は現場を見たらしく興奮するゼルビーノを押し留める。この街のハンターがどの程度の強さか聞いてみた。

 

「この街のハンターは、Bランクのヘテレたちのパーティが最高ランクでしたがあの状態なのでその下のCランクのパーティが二つほど。ギルドランクは、ギルドで登録すると初心者はGランクから始まり、強さと経験を積めばF・E・D・C・Bとランクが上がりDかCくらいで一人前です。そして、CからBに上がるための試験の突破が一つの壁でB以上は一流と言われております」


 要はヘテレたちの実力で一流?と思ったが、やっぱりギルドランクとかあるんだ。ラノベと一緒だと密かに感動した。


 ゼルビーノの説明は続く。


「B・A・シングルSSダブルSSSトリプルとありますが、現在他国も含めシングルが最高で、SSダブルSSSトリプルはおりません」


「いないんですか?」


「はい、ここ100年SSダブルSSSトリプルは出ておりません。 SSダブルSSSトリプルクラスになると力はもちろん、勇者や英雄とたたえられるほどのカリスマ性も必要です」


 ギルドやギルドランクがあれば、勇者や英雄といった称号が出てきても、まさに定番といえるなと要は納得する。


「ギルドランクは、ギルドで斡旋した依頼をどれだけ成功させたかを外部の、特に依頼人に判りやすくしたものです。そのランクを上げるには、依頼を一定数クリアしてギルドに認められることで、ランクアップしていきます。よりランクが高ければ、それだけ高額報酬の依頼に就けます。請け負える仕事は自分のランクと同じかそれ以下です」


 丁度ギルドの概要の説明を聞き終えたところでギルドに到着した。ギルドの建物は街の中央付近にあり、かなり大きな建物だった。洋風な造りの建物で、大型武器を持ったままでも入れるよう入り口も大きい。

 ゼルビーノさんの案内で中に入ると、依頼書が貼られている大きな掲示板や、いくつかの部署に分かれた市役所か郵便局のような窓口がいくつかある。

 そこで窓口係のお姉さんにゼルビーノさんがなにやら話しかけ、お姉さんがうなずき了承すると、ゼルビーノさんに名前を呼ばれる。


「それでは私は事務所に寄ってから、また警備の詰所に戻ります。ギルドの登録は窓口係の彼女が承ります。あとは彼女に引き継ぎますので、分からないことがあればお気軽にお尋ねください」


「いろいろありがとうございました」


 ゼルビーノさんにお礼をいうと、彼は笑顔で奥の部屋に去って行った。


「それでは今回ギルド登録を担当しますレミーと申します。よろしくお願いします。では、こちらにご記入頂きたいのですが文字が書けなければ代筆もいたします」


 茶髪で短髪の二十代半ばくらいの素朴な感じのお姉さんが、こちらをチラチラ見ながらちょっと赤い顔で話し掛けてくる。


「大丈夫です。書けます」


 サラサラと記入していく。


「はい、カナメ様とカゲツ様ですね。年齢は……えっ! 二十二歳と十八歳!成人したてかと思った!」


 要はあ~日本人は若く見られるのもお約束だよな、とか、この世界の成人て十五だったっけなどと埒もないことを考える。


「ハッ! 失礼しました。新規の冒険者登録はお一人様小銀貨5枚が必要となりますがよろしいですね?」


「はい」


「お二人はパーティを組まれますよね? パーティ名はいかがなさいますか?」


 要と花月は顔を見合わせる。花月が任せますとつぶやいた。


「それでは……、『アース』にしよう」


 花月がハッとした顔をする。


「どういう意味ですか?」


 レミーが無邪気に尋ねてくるが、要は手を振って特に意味はないと誤魔化す。


「それでは最後に、この水晶玉に手をかざして下さい」


 要がラノベの定石セオリーだと、この水晶玉でギルドカード登録をするんだろう。と思っていると、要の思った通りギルドカードが出てきた。

 ギルドカードは、何かの金属でできている魔法のかかったカードだ。

 本人にしか使えないことはもちろん、現在のランクや討伐や依頼の履歴など様々な情報が載っている。


「ハンターギルドの依頼の受け方や注意事項についてはご存知ですか」


 要はゼルビーノに聞いた内容を話す。


「はい。では捕捉として、まず依頼は魔物の討伐や薬草採取や商隊の護衛などから、隣の街に手紙を届けたり、工事現場や港の人足のような力仕事などその種類は多岐にわたります。一度に複数請け負ってもかまいません。例えば採取依頼の最中に別の依頼の魔物を狩ったりした場合、討伐証明部位をお持ちになれば、依頼達成とみなします。しかし、依頼には期日があるものが多いです。この期日を超えた場合は失敗とみなしペナルティが発生し、ランクアップの査定に響きますのでご注意ください。それと、依頼の内容に不備があった場合、請け負った者が依頼に失敗してもペナルティは発生しません。物によっては依頼者へ賠償を請求する事も出来ます。そういった場合はギルドにご連絡いただければ対処いたします」


 レミーは要たちが理解しているか確認しながら説明する。


「ちなみに、ギルドの掲示板に貼ってある依頼書の報酬額は、依頼人からの成功報酬のうちギルドの仲介料を差し引いた額になっております。これは依頼人とハンターの仲介料や依頼の内容調査の人件費など、ギルド運営のための経費が必要となるためです。なので、ギルドを通さずに依頼を受けることもできます。その際に発生する報酬は全額ハンターのものですが、何か依頼内容に不備があった場合や最悪報酬の未払いがあってもギルドは一切関知しません」


 ギルドを通さない直接取引は、ハイリスク・ハイリターンということらしい。


「とりあえず以上で簡単な説明は終了です。何かご質問はございますか?」


「いえ」


 要は首を振った。


「では、アースさんの初仕事をお選びしたいところですが……」


 要たちはおおっ、初依頼!と勇んでみたもののレミーは申し訳なさそうに言う。


「今日はもう日が暮れますのでまた明日にしたいと思います。夜に街の外に出られるのはお薦めできませんので」


 要はまた、このパターンかよ!!っとズッコケる

















次回は初依頼です。……きっと。


✕依頼を一定数クリアしてギルドに認められることで、していきます。

〇依頼を一定数クリアしてギルドに認められることで、ランクアップしていきます。


感想をお待ちしています。誤字脱字・矛盾などのご指摘はなるべく優しくお願いします。

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