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第6話

ちょっと慌てて投稿してます。矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。


9/7 分かりやすくなるように、少し説明を追加しました。

 要が花月にこの世界のことをレクチャーされているころ、黒狼から命からがら逃げ出した(黒狼にもともと襲う気はない)王国の調査隊は森の中で、夜営をしていた。


「隊長、逃げた際に足を挫いた者などの軽症者が若干おりますが、死者・行方不明者はゼロです」


「そうか、ご苦労。応急処置をしながらも警戒を怠らず火を絶やすな! それと魔物よけの香を焚くのもだ!」


「はっ!」


 隊長のガストンは報告を聞き指示を出した後、一人の死者も出さずに退却できたことに安堵のため息を吐く。

 しかし、あの魔物のことを考えると頭が痛い。

 あれはヤバい。今までそれなりに修羅場をくぐり、経験と度胸でどのような危険も何とかなると思っていた。しかし、あれは駄目だ。闘えば絶対に死ぬ。勝てる気がしない。今日はどのような気まぐれか幸運かわからないが、何とか見逃してもらったが次もそうとはとても思えない。あれは天災(クラス)だ。人が出会えば、どのような被害が出ようとただ通りすぎるのを待つしかない。

 何人かの兵士を、報告のために王宮とハンターギルドに先行させているが、両方ともハチの巣を叩いたような騒ぎになることは火を見るよりも明らかだ。討伐隊を組織するだろうか、しかし誰が行く。ハンターギルドの上位ランカーの中には「戦闘狂」もいれば「命あっての物種」という者もいる。何せ相手は台風や火山の噴火と同じ天災のようなものだ。どの様に対処するのか決まるまで喧々諤々の議論が起こり、結論が出るまでに何日かかるだろうか。


「魔導士殿はあの魔物をどう思う?」


「はい。まずは先ほどは取り乱し申し訳ありませんでした」


 謝罪する宮廷魔導士の名はベリゴーという。ガストンは気にするなと手を振り、先を促す。


「私もあの魔物は天災(クラス)だと思います。討伐のための優れた軍隊を組織し、情報を集め綿密な作戦をたてなければ勝てません。もしかしたらそれでも勝てないかもしれません」


 蒼い顔をして話すベリゴーに、同意するガストン。


「それにしても、もともと強力な魔物について情報はそう多くはないので詳しくはわかりませんが、それでも目に見えるほどの質と量のある魔力持ちの魔物なんて聞いたこともありません。多くはもっと北の未開地や西の大森林の奥深くにいるとか。それが人間が暮らす大陸の中心部の、そう大きくもないこの森に何故いるのか?」

 

 宮廷魔導士ベリゴーにわからんものを、一介のハンターにすぎない雇われ隊長の俺が知るかと、原因不明の事態のこれからに頭を悩ませるガストン隊長だった。








 翌朝


「ようやく朝だ」


「ストップ」


 要は待ちきれないとばかりに、転移用の部屋へ駆け込もうとしたところで花月に制止される。


「黒狼と違い、要のときはいつもあまりはしゃいだりしないのに、珍しいですね」


「そうかな? 仇討ちが叶って重圧がなくなったのかも」


 要の何気ない返答に、花月は何かに気付いたようにハッとした表情を見せる。


「ごめんなさい……」


 要は気にするなというように花月の頭を優しく撫でる。


「やっぱり、ラノベ読者としては魔法と聞けばテンション上がるね。早く見てみたい」


 そういって笑う要に、ぎこちないながらも花月も笑顔を見せる。


「まず、この世界に来てから今までに集めた言語・習慣・風俗などなどのデータをダウンロードします。それから、ちょっと捕捉ですがこの世界にはスキルという特殊技能があるようです。これは殺気や気配に敏感になったりする受動的パッシブスキルや、物を鑑定したりする能動的アクティブスキルなどの他に、個々人で特有の能力ユニークスキルを持っているらしく、日常生活向けのものから戦闘向けのものまで、種類が豊富にありそうで詳しい調査に時間がかかります」


「なるほど、スキルね。了解。じゃ、現在わかっている分だけ全部データをダウンロードして」


「はい。送ります。……完了です」


「ありがとう。いつもながら不思議な感覚だね」


 新たに得た知識を確かめるように首を振る。そして、この世界の言語を確かめる。


「じゃあこの世界の言葉で、あ~あ~本日は晴天なり」


「はい、OKです」


「じゃあ、行こうか」


「次で最後です」


「まだなにかあるの?」


 不満そうな要に、苦笑しながら花月は話す。


「今後の方針と、魔力マナについてです」


「あ、そっか」


「あ、そっかじゃありません。いいですか、昨日のような不用意な接触で、いずれ黒狼は王国と帝国に魔物として認識されるでしょう。そのため黒狼への変身は控えてください。それでも先ほどのスキルで見抜く輩がいないとも限りませんが」


「花月がそう言うんなら従うけど。ただ、要の時は黒狼に変身している時とは比べものにならない位弱いけど、この世界の人間や魔物と渡り合えるの?」


「もちろん危機が迫った時には、命を優先し変身もやむなしですが、送ったデータをよく思い出してください。暫定的に黒狼が見つかった森を起点として、円を描くように調査を行いました。結果として人間が線引きして国としている地域には、要の敵になれそうな存在はごくごく少数であることが分かりました。それも地球にいたときの要の状態で、です。現在の要の状態スペックだと、この世界の人々のなかでは突き抜けた存在です。ですので、逆にいろいろ注意が必要です。あ、因みに黒狼が見つかった森を起点=グリニッジ子午線(経度0)に設定しました。GPSもバッチリです」


「細かいな。そっか。了解。ただ、この世界にはまだ見てない魔法やスキルなんかがあるから油断は禁物だけどね」


 要の返事に頷く花月。


「ただ、この世界は精気オーラがありながら、その使用法はほとんど発達しておらず専ら魔法とスキルが一般的のようです。そういう意味じゃ地球と正反対ですね」


 それと捕捉ですがと花月が続ける。


「調査は、現時点で東方は海に出て、南方は砂漠に、西方は大森林で、北方は凍土へと調査の範囲を広げています。一部、エルフの隠れ里や魔族の集落などを発見しています」


「しかし、エルフや魔族の里かぁ! いずれ訪れてみたいね」


 ちょっと興奮ぎみに話す要。


「はい。それと魔力マナについてです」


 そうだったと思い出す要に花月が状態を告げる。

 

「現在は吸収したり放出したり無茶苦茶な状態なので、きちんとコントロール法を覚えてください。こちらはさんざん修練した精気オーラのコントロールの仕方とほぼ同じです。」


 言われて要は早速、今では呼吸をするようにコントロールしている精気オーラ魔力マナに変え、コントロールしようと試みる。


「……ほうほう。 ……こうか?」


 などとつぶやきながら、しばらくの間集中して魔力をコントロールしていく。


「コツがつかめてきた」


「早いですね!」


「とりあえず、コントロールはできていると思う。今は周囲の魔力を吸収して溜めてるところ。ある程度溜まったら、精気オーラとの併用も試したいな。精気オーラは人の肉体強化、怪我の治癒、病気の予防なんかの、いわば人の内側の強化に使われてきたけど、魔力マナは人の外側に作用するのが一般的だね。 最たる例は魔法だ。 炎玉ファイヤーボールなんかが分かりやすい。 この2種類の力を合わせて、オリジナル技を創るのは、ラノベでは最早お約束だからね」


 呆れた花月に、嬉しそうに要が今後の構想を話す。


「しばらく魔力マナを使い続けて、体になじませて行こう」


「じゃあ行きましょうか。最初はどこにします?」


「そうだな」


 少し考える要。ちなみに黒狼が最初にこの世界に来た森(起点・グリニッジ子午線(経度0)に設定)から見て、南西に広大な領土を持つオリヴェイラ帝国があり、そのオリヴェイラ帝国に国境を接している、森の北に帝国に対抗するために北方4か国が連合してできた神聖連合王国がある。では東南はというと中小国家が群雄割拠していて、こちらはまとまる様子はない。


 これで東南地方が統一されればきれいな三国鼎立で、まるで「三国志」だな、と思う要だった。


「よし、この東南地方の海沿いの小国ファルカオ王国にしよう。調査によれば、穏やかな王様と王太子が比較的善政を敷いていて、周辺国とも適正な距離を取りつつ友好な関係を築いている様子がなんとなく気に入ったから」


「はい、了解です」


「じゃあ、転移部屋へレッツゴー!」


 こうして、要と花月はファルカオ王国へと向かった。








ご指摘頂きまして、手直ししました。わかりやすくなっているとよいのですが。


次回、やっと傭兵ギルドに登録です。遅くてスミマセン。

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