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第5話

ちょっと慌てて投稿してます。矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。

 小会議室ほどの広さの、無骨で味もそっけもない部屋の床に、突如魔法陣が浮かび上がった。そして、同時に3メートルほどの中空がグニャリと歪み、光り輝く魔法陣のようなものが現れ、スーッと静かに床に向かって降りてくる。すると魔法陣の通り過ぎた部分から黒狼の頭、胴、腰、両足と姿を現していく。

 黒狼が完全に姿を現すと、魔法陣は空気に溶けるように消えた。


「到着」


 独りごちた黒狼は、見慣れた転移用の部屋を出ると、艦橋ブリッジに向かう。


 廊下を通り、艦橋ブリッジに到着した黒狼は、入り口の自動ドアをくぐり中へ入る。

 それと同時に、黒狼の全身が煙のようなものに包まれる。イメージとしてはドライアイスから発生する煙に似ている。そして、煙から現れたのは一人の青年だった。


 黒狼に変身する青年の名前は、諏訪すわ かなめという。

 身長は170㎝ほどで引き締まった体つきだ。年齢は二十歳をいくつか超えたくらいで、黒髪黒瞳で整った顔立ちをしている。その表情は、なんとも優しそうに微笑んでいる。


「黒狼、じゃない要!あなたという人は!」


 花月が出迎えてくれる。その表情は複雑だが、嬉しそうな感情が見て取れる。

 その花月を優しく抱き寄せ、頭を撫で手触りの良い髪の毛を堪能しながら、要は謝罪する。



「ごめんね、大総統との一騎打ちでは心配かけちゃったね。そのあとのことは、あ~反省してます。」


「全く黒狼になると性格がアグレッシブガンガンいこうぜになっちゃうんだから、でも無事で良かった」


 しばし、再会を喜び合い、そのあとこの世界についての花月からの報告を受ける。







「では、わかっているところまで報告します」


「お願い」


 要は、テーブルの上のお茶をわきにどかし、プリントアウトされた資料を見ながら、花月から報告を受ける。

 

 ちなみにサイボーグであるが、要は飲食できる。食べた物はすべてエネルギーとして取り込まれる。しかし、本来は食べ物はおろか空気さえなくても精気オーラを取り込めれば活動できる。天地の精気が凝ったものが精気オーラで、地球同様この世界にもある。現在はさらに、この世界の魔力マナも取り込んで活動エネルギーとしている。


 それから、花月はいわゆる遺伝子操作された強化人間だ。ケガや病気に強く精気オーラも扱える。戦闘もこなせるが、その本領は星華のオペレーターだ。星華は、もともと大総統たち異星人エイリアンの星間航行艦だったものを鹵獲し、改造したものだ。戦いに必要な武器や大型兵器の補給・整備から、ちょっとした日用品の製作まで行うこともでき、重力圏内も航行可能な超大型の戦闘艦である。その制御を一人で行う花月は分かりやすく言うと「電○の妖精」だ。


 閑話休題それはさておき

 

 場所はブリーフィングルーム。座っていた花月が、壁の一角の備え付けスクリーンの前に差し棒を手に持って移動する。


「まず、おさらいです。私たちは以前の地球で大総統との一騎打ちの際、基地の自爆に巻き込まれこの世界に来てしまった。そして3日間でわかったことは、この異世界はもとの世界とは宇宙の星々の並びや大きさも違い、また今現在いるこの星の大陸の形なども以前の地球とは全く違うこと。そして、この星の大きさは地球とほぼ一緒で一日は二十四時間。大気中の成分や重力や水等は地球のそれに酷似しており、われわれを脅かすような危険なウィルス等は認められないこと。などなどをお伝えしました」


 スクリーンにこの星の様子が映し出される。しかしまだわかっていない部分、未調査の部分は空白だ。そして、空白の部分は多い。


「うん、そうだったね」


「そして、今のところ地球への帰還の方法は不明です」


「そうか」


 要は花月に告げられたことにショックを受けつつも、とりあえず悲願であった大総統の打倒が叶ったいま、正直あしたのジョー張りに真っ白に燃え尽きている。気が抜けて、今のところどうしても帰還したいという欲求はわいてこない。


「ところで、この世界にきて私が気絶から目覚めたとき星華は空から海に墜落している途中でした」


「よく無事だったね」


「運が良かったですが、滅茶苦茶怖かったです!!」


 花月は要がいれば、そこが地球だろうと異世界だろうとあまり関係ないと思っている。そこで、ショックを受けているだろう要のために話題を振ったが、その時のことを思い出してしまった花月は青い顔をして、目を閉じて何かに耐えている様子だ。


 要は、星華のただ一人のオペレーターである花月が、気が付いたら異世界で、海に向かって自由落下中なんて状態になったことを心底気の毒に思い、ガクブル状態の花月を見ながら、気をそらすため話を進めようとした。一応、花月の企ては成功したが、思わぬダメージを負うことになったのが誤算だ。


「人や文明が確認できたんだよね?」


「はい、監視衛星を飛ばし無人偵察機をバラまいた結果、いくつかの大陸や島などを発見しました」


 話題が進み、怖い体験トラウマから目を逸らし、花月は報告することに集中する。


「今回時間の関係で、複数の大陸のうち黒狼の反応があった大陸を集中的に調査しました。その結果、人や文明も確認できました。ただ、文明レベルは中世ヨーロッパ並で、封建的な社会制度で王や貴族から平民や奴隷もいます」


「うん」


「そして、この大陸には大小複数の国があり、大規模ないくさから小競り合いもあります。これは大気、土、水などのサンプルを採取と並行して、集めたものです」


 そう言って、花月は色々なものをテーブルに並べた。


 長剣、槍、弓矢、革鎧、鉄の鎧、兜、手甲、脛当て、長靴、革袋と中味とおぼしき薬草や包帯などの細かな物がいくつか、それと銅の貨幣らしきもの。これらのものが数種類あるがどれも薄汚れていて、国によって多少違いがある。

 ちなみに、賤貨→小銅貨→大銅貨→小銀貨→大銀貨→小金貨→大金貨の順に価値が上がり、すべて十進法で位があがっていく。賤貨=1円、大金貨=100万円だが、賤貨はあまり使われず物価の基準は銅貨からが各国の共通認識らしい。


「この回収品は、ある森で放置されていたものです。まだ未調査なのですが、恐らくこの世界は、銀行などの金融機関がないのか、有っても貧弱なのか、個人の財産は本人か家族が管理することが一般的なのでしょう。若い未婚の兵士などは常に全財産を持ち歩いているようです。そして、戦死した時に味方によって遺体を引き取られればベストですが、全滅やその他の理由で引き取りが行われない場合は、きっと近くの村人が遺体を埋葬して、遺品は売って現金収入にしていたのでしょう。ただこの近くに村はなく遺体は動物などが処理したのでしょう、この世界の一般的な技術レベルのチェックのため全て回収しました。」


「そうか。味方に引き取ってもらうこともできず哀れだな」


 無人偵察機が見つけた場所はそう多くはないですが、国境線に近い場所にいくつか見つけました。常に戦場になる場所に村は無く、場所がデリケートなだけにどちらも引き取りの手を出せずにいることが多いのでしょう。と花月は事実と推測を述べ、次の報告に移った。


「また、この世界には魔物と呼ばれるモンスターがおります。というか、神と呼ばれる存在もいるようです。と言っても一神教の神ではなく、力が人を大きく超えた超越者という意味の神です」


「おおっ!やはり魔神やドラゴンなんかもいるのか!?」


 要はライトノベルの世界で定番の存在に心躍り、勢い込んで花月にきく。


「その辺りはまだ調査し切れていません」


「そうか……」


 要はあっさりした回答にひどくがっかりした表情をした。


「魔神はわかりませんが、魔族や獣人などの亜人族や妖精族などなどおよそファンタジーな生き物の多くが生息しているようです」


 要の様子にフォローする花月。魔族や亜人と聞いて再びテンションの上がる要。


「……で、その魔物ですが、魔力マナ溜りと呼ばれる魔力マナが異常に高濃度に発生する場所からわいてくるようです。場所は迷宮ダンジョンや深い森、火山、深海などなどだそうです」


 要は、ライトノベルの世界で定番とされる現象だという感想を持つ。


「ついでにいうと、魔力マナを使って起こす奇跡が魔法です。」


「魔導士がいるんだから、当然あるよな。魔法」


 興奮する要。


「地・水・火・風・光・闇の6属性魔法と、その応用魔法や精神魔法や生活魔法などがあります。それと、魔法の中でもさらに特別な精霊魔法もあるそうです。この世界ではほとんどの人が大なり小なり魔力マナを持っており、一般人も種火やランプ替わりの光など生活に必要な魔法を使用しております。そして、属性魔法や精神魔法には下級・中級・上級のランクがあり、魔力マナを多く持ち魔法の研鑽をしたものは上級や2属性を使用した応用魔法を使うようです」


「一応、俺の内部にも魔力マナがあるんだから、魔法覚えられるかやってみようっと」


 嬉しそうにそう告げる要に、花月が現在進行形で科学の力で魔法じみたことをしているのに、魔法覚える意味あるのかなと思ったことは秘密だ。


「そして、冒険者ギルドはないですが、ハンターギルドがあり同じようにわいた魔物や山賊などの討伐や、商人の護衛などのクエストを行い報酬を得ています。ギルドの規模も大陸規模で、一応中立の立場でギルドに登録したハンターは、ギルドが身元を保障してくれるので各国に入国するときに有利に働くようです」


「おおっ!! 俺も登録してーー!!」


「そう言うと思っていました。この世界を見て回るなら、登録しておくとなにかと便利のようです」


「じゃあ、早速!」


 早くも飛び出しそうな要に、花月がストップをかける。


「ハンターギルドがどこにあるのか知っているのですか? ……っというか、今深夜です。さすがに今からはちょっと」


 いきなり出鼻を挫かれた要は、翌朝出発することにして、必要もないのにふて寝することにした。


感想を寄せていただきありがとうございます。

ご指摘の誤字を修正しました。

✕カクブル状態の花月を見ながら、

〇ガクブル状態の花月を見ながら、


✕怖い体験トラウマから目を反らし、

〇怖い体験トラウマから目を逸らし、


✕有っても貧弱ないのか、

〇有っても貧弱なのか、


✕傭兵ギルド

〇ハンターギルド


それと、金貨=100万は高い気がするとのご指摘により、大金貨=100万円というように変更しました。

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