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第20話

前回の投稿から時間が経ってしまって申し訳ございません。


矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。


「状況を整理すると」


 要が面倒くさそうな顔で、花月に声を抑えて話しかける。


「この国は北の神聖連合王国の影響で、亜人が多く働き暮らしている」


 花月が要に続ける。


「それによって職を失ったと思っている人間ヒューマンたちが、「人有党」なる組織に入り亜人追放の活動をしている」


「そしてその「人有党」は、どこからか手に入れた情報をもとに、この辺りの亜人の村の18歳の娘を山賊の仕業に見せ掛けながら捜索していた」


「情報の内容は王子に関係のある亜人の娘か、もしかすると恋人が、この辺りの亜人の村にいるらしいとの肝心なところがボケた不確かなものだったが……」


「大方、人質にして亜人登用政策の撤廃と亜人の追放辺りが目的ですか」


 花月の問いに頷く要。


「そこへこの計画を知った帝国が計画に乗じて王子暗殺のため、暗殺者アサシン共を送り込んできた」


 要はそれとも、と続ける。


「そもそも「人有党」の計画そのものが、帝国の流した情報エサに食いついた結果かもしれないね」


「最悪「人有党」そのものが、帝国によって作られた組織の可能性もありますね」


 花月も思いつくままに意見を述べる。


「そういえば、そもそも帝国ってどんなところ? 以前ダウンロードした知識では、皇帝を頂点にした完全な階級社会ってことだけ」


 ほぼ同じ時期にこの世界に飛ばされてきたというのに、要は花月なら知っていて当然と言う顔で問い、花月もそれに当たり前の顔で答える。 情報に関しては、要は広く浅く花月は深く詳細に、が役割分担だと二人とも理解している。


「詳しくは君臨している皇帝とその下の貴族としてイオタール族という人族が帝国を支配し、それ以外は基本的に奴隷です。 例外は帝国に貢献した解放奴隷の人族がわずかにいるだけです」


「凄く歪なピラミッド構造だな。 因みに亜人は?」


「奴隷に序列があり人族のさらに下です。 その扱いは「推して知るべし」です」


「帝国か、気に入らないね」


 要は不快感をあらわにする。

 ここにもゾルゲーのような絶対的な階級社会ヒエラルキーの国があったか。

 要は地球でいう中世のヨーロッパのようなこの世界で、人権などの考え方はまだ生まれていないだろうと理解はしているが、納得はしていない。


「いっそ、潰すか」


「要」


 黒い雰囲気の要の呟きを聞き、花月が要の短慮を諌める。 それに対し、わかっているという風にかぶりを振る要。 


「いけない。 「短気は損気」だね。 因みに、皇帝はどんな人物?」


 取り敢えず、話を進める要の問いに花月が憂い顔で答える。


「現皇帝は先代の皇帝と自分の兄弟姉妹全てを暗殺して皇帝位に着いたと言われている、目的の為には手段を選ばない男らしいです。 そしてバリバリの覇権主義者で、この大陸の全てを支配することに全精力を傾けています」


「なんでそんなに大陸全土を支配したいの?」


「なんでも嘘か本当か、イオタール族が聖神とあがめる存在から、大陸全土を支配せよという御告げがあったというのが、彼らの大儀です」


「なんだか胡散臭い話だね」


「はい。 確かに胡散臭い話ですが、順番にお話しします。 イオタール族はもともとは今から300年ほど前、大陸中央にあるディラ湖の南に王国を築いていました」


「うん」


「あの辺りは気候が温暖で、湖のおかげで水が豊富にあり、土地は肥沃で豊かな王国だったようです。そしてイオタール族は温和で近隣の国が飢饉の際は積極的に人道支援をして、弱者に手を差し伸べる民族だったのです。しかし当時、湖の周辺地域は小国家郡が乱立する戦国時代です。その肥沃な土地を狙った当時の隣国の強欲な王が、乱立していた国家郡に働きかけ難癖を付け連合を組んで攻め滅ぼしました」


「あー、戦国時代じゃ珍しい話ではないんだろうね」


「その後イオタール族の生き残りは南の大砂漠に逃れましたが、照り付ける太陽に少ない水場、植物が育たない過酷な環境、そんな大砂漠に適応した強大な魔物の来襲と、例を挙げればキリがないその悪条件は、やはり人族が生きるには厳しく、イオタール族はその人数をどんどん減らしていきました」


 時折飛んで来る、流れ矢や流れ魔法を打ち落としながら、要と花月は話しを続ける。


 転機が訪れたのは、生きる力の弱い者からどんどん亡くなっていき、イオタール族が滅亡寸前まで追い込まれた、そんな時だったという。

 ある時から、強大な魔力を持った生命力の強い子供が産まれ始めた。その子供たちは特に闇属性の魔法に特化した者が多かった。そして驚くべきことに、生き残っていたイオタールの魔法使いが教師として、その子供たちに魔法を教える前から、子供たちはどんどん魔法を使い始めた。中には上級魔法を使い始めた子供までいた。

 驚き疑問に思ったイオタールの魔法使いは、子供たちにどうやって上級魔法を覚えたのか聞いてみると、全員が神を自称する存在の声を聞き、魔法を覚えたという。

 その声は子供たちを通してイオタール族に語り掛け、大砂漠にある数少ない水場を教え、牧畜や農業を教え、砂嵐を反らして見せたという。

 そしてイオタール族にそれまで無かった神という概念を植え付けた。イオタール族は人族を大きく越える強大な力を感じ、神に畏怖しひれ伏した。

 その声は言った。

 自分をあがめれば、更に力をやろうと。 その力で戦を起こし、復讐せよと。 大陸を蹂躙し大帝国を打ち立てろと告げた。

 イオタール族は変わった。 近隣に手を差し伸べても、かえってきたのは仇だけであった過去をけして忘れなかったイオタール族は自分たちを救ってくれた神を崇めた。

 イオタール族は亡くなった同胞を次々にアンデッドにして蘇らせ操った。

 そして同胞だった不死のアンデッド達を前面に出し、後ろから強大な魔力による上級魔法の飽和攻撃で、次々に砂漠の強力な魔物を屠っては、アンデッドにして蘇らせて操って……を繰り返し戦う力や経験を蓄えて行った。

そしてついに力をつけた彼らは、彼らの神の声を一番聴ける、すなわち一族の中で最も魔力の強い者を族長に選び、満を持していくさを、奪われた国土を奪回すべく聖戦を起こした。


「それで失われた国土を奪回し、さらに帝国はこの大陸の統一が目的の領土拡大イケイケ路線なのか。 かつて一族を滅亡寸前まで追いやった屈辱の歴史を繰り返さないために」


 要は溜息をいた。


「因みに、聖神とやらだけど、本当に神? それとも騙り?」


「わかりません。 おそらくですが、帝国首都の城の地下になんだか秘密がありそうです」


「地下?」


「はい、他はあらかた調べてみましたが、神と言うほどの力を感じませんでした」


「ふーん」


「ですが、地下にはまだ・・無人偵察機も入り込めていません。 このことから、確かに人間種を超えた超越者が絡んでいる可能性はあります」


「おおっ! この世界に来た時にちょろっと言っていた存在か!」


 花月は頷きながら、何か分かり次第報告しますと話しながら、流れ矢を切り払う。


 要たちは世間話レベルの会話をしているが、これは帝国でもトップシークレットで、ほんの一握りの人間だけが知っていることだ。

 もしこの会話を帝国上層部の関係者が聞いたら、目を剥き卒倒するだろう。 そして要と花月を第一級の危険人物に指定し、それこそ抹殺指令を受けた暗殺者アサシン共が殺到するだろう。

 しかし要も花月もそんな些末ことは、歯牙にもかけなかった。

なるべく早く次回の投稿をしたいと思います。

感想や今後の展開の予想などお待ちしています。

誤字脱字・矛盾などのご指摘はなるべく優しくお願いします。

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