第2話
「ここは?」
目覚めた黒狼は辺りを見渡す。そこは深い森の中のようだが、黒狼のいる場所を中心に半径50メートルほどが、爆発したようにえぐれクレーターになっていた。
「どういうことだ?俺は死んだはずじゃ?」
その時、黒狼の目の前の空中にアニメ等でよくあるウィンドウが開く。相手は二十歳前の若い女性だ。髪は濡れたような艶やかな漆黒のストレートを腰までのばし、非常に整った色白の顔に髪と同じ漆黒の瞳と形の良い紅い唇で、10人中9人位が振り返りそうな容姿だ。
「こちら花月、黒狼応答して下さい」
どうやら花月も無事のようだ。深く安堵して応答する。
「こちら黒狼。花月無事だったか?」
しばしお互いの無事を確認し互いに安堵する。
「現在位置の詳しい座標を確認しました。直ちに救援に向かいます」
「ありがとう。待っているよ。ところであれからどうなった?ここはどこだ?」
「それが、あの閃光に包まれた直後に、正副予備すべての電源が落ちてしまいました」
計器類を操作しながら、花月が説明する。
「おそらく基地の自爆に巻き込まれたんだろう。仕方ないな」
「そして、三日ほど前に星華の機器類が復帰したのだけれど、その……」
花月が言いよどむ。
「俺はそんなに気を失っていたのか! ……それで長官やみんなは?ヤツらはどうなった!?」
「それなんですが、三日の間に黒狼を探しながら私が集めた情報ですと、それが、黒狼落ち着いて聞いて下さい」
「うん?」
非常に言い難そうにしていた花月は、自分が落ち着くためだろう、深く息を吸ってから話し始めた。
「どうやら私たちは、もといた世界とは異なる世界に来てしまったようです」
「え?」
黒狼は花月が何を言っているのか理解できなかったが、花月はお構いなしに一気にまくしたてた
「私が調査したところ、この異世界はもとの世界とは宇宙の星々の並びや大きさも違い、また黒狼が今現在いるこの星の大陸も地球とは全く違います」
「ええーー!?」
黒狼は狼狽した。いくら落ち着けと言われても、急に異世界と言われたら誰でも驚くだろう。花月はそんな黒狼の反応には頓着せずにさらに報告を続ける。彼女も相当慌てていたのだろう。
「それでですね、監視衛星と無人偵察機を複数飛ばして、大気や土や水のサンプルを採取し生物の生態系等を調べたところ、この星についていくつか分かったことがあります」
「それは?」
黒狼は固唾を飲んで問う。
「まず、この星の大きさは地球とほぼ一緒で一日は二十四時間。大気中の成分や重力や水等は地球のそれに酷似しており摂取しても問題はないかと」
「サイボーグの俺には必ずしも必要じゃないけど。うん。それはわかった」
「また、人や文明も確認できました。ただ、文明レベルは中世ヨーロッパ並で、封建的な社会制度で王や貴族から平民や奴隷もいます」
「う~~ん。あ~そう。としか言えないな」
「それから言語・習慣・風俗は、現在サンプルの数を増やして体系的に記録中です。あとでまとめて送ります」
「いまいち実感が湧かないけど、頼んだよ。データをロードすれば、勉強しなくても話せるし書けるのは楽だね」
「はい。それでですね、ここからがいくつか地球と大きく違うところです」
「それは?」
「まずこの星というかこの世界には、私たちが地球でその存在を確かめ利用してきた精気がありますが、そのほかに存在の確認に至らなかった魔力が驚くほどの大量にあることがわかりました」
「え!!魔力が!」
「はい。そしてすでに魔力が黒狼自身の癒しと強化を行い、この星華のオーラコンバータにも作用していくつかのオプションが使用可能になっています」
「そうか、それで満身創痍だったあの傷が全快しているのか」
「はい。わたしが計器類が復旧してから黒狼を探している間に周囲のエネルギーや精気を吸収し自動回復が働いていることはわかっていました。そして今や全快し、その他に魔力をも吸収して自身の強化まで行っています」
「それでなんだか調子が良いのか!? 大総統との対決に備えいろいろ無茶な強化をしたけど、その副作用や後遺症も感じられない」
「こちらでも、モニターしていますがオールグリーンです」
「凄いな魔力は」
「それで黒狼、まだ報告したいことが……」
「む!?」
ビー!!ビー!!ビー!!
花月と黒狼の話に割り込むように、緊急コールが鳴り響く。
「黒狼」
「こちらでも感知している。感知力も上がっているな。しかしこれは!?」