第16話
間隔が空いてすみません。
矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。
暗殺者達は前衛と後衛に分かれた。
前衛はナイフや短剣、手斧などを装備し、後衛は投げナイフや吹き矢、短弓などで武装している。
そして一糸乱れぬ連携で、前衛は要めがけて殺到し、後衛はその隙間を縫って飛び道具を飛ばしてくる。
ヒュンヒュンヒュン!!カッカッカッ!!
要は8の字を横にした無限の記号のように棍を振り、敵の飛び道具を打ち落とすと、そのまま敵集団の中に踊り込む。
ボッボッボッ!!
要は正面の暗殺者の腕、肩、膝を風切音も激しく突き吹っ飛ばすと、棍を旋回させ隣の男の首筋に叩き込む。
横から頭を狙って振られた手斧を屈んで避け、態勢の崩れた相手の足に、足払いというよりローキックといった方が良い蹴りを見舞い、半回転させ頭から地面に叩き付ける。
背中からのショートソードの攻撃をノールックでバク転してかわし、相手の脳天に棍を唐竹割に振り下ろし叩き付けた。
着地した要は飛んできたナイフを投げた相手に精確に打ち返し、すぐさまナイフを追うようにダッシュする。まさか投げたナイフが返ってくるとは思わなかった相手がナイフを必死に避ける。そこに追いついた要は、相手の脇腹に遠心力を効かせた棍を叩き込む。吹き飛んだ男が仲間を巻き込んで民家に突っ込むところには目もくれず、次の獲物を求めて奔る。
リーダーを残し、覆面Aや他の暗殺者達が壊滅するのにさほど時間はかからなかった。
「残りはお前だけだ」
「き、貴様どうやって……」
リーダーは自分が手塩にかけた部下が、全滅したことが信じられない様子で要に詰問する。亜人女性や護衛の三人も驚愕している。
「ん? 痛みを感じなければ勝てるとでも思ったか? 甘いよ。こちとらそんな連中とは何度もやりあって慣ているんでね。 打撃を通してちょっと多めに魔力を打ち込んでスタンガンよろしく気絶させた。 痛みを感じようが、感じまいが気絶すりゃ一緒だよ」
要はやりあったのは地球でだけどねと、心の中で舌を出す。
「スタンガン!? なんだそれは、こいつらは全員、戦闘系のスキルを持っているんだぞ!! それに魔力を打ち込んでだと!?」
「こいつらスキルなんて使ってたか? まあ使っていたとして、例えば戦闘力五十三万から見たら、戦闘力一万の雑魚が仮にスキルで一万五千になろうが雑魚は雑魚じゃね?」
「!!」
要の何でもないことのように話す内容に、リーダーは絶句して何も言えないようだ。
「さて、あんたにはいろいろと聞きたいことがある。 素直に喋るかそれとも……」
要はニヤッと笑うと、棍を突きつける。
「くそっ!」
リーダーは観念したように武器を捨てた。
要の後ろの亜人女性たちの方からホッとした安堵の空気が流れてくる。
しかし要は油断しない。まだ、リーダーの目は光を失っていないからだ。何かを、恐らくは切り札というべき物を隠し持っている、そんな雰囲気だ。
要は警戒し、リーダーに両手を頭の後ろで組み、後ろを向いて跪け、と言うつもりで口を開こうとした。
しかしリーダーが腰の革ベルトから抜いた針を、自分に刺す方が速かった。
「くっ!」
「何をした!?」
要は問い掛けたが、リーダーは答えずに笑い出す。
「フ……フフフッ」
リーダーの顔は笑っているが、体は最初は細かく震え出し、徐々に大きく揺さぶられるようにガクガクと揺れ動き、全身から大量の汗をかいている。
ゴボリという音がし、リーダーの口から黒い粘液質な液体が噴き出す。要も今後どう展開するか分からず、後ろの四人を促して距離を取る。
噴き出した黒い液体は尽きることなく、顎や首筋を伝い胸のあたりから爆発的に広がり、全身を覆っていく。
あー、こういうのってラノベじゃ割とよくあるよな。ヤバイ薬で「進化」とか称して、人間やめて自称魔人になるとかいう流れかな?と内心で首をかしげる要。
完全にリーダーを包み込んだ黒い液体が、ぐちゃぐちゃバキバキと気持ちの悪い音を立てながら形を変えていくが、それほど時間をかけずすぐに形が定まる。
全身真っ黒いその物体は、身長や体重が爆発的に増え、真っ黒い肌は筋肉がはちきれんばかりに盛り上がる。顔は凹凸が無くなりのっぺりとしているが、目、耳、鼻、口とかろうじて分かる位には穴が開いているおり、口の部分の穴から鋭い牙が覗いている。手の指にも鋭い爪が生え、鋼鉄製の武器や防具をも引き裂いてしまいそうだ。
なにより異形の体を覆う魔力の量が、リーダーが人間だったときに比べ、数倍に跳ね上がっていることを、要は感じ取る。
巨体からにじみ出る、とげとげしい雰囲気は、まさに暴力を具現化したようだ。
短くて、どうもすみません。
12/22 話の流れには影響ない部分を一部加筆しました。
感想や今後の展開の予想などお待ちしています。
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