第15話
間隔が空いてすみません。
矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。
山賊の頭はもとはファルカオ王国の軍の下級士官だった。しかし庶民への強請タカリや、婦女子への乱暴などを行う悪徳士官だった頭は、部下の真面目な亜人とモメてその亜人に怪我を負わせたことが原因で、悪事がバレて裁判でファルカオ王国の追放ということになった。しかし、部下だった亜人は怪我から復帰後、上官でも軍規に則り諌めることができる貴重な人材と評価され出世した。そのことを知った頭は、亜人の部下が自分をハメたと思い込み亜人を憎むようになった。
完全な自業自得、そして逆恨みだが、頭は自分をハメた亜人に復讐する機会を伺い、もともとは人有党員ではなかったがこの出来事で人有党に入った。
要は頭程度の小物が黒幕を知っているとは思っていなかったが、ダメもとで聞いてみたところ、やはり黒幕が誰かは知らなかった。
ただ受けた指示は、理由を付けてこの村に入り込み、合図があり次第、ある18歳前後の亜人の娘を人質に取れというものだった。頭は、この村に18歳前後の亜人の娘が何人いて、その中の誰を狙うかすら知らされていなかったが、何でも人有党に非常に重要な人物らしい。
「村長さんはどう思……、村長さん! 大丈夫ですか? 顔が真っ青ですよ」
要が村長に心当たりを聞こうとしたところ、村長の様子がおかしい。
「だ……、大丈夫です」
「そうですか? しかし、18歳前後の亜人の娘を人質に取れというのも奇妙な話ですね」
「ええ……、そうですね」
「この村には18歳前後の亜人の娘は、何人くらいいるのですか?」
上の空で受け答えする村長の様子を見ていた要と花月は、同時に何者かの殺気を感じた。
「疾風の刃!」
村の入口の周りの森から、魔法が放たれる。狙いは地面に倒れている山賊たちだ。
あからさまに口封じだと分かるタイミングでの攻撃に、一応死なない程度に守ってやる。要としては山賊たちが死んでも、心はちっとも痛まなかったが。
降り注いできた疾風の刃を、要の棍と花月のショートソードで手分けして全て打ち落とす。
「!!」
森の中から驚愕の気配が漏れる。
「そこっ!」
花月が背中の弓を取り、気配のする方に矢を射る。
「うわっ!」
叫び声と共に肩を射抜かれた男が一人、木の枝から落ちてきた。受け身は取ったようだが、落ちた衝撃に男は気を失う。
要と花月はやはりと思う。口の軽い山賊たちには監視が付いていて、喋りそうになったら消されると思っていた。この監視者は山賊よりは情報を持っているだろう。こうやって、どんどん糸を手繰っていけば、自然と黒幕に行きつくはずだ。
早速話を聞こうと、一応の怪我の手当てをしようとしたところで、要と花月は村の奥で新たな殺気を感じる。
「むっ、村の入口は陽動か! 花月後を頼む」
要は遠巻きに見ていた村人たちの頭上を飛び越え、感じた殺気に向かって村の真中を最短距離で走る。
さして広くもない村なので、すぐに現場に着く。
状況はどうやら、黒服に黒い覆面を着けた、いかにも暗殺者といった風体の男達と、一人の亜人女性とその女性を護ろうとしている三人の男達が対峙しているところの様だ。
三人の男達は、村人には似つかわしくない剣を構えた様子から亜人女性の護衛だろうか。
「チョッ、マテヨ!」
キム○ク風に声を掛けつつ要は風の様に駆けながら、ターゲットを端の覆面Aに定めると、地面を深く抉るほどの踏み切りから鋭い跳び蹴りを見舞う。
「ぐはっ!」
真横から不意の跳び蹴りを脇腹に喰らった覆面Aは、そのまま吹っ飛ばされ、激突したボロい民家の壁に大穴を開けて中に転がり込む。要の方はスタッっと綺麗に着地した。
「なんだ、新手か!?」「人が地面と平行に飛ぶところなんて初めて見た!」「気を付けろ!」
亜人女性や護衛の三人も、要の闖入に、驚いた様子で口々に叫ぶが、要はそちらには取り合わず、自分に注意を引くためにあえてゆっくりと場の中央に歩いて行き、わざと偉そうに黒覆面の男達を見まわし、リーダーらしき男を探して指を突きつけ挑発する。
「おいおい、村の入口の雑魚い山賊連中なんかは陽動で村の注意を引いて人を集め、お前らが本命とは危うくダマされるところだったよ。小癪な。 しっかし、朝っぱらから白昼堂々黒覆面とか、オマエらアホか!?」
リーダーらしき男は答えないが、要はかまわず続ける。
「ただ、山賊連中が言っていた『ある18歳前後の亜人の娘』っていうのがお前らの目的なのは、本当のようだ。 お前らはきっと、山賊よりももっと役立つ情報を持っているんだろ。 置いて行けよ」
リーダーが部下に顎で示す。無言だが始末しろと言っていることは、ビンビンに伝わってくる殺気で疑いの余地がない。
蹴りを食らった覆面Aも起き上がり、民家の壁の大穴から出てくる。
「ほう、肋骨を何本かヘシ折った感触は間違いないのに、痛がる様子も見せないとは。 その歩き方だと回復した訳でもなさそうだ。 痛みを感じていないのか?」
手加減したとはいえ、割と本気で蹴ったのに起き上がった覆面Aに、要も軽く驚く。
「まあ、いいや」
要の呟きを無視して、襲い掛かる黒覆面の暗殺者達。
短くて、どうもすみません。
次回は要無双の回です……きっと。
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