第14話
間隔が空いて、どうもすみません。
矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。
要たちが、全滅させた山賊たちを街に連行し、警備兵に引き渡すつもりで荒縄で数珠繋ぎにしていると、事態を茫然と見ていた村長が正気に返り、慌てて話し掛けてくる。
「お待ちください」
「はい?」
振り返った要たちのハンパなく整った容姿に驚きはしたものの、村長は礼を述べる。
「年甲斐もなく、ご挨拶とお礼が遅れ申し訳ございません。 私はこの村の村長をしております、モランと申します。 先ほどは山賊たちを退治していただき、誠にありがとうございます」
「これはご丁寧に、私はハンターの要。こっちは花月です。たまたま通りがかっただけですから。それに「義を見てせざるは勇無きなり」と申します」
村長の挨拶に要たちも名乗り、地球のことわざを話す。
「はあ……。 お恥ずかしながら、その言葉は寡聞にして存じませんが、なんとなくおっしゃる意味は分かります。 お二人は山賊たちの無体な要求に憤りを感じ退治して下さったのですね」
「まあそんな訳ですから、お気になさらず。 ところで、このように山賊が押しかけてくるのは、よくあることなのですか?」
「いえ、ご覧の通りわずか30戸ほどの小さい亜人の村で、食料や大した金目の物はございません」
「そうですか」
「ですが、つい先日もこの近くの亜人の村が山賊に襲われたとの知らせがあり、一応の用心をしようとしていた矢先でした」
「お……、おりゃたちゅに¥@#$%&*(意訳)俺たちにこんな真似をして、ただで済むと思うのか」
「お、気が付いたか」
要たちが村長と話していると、要にやられた山賊の頭らしき男が、目を覚ました。
山賊の頭は歯や鼻骨をヘシ折られている為、何を話しているのか非常に聞き取り難い。
「何だ? 仲間でも連れて報復に来るのか? しかしお前らは警備兵に引き渡すから、報復なんぞ出来はしないぞ」
この国の法律では、山賊は捕まり次第、縛り首だと決まっている。
「#$%&+*‘?@¥……! (意訳)俺たちは、この国から薄汚い亜人を排除し、人間のみが暮らす国を目指す有志の集団「人有党」だ。 目印のこの黄色い布を身に着けた同志は、この国の到る所にいる。 こんなことをしでかして、お前ら最早逃げられんぞ!」
「「人有党」だって、ダッサ」
「ですね。黄色い布を身に着けるところは、三国志に出てくる黄巾党のマネですか?」
要と花月は酷いネーミングセンスに、思わず本音がこぼれる。
「「人有党」ですって……!!」
村長が驚き声を上げる。
「知っているのか、雷電?」
要の問いかけに、村長は律儀に答える。
「雷電が誰かは知りませんが、ただの山賊と思っていたところにとんでもない名前が出てきました」
村長によると「人有党」とは人間至上主義者の集まりとのこと。人間は優性種で、それ以外の亜人などは全て劣性種とし、排除かせいぜいが奴隷としての価値しか認めないという思想らしい。
元々この国は10年前までは、亜人の身分は人間のそれよりも圧倒的に低く、まともな職に就くことが出来ず、多くは下級兵士やハンターになっていた。
しかし国王が10年前にそれ以前の方針をガラリと変え、人間とそれ以外の種族を差別しない方針を発表し、エルフを宰相に大抜擢した。それを嚆矢に文官や武官の中に優秀な亜人が多く登用された。そして民間では、亜人を雇用すると税の軽減や免除などを行う政策を採ってから、多種多様な種族が民間の商会やギルドの職に就いた。
これは、北部4か国の連合体である神聖連合国がこの政策で急激に成長発展したことを重く見た国王が、南部の国でいち早く真似て取り入れた結果だ。
この政策は大成功した。人間より優れた膂力を持つ者は建設現場で働き、器用さをもつ種族はそれを活かして細工師になり、水棲亜人が海女や漁師になったりと適材適所に亜人の能力を取り入れ、また人間たちも自分の職が亜人に取って代わられると危機感を抱いて努力した結果、このファルカオ王国は爆発的に発展した。
しかし、その発展の影には亜人に職を奪われ失業した人間も多く、そうした者が犯罪に手を染めるケースが跡をたたず、社会問題化している。
そうした者たちから熱烈な支持を受けているのが、「人有党」だ。その方針は先ほど村長が述べたように、亜人の排斥であり、自分たちが冷や飯を喰らっているのは、亜人が汚い手段で自分たちから職を奪ったためと主張し、下賤な亜人は力ずくで排除しようとする危険な集団である。その党員の数は10万とも20万とも噂されるが、実態は国も把握出来ていない。
閑話休題
「ほう、負け犬どもの集団か」
「努力もぜずに成功者を妬む輩はどこにでもいるものです」
要たちは「人有党」に辛辣な評価を下す。それを聞いた頭は目を剥く。今まで数を聞いてビビらなかった者はいなかったのに、要たちはまるで頓着しなかったからだ。
「で、お前らの後ろ盾は誰だ?」
「#$%……? (意訳)何のことだ?」
頭の視線が泳ぐ。
「とぼけるなよ。 俺はトゥチェスのハンターギルドに所属しているが、この近くの亜人の村が襲われているという情報は伝えられていない。今日たまたまこの村を通りかからなければ、この辺りで山賊が跋扈している事に、まだトゥチェスは気付かなかったかもな。これは異常事態だ」
頭は全身から脂汗を流している。
「しかし、この異常事態をお前らみたいな雑魚が引き起こせるとは、とても思えない。今回だってお前らは最初は、無理難題を吹っ掛けて村に居座り、強請タカリでしぼりとる風を装うつもりだったんだろうが、ちょっとボコられたら、「虎の威を借りる狐」よろしくあっさり「人有党」の名前を出した。つまり最初からああしろこうしろと指示を出している人物がいるんだろ。被害届を握り潰せるくらいの権力を持った、後ろで糸を引いている黒幕は誰なんだよ? あ、あとこの村に来た目的もだ。ちゃっちゃと言え」
その場にいた村長や山賊たちは、「虎の威を借りる狐」が何のことだか分からなかったし、両腕切断と金〇潰しが「ちょっとボコられたら」とはとても言えないと思ったが、とても抗議できる雰囲気じゃなかった。
そして頭は重い口を開いた。
なんだか話が進まず、どうもすみません。
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