表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

第12話

矛盾やおかしいところは、やさしくご指摘ください。

 夕暮れ時、要と花月はハンターキルドに着いた。


 入口から中に入ると大勢のハンターがいた。夕暮れ時は皆、一日の成果を換金しに来たり、新たな依頼を物色したりしているのだ。


 要と花月が中に入っていくと、それに気付いたハンターたちがざわめき出し、そこかしこでヒソヒソ話が始まった。


「おい、見ろよ。ヘテレたちを半殺しにしたヤツラだぜ」


「あいつら、Gランクのハンターだとよ」


「マジかよ?そんなルーキーがヘテレたちを再起不能にしたのか。何かの間違いじゃないのか? 見てくれは良いがひ弱そうな野郎だぜ」


「噂じゃ、女一人でやったんだとよ」


「女一人だと!へっ!イイ女だと思って、ヘテレもよっぽど油断したんじゃないのか」


 どうやらヘテレたちを再起不能にしたことが、周囲に伝わったらしい。あの時は周りでたくさんの群集ギャラリーが一部始終を目撃していたし、要たちも特に気にしなかったので噂が広まるのはむしろ必然だった。

 

 そんな周囲の声を無視して、空いているレミーの窓口にまっすぐに近寄り話し掛ける。


「ただいま」


「お帰りなさい。初めての依頼の成果はどうでした」


「オヤコグザ10株です、確認して下さい」


 会話しながら要は鞄から採取した薬草と依頼書を取り出す。


 ちなみに要が背負った鞄は割りと大きめである。材質もこの世界にある(なめ)し革を使用したデザインに見えるものを選んだ。

 本来は『四次元ポケッ○』的な機能があるため、それこそ花月の腰のポーチサイズの小さな物でことは足りるので、大きいサイズの鞄は必要性がないのだが、これには理由がある。

 というのは、この世界によくラノベに出てくる「無限収納」的な機能をもつ鞄はない。そのため、小さな鞄から鞄より大きい物を出し入れすると、よけいな警戒心や無駄な興味を引くため、旅に差し支えない程度に大きめの鞄にしたのだ。

 ただ、要たちの服や武器と同様に、この世界ではこの鞄も非常に上等な品質に見える。実際には地球ではありふれた革の鞄だが、それこそ貴族や大商人の持ち物だと思われるほどだ。けして駆け出しのハンターが持つ物ではない。

 目端のきく者はそのことに気づき、様々な憶測を呼ぶことになる。


 閑話休題それはさておき 


 もちろん薬草を無理やり引っこ抜くようなことはせず、周りの土ごとスコップでしっかり掘り取って、水で洗って土を落とし古紙に包んで傷まないように持ち帰って来た。


 受け取ったレミーが、渡された薬草の状態のチェックを始める。


 それを見ていた周囲のハンターから、やはりGランクらしい、とか、ヘテレはど素人にやられた情けないヤツなどの嘲笑が上がる。


 内心、少しイラッとした要は、これを見てもそんな口が叩けるかと思いながら、外見は聞こえてくる声を全く気にする様子も見せない無表情で、背負った鞄から依頼外の魔物の討伐部位と魔石を取りだし、ドサドサとカウンターに積みあげた。


「それからこちらの買取りもお願いします」


 話掛けられ、ふと顔を上げたレミー。


「はい? オヤコグザを余分に採取されたのですか……、えっ!?」


「あれは……!!」「もしかしてオーガのっ!!」「ゴブリンの証明部位があんなに!!」


 目の前に積まれたモノをまじまじと見つめたレミーは、それが何かを悟るやいなやこらえきれず悲鳴を上げ、間を置かず周囲のハンターからも最大級の悲鳴とも怒声ともつかない声が響き渡った。


「あれ……? そんなに大げさな?」


 予想と違って大騒ぎになった状況に要と花月は顔を見合わせた。


 それは、トゥチェスのハンターギルドで目下の懸案事項だった、オーガのつがいの討伐や数が非常に多くて厄介なゴブリンの巣の駆除という依頼が、Gランクの若者たちにあっさり片付けられるという、あまりの非常識にギルド関係者を震撼させた大事件だった。





 結局大騒動になり、現在支部長室には緊急招集されたトゥチェスのハンターギルドの幹部が勢揃いして、緊急会議を開いている。要たちを知る人物として、ゼルビーノも出席している。


「なんと…! 依頼外の討伐が目的だとは」「呆れましたな」「これだから若い者は、ギルドのルールを何と心得ている!」

「しかし、オーガ討伐にゴブリンの巣の駆除とは、やりますな」「確かに」


 幹部たちは隣の者と話し合って、支部長室はざわついている。怒り出す者、感心する者と評価も様々だ。


「早くランクを上げて、正式にいろいろな依頼を受けたいと思いまして。こんなに大事になると思わず、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」


 要たちは素直に頭を下げている。

 いくつかの目的を効率よく達成するため、ギルドの規則を確信犯的に無視してやり過ぎて大事になり、迷惑をかけたことは申し訳ないと思っているからだ。

 

 要たちの目的とは、一つはこの世界の魔物の実戦データを採ること、これは比較的急務だった。無人偵察機からの報告だけではわからない部分もあり、実戦の経験は早いうちに積んでおきたかったからだ。

 次に往復に一日かかる遠方の薬草採取は、街で聞いた薬の高騰を少しでも抑えられればと考えたため。

 三つめは、この世界を見て回るならギルドのランクは新人ランクよりはある程度は高くしておいた方がいろいろと便利そうだと考えたため。

 そして最後に、ちょっとした悪戯心で、どうせなら派手に実力を示してデビューをした方が、外見や若さから侮られたり絡まれたしなくなるかと思ったのだ。


 その結果、トゥチェスのハンターギルド支部長であるラムジーや他の幹部たちと面会し、今日一日の行動を説明することになったのだ。


「それに、普通はオヤコグザを採ってくるだけで日が暮れる距離だというのに、どうやって他に3か所も寄り道をしてくる時間があるのじゃ? しかも目的の魔物を見つける時間も必要だというのに」


 ギルドの依頼書には、ゴブリンの巣の場所は詳細に書いてあるが、オーガや一角兎ホーンラビットなどは目撃証言の場所やギルド職員の調査した場所を移動するのが自然なので、探さなければならない。


「それについては、ギルドの依頼書を目安に、勘と私のスキルを駆使して探したところ偶然に、としか申せません」


 支部長としてはこのツッコミどころ満載の言い訳を追及したかった。他の幹部の一部からも、真面目に質問に答えないとは何事だという声があがれば、それは当然だという声も聞こえる。

 ハンターは個人の情報を隠すことが必要不可欠の心得となっており、またハンターにその類の質問をすることは殴られても文句の言えない非常識というのが共通認識のため、いくら支部長や幹部でも深くは追及できない。

 要にとってこの点は好都合の心得なので、ハンターの個人情報は非公開で押し通した。


 周りが処分しろ、いや必要ないと騒ぐなか、支部長はしばらく自身の葛藤で沈黙した。

 誰も手を出せなかった依頼が片付いたことと今後が期待できる新人のハンター加入は勿論歓迎したいが、ギルドランクとルールの意味を曲解し、秩序を乱したことによる処分を行うか。あまり厳しくすると、臍を曲げて他所の街へ流れていくかもしれない。しかしこのままではギルドのランクは何のためにあるのかということになり示しがつかない。

 悩んだ末に支部長は幹部たちやゼルビーノと相談し、要たちはハンターの初依頼ということで、今回は四件の依頼達成は認めるが、罰則は厳重注意(お説教)と買取りの査定金額を厳しく安めに付けることで、帳尻を合わせることにした。


 この処分に反対する者もいたが、ゼルビーノがオーガを倒せる戦闘能力を持つということはギルドにとってもこの街にとっても、非常に魅力的と説いた。何といってもこの世界で、人間種は弱い。街を一歩出れば常に命の危険にさらされる。今後もオーガのような強い魔物が近くに現れるかもしれないので、戦力は多いに越したことはない。強いだけである程度は優遇されるため、素行の悪いヘテレたちが今までいくつも問題を起こしても目をつぶってきた経緯があった。


 厳重注意(お説教)の内容は、この処置はあくまで今回のみ一回だけ有効とし、今後ランクを意図的に無視したこういう行為は二度と認めないと釘を刺さし、依頼のランク付けはギルドが長年の知識や経験などの蓄積で得た法則に則って行っており、他のハンターたちが真似て力及ばずに死なれても困るという理由でうんぬんかんぬん……。

 要としても目的はある程度達せられたし、ルールを無視しているのは承知していたので、二度としないということで承諾した。


「それで報酬じゃが」


 ギルドランクに関しては、四件の達成した依頼のうち、オーガのつがいの討伐と大量のゴブリンの巣の駆除により、要たちは二人とも特例でGからDにランクアップした。

 一応ハンターとして新人を卒業して一人前として扱われるランクだ。一気に三段階を飛越えランクアップしたことになる。これは異例中の異例で、支部長の権限のギリギリ許容範囲内というところで、これは幹部からも甘過ぎるのでないか、増長してヘテレたちのようになるのではと懸念されたが、支部長としても要たちに恩を売っておきたい腹づもりがある。


 次に、依頼の達成報酬と買取り金額について、支部長は部下が計算した書類を確認する。

 オヤコグザ10株。それにオーガのつがいにゴブリン52匹と一角ウサギホーンラビット5羽にそれぞれの討伐報酬と魔石の買取り代金。さらに一角ウサギホーンラビット5羽は肉や毛皮や角などが買取り可能。査定は厳しくつけて、2割減の大金貨1枚と小金貨3枚と大銀貨8枚(=138万円)になった。


 要たちは、今回のみだが結果的にたった一日働いて3ランクアップと大金を稼ぎ、当初の目的を達成して非常に満足した。

 そして、こちらに好意的な対応をしてくれた支部長とゼルビーノにお礼を述べ、支部長室を退出した。


 外はすっかり夜になり時刻も遅くなったが、宿(実際は宿から星華に転移して自室で休んでいる)に帰る前に今日の成果をギルドカードに記録してもらおうと、上機嫌に入口ホールの窓口に向かう要と花月は同時に気付いた。


「要」


「花月、わかってる」


 要と花月がホールの隅の目立たない暗がりに移動し終わった直後に、一組のパーティが外からギルドに入ってきた。


 




















変なところで区切ってスミマセン。展開が遅くて申し訳ありません。


10/22 誤字・脱字修正しました。


感想をお待ちしています。誤字脱字・矛盾などのご指摘はなるべく優しくお願いします。

今後の展開にたいするご意見もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ