プロローグ
処女作です。思いつきで投稿しました。
ひ弱いので評価・感想はやさしくお願いします。
感想に目は通しますが、返信はあまり出来ません。
「……まであと1分、自爆まであと1分」
世界征服を企む秘密結社ゾルゲーのアジト最深部にある、玉座の間と呼ばれる広い空間に、機械的な音声が響く。
開放感ある高い天井や壁には、大理石や上等なビロードやカーペットがふんだんに使われた、もとはさぞかし美麗な広間だったのだろう。しかし今は見る影もなく破壊されている。そこでは二人の人物による死闘に決着がつこうとしていた。
片や国連軍が総力を挙げて開発した史上最高のサイボーグ戦士黒狼であり、片や世界征服という野望を掲げ全世界に喧嘩を売るために、自らを改造した秘密結社の大総統である。
対峙している黒狼と大総統は、どちらも満身創痍で立っているのもやっとの様子だ。
その二人が、決着をつけるべく走り出す。
「うおおおおおお!!つらぬけーーーー!!」
「死ねーー!」
黒狼が突き出した拳が、凄まじい光と爆音を伴い、大総統を貫いた。
怪人達の首領である大総統を倒したことを確信したサイボーグ戦士黒狼は拳を高々と突き上げ叫んだ。
「やったぞ!浩二、九郎、志乃、葵、みんな!!仇はとったぞーー!」
そして大総統の爆発による完全消滅を見届け、力尽きて膝から崩れ落ちるように地面に座り込んだ。
「これで俺もみんなのところに胸を張っていける。」
ひどく満足した様子の黒狼に通信が入った。
「こちら花月、黒狼応答願います」
聞こえてきたのは、切迫した様子の若い女性の声だ。
「こちら黒狼。ミッションクリアだ」
「良かった。黒狼無事なんですね。良かった」
大きく安堵するような気配が感じられる。
「ああ。何とか勝てたよ。これで奴等の侵略も止まり、国連軍の反撃も始まるだろう。あとは長官達に任せよう。花月、長官に「あとはヨロシク」と通信してくれ」
「はい、通信完了しました。それからすぐにお迎えに上がります」
黒狼はそれを聞き、心底すまなそうに返事をする。
「あ~それなんだけど、実はあと十数秒でこの基地は自爆するらしい。お迎えは不要だよ」
「ええっ!?」
「大総統が死なば諸共ってヤツで基地の自爆装置を作動させたんだ。あと数十秒で、この島全部が跡形もなく吹っ飛ぶくらいの威力らしい」
「そんな……」
思わず絶句する花月に、黒狼は謝罪する。
「花月を巻き込んですまない」
「……いえ、お気になさらないで下さい。もともとあなたに助けられた命です。考えようによっては良かったです。あなたのいない世界に取り残されるくらいなら最後までお伴できて幸せです」
「……すまない。ありがとう」
「……自爆まであと3秒・2秒・1秒・0秒」
そして、黒狼たちは閃光に包まれた。
この日、地球上から島が一つ丸ごと消滅した。その影響は大きく津波その他の災害がおこったが、この戦いが分岐点となり、世界各地で国連軍の反撃が始まった。当初は、突如現れた怪人たちの集団である「世界征服を企む秘密結社ゾルゲー」は、人類を超越した能力をもって枯れ野に火を放つ勢いで世界各国を蹂躙した。しかし、この戦いでアジトと司令官を失った怪人たちは国連軍の反撃で各個撃破されていった。
そして世界は平和になった。たくさんの犠牲の上で。