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掌編小説

犬の気持ち

作者: 斎藤康介

 主のもとを暑いときと寒いときに訪れる雄がいる。

 匂いは主と主の子分とに似ているが、少し違う。他の匂いと混じっている感じだ。その雄も主の子分なのだろう、主のもとを訪れるたびに主に対し慇懃に挨拶をしていた。主もその雄が来るたびにもてなしをしていた。

 だがその雄は部を弁えていない大馬鹿者であった。主の忠実たる一番の家臣である吾輩を捕まえては「おばちゃん、こいつ少し太りましたね」などと言うのである。主も「確かにね、パンを上げたせいかしら」と吾輩を抱えるのだ。頑固として筋肉だと主張したいが、如何せん吾輩の言葉は主に伝わらず、ただ頭を撫でられるのであった。

 そんな雄も主が居ないときは静かだった。そんな時は吾輩を捕まえて勝手にいろいろとしゃべりだすのである。吾輩としては鬱陶しく仕方がないのだが、主に仕えるものの先輩として後輩の話を聞いてやるのも務めだった。


「最近どうしたらいいか分かんないんだよね。みんな就職していっているけど、俺は特にやりたいことないしな。ってお前に言っても仕方がないな」


 主の警護があるではないかと言ってやるが、やはり言葉は伝わらず、そしてこの雄も主と同様に頭を撫でるのだ。先輩に対して生意気な行為だが、話を聞いてやったあとは、いつも庭で吾輩の好きな丸いのを投げ、吾輩の鍛錬に付き合うので許してやることにしていた。

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