表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

神がよこしたスキルのせいで異世界でもある意味無敵だがヒドイ目にも遭ってます(読み切り版)

作者: みたよーき
掲載日:2026/05/26

「どこなんだよここは……」

 オッス、オラ伊藤。気がついたら真っ暗な場所にいて、全く訳が分かんねぇゾ。

 ――などと、あまりにも訳が分からないので心中おどけてみたが……。当然、何の解決にもなりゃしない。

 全き闇の中、自分の身体のごく一部すら見えず、目で見ているつもりのそれが本当に闇であるのかも分からなくなってくる。立っているのか、漂っているのか、自分の体勢すらも、意識してみてもあやふやなままだ。さっき呟いたはずの言葉も、本当に声に出ていたのか疑問に思えてくる。

 自分自身があるべき形でここに居るのかすらも怪しく思えてくる中、何とか状況を把握しようと、機能しているのかも判らない目で周囲を窺う。

 と、突然目の前に、ボゥ、と何か人型に見えるシルエットが浮かび上がった。

「うおっ! だ、誰だッ……!?」

 思わず反射的にそう声を上げると、そのシルエットから、声ならぬ声が届く。

「なんだチミはってか?」

「……いや、そうは言ってない」

「なんだチミはってか!?」

「おい聞けよ」

「そうです、私が神です」

「……オマエダッタノカー」

「あのぉ、雑な対応はやめてもろて?」

「なんかイラッとしたから」

「それは……なんか、サーセンwwww」

「全く悪いと思ってねぇじゃねえかよ! ほんとに誰なんだよテメェはよ!」

「だから神ですってば」

「カミって何だよ!? 神様って事かよ! アイエエエー!? カミサマ!? カミサマナンデ!?」

「忙しないなぁ……。伊藤くん、君、思ってたより余裕有るね?」

「ねぇよ! だからこんなんなってんだろうがよ!」

 言ってから、「ああ、なるほど、俺は今、テンパってるのか」と理解が追いついてきた。

「まあ、ちゃんとこっちの言葉を理解しているなら良いさ。さて、詳細な説明と簡潔な説明、どっちが良い?」

「今北産業」

「君は死にました。異世界に転生してもらいます。ユニークスキルだけはプレゼント」

「把握……したけど、どういうこと!?」

「スキルは君の“魂の(かたち)”に応じて開花するから、どういうものになるかは私にも分からない。そこは、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処してほしい。じゃあ、そういうことだから、あとはよろしく」

「えっ、それだけ!? って……おい!?」

 それ以上を問いただす間もなく、全身がどこかに吸い寄せられていくような感覚に襲われ、目の前のシルエットは急速に遠ざかっていく。

「ちょ、まっ、おい! まじかよぉぉー!」

 叫び声も空しく、そうして俺は雑に異世界に転生したのだった。




「だからどこなんだよ、ここは……」

 気がつけば、目の前には一面に広がる荒野。それは喩えるなら……

「……恐竜がいたら玉乗り仕込みたいような荒野だな……」

 神を名乗るヤツは、俺にスキルを与えた、というようなことを言っていたから、そんな、戦闘力が物を言うような世界ではないと思いたいが……。

 なんてことを考えていた俺の頭上に、突如、巨大な影が差した。

 まさか本当に恐竜じゃないだろうな、などと思いつつ咄嗟に振り返ると。

「きゃあ、ドラゴン!」

 それはドラゴンとしか言いようがない。なぜなら、見上げる大きさのそれは、見た目には、日本に於いて超有名なRPGに出てくるそれに、とてもそっくりだったからだ。どれくらい似ているかというと、そっくりすぎて目の辺りが黒い線で隠されているほどだ。

「T先生でもそっちのかよ!」

 思わずそう言いながら、

 おれ は にげだした!

 なぜなら、そのドラゴンは既に前足を振り上げ、それを今にも俺に叩きつけようとしていたからだ。

 だが、“まわりこまれ”るまでもなく、素早く振り下ろされたドラゴンの前足は、俺の逃走を許さなかった。

 ――くそぉッ! 転生したのに、いきなり死ぬのか……ッ!

 悔しさの中で、俺は間もなく全身に走る激痛を感じ、そして――

 ……あれ? ……死んでない?

 意識はある。引き続き全身がビシビシ痛んでいるから、魂が抜け出たわけでもなさそうだ。

 ――まさか、ただ頑丈になるスキルかよ……!

 俺が痛みに耐えつつそんなことを思っていると、ドラゴンが俺を踏みつけた足を引き上げた。

 すると、俺の身体も足の裏にひっついたまま持ち上げられる。

 次の瞬間。


 ――ぺらっ。


 一陣の風が、俺の身体をドラゴンの足から引き剥がし、更には俺の身体をふわりと持ち上げた。

 は? と思うが、同時に、自分の身に何が起こったのかも理解した。

「ぺったんこになってるーー!!」

 ギャグマンガかよ! と思うが、すぐさま、もしかしたら“そういう”世界なのかも知れない、と思い直す。

「うう、いてて……。だが、そういうことなら……」

 いつの間にか元通りになっている身体で、どこか当惑しているようなドラゴンの足下に踏み込んだ。

「星になれー!」

 ギャグマンガなら、俺のパンチでこいつは空の彼方へ吹っ飛ばされ、星になるはずだ!

 だが、そんな思惑も空しく。

「ぎゃあぁぁぁーー!」

 痛みに絶叫を上げたのは、俺の方だった。

「う、腕がぁ!」

 ドラゴンの前足を勢いよく殴りつけた俺の右腕は、あらぬ方へ曲がっていた。めちゃくちゃ痛いんですけどほんとまじで。

「く、くっそぉ……!」

 あまりの痛みに、しばらく腕を押さえて転げ回ってから、何とか立ち上がった。痛みがだいぶマシになった腕を見れば、先ほどはあり得ないほど折れ曲がっていたはずなのに、見た目はもう元通りになっている。

「ぐぅ……こういう所は……ギャグマンガみたいなのになぁ……」

 どうやら、この世界は俺に都合の良いものというわけではないらしい。あるいは、俺の身に起こっていることは、神が言っていた『ユニークスキル』というやつのせいかもしれない。だから、俺だけが、こんなギャグみたいなおかしな事になってるんじゃないか?

 そんな思考に気を取られていたのはほんの僅かな時間だったが、気付けば、眼前でドラゴンが息を大きく吸い込むような姿勢を見せていた。

「し、しまっ……」

 そんな俺の言葉は、ドラゴンが吐き出した炎にかき消える。

 そして全身を炎に包まれた俺は――


「知ってた」


 当然のように無事だった。めちゃくちゃ熱くて、すんげえ痛かったけど。

 着ていた服は“ほぼ”消し飛んでいる。そして当然のように、“大事なところ”だけには切れ端が残っている。どういう原理か分からんが、上から見下ろす自分の目にも、それは綺麗に隠されている。

 そして、視界の上端にチラチラと見えるものがある。自分でははっきり見ることができないが、“お約束”から考えれば、それがアフロと化した自分の髪であることはもはや疑いないだろう。

「こんなスキルでどうしろと……?」

 どうやら簡単に死ぬことはないようだが、痛みも熱さも普通に感じるだけに、あまりありがたいとは思えない。これでは、いわゆる『無双』をできるようなスキルでないだろう。この世界がこんな魔物が跋扈するような所となれば、ただただ先が思いやられるばかりだ。

 とほほ、と途方に暮れる俺を尻目に、端から見れば炎を浴びても平然としている様子の俺に恐れをなしたか、ドラゴンは、ドスン、ドスン、と足音を立てながら逃げて行ってしまう。

「……まあ、いっか」

 一瞬、あれをなんとか倒しさえすれば、超レベルアップからの無双、なんてことも頭を過ぎったが、今しがた自分の身に起こったことを思えば、そんな都合の良い展開はきっと有るはずもない、としか思われない。自然、俺は諦めの境地へと至り、遠ざかる巨体をただただ見送った。

 ともあれ、ドラゴンは撃退(?)した。この辺りはヤツの縄張りなのか、周囲に他の魔物の姿は見えないが、いつまでもここに居ても仕方ない。俺はとりあえず、比較的安全と思われるドラゴンが逃げたのとは逆の方へ向かうことにした。


「わぁいうずしお!」

 走り出した途端、下半身に猛烈な違和感を覚えた。見れば、自分の足が自分のものでないようにシャカシャカと高速で動いている。ハッキリ言ってちょっとキモい。だがそれも、少し横から見下ろすことで正体が知れた。足が渦巻きで表現される、『ぐるぐる走り』とか言われるヤツだ。

 ……これは正直、ちょっとテンションが上がった。思わず変なことを口走るくらいには。

 スピードもかなり出ている。七割程度の感覚で走っているが、かつての全力疾走より、ずっとはやい!! 後ろに土煙が立っているが、あれも横から見たらマンガ的な見た目かもしれない。残念ながら自分には見えないが、端から見たら『ダダダダダッ』みたいな擬音が空に浮いていたりしないだろうか。

 そんなことを考えると、だんだん楽しくなってきて、俺は更にスピードを上げて走り続けたのだった。


「ぐうぅ……乳酸んんんん……」

 解っている。乳酸はあくまでもエナジィ源になるものであって、それ自体がこのパンパンに張った足の疲労の原因ではないということは!(ハカセ「ちなみに、昔は乳酸こそが筋肉疲労の原因物質だと考えられていたんじゃよ」)

 それでも、両足にビシビシと感じる痛みを僅かでも紛らわせようと、何かしら言葉にせずにはいられなかっただけだ。

「なんでこういうとこはリアルなんだよ……」

 そう毒づいてみたところで、痛みが和らぐでもなし。ガクガク震える足では立っているだけでしんどい。あまりにもしんどすぎて、どこからともなく現れて消えた謎のハカセにツッコむ気力も無い。でも一応、心の中では言っておく。誰だよお前は! 補足はありがとう!

 ただ、調子に乗って走り続けたおかげか、いつの間にか周囲の光景は様変わりしていた。

 なだらかな丘陵の上から見渡す景色は、壮観だ。

 遠くには山影が連なり、右手にはその向こうへ更に広がっていく森林の端が見える。その森林の影から、平野を横切るように、明らかに人の手が入っているであろう道が、左手の方へ延々と伸びているのも見えた。

「とりあえずあそこを辿っていけば人には会えるだろうけど……」

 あれだけでは、この世界の文明レベルは判らない。道はアスファルトで舗装されているわけではなさそうなので、まあ、よくある中世風ファンタジィ世界だろうか、などと思うが、たまたまここが田舎というだけかもしれない。

 なんにせよ、行けば判ることだ。そう思って道の方へ歩き出そうとして、改めて重大な事に気付いた。

 ――今の俺は、股間を布で隠しただけの格好である!

 いくらなんでも、この世界が、葉っぱ一枚有れば良い、で許されるような世界ということは無いだろう。このままでは俺はただのへんたいふしんしゃさんだ。髪型はいつの間にか元に戻っているのに、なぜ服装だけはこのままなのか。コレガワカラナイ。

 ドラゴンを星にできなかったこともそうだが、なんだか「そっちの方が面白い」という方に事態が転がっているような気がする。なんてスキルだ!

 ともあれ、このまま人に出会ってしまえば、紳士だと釈明したところでタイーホされるのが関の山だろう。

 とはいえ、現状を打破するアイディアは浮かばない。

 そこで俺は、逆に考えることにした。変態でもいいさ、と。

 いや、全然良くはないんだが、どうしようもないし。最悪、この布は謎のパゥワによって完全な露出だけは防いでくれるだろう。

 ……だが、この先で出会うのが女性であった場合、それまで完璧に俺の“聖剣”を隠匿していたはずの布が、その女性の目の前ではあっさり落ちて、俺はその女性に殴られる――そんなお約束的展開は容易に予想できる。それがラブコメ的な軽いもので済むならまだ良い。しかしきっと、女性のパンチは俺の顔面にめり込み、「前が見えねェ」ことになるに違いない。俺は詳しいんだ!

 だが、この世界でこの先生きのこっていくのなら、この理不尽なスキルとも一生の付き合いになるのだ。ならば、普通じゃ絶対に体験できないそんな理不尽さえ、楽しんでやろうじゃないか! ……そう開き直るしかないのであった。とほほ。


 さすがにこの格好で道の上を堂々と歩くほどの度胸はなかったので、道からは少し離れて道沿いを肩を落としつつ徒歩で進んでいると、やがて耳に金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。見れば、前方に動く人影らしきものが小さく見えた。

 ぴゅーっ! と走って近づくと、そこにあったのは、横倒しになった馬車と、それを守るように立つ女兵士が、いかにも盗賊という格好の男どもと対峙している光景だった。盗賊の何人かは既に倒れ伏している。

(異世界ものによくあるやーつ!)

 ならどうせあの馬車の中にはお嬢様とかお姫様が乗ってるんだろうなー。などと、先ほどの予想が現実になる予感にげんなりしつつも、目の前でくっころ展開など見たくはないし、下手をすれば人死にが出るかもしれないような場面をこのまま見過ごすのも寝覚めが悪い。最悪、俺自身は死にはしない、とスキルを信じてその前に飛び出した。

「待てぇい!」

「何やつ……変態だー!!!!」

「やかましわ!」

 言いながら、俺をいきなり変態呼ばわりした盗賊どもに、(それが真っ当なリアクションであることは棚に上げて)思わずアッパーカットを放つ。

 すると、なんということでしょう。五人ほどいた盗賊どもは、まとめて空へと舞い上がり、そして、ドシャア! と音を立てて頭部からほぼ垂直に地面に墜落し、ピクリとも動かなくなってしまったのでした。

「そうきたか……」

 一応(というのも失礼だが)、その先生の作品はギャグ作品というわけではないと思うのだが、ネタとして使われているものなら俺のスキルの範疇らしい。良いのかそれで。

 そんな考察をしていると、ぽかん、とこちらを見ていた兵士と目が合った。

「ええっと……、大丈夫ですか?」

「……えっ。ええ……? あ、ありがとうございます……?」

 俺がこっちの言葉を普通に理解しているだけでなく、こっちの言葉も普通に通じるようだ。彼女の言葉がどこか疑問形なのは、ただ目の前で起きたことをまだ消化しきれていないからのようだ。

「あの、賊の捕縛とか、馬車の人の安全確認とか、なさらないんですか?」

「……ハッ! そうでした!」

 俺の指摘によって気を取り直した女兵士さんは、慌てて馬車へと駆けていき、中にいた人といくつか言葉を交わした。どうやら中の人は無事だったようだ。

 そして、馬車から持ち出したロープを手に、なぜか、こちらをチラチラと気にしながら(なんでやろなー)、まだ息のあった族を縛り上げていった。


 ちなみに、馬車の中にいたのはおっさん(イケボ、ナイスミドル)だったし、女兵士さんもツンデレヒロイン的言動をするわけでもなく、俺には僅かすらラブ要素は発生しなかった。期待していたつもりはなかったが、どこか釈然としない……。

 どうやら、俺のスキルはどこまでも俺にギャグばかりを押しつける、優しくないもののようだった。




 ――そして。

【お忍びで行動していた王国宰相を助けた伊藤は、その後王宮に招かれ、伊藤こそが、王国に伝わる伝承が示す“この世界に迫る災厄を退ける者”であると告げられる――】

「いやいや、ちょっと待って。あのおっさん、宰相だったの!? 災厄を退けるって何!? そもそもいきなりこの展開はなんなんだよ、お前は誰だよ!」

【五千文字も超えるし、読み切りだからそろそろ端折ろうかと。あ、どうも、ナレーションです】

「ゴセンモジ!? ヨミキリって何!? つーか、この声、お前、神だろ!」

【……ナレーションです】

「いやいやいや……」

【世界を救う旅に出た伊藤は、なんやかんやあって、ついに魔王の居城に辿り着いたのだった】

「無視して進めんな! なんやかんや! って雑ゥ! そして魔王!? そんなの基本ラスボスじゃん、端折り過ぎィ!!」

【ツッコミお疲れ様です】

「やかましいわ。……それにしてももうちょっとさ、ダイジェストで見せるとかさ?」

【そうだね……たとえば、海辺では水着回ノルマを回収したり】

「……水着回とかノルマとかツッコみたいところはあるんだが……、それよりもまず、俺以外にはブーメラン水着のマッチョ野郎どもしかいない絵面を水着回と呼ぶことに遺憾の意を表したいのだが?」

【野球に汗を流したり】

「絵面がさっきとほぼ変わらないのだが? なんでビーチで水着で野球だよ? 野球回はついでかよ」

【船上で起こるはずだった惨劇を未然に防いだり】

「……そら、海上とかいうクローズド・サークルに一人だけ全身黒タイツがいたら、そいつが何かしらの犯人だろってなるわな」

【新たな力に覚醒したり】

「うん、俺いつの間にサッカーのフォワードやらされてんの? その力、魔王との戦いに役に立つ?」

【……そんな苦難の旅を経て、伊藤は特にレベルアップするでもなく、魔王の居城に辿り着いたのだった】

「あ、ダイジェストそれだけ? って、えっ、俺、レベルアップしてないの!?」

【この世界はレベルシステムじゃないからね】

「あ、そういう……って、いやいや、だからって、いきなり魔王とか、どうしろと? さすがに死んじゃうでしょ?」

【あなたは死なないわ。スキルが守るもの】

「そこはスキルなのかよ。くそぅ、ひどい目に遭う予感しかないが……でも、死ぬよりはマシなのか?」

【マシマシ。じゃあ、そういうことだから、いざ、決戦のバトルフィールドへ!】

「ここは川越か。……って、本当にそうじゃないよな……?」

 そう思うのも無理はない。なぜなら、目の前にあるのはラスダンに相応しい巨大な城などではなく、決して小さくはないが、豪邸と呼ぶほどでもない、見た目は日本のベッドタウンでも見られるような、ただの二階建て一軒家だったからだ。

「ここがあの魔王のハウスね! ってなるかぁ!」

 とツッコんではみたものの、しかし不本意なことに、表札にはご丁寧に『魔王』と書かれている。

「じゃあそうなんでしょうね……」

 言いながら、インタフォンを押した。もう、やぶれかぶれだ。ピンポーン、と何の変哲もないドアチャイムが鳴る。

『はーい、どちら様でしょう?』

「あ、わたくし、伊藤と申しますが。こちら、魔王様はご在宅でしょうか?」

『伊藤様ですか、伺っております。只今、本人がそちらへ向かいますので、お待ちください』

「わかりました、ありがとうございますー」

 なんだ、このやりとり? などと思いつつ、庭に咲いている花を眺めながら、魔王本人の登場を待つ。

 そしてほどなくして、玄関のドアが開き始めた。

 ――そして、現れた魔王の姿は――

「ワシじゃよ」

「謎のハカセェ!!」

 お前かよ!

「クックック、驚いているようじゃな……」

「ある意味な!」

 再登場が雑すぎて驚いたわ! でもそのクックック笑いは本当に魔王っぽい!

「お主が現れてからじゃ。この世界そのものがおかしくなってしまったのは……」

「なにっ!」

「世界の有り様が根底から歪んでしまった。おかげでこの世界に生きる全ての者たち生活は激変した。尤も、それに気付いている者はワシを含め、ごく僅かじゃが……」

「えっ、俺のスキルって、そんなはた迷惑なものだったの!?」

「ゆえにワシは、お主をこの世界から排除すると決めた! ……しかし、お主のその力、知れば知るほど強大じゃ。お主を殺害したとて、お主はしれっと生き返るのじゃろう……?」

「えっ、まあ、マンガで言えば、次のコマとか、最悪、次回には普通に生き返ってるだろうけど……」

「そう、それじゃ! ワシはお主の力を徹底的に観察、分析し、その影響力を敢えて自らに取り込んだ。そしてワシは突破口を見出したのじゃ!」

「何……だと……?」

「“上”を見るがいい!」

「なに?」

 言われて、空を見上げる。が、曇り空が広がるだけだ。

「いいや、“空”ではない。“上”じゃ!」

「それは……どういう……?」

「タイトルじゃ!!」

「メタァ!」

 俺のスキルの影響力って、そういうことか……!

「しかし、タイトル……、……ハッ!」

「気付いたようじゃな……」

「そういうことか……!」

 そういえばさっき、神……ナレーションも言っていた。

 ――これは、『読み切り』であると!

「つまり、お主を殺し、この回を終えてしまえば、お主に『次回』は無い!!」

「な、なんだって――!!」

「……そういうことじゃ。悪いとは思うが、お主には死んでもらうぞ」

「…………フッ」

「……何がおかしい?」

「そういうことなら、俺にも考えがある」

「なんじゃと!?」

「不本意ではあるが……俺だって、死にたくはないからな……」

「強がりを……ッ!」

「強がりかどうか、確かみてみろ! ……ウオオオいくぞオオオ!」

「まさかッ!」

「俺の勇気が――」

「その言葉はァッ!!」

「――世界を救うと信じて……!」


 ご愛読ありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ