第八話 敗北勇者は嫁ぎたい!
運命はルルリカに厳しかった。
夢を犠牲にして、こんなに世のため民のために尽くしているのに、ルルリカには厳しかった。
「素晴らしき妙案を閃く前は、角とか牙とか翼とか尻尾とか生えてたり、肌の色がちょっと可笑しかったりはしたけど、基本は人っぽい魔王ばかりだったのにっ!」
野獣系勇者は、人の言葉を取り戻した。
魂の叫びが星空に広がっていく。
「どうしてっ! 魔王に嫁ごうと決意した途端、人外な論外魔王ばかりが現れるんだっ!」
運命はルルリカに厳しかった。
こうなったらもう、ベースが人っぽければ魔王でもいいとルルリカが覚悟を決めた途端、人外系魔王ばかりが現れるようになったのだ。
ドラゴン、巨蛇、謎の粘着物質、巨大蜘蛛、謎の暗黒物質、等々……。
「…………毒イボガエル魔王で妥協しておくべきだったんだろうか……?」
「ル、ルルリカ様! お気を確かに! 確かに体は人型でしたけど、お婿さんにするには大きすぎましたし、それに、イボから毒を吹き出す生き物とは、結婚しちゃだめだと思います!」
「それもそうだな……」
運命が厳しすぎるあまりルルリカは本格的に乱心しかけたが、ティトのおかげで正気を取り戻した。
「はあ……。魔王を倒すのは、簡単なのにな……」
魔王には連戦連勝中のルルリカだが、運命には惨敗続きだった。
ティトは複雑な思いで、そんなルルリカを見つめる。
ルルリカには笑っていてほしいし、幸せになってほしいと思っている。
けれど、ルルリカが夢をかなえた姿を想像すると、なんだかもやもやしてくるのだ。
もやもやの理由を深く追求してみたことはなかった。
ルルリカの今現在進行形の夢が、大分イカれているせいだ。
もやもやを飲み込み、ティトは今の自分に出来る精一杯を言葉にのせて伝えた。
「ルルリカ様。ルルリカ様の夢が叶っても、叶わなくても。ボクはずっと、ルルリカ様と一緒ですからね」
「…………うん。ありがとう、ティト。おまえが一緒で、よかったよ」
「はい!」
膝から顔を上げて、ルルリカは弱弱しくはあったが、それでも笑みを浮かべてくれた。
ティトは、それだけで嬉しくなった。
今は、それで十分だと思った。
そう、今は――――。
運命はルルリカに厳しかった。けれど。
すこうし視野を広げて、視点を切り替えてみれば。
ルルリカの夢は、意外とあっさり叶ってしまうのかもしれなかった。




