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冥界送人  作者: てんまる99


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8/16

ずっと忘れない

日光に取材に行くという名目で、俺は“ぷらなりあ”を出た。

優香の提案通り、早瀬兄弟と距離を置くためと、優香の師匠に当たる人に会って今後の対策を決めるためだ。

店を出る時、彩希は心配そうな顔をしていた。

彩希の首には例のチャームが揺れている。

その効果も教えてある。

いざという時の頼りにはなるだろう。


「明さんをお借りします」

「気をつけてね‥」

彩希はそれ以上何も言わなかった。


日光までは特急を使えば数時間の距離だが、用心のため各駅停車とタクシーを使い、回り道で向かう。

途中でホテルに泊まり、2泊3日の旅程だ。


優香によると、俺の容姿が知られている可能性は少ないが、ヴェルデッドを携帯していれば、漏れ出る魔力で察知されてしまうらしい。

ただし、通常は元々入っていた箱に入れておくことで流出は防げるとのこと。

恐らく、ヴェルデッドを探す奴らは東京に集まるから、それの裏をかく狙いもある。


一日目、夜遅くに目的の駅に着いた。

土浦近くの各駅停車しか止まらないローカルな駅だ。

駅前だと言うのに街灯の灯り以外は無く、薄暗い。

腹が減ったが、既に駅前の飲食店は閉まっていた。

一軒だけ灯りをつけ、やっているラーメン屋があった。


「ラーメンで良いか?お嬢様の口に合うかはわからないが」

「ラーメン、食べたこと無いんですよね‥私」

少し不安そうな優香。

「嘘だろ? 現代日本人でラーメン食べたこと無い人間、居るのか?」

「ここに‥」

「んじゃ、初ラーメンと行くか」

優香はコクコクと頷いた。


とりあえず店に入り、適当なテーブルに座る。

閉店真際の店内に他に客は一人だけ。

メニューの見当が付かないと言う優香の代わりに、無難な醤油ラーメンを注文。

俺は味噌ラーメンとチャーハンにする。


少々待って出たラーメンは意外に美味かった。

空腹だったせいかも知れないが。

秋風に冷えた身体が温まってくる。


一方の優香はと言えば。

ラーメンを一口すすって、驚いて目を丸くし、スープを1杯飲んでテーブルを叩き、チャーシューを齧って小躍りしていた。

「お口に合ったか?」

優香は夢中でラーメンをすすりながら大きく頷く。

まさかこれほど喜ぶとは、予想外だった。

優香は食べ終わる頃には涙を浮かべていた。


「こんな美味しい食事、初めてですっ!」

‥いつになくテンションが高い。

「そ、そうか??普通のラーメンだぞ?」

「私、今日の食事を絶対忘れません」

ちょっと大げさだが、喜んでくれたので気をよくして宿に向った。


そこまでは、良かったのだが。


「おい、これは?」

ホテルに着いた俺は目前のベッドを指差した。

「ベッドですね」

部屋に着くなり、さっさとシャワーを浴びてきた優香がバスタオル1枚の姿で答えた。

白い肌が湯上がりで少しだけ赤みが増している。


「1つしか無いんだが」

「トリプルなので大きさは充分では?」

「‥お前がベッドで寝ろ。俺はソファーで良い」

「では、私もソファーで」

「それじゃ意味ないだろ」

「なぜ、一緒に寝てはいけないのですか?」

本当に理由が分からない、と言う様子の優香。


「子供みたいな事言うなよ‥これでもアンタのこと傷つけたくないと思ってる」

「ここまでして、何もなかったらその方が傷付きます」

「後悔するぞ、俺もアンタも」

「誤解されている様ですから、説明させて下さい」

優香はベッドに腰掛けて言った。


「私は明さんを彩希さんから奪おうとか、そういう気持ちは無いんです。むしろ、お二人は素敵なカップルだと思ってます」

「じゃあ、なんでこんな事を‥」

「覚えていて欲しいんです、私の事ずっと」

「いや、忘れるわけ無いだろう」

優香は静かに首を振った。

「ただそこに居た、って記憶だけじゃ嫌なんです。私の声も髪も肌も‥体も覚えていて欲しい」

「だから俺と寝るのか? 俺に覚えて貰うために? たかがそんな事で‥」

言いかけた俺を優香は優しく制止した。


「たかが、じゃない‥私には何より大事なこと」


突然、その言葉に俺はなぜ優香がこんなにも求めるのか理解してしまった。

彼女の中には巨大な傷があるのだ。

本当は泣き出しそうなほどのその傷を、取り繕い、普段は過ごしている。

その傷のせいで彼女は自分の居場所を見つけられない。

でも本当は。

ずっと覚えていると。

いつまでも心のここに居て良いと、言われたいのだ。


それまで大人びて見えた優香が急に可愛く見え、愛おしくなった。

俺で良ければ、いつまでも抱き締めてやる、と言いたかった。

だが、俺は照れて素直な言葉が言えなかった。

「言っとくけど、そんな素敵な事じゃないんだぞ? 汚くて、ぐちゃぐちゃで‥」

だが、優香は俺を抱き締めて、言葉を遮る。

「私の事、汚くてぐちゃぐちゃにして?」

そう言って、強く唇を求めてきた。

内容ギリギリですが、これならレーティング的にはセーフ?

いや、素直にR15にしてもよいのですけど、それで逆に期待をさせたら悪いかなと

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